異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
363 / 1,560

【362 ブレンダンとクラレッサ ③】

しおりを挟む
魔空の枝に魔力を込める。
霊力と合わさったその力は空気中に散布する事で、一つ一つが目に見えない程の小さなエネルギーの塊となる。

黒魔法の爆裂弾を空中に留め置き、全方位から一斉に撃ち込む応用技があるがそれと原理は似ている。

だが、似て非なるものである。

霊力と魔力を合わせた霊魔力。
空気中に撒かれ漂う目に見えない程に細かいその力は、発動に気付いてから全てを防ぎきるのは不可能である。

「いかなる結界でも、空気を全て締め出す事はできない。霊魔力の霧も体に触れておったら防げんからな」


ダメージは与えただろう。
だが、ブレンダンはこれで終わらない事を知っている。終わるはずがない。

魔法使いとしての魔力は自分が上だろう。
クラレッサの魔力も高い。白魔法兵団団長になるだけの魔力はある。

だが、70歳になっても研鑽を続けるブレンダンには、まだ及ばない。

しかし霊力はどうか?
これは才能、生まれ持った資質によるものが大きいのかもしれない。

クラレッサの霊力はブレンダンを大きく上回っている。
それこそクラレッサの霊力による一撃一撃に、全力で防御しなければならない程に。
しかもクラレッサの霊力の底はまだ見えないのだ。


今の攻撃で倒せるはずがない。
それがブレンダンの評価だった。



そしてその通りであった。
白い爆煙が吹き飛ばされる。クラレッサの霊力放出によるものだった。

「・・・おじいさん」

煙を吹き飛ばし姿を見せるクラレッサ。
俯いているため表情は見えないが、小さな声でブレンダンを呼んだ。

ふらつきもせず、二本の脚でしっかり立っているが、ブレンダンの予想通りダメージは与えられていた。

深紅のローブは所々破れ、中から覗く細い腕からは赤い血が流れ、指先をつたい地面にしたたり落ちている。
白く長いの一部が赤く染まっているところをみると、頭も切っているようだ。



「・・・クラレッサ、どうじゃ?ここまでにせんか?お主の霊力はワシより上じゃ。じゃが、何十年も戦いに身を置いたワシとは経験値が違う。戦いの引き出しはワシが上じゃ。霊力だけではワシには勝てんぞ・・・怪我の手当をしよう。ワシと一緒に来るんじゃ」

戦闘意欲は無いと教えるために口調を戻し、いつもの優しくのんびりとした声色で話しかける。


「・・・おじいさん、痛い・・・痛い・・・痛い・・痛い・・・痛い・・・」

ブレンダンの言葉が聞こえているのか、いや、耳で聞こえていても頭には入っていない。
クラレッサは俯いたまま、痛い、と言う一つの言葉だけを口にし続ける。


「くっ・・・これは!?」

ダメージを受けても、衰えるどころか益々霊力を高めるクラレッサに、ブレンダも体に突き刺さってくるようなプレッシャー浴びせられ、一歩後ろに足を引いた。



「痛い・・・痛い・・・痛い・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・・痛い・・痛い・・・痛い・・・・・どうしてパパもママも私をいじめるのよーーーッツ!」


絶叫。
喉の奥から張り裂けんばかりの声を上げ、クラレッサは血まみれの顔を上げた。

クラレッサの右目にはめてある魔道具、御霊の目が額から流れる血に染まり、赤黒く鈍い光を放った。







なんじゃあれは!?
あれが悪霊の正体か!?とんでもない禍々しさじゃ・・・

王宮でクラレッサはワシに、御霊の目という魔道具を見せてきた。
その時に聞いた御霊の目の歴史は、どれも怨念のこもった恐ろしいものじゃったが、つまりこれがそれということなのか?

今、ワシの目に映る、クラレッサの体から蒸気のように放出されている、この赤黒い狂気と恐怖の波動・・・・・これが、御霊の目にこれまで込められた怨念の集合体なのか?

霊力を持たん者がこれの前に立ったならば、一瞬で死に至るじゃろう。

この娘・・・なぜ、これほどの力を持ちながら、皇帝に従っておる?
いや・・・逆じゃな。


なぜ皇帝は、このクラレッサを従える事ができる?


これまでの話しで、クラレッサが霊力に執着している事は分かった。
じゃが、皇帝は強大な魔力を持っておるが、あくまで黒魔法使い。霊力は無いはずじゃ。

それとも、ワシらが知らんだけで、霊力も使えるのか?

いや・・・その可能性は低い。
ここまで霊力の話しばかりするクラレッサの口から、皇帝の名が出てこん。
皇帝も霊力を使えるならば、一言くらい名前が出てもおかしくない。

・・・いずれにしても皇帝は、このクラレッサを動かす事ができる。
皇帝とクラレッサには何かあるんじゃ・・・・・




クラレッサの悪霊、その本性を目にし、ブレンダンの思考が奪われたのはほんの一瞬だった。

だが、その一瞬の間にクラレッサの悪霊はブレンダンに眼前に迫っていた。


「むっ!?」

クラレッサの身体から放たれる赤黒い波動、それがブレンダンに覆いかぶさるように頭上から襲い掛かる。

瞬時に魔空の枝で霊力の結界を張り防御するが、本性を現した悪霊はブレンダンの想像をはるかに超えた力を持っていた。


「な、んじゃとぉッ!?」


一瞬だった。

迫りくる悪霊を防ぐために張った結界は、ほんの一瞬だけ受け止めたかと思った次の瞬間、粉々に破壊されブレンダンを叩き潰した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

処理中です...