異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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466 ヴァンの挑発

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「ねぇアルベルト、彼女が噂のレイチェル・エリオットかい?」

腰まである長い紫色の髪を後ろで束ね、薄い桃色の唇から軽い調子で言葉をつむぎ、隣の男に話しかけるのは、フェリックス・ダラキアン。

切れ長の瞳に長いまつ毛。瞳の色も髪と同じ紫色だった。
少しシャープな顎のラインからは、まるで女性のような印象も窺える。

騎士という割には、かなりの小柄だった。おそらく身長は160cmにも満たない。
スピードを考えての事なのか、黄金の鎧は、肩、胸、肘から下、膝下、と部分的にしか付けられていなかった。
そしてクインズベリー国の色である、ダークブラウンのマント。


「フェリックスは初めて見るか?俺は王妃様に会いに来ているところを、何度か目にした事がある。この女がレイチェル・エリオットだ。あのバリオスの弟子で、おそらく一番信頼が厚い。今の戦いも見事だった。シルバーで五指に入るエリックを打ち破った実力はあなどれん。だが、結果程楽な勝利ではなかったようだがな」

短い銀色の髪を上に立て、同じく銀色の瞳で、一階のレイチェルを鋭い目で見下ろしている。
隣にのアルベルトに比べると長身に見えるが、おそらく180センチあるかないかというくらいだ。
短く整えた顎のヒゲを指で摘まむように撫でている。

小柄なアルベルトとは違い、全身に黄金の鎧をまとって、ダークブラウンのマントをつけている。


「そうなんだー。でもさ、このレイチェルは僕達と戦う資格はあると思うけど、治安部隊の二人はどうかな?」

アルベルトはレイチェルから視線を外すと、広間奥に目をやった。

そこではヴァンがシルバー騎士と、激しい戦いを繰り広げていた。




「ウオォォォォーーーッ!」

ヴァンの前蹴りがシルバー騎士の腹に入り、騎士は後ろに飛ばされ、背中から床に叩きつけられる。

そのまま騎士の腹の上に飛び乗ると、兜をもぎ取り、首を右のナイフで斬りつけようとするが、寸前で騎士に手首を掴まれて押し合いになる。

お互いに目を離さず、歯を食いしばりながら睨みあう。

腕力が拮抗していると悟ったヴァンは、左拳を騎士の顔面目掛けて打ち付けようとするが、これも騎士の右手で受け止められる。

力比べの状態になり、ヴァンは頭突きを考えた。だが外した場合体勢が崩れ、この状態から脱出されるのは間違いない事が予想され、頭突きは選択肢から外される。

そしてヴァンが選んだ手は、ナイフを手放す事だった。

「アッツ、ぐぁッツ!」

上から押しこむ形で騎士の首にナイフの刃を向けていたヴァンは、その手を離した。

自然とナイフは騎士の首に落下して、その刃で騎士の首を斬りつけた。
もちろん致命傷になる程に深い傷は与えられない。
しかし、自然落下であってもその刃は騎士の首を切り、痛みを与えるくらいの傷はつける事ができる。

全く予想外の方法、そして突然首に走った鋭い痛みに、ヴァンの右手首を握っていた騎士の左手が外れる。

掴まれていた右手が一瞬だが解放され、ヴァンはそのまま右拳を騎士の首に叩きこんだ。

骨を砕く感触が拳を通して伝わる。


「・・・ふぅ、これがシルバーか・・・結構手ごわかったぜ」

シルバー騎士は血反吐を吐き散らし、一目で絶命している事が分かる。
ヴァンは立ち上がると、自分のダメージを確認した。

治安部隊のアーマーを身に着けていたおかげで、シルバー騎士の剣撃はある程度防げたが、それでも何度か斬りつけられた。

頬の傷や、左の二の腕は浅い。右の脇腹を斬りつけられたが、出血もそこまでではないし、動けなくなる程ではない。

大丈夫だ。まだ戦える。

ヴァンはすでに戦い終えているレイチェルに目をやった後、二階から自分達を見下ろすゴールド騎士の二人を睨みつけた。



「アルベルト、彼がマルゴンの代わりの新隊長でしょ?確かヴァンって名前だよね?弱くない?ハッキリ言って、シルバーに苦戦してるようじゃ、僕達と戦う資格なんてないよ」

言葉だけ考えれば、フェリックスはヴァンを小馬鹿にしているようにしか思えない。
しかしフェリックスの困ったような表情、そして言葉のニュアンスからは、むしろヴァンを心配しているようにも聞こえた。

この程度の力で、本当にゴールド騎士の自分達と戦うのか?・・・と。


「・・・ヴァンと戦ったのは、イルンガ・カニサレスだな。シルバーの序列で言えば、上から7~8番目ってところか?今の戦いを見ても、ヴァンがそこそこ強いのは分かったが、フェリックスの言う通り、あの程度で俺達と戦うのは自殺行為だな。そして・・・」

アルベルトはヴァンから目を離すと、もう一人、シルバー騎士と戦っているフェンテスに目を向けた。



「フッ!」

対峙するシルバー騎士の上段斬り落としを、右のナイフで外へ弾く。
そのまま一歩踏み込み開いた体へ入ると、騎士の喉元へナイフを突き上げる。

だが、騎士も懐へ入られた時の対策はしていた。
右膝を立てフェンテスへ一撃を食らわせる。

「くっ!」

腹に膝を入れようと狙った一撃だったが、フェンテスは咄嗟に左腕を下ろし、騎士の一撃を受け止める。
そのまま後ろに一歩飛んで距離を空けようとするが、騎士はフェンテスが後ろに飛んだ分、前に飛んでフェンテスに肉薄する。

「ハァッツ!」

騎士は左肩からフェンテスの懐に入ると、そのまま肩でフェンテス顎をかち上げる。
これはダメージを狙ったものではない。

そう、これは次の一撃を確実に入れるための、フェンテスの防御を一瞬だけ開ける言わば繋ぎ。

「死ね!」

顎をかち上げられた衝撃で、フェンテスの体の力が一瞬抜けて、胴体ががら空きになる。

騎士は右手に握った剣を、フェンテスの腹を狙い振り抜いた。


「なっ!?」

しかし、次の瞬間目の前のフェンテスが消えて、なぜか天井からつるされているシャンデリアの眩しい光が目に差し込んで来た。

自分の体が浮かされたと気づくのに、一瞬の間があった。

フェンテスは顎をかち上げられた時、無理に体勢を戻そうとせずに、そのまま後ろに倒れるように足の力を抜いて重心を傾けた。
その結果、騎士の剣がフェンテスの腹を斬るよりも早く、フェンテスは床に倒れる事ができた。

そしてフェンテスはただ倒れたわけではない。
背中が床につく寸前でナイフを手放し、両手を床に付けて体を支えると、両手首を軸に体を捻り大きく回った。

ほんの一瞬の出来事だった。
フェンテスが回転し騎士の両足を払うと、足が地面から離れた騎士は、そのまま体が後ろに倒れる様に中に浮く。

騎士が自分の体が宙に浮かされたと気づいた時、フェンテスの蹴りがむき出しの騎士の頭を捉え、騎士の意識はそこで途切れた。




「あいつはフェンテスか。今は隊長補佐だったな。そして今戦ってたのは、マックス・ウスティノフ・・・シルバーでの序列は、ギリギリ10位というところか。勝ったと言ってもあのレベルではな・・・」

フェンテスを観察するように見ていたアルベルトは、落胆をあらわに息をついた。

「アルベルト、それはしかたないよ。結局治安部隊は、マルゴンがいなきゃ僕らに届くヤツがいないんだよ」

フェリックスもまた、紫色の髪を撫でながら、残念そうにため息をついた。

「よぉ、黙って聞いてりゃ好き勝手言ってくれんじゃねぇかよ?降りてこいよ。お前らに届かねぇかどうか、見せてやるよ」

二階を見上げ、ヴァンが二人のゴールド騎士を睨み付ける。

レイジェスでの打ち合わせの時、ヴァンはゴールド騎士が自分より強いと認めていた。
しかし、それでも戦いに勝てるかどうかは別だとも口にしていた。
勝算はあるのだ。


「・・・へぇ~、ヴァン、キミさぁ、僕達二人の力は知ってるのかな?他の三人と同レベルだと思ってる?だとしたら一瞬で終わっちゃうよ?」

それまでヴァンとフェンテスに対して、自分達と戦う事を同情するような目を向けていたフェリックスだったが、挑発的なヴァンの態度を受け、僅かだがその目に怒りの火が灯る。

「クックック、知ってるさ。他の三人はゴールドにはふさわしくない。いいとこシルバーの中堅どころじゃねぇのか?だが、お前達二人は別だ。お前達は本物のゴールド騎士だ・・・ほら、もういいだろ?降りてこいよ。口喧嘩したいのか?」

ヴァンはフェリックスを指差すと、その指をそのまま下に向けて下ろした。
口の端を上げる挑戦的なその表情に、にこやかで余裕を見せていたフェリックスの顔から笑みが消える。


「・・・いいよ。降りてあげる・・・」


冷たく低い声でそう答えると、フェリックスは手すりを飛び越えて一階へと降り立った。
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