異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
468 / 1,560

467 ヴァン 対 フェリックス

しおりを挟む
フェリックスは手すりを飛び越えて、ふわりと一階に着地した。

顔を上げてヴァンを見据えるその紫色の目には、静かな殺意が宿っている。

「・・・僕さぁ、弱い者いじめって嫌いなんだよね。でも、国賊のキミ達とは戦わなきゃならない。だからせめて、できるだけ苦しまないように殺してあげようと思ってたんだ・・・」

フェリックスは一歩だけヴァンに近づいた。

口元には笑みを携えているが、体中からヴァンを威圧する強烈な闘気を発している。


「・・・つぅ、こいつは・・・」

フェリックスの闘気を全身にぶつけられたヴァンは、たったそれだけで理解した。

目の前にいるのは女性のように、細く小柄な男だ。
だが、その細く小柄な男は、自分よりはるかに強いと・・・


「でも、あそこまで僕に大口をたたいたんだから、痛くても恨まないでよね?」


フェリックはヴァンに向けるように右手の平を前に出すと、その形の良い口を開いて呟くように言葉を発した。


「いくよ・・・幻想の剣」


突如フェリックスの手元に、まるで虹のように色とりどりで、淡く光る剣が現れた。

「なに!?」

あれがフェリックスの武器か!?
ヴァンがそれを目にした次の瞬間、フェリックスの一振りがヴァンの眼前に迫っていた。

「ッツ!」

ギリギリだった。
ヴァンの反射神経がかろうじて追いつき、頭から斬られるよりほんの一瞬・・・瞬(まばた)きほどの一瞬だけ早く、後ろへ飛ぶ事が間に合った。


「・・・ふ~ん、このくらいは躱せるんだ・・・」

フェリックスは意外そうに呟くと、ヴァンへの認識を改めたのか、口元の笑みが消えて目の色が変わった。



ヴァンは右手に持つナイフを順手に持ち、右半身を前にして構えていた。
その視線はフェリックスだけを真っ直ぐに捉えている。

いや、フェリックスから目を離す事ができないと言った方が正しいだろう。
一瞬でも隙を見せれば首を刎ねられる。その緊張感から、ヴァンの目はフェリックスに釘付けになっていた。

今の一撃は、かろうじて躱す事ができた。
だが、次もその次も、続けて躱しきれるか?
躱せると言い切れるほどあまい攻撃ではなかった。

そして、ヴァンはすでに気付いている。今の一撃もフェリックスは全く本気をだしていない。
様子見程度の一撃だったと・・・


・・・心臓の鼓動が早い。

それはたった今、フェリックスの一撃を躱した事による緊張からくるものだった。

そして、完全に躱しきれたわけではなかった。
額から流れて来る赤い流動体、そう血液である・・・フェリックスの剣は僅かにヴァンの額をかすめていた。

左目に入りそうになった血を左手の甲で拭うが、視線は決してフェリックスからは外さない。
しかしヴァンは、自分から攻撃をしかけても成すすべもなく倒されるジメージしか見えず、ただ待ちで構えている事しかできなかった。

フェリックスはそんなヴァンの様子を黙って眺めていたが、やがて残念そうに、溜息交じり言葉を発した。


「・・・なにかあると思ったんだけどなぁ、がっかりさせてくれるね。あの一撃でもう戦意喪失かい?じゃあ、もう終わらせていいよね?」

ひどくつまらなそうにそう話すフェリックスの目には、落胆の色が浮かび、さっきまでヴァンに対して少なからず見えた興味もすっかり消え失せていた。

フェリックが僅かに重心を下げて攻撃に移ろうとしたその時、ヴァンの横を駆け抜け、フェリックスに襲い掛かる影があった。


「ん!?」

フェリックスがヴァンから視線を移す。
そしてその視線は自分の腰の辺りにまで落とす事になる。

なぜならば、自分に向かってくるその男は、160cm足らずのフェリックスよりも、更に低く腰を落としていたからだ。

「フェンテス!なんのマネだ!?」

フェリックスは驚きに声を上げた。
なぜならば、フェンテスの狙いがまるで読めなかったからだ。

フェンテスがヴァンを助けに入る事は当然だろう。
だが、斬りかかって来るにしろ、どのような攻撃手段であっても、180cmはある長身のフェンテスが、160cmにも満たないフェリックスの腰にまで姿勢を落とし、向かってくるという事が理解できなかった。

まず、ここまで低い姿勢では頭の上を見る事ができない。
つまり、フェリックスがフェンテスの背中に向けて剣を振り下ろしても、それを見る事ができないという事だ。見る事が出来なければ避ける事は不可能。つまり死ぬしかない。

フェリックスが、なんのマネだ!?と声を出す事も、無理のない事だった。

しかし圧倒的に実力差のある、フェリックスに向かうフェンテスの心には、一切の迷いが無かった。

なぜならば、フェンテスは信じていた。
これだけ低い姿勢で突っ込めば、それだけでヴァンに伝わるはずだと信じていたからだ。


そう、それはフェンテスとヴァンの二人があみ出した技・・・・・


「無謀だね!ただの特攻かい!?だったら死ぬしかないよ!」

ナイフの射程に入り、フェンテスが右のナイフを逆手に持ち、フェリックスの右太腿に狙いを付ける。

剣より短いナイフの射程内という事は、当然フェリックスの剣の射程内という事でもある。
無防備にさらけ出しているフェンテスの背中に、虹色に淡く光るフェリックスの幻想の剣が振り下ろされた。


「・・・なっ!?」

幻想の剣がフェンテスの背中を斬るより早く、ヴァンの飛び蹴りがフェリックスの顔に迫り、フェリックスは咄嗟に一歩後ろに飛び退いた。

「ッツ!」

だが、飛び退いたと同時に、フェリックスは右腿に走った鋭い痛みに顔をしかめた。

目を向けて痛みの正体を確認する。
右腿は一の字に斬られ、そこから流れる血がフェリックスの足を赤く染めている。

「・・・僕が、斬られた・・・だと」


信じられないものを見る様に、フェリックスは目を大きく開いて、自分の右脚をじっと見つめた。


「さすがです、隊長」

「へっ、待ってたぜフェンテス。俺は上をやる、お前は下だ」

ヴァンはフェンテスの一歩後ろに立つと、右手のナイフを順手持ち構えた。

「了解しました。見せてやりましょう、俺達の二人掛けを!」

フェンテスは腰を落とすと、フェリックスの足に焦点を定めた。


それはフェンテスとカリウスの二人が、協会でマルコス・ゴンサレスに使った二人技だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...