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468 奥の手
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フェリックス・ダラキアンは、その線の細い体と、女性のような風貌から、騎士にはなれないと言われながら育った。
女性の騎士がいないわけではない。
だが、圧倒的に男性が多く、女性の騎士も体格に恵まれた者が多かった。
騎士の装備が、プレートメイルでなければならないという決まりはない。
だが、標準装備がプレートメイルである以上、それを着て動ける事を前提とした人間が採用される。
いかにブロンズ騎士にはステータスだけのお飾りが多いと言っても、最低限の体力だけは備わっているのだ。
フェリックス・ダラキアンは体力型でありながら、筋力が不足していた。
おかしな表現だが、そう言うしか言葉がなかった。
魔法使いと間違えられる程に、体力が低いが魔法は使えない。
体力型ではあるが、魔法使い並みの筋力しかない。
フェリックスが騎士となる事は絶望的だった。
フェリックスが10歳になったある日、代々有力な騎士を輩出して栄えてきたダラキアン家は、フェリックスを見限った。
フェリックスには二人の兄がいた。
どちらもすでに騎士団に入っている。まだブロンズだが、他のブロンズ達とは違い真面目に訓練に取り組み、着々と実力を付けて来ていた。
フェリックスの父はゴールド騎士にはなれなかったが、シルバー騎士の上位に入る実力者であり、自分がなれなかったゴールドの夢を息子達に託していた。
だが、その夢からフェリックスが外された。その日からフェリックスを見る父の目が変わった。
「なんだこれは!?」
執拗に足を狙いナイフを振るうフェンテス。
そのフェンテスに目を向け、剣を振るおうとするとヴァンがカバーに入る。
顔や胸、上半身を狙うヴァンのナイフや蹴りを防ぐと、フェンテスに足を斬られる。
個人の能力は圧倒的にフェリックスが上回っている。
しかしヴァンとフェンテスのコンビネーションは、個の実力差を埋める程のものだった。
いける!
ヴァンは確かな手ごたえを感じていた。
決定的な一撃を与える事はできていないが、二人の攻撃は確実にフェリックスを削っている。
・・・確かにてめぇは俺よりはるかに強い。
だがな、力が強ければ勝てる、相手より速ければ勝てる、そうじゃねぇんだよ。
対応力だ。相手の技、変化する場の状況、戦いに勝つ事に必要なものは対応力だ。
俺とフェンテスの二人掛けに、このまま対応できねぇんならてめぇの負けだ!
このまま押し切ってやる!
フェンテスもまた、ヴァンと同様に勝ち筋を掴んでいた。
以前マルコスと戦った時にカリウスとも合わせたが、その時よりも段違いに呼吸が合った。
次にヴァンがどう合わせてくるか、自分がどう動く事がヴァンにとって最良か、考えなくても体が反応して勝手に動いていた。
・・・面倒だ。
フェリックスはその鋭い反応速度で、ヴァンとフェンテスの連携攻撃を躱していたが、息つく間も見せずに繰り出される技の数々に、受けに回らざるをえなかった。
この二人、個人の力はせいぜいシルバー騎士の上位5人と同等ってところだ。
ゴールドの僕には遠く及ばない。
けれど工夫がある。
この二人の連携には、大きな力の差を埋める程の積み重ねがある。
ゴールド騎士の僕に傷を負わせる程の・・・・・
実に・・・面倒だ・・・・・
「オォォォーッツ!」
ヴァンの左拳がフェリックスの顔目掛けて繰り出される。
「もう、慣れたよ」
ヴァンの拳は空を切った。
フェリックスは紙一重で顔を下げてヴァンの左拳を交わすと、そのまま自分の右腿を狙い、ナイフを突き立てようとするフェンテスの攻撃も足を下げて躱した。
「これだけ見せられたら、お前達の動きの癖は分かったからね」
フェリックスは冷たい目をフェンテスに向けると、右手に持つ幻想の剣をフェンテスの首に向けて振るった。
「スイッチ!」
フェリックスの剣がフェンテスに振るわれた瞬間、フェンテスは低い体勢のまま飛び上がった。
「なに!?」
このタイミングで躱される事など、まるで予想もしなかったフェリックスの剣は空を切った。
飛び上がったフェンテスを目で追おうとすると、入れ替わるかのようにヴァンがフェリックスの前に立ち、幻想の剣を持つその右手を押さえた。
「なに!?」
「よし!」
ヴァンはこの瞬間を待っていた。
いかに自分達が連携を駆使しても、戦闘力に圧倒的に差があるフェリックスにはいずれ破られるだろう。
だが、その破られた瞬間が、ヴァンとフェンテスの勝ち筋でもあった。
お互いの役割を入れ替えるスイッチ。
それまで下半身への攻撃を担っていたフェンテスが飛び退き、カバーと上半身への攻撃を引き受けていたヴァンが入る。
そこで一瞬でもフェリックスを動揺させる事ができれば、武器を押さえ止める事ができる。
思惑通りにヴァンの作戦がハマリ、フェリックスの動きを止める事ができた。
そして飛び上がったフェンテスが、ナイフを振りかざし降りてくる。
このままフェンテスがフェリックスの頭にナイフを突き刺せば決着。
ほんの一瞬の後に決着だった。
だが、ヴァンは知る事になる。
ゴールド騎士は選ばれた一握りの者しかなる事ができない。
騎士の頂点ゴールド。
フェリックス・ダラキアンは紛れもなく本物だと。
「ガハァァッッツ!」
なにが起きたのか分からなかった。
意識を刈り取られそうになる程の凄まじい衝撃が全身を駆け巡る。
そのまま前のめりに倒れると、冷たい床の感触を頬で感じる。
頭と背中にパラパラと石の欠片が落ちて来て、それでようやく自分が壁に叩きつけられたのだと理解する。
・・・・・なんだ?
・・・・・いったい俺は、なにをされた?
まるで見えなかった。
ただ、あの一瞬・・・フェリックスの右手に握られていた幻想の剣が、左手に握られていた。
そこから先はなにが起きたか分からなかった。
だが、おそらく俺は、フェリックスの幻想の剣の一振りで、ここまで斬り飛ばされたのだろう。
「・・・ぐ、うぅ・・・」
頭の後ろから聞こえるうめき声に、フェンテスも俺と同じく壁までフッ飛ばされ、床に這いつくばらされたのだと知る。
「治安部隊のアーマーって、けっこう頑丈なんだね?幻想の剣の一撃を耐えるなんて、ちょっと驚いたよ」
すでに俺達には戦う力は残っていないと確信しているのか、フェリックスは緊張感のない声で話しながら、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。
「・・・最後に種あかしをしてあげよう。僕の幻想の剣は、手元から出す事も消す事も自由自在なんだ。ヴァン、キミは僕の右手を抑えて剣を封じたと思ったようだけど、右手に持った剣を消して、左手で出しただけの事さ」
フェリックスは俺の前で足を止めると、両手で剣を出しては消して見せた。
肘と膝を付き、なんとか体を起こそうとする俺の顔の前に、フェリックスは幻想の剣を突きつけると、死を告げる言葉を発した。
「・・・じゃあね」
フェリックスは顔の高さまで幻想の剣を振り上げると、俺の首を狙い振り下ろした。
・・・待ってたぜ・・・てめぇの警戒が緩むこの瞬間を・・・
戦う力が残ってないと思えば、防御への意識はどうしても薄くなる。
俺とフェンテスの二人掛けが全てだと思い、のこのこ近づいた事が・・・・・
「てめぇの敗因だァァァァァッツ!」
ナイフを振り上げてフェリックスの幻想の剣を受け止める。
その瞬間俺のナイフは、耳が痛くなるような、まるで金属を打ち鳴らした音を響かせ、フェリックスを弾き飛ばした。
「が!ハァッ!・・・な、なんだと!?」
かろうじて背中から倒れる事はなかったが、フェリックスは片膝を着き、左手で胸を押さえていた。
左肩から右の脇腹へかけて、袈裟懸けに斬られたかのような傷がついていて、その深さを表すかのように、赤い血が流れ出ている。
「お、お前・・・なにを、した?」
ヴァンを見るフェリックスの目に、明らかな困惑の色が浮かぶ。
息を切らし額に浮かぶ汗が、フェリックスのダメージを物語る。
俺は震える足を叩き無理やり立たせる。
膝を着くフェリックスを見下ろす形で、俺は右手に持つナイフを見せた。
「はぁ・・・はぁ・・・種あかしを、してやるよ。俺のナイフは、攻撃を反射してぶつける事ができる。てめぇの剣を止めて、てめぇの攻撃をそっくり返してやったんだよ」
「・・・やってくれたな」
立ち上がったフェリックスの持つ幻想の剣から、虹色の淡い光がこれまでより強い輝きを放った。
女性の騎士がいないわけではない。
だが、圧倒的に男性が多く、女性の騎士も体格に恵まれた者が多かった。
騎士の装備が、プレートメイルでなければならないという決まりはない。
だが、標準装備がプレートメイルである以上、それを着て動ける事を前提とした人間が採用される。
いかにブロンズ騎士にはステータスだけのお飾りが多いと言っても、最低限の体力だけは備わっているのだ。
フェリックス・ダラキアンは体力型でありながら、筋力が不足していた。
おかしな表現だが、そう言うしか言葉がなかった。
魔法使いと間違えられる程に、体力が低いが魔法は使えない。
体力型ではあるが、魔法使い並みの筋力しかない。
フェリックスが騎士となる事は絶望的だった。
フェリックスが10歳になったある日、代々有力な騎士を輩出して栄えてきたダラキアン家は、フェリックスを見限った。
フェリックスには二人の兄がいた。
どちらもすでに騎士団に入っている。まだブロンズだが、他のブロンズ達とは違い真面目に訓練に取り組み、着々と実力を付けて来ていた。
フェリックスの父はゴールド騎士にはなれなかったが、シルバー騎士の上位に入る実力者であり、自分がなれなかったゴールドの夢を息子達に託していた。
だが、その夢からフェリックスが外された。その日からフェリックスを見る父の目が変わった。
「なんだこれは!?」
執拗に足を狙いナイフを振るうフェンテス。
そのフェンテスに目を向け、剣を振るおうとするとヴァンがカバーに入る。
顔や胸、上半身を狙うヴァンのナイフや蹴りを防ぐと、フェンテスに足を斬られる。
個人の能力は圧倒的にフェリックスが上回っている。
しかしヴァンとフェンテスのコンビネーションは、個の実力差を埋める程のものだった。
いける!
ヴァンは確かな手ごたえを感じていた。
決定的な一撃を与える事はできていないが、二人の攻撃は確実にフェリックスを削っている。
・・・確かにてめぇは俺よりはるかに強い。
だがな、力が強ければ勝てる、相手より速ければ勝てる、そうじゃねぇんだよ。
対応力だ。相手の技、変化する場の状況、戦いに勝つ事に必要なものは対応力だ。
俺とフェンテスの二人掛けに、このまま対応できねぇんならてめぇの負けだ!
このまま押し切ってやる!
フェンテスもまた、ヴァンと同様に勝ち筋を掴んでいた。
以前マルコスと戦った時にカリウスとも合わせたが、その時よりも段違いに呼吸が合った。
次にヴァンがどう合わせてくるか、自分がどう動く事がヴァンにとって最良か、考えなくても体が反応して勝手に動いていた。
・・・面倒だ。
フェリックスはその鋭い反応速度で、ヴァンとフェンテスの連携攻撃を躱していたが、息つく間も見せずに繰り出される技の数々に、受けに回らざるをえなかった。
この二人、個人の力はせいぜいシルバー騎士の上位5人と同等ってところだ。
ゴールドの僕には遠く及ばない。
けれど工夫がある。
この二人の連携には、大きな力の差を埋める程の積み重ねがある。
ゴールド騎士の僕に傷を負わせる程の・・・・・
実に・・・面倒だ・・・・・
「オォォォーッツ!」
ヴァンの左拳がフェリックスの顔目掛けて繰り出される。
「もう、慣れたよ」
ヴァンの拳は空を切った。
フェリックスは紙一重で顔を下げてヴァンの左拳を交わすと、そのまま自分の右腿を狙い、ナイフを突き立てようとするフェンテスの攻撃も足を下げて躱した。
「これだけ見せられたら、お前達の動きの癖は分かったからね」
フェリックスは冷たい目をフェンテスに向けると、右手に持つ幻想の剣をフェンテスの首に向けて振るった。
「スイッチ!」
フェリックスの剣がフェンテスに振るわれた瞬間、フェンテスは低い体勢のまま飛び上がった。
「なに!?」
このタイミングで躱される事など、まるで予想もしなかったフェリックスの剣は空を切った。
飛び上がったフェンテスを目で追おうとすると、入れ替わるかのようにヴァンがフェリックスの前に立ち、幻想の剣を持つその右手を押さえた。
「なに!?」
「よし!」
ヴァンはこの瞬間を待っていた。
いかに自分達が連携を駆使しても、戦闘力に圧倒的に差があるフェリックスにはいずれ破られるだろう。
だが、その破られた瞬間が、ヴァンとフェンテスの勝ち筋でもあった。
お互いの役割を入れ替えるスイッチ。
それまで下半身への攻撃を担っていたフェンテスが飛び退き、カバーと上半身への攻撃を引き受けていたヴァンが入る。
そこで一瞬でもフェリックスを動揺させる事ができれば、武器を押さえ止める事ができる。
思惑通りにヴァンの作戦がハマリ、フェリックスの動きを止める事ができた。
そして飛び上がったフェンテスが、ナイフを振りかざし降りてくる。
このままフェンテスがフェリックスの頭にナイフを突き刺せば決着。
ほんの一瞬の後に決着だった。
だが、ヴァンは知る事になる。
ゴールド騎士は選ばれた一握りの者しかなる事ができない。
騎士の頂点ゴールド。
フェリックス・ダラキアンは紛れもなく本物だと。
「ガハァァッッツ!」
なにが起きたのか分からなかった。
意識を刈り取られそうになる程の凄まじい衝撃が全身を駆け巡る。
そのまま前のめりに倒れると、冷たい床の感触を頬で感じる。
頭と背中にパラパラと石の欠片が落ちて来て、それでようやく自分が壁に叩きつけられたのだと理解する。
・・・・・なんだ?
・・・・・いったい俺は、なにをされた?
まるで見えなかった。
ただ、あの一瞬・・・フェリックスの右手に握られていた幻想の剣が、左手に握られていた。
そこから先はなにが起きたか分からなかった。
だが、おそらく俺は、フェリックスの幻想の剣の一振りで、ここまで斬り飛ばされたのだろう。
「・・・ぐ、うぅ・・・」
頭の後ろから聞こえるうめき声に、フェンテスも俺と同じく壁までフッ飛ばされ、床に這いつくばらされたのだと知る。
「治安部隊のアーマーって、けっこう頑丈なんだね?幻想の剣の一撃を耐えるなんて、ちょっと驚いたよ」
すでに俺達には戦う力は残っていないと確信しているのか、フェリックスは緊張感のない声で話しながら、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。
「・・・最後に種あかしをしてあげよう。僕の幻想の剣は、手元から出す事も消す事も自由自在なんだ。ヴァン、キミは僕の右手を抑えて剣を封じたと思ったようだけど、右手に持った剣を消して、左手で出しただけの事さ」
フェリックスは俺の前で足を止めると、両手で剣を出しては消して見せた。
肘と膝を付き、なんとか体を起こそうとする俺の顔の前に、フェリックスは幻想の剣を突きつけると、死を告げる言葉を発した。
「・・・じゃあね」
フェリックスは顔の高さまで幻想の剣を振り上げると、俺の首を狙い振り下ろした。
・・・待ってたぜ・・・てめぇの警戒が緩むこの瞬間を・・・
戦う力が残ってないと思えば、防御への意識はどうしても薄くなる。
俺とフェンテスの二人掛けが全てだと思い、のこのこ近づいた事が・・・・・
「てめぇの敗因だァァァァァッツ!」
ナイフを振り上げてフェリックスの幻想の剣を受け止める。
その瞬間俺のナイフは、耳が痛くなるような、まるで金属を打ち鳴らした音を響かせ、フェリックスを弾き飛ばした。
「が!ハァッ!・・・な、なんだと!?」
かろうじて背中から倒れる事はなかったが、フェリックスは片膝を着き、左手で胸を押さえていた。
左肩から右の脇腹へかけて、袈裟懸けに斬られたかのような傷がついていて、その深さを表すかのように、赤い血が流れ出ている。
「お、お前・・・なにを、した?」
ヴァンを見るフェリックスの目に、明らかな困惑の色が浮かぶ。
息を切らし額に浮かぶ汗が、フェリックスのダメージを物語る。
俺は震える足を叩き無理やり立たせる。
膝を着くフェリックスを見下ろす形で、俺は右手に持つナイフを見せた。
「はぁ・・・はぁ・・・種あかしを、してやるよ。俺のナイフは、攻撃を反射してぶつける事ができる。てめぇの剣を止めて、てめぇの攻撃をそっくり返してやったんだよ」
「・・・やってくれたな」
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