異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
491 / 1,560

490 闇の手

しおりを挟む
「しまっ・・・!」

アラタが気が付いた時にはもう遅かった。
いかに魔力が高くてもエリザベートは白魔法使い。この闇の瘴気に対抗するすべは持っていない。
アラタは光の力で盾となり、エリザベートの前に立っていた。
しかし、そのエリザベートがアラタの前に出てくれば、その身を護る物は何も無い。

結果、エリザベートは一瞬にして国王の闇の瘴気に捕らわれる事になる。

「きゃぁぁぁぁぁーッ!」

「エリザ様!」

まるで巨大な触手のように、国王の体から伸びた闇の瘴気は、エリザベートの体を巻き取るように掴むと、空中へ持ち上げて自分の隣へと引き寄せた。

「フハハハハハ、エリザベートよ、感情に流されて迂闊にこの部屋に入るとは、まだまだ子供だな。この闇を見ればいかに危険か分かるものだろうが」

瘴気で掴んだままアンリエールの隣に持って来ると、国王はエリザベートに顔を向けて、呆れたように笑い肩をすくめた。

「ぐっ!お、お母様に、な、何をした!?」

苦し気な表情で国王を睨みつけるエリザベート。
国王はエリザベートに右手の平を向けると、その手を少しだけ握るようにして見せた。

「ぐぅッツ!あぁぁぁぁーッツ!」

エリザベートを捉えている闇が、国王の手の動きに合わせて締まり、エリザベートは体を締め上げられる痛みに、金色の長い髪を振り乱し悲鳴を上げた。

「父親に向かって何という口の利き方だ。嘆かわしい。やはりお前も粛清せねばならんなぁ・・・どれ、このまま握り潰してやろうか?」

「やめろーーーッツ!」

声を上げて飛び出したアラタに、国王は余裕すら感じさせる笑みを浮かべて顔を向けた。

「フッ、やっと入って来たか。この時点で貴様の負けだ」

左手に光を集中させ、国王の顔に左ストレートを放った瞬間、アラタの体が弾き飛ばされた。

全力疾走で突っ込んだアラタは、突然目の前が暗くなったと思った次の瞬間、顔に強い衝撃を受けて空中に打ち上げられたのだ。

「ッ!ぐっ・・・な、んだ?」

体を捻り、右手を付いて着地する。
鼻から粘着性のある液体が流れ出る事を感じて、左の袖で拭う。
ボクシングの試合で鼻血は何度も流した事があるし、顔への攻撃も慣れていた。
だが今、自分がなにをされたのかは全く見えなかった。

「ふん、その拳・・・謁見の時にも見たが確かに凄まじい力だ。油断していたとはいえ、トレバーを一方的に倒すだけの事はある。だが、どれだけ強い力も届かなければ意味はない。この闇を抜けて俺に当てる事ができるかな?」

部屋全体を覆う闇の瘴気。
そして国王の体からはその身を護るように、瘴気が触手のようにうねりながら、いくつもの数を伸ばしている。

「くっ・・・」

あの触手のような闇の瘴気に弾かれたのか?
くらった感じはまるで石のように固かった。トレバーの体もタイヤのように反発力があったし、あの闇は強度を変えられるって事か?霧のように不安定に霞んで見えるが、見た目に騙されるなって事だな。

先制攻撃に対してカウンターを受けたが、アラタの頭は冷えていた。
それはこれまでのボクシングの経験、そしてマルコス・ゴンサレスとの戦いによる影響が大きかった。

アラタが光を纏い、ここまでかかった時間はおよそ30秒、時間は着々と過ぎている。
しかし、慌てて我を忘れては、勝てるものも勝てなくなる。見える勝機も見失ってしまう。

まだ時間はある・・・・・ここからだ。

アラタの目に宿る挑戦的な光を、国王もまた見て取った。

「・・・ほぅ、さすがここまで来ただけの事はある。この闇を見ても些かも気力が衰えていない。では、続けようか」

そう言い終えるなり、国王の体から伸びるいくつもの闇の触手がアラタへと襲い掛かってきた!

先が槍のように鋭い!瘴気と思って受ければ体を貫かれる!
アラタは両手に光を集中させ、頭と胸を狙った二本を弾き飛ばすと、そのまま国王に向かい駆けだした。

「ほう、やはり攻撃力はあるな。だが、残りはどう捌く?」

触手は二本だけではない。
頭上から、足元から、そして正面から、あらゆる角度から一斉に闇の触手が迫りくる!

「フッ!」

アラタは短く息を吐き出すと、足に力を入れ前へと加速した。
頭上からの触手を置き去りにし、足元を狙う触手を飛んで躱し、正面から胸を刺し貫こうと迫る触手を、腰を捻りスレスレで躱して突っ込んで行く。

「ほぅ、その身のこなし、さすがマルコスを倒しただけはある。だがな、やはりお前はこの部屋に入った時点で終わっているのだよ」

いくつもの闇の触手を躱し、今度こそアラタの拳が国王の顔を捉えたと思ったその時、突然アラタの体が強い力でその動きを封じられた。

「ぐっ!?な、なんだ!?」

両手、両足、胴体、首、その体の全てを締め上げるように掴むそれは闇の瘴気。

「俺の体から直接放った闇しか見ていない。それがお前の敗因だ。この部屋の闇はどこからきている?全て俺が出した瘴気だぞ?今ここに充満している闇は全て俺の意のままという事だ。ゆえにこの部屋に入った時点で、お前はもう積んでいたのだよ」

いまだ国王はイスに座ったまま、尊大な態度でアラタに右手の平を向けた。
エリザベートにしたように、その手を握るなりすれば、闇の瘴気が骨を砕き肉を潰し、アラタへ甚大なダメージを与えるだろう。

「死ね」

短くそう言葉にすると、国王は開いたその手を、まるで潰すように握り締めた。
エリザベートの時は、少し絞めるように半分程手を握っただけだった。それで悲鳴を上げる程の苦痛を味わったエリザベートを考えれば、今回は明らかに殺してにきていたと言える。

「ぐぅぅッ!」

自分を握り潰そうとしてくる闇の瘴気に、体中の骨が悲鳴を上げ、思わずうめき声が漏れる。
だが、アラタは自分を強く締め付ける闇の触手に、確かにダメージを受けていたが、意識を失う程ではなかった。それは一重に全身に纏う光の力のおかげと言える。

「・・・ほぅ、これに耐えるか?その光、俺の闇を手にあらがうとは大したものだ。だが、その力、無限ではあるまい?いつまでもつかな?」

予想外の防御力に関心と驚きの言葉を出すが、国王は自分の圧倒的優位な立場を理解しており、優雅とも言えるゆっくりとした動作で、左手に闇の瘴気を集めアラタへと向けた。

「トレバーの波動と一緒に考えるなよ?その光で俺の闇に耐えきれるか試してみるといい」

「くそッツ!」

この時、まだアラタに余力はあった。
国王から向けられる闇の力を見て、このまま受ければただではすまないと感じる、
だが、残りの光の力を爆発させれば、この闇の拘束を消し飛ばし、そのまま攻撃に転じる事はできる。
しかしそれは、残り2分程の活動時間をさらに大幅に減らし、その攻撃で仕留める事ができなければアラタの負け、すなわち死である。


・・・だめだ、このままじゃ死ぬ!やるしかない!

今まさに国王の手から闇の波動が撃たれそうになったその時、アラタが覚悟を決めて残りの力を爆発させようとしたその時、国王の寝室の奥の部屋の扉が開いた。


「父様!もう止めてください!」

真ん中から左右に分け、顎まで伸びた金色の髪。意志の強そうな目に端正な顔立ちは、どことなくエリザベートに似ている。

第一王子マルス・アレクサンダーが、剣を持ちその姿を見せた。

「お、にぃ、さま・・・」

闇に絞められ、息も絶え絶えの苦し気な声を出し、エリザベートはマルスへ目を向けた。

「・・・マルスか、部屋で待ってろと言ったではないか?」

前を向いたまま、ゆっくりとした口調で話す国王に、マルスは剣を向けた。

「これ以上の暴挙は見過ごせません!母様とエリザベートを離してください!」

自分に向けて明確な敵意を放つをマルスに、国王はゆっくりと振り返った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...