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539 人に会う理由
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その日俺達は、青の船団のプレートのある宿に泊まった。
レフェリの宿で食べた食事も美味しかったが、この宿の食事は更に格別だった。魚の鮮度が違う。
水揚げされてすぐなのだろう。さすが首都だ。
「シャノン・アラルコン?もちろん知ってるわ。アラルコン商会のお嬢様よ。知り合いなの?」
食事をとりながら俺はリンジーさんに、以前出会ったロンズデールの行商人、シャノン・アラルコンについて尋ねてみた。
どの反応を見るからに、ロンズデールでは相当な有名人のようだ。
そして、これは薄々感づいていた事だが、やはりアラルコン商会の人間だった。
ジャレットさんから聞いた200年前の戦争の歴史で、弥生さん達と懇意にして、リサイクルショップ・レイジェスを立ち上げる事にも協力した、レオネラ・アラルコン。
きっとシャノンは、彼女の血を引いているのだろう。
「そっか・・・やっぱりなぁ」
そう呟く俺を、リンジーさんは不思議そう首を傾げて見ている。
「前に、クインズベリーに行商に来てた彼女の店で買い物をして、ちょっと話しただけなんです。でも、その時に水色の布袋をもらって、これがあればいつでも自分に会えるって言われて・・・それでちょっと気になって。まぁ、今回は急な事だったんで、その布袋は家に置いてあるんですが」
「水色の布袋・・・船の刺繍のある布袋よね?・・・すごいわ。それって青の船団の特別会員証よ。幹部以上の人が持ってるんだけど、一部の上客にだけ渡してるの。それがあれば青の船団のどの店でも優遇が受けられるし、品薄の商品の予約だってとれるのよ。それを船団のお嬢様からもらえるなんて、きっと気に入られたのね」
感心したように話すリンジーさん。
どうやらずいぶんすごい物をもらってしまったようだ。VIPというヤツだろうか?
今持ってきていたら、例えばこの宿の夕食が一品増えたりしたのだろうか?
なにかのお守りみたいだなと思って、あんまり気に留めていなかったけど、そう聞くと持ってきていない事が少し悔やまれる。
「見せてもらいたかったけど、しかたないわね。新婚旅行の時には忘れず持って来るのよ?」
「あはは、覚えてたんですね?ロンズデールに決まったら、ちゃんと忘れず持ってきます」
レイチェルに言われてから、リンジーさんはすっかり砕けた口調で話すようになった。
「あ・・・あの、その・・・」
それまで黙って食べていたファビアナさんが、おずおずという感じで、そっと右手を挙げた。
彼女が話すと、全員の視線が一斉に集中する。
やはり極端に口数が少ない人が突然話すと、注目を集めるのはしかたないのだろう。
「ん、どうしたお嬢ちゃん?」
ビリージョーさんが軽い調子で話しかけると、ファビアナさんはチラリと目を向けて、ローブの中に手を入れた。
「・・・その、私・・・・・持ってます」
スっとローブから出した小さな手の平には、見覚えのある水色の布袋があった。
「・・・えぇ!?ファ、ファビアナ、あなたどうして?」
俺とレイチェル、ビリージョーさんも少し驚いたが、リンジーさんの一際大きいリアクションを見ると、この布袋の価値がよく分かる。
「えっと・・・その・・・わ、私のよく行く、ま、魔道具店で・・・その、も、貰いました」
「・・・つまり、そのお店の経営者が、青の船団の幹部だったわけね?ファビアナったら、全然教えてくれないんだから、びっくりしたわ」
リンジーさんが驚き交じりの言葉を出すと、ファビアナさんは目を落とし、勇気を振り絞るようにして声を出した。
「わ、私と一緒なら・・・あ、会えます、よ・・・シャノンさんに」
部屋は、俺とビリージョーさん、女性三人の二部屋に分かれた。
レイチェルもリンジーさんに対しての警戒を解いたようで、すっかり友達のようにふるまっている。
「それで、どうするんだ?シャノンって人に会うのか?」
両手を頭の後ろで組み、ベッドに寝ころんでいるビリージョーさんが、天井を見たまま話しかけて来た。
「・・・・・いえ、やめておきます。ロンズデールに来たんだし、どうしようかなって思ったけど・・・今回は任務で来ているんだから、それに集中したいと思います」
「お前、真面目だな。せっかくここまで来たんだし、ちょっと知り合いに会うくらい別にいいんじゃねぇのか?」
片眉を上げて、俺を見るビリージョーさん。
確かに挨拶程度に会うのは問題ないだろう。だけど・・・
「・・・いえ、やっぱりやめておきます。あの時買った海の宝石、カチュアがいつも付けてて、嬉しそうにしてるんです。だからあらためてお礼を言いたかったけど、なんカチュアと一緒でないとって言うか・・・」
「・・・ん~?アラタ君、お前何を言ってんだ?人に会うのに、いちいちそんな難しく考えてんの?今俺に言った事を、そのまま伝えりゃいいだけだろ?なんでカチュアと一緒じゃないと会えないわけ?今回、任務が終わってクインズベリーに帰ったら、次いつ来れるか分からないだろ?会いたい人が会える場所にいるなら会っておきな」
ビリージョーさんは体を起こし俺にそう話した。
呆れたような口調で、けれどその表情は真剣そのものだった。
まるで自分自身に言い聞かせるように。
「えっと・・・」
突然雰囲気の変わったビリージョーさんに、俺が何も言えず黙っていると、ビリージョーさんはまたベッドに寝そべって俺に背を向けた。
「まぁ、決めるのはアラタ君だけどよ。任務中だからって、ちょっと人に会う時間くらいは作ってもいいだろ?もうちょっと楽に考えたらどうだ?」
俺は寝るぞ。ビリージョーさんはそう言ってそれきり黙ると、やがて寝息が聞こえて来た。
俺は発光石に蓋をして部屋を暗くすると、ベッドに横になった。
ビリージョーさんの言う通りだな。
俺はいつも難しく考えすぎる。分かってるけど、なかなか治らない。
明日、ファビアナさんに頼んでみよう。
彼女が一緒なら、布袋を使ってシャノンさんに会えるだろう。
「・・・なんだか、ジャレットさんが一緒みたいだ」
寝ているビリージョーさんを見て、俺は少しだけ苦笑いを浮かべた。
レフェリの宿で食べた食事も美味しかったが、この宿の食事は更に格別だった。魚の鮮度が違う。
水揚げされてすぐなのだろう。さすが首都だ。
「シャノン・アラルコン?もちろん知ってるわ。アラルコン商会のお嬢様よ。知り合いなの?」
食事をとりながら俺はリンジーさんに、以前出会ったロンズデールの行商人、シャノン・アラルコンについて尋ねてみた。
どの反応を見るからに、ロンズデールでは相当な有名人のようだ。
そして、これは薄々感づいていた事だが、やはりアラルコン商会の人間だった。
ジャレットさんから聞いた200年前の戦争の歴史で、弥生さん達と懇意にして、リサイクルショップ・レイジェスを立ち上げる事にも協力した、レオネラ・アラルコン。
きっとシャノンは、彼女の血を引いているのだろう。
「そっか・・・やっぱりなぁ」
そう呟く俺を、リンジーさんは不思議そう首を傾げて見ている。
「前に、クインズベリーに行商に来てた彼女の店で買い物をして、ちょっと話しただけなんです。でも、その時に水色の布袋をもらって、これがあればいつでも自分に会えるって言われて・・・それでちょっと気になって。まぁ、今回は急な事だったんで、その布袋は家に置いてあるんですが」
「水色の布袋・・・船の刺繍のある布袋よね?・・・すごいわ。それって青の船団の特別会員証よ。幹部以上の人が持ってるんだけど、一部の上客にだけ渡してるの。それがあれば青の船団のどの店でも優遇が受けられるし、品薄の商品の予約だってとれるのよ。それを船団のお嬢様からもらえるなんて、きっと気に入られたのね」
感心したように話すリンジーさん。
どうやらずいぶんすごい物をもらってしまったようだ。VIPというヤツだろうか?
今持ってきていたら、例えばこの宿の夕食が一品増えたりしたのだろうか?
なにかのお守りみたいだなと思って、あんまり気に留めていなかったけど、そう聞くと持ってきていない事が少し悔やまれる。
「見せてもらいたかったけど、しかたないわね。新婚旅行の時には忘れず持って来るのよ?」
「あはは、覚えてたんですね?ロンズデールに決まったら、ちゃんと忘れず持ってきます」
レイチェルに言われてから、リンジーさんはすっかり砕けた口調で話すようになった。
「あ・・・あの、その・・・」
それまで黙って食べていたファビアナさんが、おずおずという感じで、そっと右手を挙げた。
彼女が話すと、全員の視線が一斉に集中する。
やはり極端に口数が少ない人が突然話すと、注目を集めるのはしかたないのだろう。
「ん、どうしたお嬢ちゃん?」
ビリージョーさんが軽い調子で話しかけると、ファビアナさんはチラリと目を向けて、ローブの中に手を入れた。
「・・・その、私・・・・・持ってます」
スっとローブから出した小さな手の平には、見覚えのある水色の布袋があった。
「・・・えぇ!?ファ、ファビアナ、あなたどうして?」
俺とレイチェル、ビリージョーさんも少し驚いたが、リンジーさんの一際大きいリアクションを見ると、この布袋の価値がよく分かる。
「えっと・・・その・・・わ、私のよく行く、ま、魔道具店で・・・その、も、貰いました」
「・・・つまり、そのお店の経営者が、青の船団の幹部だったわけね?ファビアナったら、全然教えてくれないんだから、びっくりしたわ」
リンジーさんが驚き交じりの言葉を出すと、ファビアナさんは目を落とし、勇気を振り絞るようにして声を出した。
「わ、私と一緒なら・・・あ、会えます、よ・・・シャノンさんに」
部屋は、俺とビリージョーさん、女性三人の二部屋に分かれた。
レイチェルもリンジーさんに対しての警戒を解いたようで、すっかり友達のようにふるまっている。
「それで、どうするんだ?シャノンって人に会うのか?」
両手を頭の後ろで組み、ベッドに寝ころんでいるビリージョーさんが、天井を見たまま話しかけて来た。
「・・・・・いえ、やめておきます。ロンズデールに来たんだし、どうしようかなって思ったけど・・・今回は任務で来ているんだから、それに集中したいと思います」
「お前、真面目だな。せっかくここまで来たんだし、ちょっと知り合いに会うくらい別にいいんじゃねぇのか?」
片眉を上げて、俺を見るビリージョーさん。
確かに挨拶程度に会うのは問題ないだろう。だけど・・・
「・・・いえ、やっぱりやめておきます。あの時買った海の宝石、カチュアがいつも付けてて、嬉しそうにしてるんです。だからあらためてお礼を言いたかったけど、なんカチュアと一緒でないとって言うか・・・」
「・・・ん~?アラタ君、お前何を言ってんだ?人に会うのに、いちいちそんな難しく考えてんの?今俺に言った事を、そのまま伝えりゃいいだけだろ?なんでカチュアと一緒じゃないと会えないわけ?今回、任務が終わってクインズベリーに帰ったら、次いつ来れるか分からないだろ?会いたい人が会える場所にいるなら会っておきな」
ビリージョーさんは体を起こし俺にそう話した。
呆れたような口調で、けれどその表情は真剣そのものだった。
まるで自分自身に言い聞かせるように。
「えっと・・・」
突然雰囲気の変わったビリージョーさんに、俺が何も言えず黙っていると、ビリージョーさんはまたベッドに寝そべって俺に背を向けた。
「まぁ、決めるのはアラタ君だけどよ。任務中だからって、ちょっと人に会う時間くらいは作ってもいいだろ?もうちょっと楽に考えたらどうだ?」
俺は寝るぞ。ビリージョーさんはそう言ってそれきり黙ると、やがて寝息が聞こえて来た。
俺は発光石に蓋をして部屋を暗くすると、ベッドに横になった。
ビリージョーさんの言う通りだな。
俺はいつも難しく考えすぎる。分かってるけど、なかなか治らない。
明日、ファビアナさんに頼んでみよう。
彼女が一緒なら、布袋を使ってシャノンさんに会えるだろう。
「・・・なんだか、ジャレットさんが一緒みたいだ」
寝ているビリージョーさんを見て、俺は少しだけ苦笑いを浮かべた。
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