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578 ディリアンの怒り
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バルカルセル大臣の執務室に集まったのは、アラタ達クインズベリーから来た一行と、シャノン、リンジー、ファビアナ、ガラハドの三人だった。
「遠路よく来てくれた。感謝するぞクインズベリーの有志よ。楽にしてくれ」
前回会った時と同じく、深く青い海を思わせる色のスーツに白いシャツという出で立ちなのは、大臣のバルカルセルである。
手のひらを上に向けてソファを進めながらも、自分が先に腰を掛けるのは、大臣の自分が座らなければ、誰も座れないだろうという配慮からだ。
バルカルセルを中心に、左右に分かれる形でそれぞれが腰を下ろした事を見ると、ボリュームのある白い頭髪を後ろに撫でて、バルカルセルは話し出した。
「アラルコン商会のシャノン嬢から、すでにおおよその事は聞いているそうだが、あらためて、皆さんが今日ここに来るまでに、どれだけの事があったかを話しておこう」
恰幅の良い体を少しだけ起こしてソファに座り直すと、その体が深く沈みこむ。
大臣のソファだけ特別製なのか、本来一人用の作りに見えるが、実質二人分は幅がある。
「前回キミ達が来た次の日からか・・・カーンの周辺の動きが騒がしくなってきてね。頻繁に大海の船団の幹部や船長と会っているようだった。何をしているのかカーンを問い詰めても、商売の話しだと言って、当たり障りのない内容を述べるだけだ。そこでガラハドに探りを入れてもらったところ、今回のクルーズ船の事が分かったわけだ」
バルカルセルがそこでガラハドの目を向けると、言葉を引き継いでガラハドが話し始めた。
ガラハドもバルカルセルと同じく頭髪は真っ白だが、190cmはある背丈と、服の上からでも一目で分かる鍛えられた筋肉で、実年齢よりも若く見える。
「すでにキミ達も知ってるだろが、カーンと大海の船団のウラジミールは結託して、帝国にこの国を売り渡すつもりだ。今のカーンならばそれができる。それほど国王はカーンを信頼、いや依存しているんだな。カーンの言葉なら、国王はそれがなんであれ迷わず頷くだろう。そして、そのカーンが会う帝国の要人だが・・・ダリル・パープルズ、帝国の大臣だ」
「ほぅ、ダリル・パープルズが来るのか?なるほど、今回のクルーズに、帝国がどれだけ期待をしているかが伺いしれるな」
ガラハドが口にした帝国の大臣の名を聞き、向かいに座るシャクールが、面白そうに口を挟んだ。
その軽々な話し方に、ガラハドが少し眉を寄せて問いかける。
「シャクール・バルデス殿だったな、楽しそうだが、ダリル・パープルズを知っているのか?」
「おっと、これは失礼。決して茶化しているわけではないのだが、そう聞こえてしまったのなら謝罪しよう」
シャクールがあまりにあっさりと頭を下げるので、ガラハドが毒気を抜かれたように二の句を告げずにいると、シャクールはそのまま話しを続けた。
「それで、私がダリル・パープルズを知っているかとの問いだが、答えは知っている。私も貴族の端くれだからな。他国の重要人物くらいは知っているさ。直接会った事はないが、ダリル・パープルズがどういう人物かは耳に入ってくるからな。なんでも、非常に用心深いらしいな。常に二人の護衛を傍に置いていて、決して一人にならないようだ。そして、皇帝の意を組んで実質的に国の舵取りを行っている、帝国の最重要人物だ。ダリル・パープルズが来るという事は、帝国が本気で話しを決めに来たという事だろう」
シャクールが帝国の大臣についてその詳細を語ると、ガラハドは感心したように何度も頷き、賞賛の声を上げた。
「大したものだな。俺が今回集めた情報と一致している。その通りだ、それだけ帝国が本気という事だ。だからこそ、絶対にカーンと帝国の談合を潰さなければならない。しかし・・・」
「仮に国王を説得できても、ここまでやって来た帝国が引くはずがない・・・と言う事か」
話しを聞いていたビリージョーが言葉を発すると、ガラハドは肯定しビリージョーに顔を向けた。
「その通りだ。俺は戦いは避けられないと見ているのだが・・・問題はダリル・パープルズの二人の護衛だ・・・」
眉間にシワを寄せるガラハドの表情から、その護衛がいかに厄介な存在なのか察せられ、ビリージョーの表情も自然と厳しくなった。
「・・・誰だ?」
「ラルス・ネイリー。そして・・・リコ・ヴァリンだ」
意を決したようにガラハドが二人の名を口にすると、真っ先に反応したのはディリアンだった。
「ラルス・ネイリーだとォッツ!?」
目の前のテーブルに、両手を強く叩きつけて身を乗り出す。
感情に任せて全身から魔力が放出され、長く柔らかそうな白い髪が、まるで天を突くように逆立つ。
金色の瞳には怒り、憎しみ、あらゆる憎悪の感情を燃やした明確な殺意を宿し、歯を食いしばるその形相に、その場の全員の視線がディリアンに集まった。
「ど、どうしたんだよ?ディリアン」
アラタが驚きをあらわに言葉をかけるが、ディリアンはまるで聞こえていないかのように、ラルス・ネイリーの名を出したガラハドを真っすぐに見ていた。
「・・・急にどうした?・・・落ち着いて話してみろ」
ガラハドはディリアンのただ事ならぬ様子に、刺激をしないように、ゆっくりとなだめるように話しかけた。
それでも歯茎から血が滲み出る程強く噛みしめるディリアンを見て、ビリージョーが立ち上がると、その背中をゆっくりと労わるようにさすった。
「なぁ、ディリアン・・・ラルス・ネイリーとお前に何があった?その名前は俺も知っている。数年前までクインズベリーにいたよな?各国を渡り歩く、流れの魔法使いじゃなかったか?」
ビリージョーの言葉に少しだけ落ち着いたのだろう。
深く息を吐き出すと、ディリアンは憎しみを吐き出すように言葉を発した。
「・・・ラルス・ネイリー・・・あのクソ野郎はな、ベナビデス家にも一年程だが仕えていたんだよ」
「遠路よく来てくれた。感謝するぞクインズベリーの有志よ。楽にしてくれ」
前回会った時と同じく、深く青い海を思わせる色のスーツに白いシャツという出で立ちなのは、大臣のバルカルセルである。
手のひらを上に向けてソファを進めながらも、自分が先に腰を掛けるのは、大臣の自分が座らなければ、誰も座れないだろうという配慮からだ。
バルカルセルを中心に、左右に分かれる形でそれぞれが腰を下ろした事を見ると、ボリュームのある白い頭髪を後ろに撫でて、バルカルセルは話し出した。
「アラルコン商会のシャノン嬢から、すでにおおよその事は聞いているそうだが、あらためて、皆さんが今日ここに来るまでに、どれだけの事があったかを話しておこう」
恰幅の良い体を少しだけ起こしてソファに座り直すと、その体が深く沈みこむ。
大臣のソファだけ特別製なのか、本来一人用の作りに見えるが、実質二人分は幅がある。
「前回キミ達が来た次の日からか・・・カーンの周辺の動きが騒がしくなってきてね。頻繁に大海の船団の幹部や船長と会っているようだった。何をしているのかカーンを問い詰めても、商売の話しだと言って、当たり障りのない内容を述べるだけだ。そこでガラハドに探りを入れてもらったところ、今回のクルーズ船の事が分かったわけだ」
バルカルセルがそこでガラハドの目を向けると、言葉を引き継いでガラハドが話し始めた。
ガラハドもバルカルセルと同じく頭髪は真っ白だが、190cmはある背丈と、服の上からでも一目で分かる鍛えられた筋肉で、実年齢よりも若く見える。
「すでにキミ達も知ってるだろが、カーンと大海の船団のウラジミールは結託して、帝国にこの国を売り渡すつもりだ。今のカーンならばそれができる。それほど国王はカーンを信頼、いや依存しているんだな。カーンの言葉なら、国王はそれがなんであれ迷わず頷くだろう。そして、そのカーンが会う帝国の要人だが・・・ダリル・パープルズ、帝国の大臣だ」
「ほぅ、ダリル・パープルズが来るのか?なるほど、今回のクルーズに、帝国がどれだけ期待をしているかが伺いしれるな」
ガラハドが口にした帝国の大臣の名を聞き、向かいに座るシャクールが、面白そうに口を挟んだ。
その軽々な話し方に、ガラハドが少し眉を寄せて問いかける。
「シャクール・バルデス殿だったな、楽しそうだが、ダリル・パープルズを知っているのか?」
「おっと、これは失礼。決して茶化しているわけではないのだが、そう聞こえてしまったのなら謝罪しよう」
シャクールがあまりにあっさりと頭を下げるので、ガラハドが毒気を抜かれたように二の句を告げずにいると、シャクールはそのまま話しを続けた。
「それで、私がダリル・パープルズを知っているかとの問いだが、答えは知っている。私も貴族の端くれだからな。他国の重要人物くらいは知っているさ。直接会った事はないが、ダリル・パープルズがどういう人物かは耳に入ってくるからな。なんでも、非常に用心深いらしいな。常に二人の護衛を傍に置いていて、決して一人にならないようだ。そして、皇帝の意を組んで実質的に国の舵取りを行っている、帝国の最重要人物だ。ダリル・パープルズが来るという事は、帝国が本気で話しを決めに来たという事だろう」
シャクールが帝国の大臣についてその詳細を語ると、ガラハドは感心したように何度も頷き、賞賛の声を上げた。
「大したものだな。俺が今回集めた情報と一致している。その通りだ、それだけ帝国が本気という事だ。だからこそ、絶対にカーンと帝国の談合を潰さなければならない。しかし・・・」
「仮に国王を説得できても、ここまでやって来た帝国が引くはずがない・・・と言う事か」
話しを聞いていたビリージョーが言葉を発すると、ガラハドは肯定しビリージョーに顔を向けた。
「その通りだ。俺は戦いは避けられないと見ているのだが・・・問題はダリル・パープルズの二人の護衛だ・・・」
眉間にシワを寄せるガラハドの表情から、その護衛がいかに厄介な存在なのか察せられ、ビリージョーの表情も自然と厳しくなった。
「・・・誰だ?」
「ラルス・ネイリー。そして・・・リコ・ヴァリンだ」
意を決したようにガラハドが二人の名を口にすると、真っ先に反応したのはディリアンだった。
「ラルス・ネイリーだとォッツ!?」
目の前のテーブルに、両手を強く叩きつけて身を乗り出す。
感情に任せて全身から魔力が放出され、長く柔らかそうな白い髪が、まるで天を突くように逆立つ。
金色の瞳には怒り、憎しみ、あらゆる憎悪の感情を燃やした明確な殺意を宿し、歯を食いしばるその形相に、その場の全員の視線がディリアンに集まった。
「ど、どうしたんだよ?ディリアン」
アラタが驚きをあらわに言葉をかけるが、ディリアンはまるで聞こえていないかのように、ラルス・ネイリーの名を出したガラハドを真っすぐに見ていた。
「・・・急にどうした?・・・落ち着いて話してみろ」
ガラハドはディリアンのただ事ならぬ様子に、刺激をしないように、ゆっくりとなだめるように話しかけた。
それでも歯茎から血が滲み出る程強く噛みしめるディリアンを見て、ビリージョーが立ち上がると、その背中をゆっくりと労わるようにさすった。
「なぁ、ディリアン・・・ラルス・ネイリーとお前に何があった?その名前は俺も知っている。数年前までクインズベリーにいたよな?各国を渡り歩く、流れの魔法使いじゃなかったか?」
ビリージョーの言葉に少しだけ落ち着いたのだろう。
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