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657 ぶつかり合う意地と技
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レイチェルがリコ・ヴァリンを頭上高く蹴り上げ、そこから決着までにかかった時間はほんの数秒だった。
見上げた先には、両の手足を広げたまま天井近くまで飛ばされ、自分に背を向けるリコ・ヴァリン。レイチェルは両手のナイフを構え飛び上がった!
ここで決める!これで止めだァァァーーーッ!
・・・この時、勝利をほぼ手中に収めながらも、レイチェルには僅かな焦りがあった。
焦りの要因はリコに斬られた背中の傷である。
致命傷ではないが決して浅い傷ではない。本来であればすぐにヒールをかけなければならない。
しかしレイチェルはリコ・ヴァリンの戦闘力に、このまま戦っても分の悪さを感じた。
背中から流れる血を考えれば長引けば不利、それならば短期決戦での決着を選んだ。
そしてレイチェルの出した答えは、あのマルコス・ゴンサレスでさえ捉えきれなかった、最速を維持したまま止む事のない連続攻撃、限舞闘争(げんぶとうそう)である!
互角のスピードだったレイチェルとリコだが、ブレーキをかける事なく動き続ける限舞闘争は、リコ・ヴァリンでさえ防ぎきる事はできなかった。
そして今、止めを刺すところまでリコ・ヴァリンを追い詰めている。
ではなぜレイチェルの心に焦りがあったのか?
「うっ!?」
リコ・ヴァリンのその背中にナイフを突き刺そうとしたその時、レイチェルの視界がブレた。
トップスピードで動き続けるという事は、それだけ血を動かすという事である。
すでにレイチェルの背中と下半身は、その血で赤く染まっていた。
勝利を目前にして、その出血はレイチェルの視界を曇らせた。
そして・・・・・
手・・・手が!?
限舞闘争は体力の消費、そして身体にかかる負担が大きい。
そこに急激な出血、痛みに耐えながらの無理な動きは、レイチェルから握力を奪った。
くそっ!こ、ここでくるのか!?あと、あとほんの少しで・・・!
レイチェルのナイフが止まったその時、自分に向けられた殺気、レイチェルの気配、そこに動揺があった事をリコ・ヴァリンは敏感に感じ取った。
・・・今のタイミングは、絶対に躱せなかった。
この赤毛の女レイチェルは、ここでミスをするようなぬるい相手じゃない。今、確実に私を殺す事ができたはず・・・それなのに動きが止まった・・・・・それはつまり、なにか予期せぬ異常があったという事。
リコ・ヴァリンは挫折を知らなかった。
一方的に攻撃を受け、その体を天井高く蹴り上げられた事などなかった。
帝国の七人の師団長を相手にしても、互角に戦える程の力を持つリコ・ヴァリンにとって、ここまでのやられる事は、気力さえ削がれる程の衝撃だったが、この局面で、ここまで追い込まれた事で眠っていた闘争心に火が付いた。
・・・そうだ・・・赤毛の女だって無傷ではない・・・
ダメージがあるからこそ、ここで動きが止まったんだ・・・・・私はまだ戦える!
諦めるには・・・・・まだ早い!
「レイチェル・エリオットーーーッ!」
絶叫!己を奮い立たせ、気力を呼び戻すための叫び!
空中で体を捻ると、リコ・ヴァリンとレイチェルは向き合う形になった。
二人の距離はほんの数メートルである。
やはり!顔が蒼白だ、さっき私が斬った背中の傷が効いているんだ!
大したものだ、その傷でこれほどの技を出して私を追い詰めるとは・・・
だが、最後は私が勝つ!
その紫の瞳にかつてない程の力が漲る!それはここで勝負をつけるという決意の現れ!
レイチェル・エリオット!受けてみろ!ガラスの剣、最大の一撃を!
リコ・ヴァリンは振り上げたガラスの剣を両手で握ると、腹と胸の筋肉が悲鳴を上げ、背骨が折れそうなくらいのけ反った。
ガラスの剣は振るう力の強さに応じて、衝撃波を撃つ事ができる。
単純だが、単純ゆえに強力無比な技である。
ガラスの剣最大の一撃とは、つまり、リコ・ヴァリンの全身全霊の一撃である。
そしてリコ・ヴァリンの全身全霊とは、ガラスの剣の能力を最大限に引き出した唯一無二の技。
その名も・・・
真空波
それは速過ぎる一太刀だった。
人体稼働の限界を思わせる程にのけ反ったリコ・ヴァリンが、押さえられたバネを解放したかの如く、身体を前方に回し、ガラスの剣を振り抜いたその時・・・・・全ての音が消えた。
・・・なにも聞こえない。
瞬き程の一瞬だったが、レイチェルは自分の体に起こった異常を感じ取った。
リコ・ヴァリンが剣を振るったその瞬間、耳に届く音が止んだ。
そして、ここだけ空気が無くなったかのような、不自然な圧迫感。
なんだ・・・?これは、いったい・・・?
正体不明の攻撃に、レイチェルは考える事をやめた。
リコ・ヴァリンの技がなんであれ、自分の役目はここでリコ・ヴァリンを倒す事。
考えている時間などない!
突き刺そうと前に出した右手には力が入らない、当然左手も握力が失われている。
ならばどうするか・・・・・
レイチェルは前に出した右手は身を護るように、顔の前で曲げて盾にした。
そして左手のナイフを口にくわえると、決して外れる事がないように、血が滲む程に強く噛んだ。
「オォォォォォォォォーーーーーッツ!」
リコ・ヴァリンよ!貴様もその一撃に全てを賭けているんだろう!?
いいだろう!受けて立ってやる!
レイチェルはスピードを緩める事なく、真正面から飛び込んだ!
限舞闘争 対 真空波
決着の時が来た
見上げた先には、両の手足を広げたまま天井近くまで飛ばされ、自分に背を向けるリコ・ヴァリン。レイチェルは両手のナイフを構え飛び上がった!
ここで決める!これで止めだァァァーーーッ!
・・・この時、勝利をほぼ手中に収めながらも、レイチェルには僅かな焦りがあった。
焦りの要因はリコに斬られた背中の傷である。
致命傷ではないが決して浅い傷ではない。本来であればすぐにヒールをかけなければならない。
しかしレイチェルはリコ・ヴァリンの戦闘力に、このまま戦っても分の悪さを感じた。
背中から流れる血を考えれば長引けば不利、それならば短期決戦での決着を選んだ。
そしてレイチェルの出した答えは、あのマルコス・ゴンサレスでさえ捉えきれなかった、最速を維持したまま止む事のない連続攻撃、限舞闘争(げんぶとうそう)である!
互角のスピードだったレイチェルとリコだが、ブレーキをかける事なく動き続ける限舞闘争は、リコ・ヴァリンでさえ防ぎきる事はできなかった。
そして今、止めを刺すところまでリコ・ヴァリンを追い詰めている。
ではなぜレイチェルの心に焦りがあったのか?
「うっ!?」
リコ・ヴァリンのその背中にナイフを突き刺そうとしたその時、レイチェルの視界がブレた。
トップスピードで動き続けるという事は、それだけ血を動かすという事である。
すでにレイチェルの背中と下半身は、その血で赤く染まっていた。
勝利を目前にして、その出血はレイチェルの視界を曇らせた。
そして・・・・・
手・・・手が!?
限舞闘争は体力の消費、そして身体にかかる負担が大きい。
そこに急激な出血、痛みに耐えながらの無理な動きは、レイチェルから握力を奪った。
くそっ!こ、ここでくるのか!?あと、あとほんの少しで・・・!
レイチェルのナイフが止まったその時、自分に向けられた殺気、レイチェルの気配、そこに動揺があった事をリコ・ヴァリンは敏感に感じ取った。
・・・今のタイミングは、絶対に躱せなかった。
この赤毛の女レイチェルは、ここでミスをするようなぬるい相手じゃない。今、確実に私を殺す事ができたはず・・・それなのに動きが止まった・・・・・それはつまり、なにか予期せぬ異常があったという事。
リコ・ヴァリンは挫折を知らなかった。
一方的に攻撃を受け、その体を天井高く蹴り上げられた事などなかった。
帝国の七人の師団長を相手にしても、互角に戦える程の力を持つリコ・ヴァリンにとって、ここまでのやられる事は、気力さえ削がれる程の衝撃だったが、この局面で、ここまで追い込まれた事で眠っていた闘争心に火が付いた。
・・・そうだ・・・赤毛の女だって無傷ではない・・・
ダメージがあるからこそ、ここで動きが止まったんだ・・・・・私はまだ戦える!
諦めるには・・・・・まだ早い!
「レイチェル・エリオットーーーッ!」
絶叫!己を奮い立たせ、気力を呼び戻すための叫び!
空中で体を捻ると、リコ・ヴァリンとレイチェルは向き合う形になった。
二人の距離はほんの数メートルである。
やはり!顔が蒼白だ、さっき私が斬った背中の傷が効いているんだ!
大したものだ、その傷でこれほどの技を出して私を追い詰めるとは・・・
だが、最後は私が勝つ!
その紫の瞳にかつてない程の力が漲る!それはここで勝負をつけるという決意の現れ!
レイチェル・エリオット!受けてみろ!ガラスの剣、最大の一撃を!
リコ・ヴァリンは振り上げたガラスの剣を両手で握ると、腹と胸の筋肉が悲鳴を上げ、背骨が折れそうなくらいのけ反った。
ガラスの剣は振るう力の強さに応じて、衝撃波を撃つ事ができる。
単純だが、単純ゆえに強力無比な技である。
ガラスの剣最大の一撃とは、つまり、リコ・ヴァリンの全身全霊の一撃である。
そしてリコ・ヴァリンの全身全霊とは、ガラスの剣の能力を最大限に引き出した唯一無二の技。
その名も・・・
真空波
それは速過ぎる一太刀だった。
人体稼働の限界を思わせる程にのけ反ったリコ・ヴァリンが、押さえられたバネを解放したかの如く、身体を前方に回し、ガラスの剣を振り抜いたその時・・・・・全ての音が消えた。
・・・なにも聞こえない。
瞬き程の一瞬だったが、レイチェルは自分の体に起こった異常を感じ取った。
リコ・ヴァリンが剣を振るったその瞬間、耳に届く音が止んだ。
そして、ここだけ空気が無くなったかのような、不自然な圧迫感。
なんだ・・・?これは、いったい・・・?
正体不明の攻撃に、レイチェルは考える事をやめた。
リコ・ヴァリンの技がなんであれ、自分の役目はここでリコ・ヴァリンを倒す事。
考えている時間などない!
突き刺そうと前に出した右手には力が入らない、当然左手も握力が失われている。
ならばどうするか・・・・・
レイチェルは前に出した右手は身を護るように、顔の前で曲げて盾にした。
そして左手のナイフを口にくわえると、決して外れる事がないように、血が滲む程に強く噛んだ。
「オォォォォォォォォーーーーーッツ!」
リコ・ヴァリンよ!貴様もその一撃に全てを賭けているんだろう!?
いいだろう!受けて立ってやる!
レイチェルはスピードを緩める事なく、真正面から飛び込んだ!
限舞闘争 対 真空波
決着の時が来た
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