異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
682 / 1,560

681 脱出 ③

しおりを挟む
「あ、港が見えてきたよ」

シャノンが風魔法を使いボートを進ませていると、出発した時の港が視界に入ってきた。

「ファビアナの魔蝶のおかげで迷わずにすんだな。正直どっちに行けばいいか分からんかったからな」

ガラハドに褒められると、ファビアナは微笑みを返した。

脱出には成功したが、大海原で右も左も分からない状況だった。
だが、ファビアナの魔道具魔蝶は、偵察用である。
陸地を探して飛ばし、ボートを誘導していたのである。

「ありがとうございます。私は戦闘はできませんから、みんなの役に立てて良かったです」

「なに言ってるんだい?戦えないから役に立たないって事はないんだよ?実際、私はキミのヒールでこの通り完治した。ありがとう、ファビアナ」

今回の戦いで戦闘には参加しなかったファビアナが、自分は何もできなかったと口にするので、レイチェルが右手を掲げて見せた。

リコ・ヴァリンとの戦いで右半身が潰されていたが、サリーとファビアナのヒールで綺麗に元に戻っている。

「レイチェルさん、うん、それなら良かった」

「だから、レイチェルでいいって。ファビアナも真面目だね」

二人が笑い合ったところで、アラタは一つ気になっていたことを口にした。

「なぁ、レイチェル。気になってたんだけど、その剣って、あの女の剣だよな?」

アラタの視線に気付き、右手に持つ極限まで薄く鍛えられた透明の剣に目を向ける。
自分が意識を失っていた時も、決して離さないという意思を感じる程に、強く掴んでいたと聞いた。

「あぁ・・・アラタもあの女、リコ・ヴァリンと戦ったのなら知っているか。そう、これはリコ・ヴァリンの使っていたガラスの剣だ。死ぬ間際に私に持って行けと言ってきたのでね」

戦い敗れた相手に自分の愛用の武器を託す。
理解のできない感情ではなかった。きっとレイチェルとリコ・ヴァリンは、命を懸けた戦いの中で、ある種の繋がり、友情のようなものを感じたのだろう。

「・・・レイチェル、剣も使えるのか?」

「近接用の武器は一通り使った事がある。だから使おうと思えば使えないわけではないのだが、私はナイフが一番向いていると自覚している。だから、この剣を使いこなす事はできないだろう」

「そっか、じゃあその剣はしまって置くの?」

「いや、私はリコ・ヴァリンに、魂は連れて行くと約束したからな。この剣は使うつもりだ。だが、このまま私が使ってもガラスの剣の力を発揮できない。だからどうするのが一番いいか、帰ったら店長に相談してみるよ」

向こう側が空けて見える程薄いその剣は、武器と言うよりは芸術品に近い感覚があった。
ガラスの剣をじっと見つめるレイチェルは、その刀身の先に何かを追い求めているように見えた。

「・・・レイチェル、俺も帰ったら、また店長と話してみるよ。聞きたい事が山のようにあるんだ」

「そうか・・・そう言えば、帰って来たらアラタを鍛えてやるって言ってたな。いい機会だから、しっかり強くしてもらうんだな」

レイチェルの師匠である、レイジェスの店長、その正体はカエストゥス国の黒魔法使いウィッカー・バリオス。
確認したわけではないが、アラタとレイチェルの二人は、確信を持っていた。
なにより以前、アラタが店長に弥生の事を聞いた時の返答は、店長が自分はウィッカーであると認めたも同然だった。

長年自分の事には口をつぐんでいた店長が、なぜ急に正体を明かすような事を口にしたのかは分からない。
だがレイチェルは、店長が帰って来てから行動を共にする事が多くなり、ある変化を感じていた。

「・・・大丈夫、だよね・・・」

意識はしていなかった。けれど胸の不安が小さな呟きになって声に出ていた。

「ん?レイチェル、何か言った?」

「・・・いや、何でもない。アラタ、早くレイジェスに帰りたいな」

「・・・レイチェルがそんな事言うなんて、なんか意外だな。でも、俺も早く帰りたいよ。こういうのホームシックって言うのかな?」

「ハハハ、レイジェスを自分の家と思ってくれてるのなら、私はとても嬉しいよ。さて・・・港につくまで私はもう少し休ませてもらうよ」

そう話すと、レイチェルは会話の終わりを告げるように、腕を組んで目を閉じた。

アラタも何かを感じ取り、それ以上レイチェルに言葉をかける事はせず、少しづつ大きくなる港の景色に目を向けていた。

それから港に着くまでは静かな時間が流れた。
疲労から誰もが口を閉じ、時折聞こえてくるのは波の音だけだった。

ファビアナの魔蝶の誘導に、シャノンが風魔法でボートを進ませる。
そして空がオレンジ色から、夕焼けの赤に染まった頃、ボートは港へ流れ着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...