異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
734 / 1,560

【733 あなたの心を ⑥】

しおりを挟む
俺がケインの誘いを断ってから二週間が過ぎた。

「仲直りをしたのでしょうか?」

日用品を買いに外に出た俺とレイラは、ダニエルとケイン達4人が一緒にいるところを目にした。
久しぶりに見たダニエルは、以前より少し痩せて見えた。

ずっと家にいたからかもしれないが、俺とは事情が違う。
俺に叩きのめされた事で心を病み、周囲の心無い声がそこに追い打ちをかけたのだ。

俺は魔法の研究のため家に籠っているが、必要があれば外に出るし、働く事もある。
しかしダニエルは外に出たくても、周囲の目が気になり出られないのだ。
同じ引きこもりでも、俺とダニエルは全く異なっている。

「・・・妙だな」

「え、なにがですか?」

外に出れないはずのダニエルが外にいて、しかも関係の切れたケイン達と一緒にいる。
そしてダニエルのあの表情だ。

笑ってはいるが、あれは顔の筋肉を動かして作っただけの偽の笑顔だ。
血色も悪く、どこか病的にも見える。

「・・・急になにがあったのかと思ってな。今まで無視をしていたのに変だろ?それとダニエルだが、あれは危ないな。レイラ、俺がいない時は誰が来ても玄関を開けないでくれ」

「・・・はい」

ダニエルはレイラに気がある。
こうして外に出てきて、またあの四人とつるむとなると、用心しておいた方がいい。


いっその事、今の内に消してしまおうか?


そんな考えが頭に浮かんだ時、シャツの裾を引かれて振り向くと、レイラが優しく微笑んでいた。

「バリオスさん、怖い顔してますよ?心配しなくても大丈夫ですよ・・・」

「・・・・・」


最近のレイラは笑顔を見せてくれる事が増えた。
それは小さな蕾のような、ささやかで控えめなものだったが、悲しみの無い笑顔だった。


「バリオスさん」

ふいにレイラが俺の手を取り、両手で包み込んだ。

「・・・レイラ?」


「私は本当に大丈夫ですよ・・・だって、バリオスさんが守ってくださるのでしょう?」


だから笑ってください




なぁレイラ・・・俺達の関係はなんて表現すればいいのかな?

恋人ではないし、友達というのも少し違うと思う

心に同じ傷を負った二人が、肩を寄せ合って暮らしている
この関係に呼び方なんて無いのかもしれない


けれど、俺はキミと出会えたから
キミと過ごしたこの一年足らずがあったから

人の心を取り戻して、これから先の終わりの見えない時間を歩く事ができたんだ





その日の夜

俺は初めてレイラと同じ部屋で寝た。

布団を二つ並べて、お互いの昔話しをした。


俺がカエストゥスの生まれだという事は、最初から検討がついていたらしい。
やはり、あの身なりでは分かってしまうだろう。

けれど俺が孤児院で子供達の面倒を見ていた事や、リサイクルショップで働いていた事には、大きく驚いていた。

「言いにくいのですが、バリオスさんは接客が向いてないように感じますので・・・」

そう言ってレイラは、俺に顔を向けてクスリと笑った。

「不愛想だって言いたいんだろ?」

「ふふ、そう怒らないでください」

チラリと目を向けると、レイラが楽しそうに目を細める。
こんなやりとりができるなんて、どうやら俺に対して、ずいぶん気を許してくれたようだ。

レイラも自分の事を沢山話してくれた。

この村で生まれ育ち、そして幼馴染だった男性と結婚をした事。
子宝にも恵まれて、貧しくても幸せな家庭を築けた事。
けれど二年前に事故で、夫と子の二人を亡くしてしまった事。


「私は・・・とても、とても幸せでした・・・・・」


枕に頭を乗せて、天井を見つめたまま、レイラは声を震わせて大粒の涙を零した。

俺は何も言えなかった。
メアリーとティナを失った俺には、レイラの気持ちが痛い程よく分かるからだ。
言葉では何の助けにもならない時がある。


レイラの押し殺したすすり泣きが耳に届く。

泣き顔を見せないようにしているのだろう、俺に背中を向けて静かに肩を震わせている。


今、言葉は役に立たない。
慰めの言葉なんて、レイラも求めていないだろう。


俺は体を起こすと、レイラの頭にそっと手を乗せて髪を撫でた。
一瞬驚いたように体が反応したが、手を払われる事もなく、されるがままに俺に髪を撫でられていた。

「・・・俺の妻は、こうして髪を撫でられると安心すると言っていたんだ」

「・・・バリオスさんの奥さんは、どんな方だったのですか?」

「嫉妬深くて、独占欲が強くて、甘えん坊で寂しがり屋で・・・料理が上手で・・・とても、とても・・・・・優し、かった・・・・・」

そこまで話して、俺も自分の声が震えている事に気付いた。

これ以上は話せない・・・溢れそうな涙をこらえていると、レイラが俺の手に自分の手を重ねて、体を起こした。


「・・・レイラ」


「バリオスさん・・・・・」


抱きしめられて気付いた
自分の心がどれだけ温もりを欲していたか


「私も・・・抱きしめてください」


両の眼から涙を零すレイラの背に手を回し、俺もレイラを抱きしめた


窓から差し込む月明かりが、俺とレイラを優しく照らした
まるで慰めてくれるように
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

処理中です...