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【746 時の牢獄 ⑪ 研ぎ澄ました復讐心】
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数日かけて集めた情報を、断片的にだが繋ぎ合わせる。
悲しい事だが、モニカさんはテリーとアンナを連れて逃げる途中で、帝国の兵士に殺された確率が高い。
そしてテリーとアンナのような子供は、労働力として連れて行かれたようだ。
不幸中の幸いは、帝国は浮浪孤児のいない住みやすい国だったという事だ。
当時の皇帝がある時を境に、国民へ手厚い保証を打ち出すようになり、国が激変したという。
そしてそれは今も続いているようだった。
帝国の民からすれば喜ばしいばかりであろう。侵略戦争を起こしたとしても、わが身可愛さで皇帝を批判などする者は皆無に近いのではないか。
これほど国を豊にできるだけの国力がありながら、なぜカエストゥスに攻め入った?
帝国の繁栄を目にしながら、俺は怒りに震えがきた。
だが皮肉な事に、皇帝の政策のおかげで、テリーやアンナのような小さな子供でも、飢えたり虐待を受ける事もなく生きる事ができたのもまた事実だ。
テリーとアンナは帝国に来てからの5年は、単純作業の仕事を割り当てられたようだ。
カエストゥスから同じように連れて来られた子供達と一緒に、大部屋で生活して日々淡々と割り当てられた仕事をこなす。
遊びたい盛りの子供達にとって、それはひどく空虚な毎日だっただろう。
しかも支えてくれる親がいないのだ。
幼いテリーとアンナの心が、どれだけ傷つけられたかを考えると涙が出そうになる。
転機が訪れたのは大部屋に入って5年目の事だ。テリーが同室の子供達と喧嘩になったそうなのだ。
詳しい理由までは確認できなかったが、些細な事からテリーを怒らせる言葉を口にし、そこからエスカレートしていったそうだ。同年代の男子が数人がかりでテリーを囲んだという。
普段感情を出す事もなく、ただ黙々と作業だけをこなすテリーを誰もが侮っていた。
ろくに反撃もできず、泣きを見る事になると思っていた事だろう。
だが結果は誰にも予想できないものだった。
テリーを囲んでいた子供達は、それぞれが突然の大風によって吹き飛ばされ、壁に、床に叩きつけられたのだ。そしてその風はテリーを中心地として発せられたものだった。
テリーは体力型だった。そしてヤヨイの血を色濃く受け継いでいた。
さらに言えば、この時まで本人に自覚はなかったが、風の精霊もテリーについていたため、その戦闘力は同年代とは比べるべくもなかった。
この騒動はすぐに帝国軍に知られる事となり、テリーとアンナは作業員の大部屋から連れ出され、軍へと引き入れられる事となる。
アンナに関してはまだ力の片鱗は見えていなかった。だがテリーと血の繋がった妹である事から、同等の力を持っているのではと思われたゆえである。
その推察は当たっていた。青魔法使いであったアンナは、魔法の訓練の最中、上官からの厳しい叱責に追い詰められた事をきっかけに、精霊の力を発動するに至った。
気弱で人見知りが激しかったアンナだが、逆境を跳ね返す芯の強さを持っていた。
風の精霊の声が聞こえるようになり、自信が付いた事も大きかった。
10歳を超える頃には、誰が相手であっても怯む事なく己の意見を口にする程になり、その気の強さは兄のテリー以上であった。
それからの10年余り、二人は共に技を磨き、力だけを求めて生きていた。
テリーは軍の師団長さえも凌駕するほどに強く逞しくなり、アンナは青魔法兵団団長以上の魔力を身に着けた。しかし二人はそれらに代わりその座に就く事を固辞したため、皇帝は自分の側近として傍に置く事とした。
なぜ二人が師団長、青魔法兵団団長の座を頑なに拒んだのかは、後の世の人間の推測で語られている。
二人は誰も信用していなかった。
狙いはあくまで皇帝の首である事から、大勢を率いる役職は不都合だったのだろうと。
そしてテリーが25歳、アンナが23歳になった時、自分達の力が最盛期に達したと感じたこの時、二人は行動を起こした。
皇帝への反逆である。
ブロートン帝国皇帝 ローランド・ライアンは、この時63歳であった。
魔法使いとしてはピークを過ぎており、皇帝にカエストゥスと戦争をした時程の魔力は無かった。
だが、それでも皇帝は強かった。
圧倒的魔力を持ち、悪魔王子と呼ばれたカエストゥス国のタジーム・ハメイド。
そのタジーム・ハメイドに匹敵する男が皇帝ローランド・ライアンである。
いかに衰えが見えた言っても、本来たった二人で戦える相手ではなかった。
だが力の差は、テリーとアンナも十分に分かっていた。
如何ともし難い実力差を、どう埋めて勝つか?
この条件であれば勝てる。二人はそれだけを考えて、何年もかけて準備をしてきた。
決して他の誰にも悟られぬように・・・
表向きは皇帝に従順な側近として仕え、一枚一枚のカードを慎重に積み重ねていった。
そしてこれならば勝てるという状況を作り出し、兄妹は皇帝へと挑んだ。
悲しい事だが、モニカさんはテリーとアンナを連れて逃げる途中で、帝国の兵士に殺された確率が高い。
そしてテリーとアンナのような子供は、労働力として連れて行かれたようだ。
不幸中の幸いは、帝国は浮浪孤児のいない住みやすい国だったという事だ。
当時の皇帝がある時を境に、国民へ手厚い保証を打ち出すようになり、国が激変したという。
そしてそれは今も続いているようだった。
帝国の民からすれば喜ばしいばかりであろう。侵略戦争を起こしたとしても、わが身可愛さで皇帝を批判などする者は皆無に近いのではないか。
これほど国を豊にできるだけの国力がありながら、なぜカエストゥスに攻め入った?
帝国の繁栄を目にしながら、俺は怒りに震えがきた。
だが皮肉な事に、皇帝の政策のおかげで、テリーやアンナのような小さな子供でも、飢えたり虐待を受ける事もなく生きる事ができたのもまた事実だ。
テリーとアンナは帝国に来てからの5年は、単純作業の仕事を割り当てられたようだ。
カエストゥスから同じように連れて来られた子供達と一緒に、大部屋で生活して日々淡々と割り当てられた仕事をこなす。
遊びたい盛りの子供達にとって、それはひどく空虚な毎日だっただろう。
しかも支えてくれる親がいないのだ。
幼いテリーとアンナの心が、どれだけ傷つけられたかを考えると涙が出そうになる。
転機が訪れたのは大部屋に入って5年目の事だ。テリーが同室の子供達と喧嘩になったそうなのだ。
詳しい理由までは確認できなかったが、些細な事からテリーを怒らせる言葉を口にし、そこからエスカレートしていったそうだ。同年代の男子が数人がかりでテリーを囲んだという。
普段感情を出す事もなく、ただ黙々と作業だけをこなすテリーを誰もが侮っていた。
ろくに反撃もできず、泣きを見る事になると思っていた事だろう。
だが結果は誰にも予想できないものだった。
テリーを囲んでいた子供達は、それぞれが突然の大風によって吹き飛ばされ、壁に、床に叩きつけられたのだ。そしてその風はテリーを中心地として発せられたものだった。
テリーは体力型だった。そしてヤヨイの血を色濃く受け継いでいた。
さらに言えば、この時まで本人に自覚はなかったが、風の精霊もテリーについていたため、その戦闘力は同年代とは比べるべくもなかった。
この騒動はすぐに帝国軍に知られる事となり、テリーとアンナは作業員の大部屋から連れ出され、軍へと引き入れられる事となる。
アンナに関してはまだ力の片鱗は見えていなかった。だがテリーと血の繋がった妹である事から、同等の力を持っているのではと思われたゆえである。
その推察は当たっていた。青魔法使いであったアンナは、魔法の訓練の最中、上官からの厳しい叱責に追い詰められた事をきっかけに、精霊の力を発動するに至った。
気弱で人見知りが激しかったアンナだが、逆境を跳ね返す芯の強さを持っていた。
風の精霊の声が聞こえるようになり、自信が付いた事も大きかった。
10歳を超える頃には、誰が相手であっても怯む事なく己の意見を口にする程になり、その気の強さは兄のテリー以上であった。
それからの10年余り、二人は共に技を磨き、力だけを求めて生きていた。
テリーは軍の師団長さえも凌駕するほどに強く逞しくなり、アンナは青魔法兵団団長以上の魔力を身に着けた。しかし二人はそれらに代わりその座に就く事を固辞したため、皇帝は自分の側近として傍に置く事とした。
なぜ二人が師団長、青魔法兵団団長の座を頑なに拒んだのかは、後の世の人間の推測で語られている。
二人は誰も信用していなかった。
狙いはあくまで皇帝の首である事から、大勢を率いる役職は不都合だったのだろうと。
そしてテリーが25歳、アンナが23歳になった時、自分達の力が最盛期に達したと感じたこの時、二人は行動を起こした。
皇帝への反逆である。
ブロートン帝国皇帝 ローランド・ライアンは、この時63歳であった。
魔法使いとしてはピークを過ぎており、皇帝にカエストゥスと戦争をした時程の魔力は無かった。
だが、それでも皇帝は強かった。
圧倒的魔力を持ち、悪魔王子と呼ばれたカエストゥス国のタジーム・ハメイド。
そのタジーム・ハメイドに匹敵する男が皇帝ローランド・ライアンである。
いかに衰えが見えた言っても、本来たった二人で戦える相手ではなかった。
だが力の差は、テリーとアンナも十分に分かっていた。
如何ともし難い実力差を、どう埋めて勝つか?
この条件であれば勝てる。二人はそれだけを考えて、何年もかけて準備をしてきた。
決して他の誰にも悟られぬように・・・
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