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824 テーブルマナー
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「シルヴィアさん・・・えっと、実はですね・・・」
広々とした部屋で縦に長いテーブルに座り、料理が運ばれてくるのを待っていると、アラタが小声で左隣のシルヴィアに話しかけた。困った顔をして頬をポリポリ搔いている。
煌びやかなシャンデリア。専門の知識がなくても分かる、花瓶、絵画、彫像などの豪華な調度品。
城には何度か来た事があるが、普段の生活とは全く無縁の生活様式に緊張している様子も見える。
「アラタ君、ナプキンは乾杯の後に広げてね、フォークとナイフは外側から使うのよ?それと・・・」
アラタが言い終わらないうちに、シルヴィアはアラタの前に置かれた食器に目を向けて、一つ一つ説明を始めた。
「あ、は、はい!・・・すごい、よく俺が聞きたい事よく分かりましたね?」
「ふふ、この場所でそんなに困った声で話しかけられたら、テーブルマナーしかないでしょ?アラタ君、いい機会だからここで覚えちゃいなさい。私が教えてあげるわ」
シルヴィアは目を細めて微笑んで見せる。まるで教える事に楽しさを感じているようだった。
「あ、すみません。ありがとうございます・・・なかなかこういう料理って、食べる機会がなくて・・・」
「しかたないわよ。私はケイトやカチュアとたまに食べに行くけど、男の人ってもう少し気楽に食べられる店の方が好きなんでしょ?あ、そうそう早食いも駄目よ?周りのペースに合わせてね。アラタ君、ちょっと食べるの早いみたいね?カチュアから聞いてるわよ」
「あ、そう言えば・・・たまに注意されます」
「今日は気を付けてね?意識してゆっくり噛むくらいで丁度いいと思うわよ。あ、ところでアゲハは大丈夫?」
アラタとの会話に区切りがつくと、シルヴィアはアラタの右隣に座るアゲハに声をかけた。
「ん?ああ、私は大丈夫だよ。師団長って立場だと、皇帝や貴族と会食する機会も多かったからね」
腕を組んで余裕の表情を見せる。
今日は謁見という事もあり、白い長袖ドレスシャツに、黒いパンツとシンプルだが清潔感のある服装をしている。
「あ、そう言えばこの前一緒にパスタを食べた時、綺麗な食事の仕方だなって思ったのよ。全く音を立てないし、フォークの使い方とか完璧だったわ。アゲハは教養があるのね」
唇に指を当て、思い出したように話すシルヴィア。
アゲハはレイジェスの女性達と、キッチン・モロニーに何度か行っているらしい。
裏表のない性格で早々に店に馴染み、常連客ともすでに談笑できるようになっている。
コミュニケーション能力が高い。
「う~ん、まぁ嫌でも覚えるしかなかったからね。私はどっちかと言うとマナーなんて気にしないで、気楽に食べられるのが好きなんだけど、付き合いってのはあるからね。アラタも城に来る機会がまだまだあるんだから、ちゃんと覚えときなよ?」
ニヤリと笑ってアラタに流し目を送る。
目が合ってアラタは、ふとなつかしさを感じた。
・・・やっぱり、弥生さんにそっくりだ。
「ん?どうしたアラタ?なにボケっとしてんのさ?」
「あ、いや、なんでもないよ。そうだね・・・いい機会だから、しっかり勉強させてもらうよ」
「そうそう、覚えて損な知識ってのは一つのないからね?何でも興味を持ってやってみなよ」
左手の指を一つ立てて、アラタに言って聞かせると、話しを聞いていたシルヴィアがクスクスと笑い出した。
「ふふふ、なんだかアラタ君のお姉さんって感じね?手間のかかる弟って感じかしら?」
「え、シルヴィアさん、そんな手間がかかるって・・・」
「いや、テーブルマナーに限らず、実際アラタはちょっと手間がかかる。カチュアに甘えてる感じあるよね?私もちょっと見てやらなきゃって思ってたんだよね」
「え、い、いやいや、な、なんでそんな話しに・・・?」
「アラタ君、飲み物を注がれてる時は、グラスはいじっちゃ駄目よ?」
「アラタ、スープは皿の手前から奥に向かってスプーンを運ぶんだ。量はスプーンの半分から三分の二程度だぞ?スプーンからポタポタ零すなんてもってのほかだからな?」
両脇を女性二人に挟まれ、プレッシャーをかけられながらテーブルマナーの説明を聞かされるアラタを救ったのは、扉の開く音だった。
「お待たせしましたね」
女王アンリエールが部屋に入ると、アラタは真っ先に立ち上がった。
「あ!アンリエール様!ご招待ありがとうございます!」
シルヴィアとアゲハも一歩遅れて立ち上がり、アンリエールに一礼をする。
・・・アラタ君、逃げたわね?
・・・アラタ、逃げやがったな?
アンリエールの一歩後ろには、護衛のリーザとローザが付き従っている。
二人はアラタとシルヴィアを見ると、ニコリと微笑んで見せた。
偽国王との戦いで共闘して以来、二人はレイジェスを仲間、同志として見ている。
「ああ、そう固くならないで楽にしてちょうだい。そうそう、もう一人ご一緒したいというから連れて来たのよ」
そう言ってアンリエールが振り返ると、母親によく似た、ふわりとした絹のような金色の髪の少女が前に出た。
「皆さん、お久しぶりでございます」
王女エリザベートは、その碧い瞳に喜びの色を浮かべて微笑んだ。
広々とした部屋で縦に長いテーブルに座り、料理が運ばれてくるのを待っていると、アラタが小声で左隣のシルヴィアに話しかけた。困った顔をして頬をポリポリ搔いている。
煌びやかなシャンデリア。専門の知識がなくても分かる、花瓶、絵画、彫像などの豪華な調度品。
城には何度か来た事があるが、普段の生活とは全く無縁の生活様式に緊張している様子も見える。
「アラタ君、ナプキンは乾杯の後に広げてね、フォークとナイフは外側から使うのよ?それと・・・」
アラタが言い終わらないうちに、シルヴィアはアラタの前に置かれた食器に目を向けて、一つ一つ説明を始めた。
「あ、は、はい!・・・すごい、よく俺が聞きたい事よく分かりましたね?」
「ふふ、この場所でそんなに困った声で話しかけられたら、テーブルマナーしかないでしょ?アラタ君、いい機会だからここで覚えちゃいなさい。私が教えてあげるわ」
シルヴィアは目を細めて微笑んで見せる。まるで教える事に楽しさを感じているようだった。
「あ、すみません。ありがとうございます・・・なかなかこういう料理って、食べる機会がなくて・・・」
「しかたないわよ。私はケイトやカチュアとたまに食べに行くけど、男の人ってもう少し気楽に食べられる店の方が好きなんでしょ?あ、そうそう早食いも駄目よ?周りのペースに合わせてね。アラタ君、ちょっと食べるの早いみたいね?カチュアから聞いてるわよ」
「あ、そう言えば・・・たまに注意されます」
「今日は気を付けてね?意識してゆっくり噛むくらいで丁度いいと思うわよ。あ、ところでアゲハは大丈夫?」
アラタとの会話に区切りがつくと、シルヴィアはアラタの右隣に座るアゲハに声をかけた。
「ん?ああ、私は大丈夫だよ。師団長って立場だと、皇帝や貴族と会食する機会も多かったからね」
腕を組んで余裕の表情を見せる。
今日は謁見という事もあり、白い長袖ドレスシャツに、黒いパンツとシンプルだが清潔感のある服装をしている。
「あ、そう言えばこの前一緒にパスタを食べた時、綺麗な食事の仕方だなって思ったのよ。全く音を立てないし、フォークの使い方とか完璧だったわ。アゲハは教養があるのね」
唇に指を当て、思い出したように話すシルヴィア。
アゲハはレイジェスの女性達と、キッチン・モロニーに何度か行っているらしい。
裏表のない性格で早々に店に馴染み、常連客ともすでに談笑できるようになっている。
コミュニケーション能力が高い。
「う~ん、まぁ嫌でも覚えるしかなかったからね。私はどっちかと言うとマナーなんて気にしないで、気楽に食べられるのが好きなんだけど、付き合いってのはあるからね。アラタも城に来る機会がまだまだあるんだから、ちゃんと覚えときなよ?」
ニヤリと笑ってアラタに流し目を送る。
目が合ってアラタは、ふとなつかしさを感じた。
・・・やっぱり、弥生さんにそっくりだ。
「ん?どうしたアラタ?なにボケっとしてんのさ?」
「あ、いや、なんでもないよ。そうだね・・・いい機会だから、しっかり勉強させてもらうよ」
「そうそう、覚えて損な知識ってのは一つのないからね?何でも興味を持ってやってみなよ」
左手の指を一つ立てて、アラタに言って聞かせると、話しを聞いていたシルヴィアがクスクスと笑い出した。
「ふふふ、なんだかアラタ君のお姉さんって感じね?手間のかかる弟って感じかしら?」
「え、シルヴィアさん、そんな手間がかかるって・・・」
「いや、テーブルマナーに限らず、実際アラタはちょっと手間がかかる。カチュアに甘えてる感じあるよね?私もちょっと見てやらなきゃって思ってたんだよね」
「え、い、いやいや、な、なんでそんな話しに・・・?」
「アラタ君、飲み物を注がれてる時は、グラスはいじっちゃ駄目よ?」
「アラタ、スープは皿の手前から奥に向かってスプーンを運ぶんだ。量はスプーンの半分から三分の二程度だぞ?スプーンからポタポタ零すなんてもってのほかだからな?」
両脇を女性二人に挟まれ、プレッシャーをかけられながらテーブルマナーの説明を聞かされるアラタを救ったのは、扉の開く音だった。
「お待たせしましたね」
女王アンリエールが部屋に入ると、アラタは真っ先に立ち上がった。
「あ!アンリエール様!ご招待ありがとうございます!」
シルヴィアとアゲハも一歩遅れて立ち上がり、アンリエールに一礼をする。
・・・アラタ君、逃げたわね?
・・・アラタ、逃げやがったな?
アンリエールの一歩後ろには、護衛のリーザとローザが付き従っている。
二人はアラタとシルヴィアを見ると、ニコリと微笑んで見せた。
偽国王との戦いで共闘して以来、二人はレイジェスを仲間、同志として見ている。
「ああ、そう固くならないで楽にしてちょうだい。そうそう、もう一人ご一緒したいというから連れて来たのよ」
そう言ってアンリエールが振り返ると、母親によく似た、ふわりとした絹のような金色の髪の少女が前に出た。
「皆さん、お久しぶりでございます」
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