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【950 二人の思想】
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「ベンよ、よくやった。そいつらは貴様の側近か?」
皇帝とベン・フィング、そして数名の男達を囲んでいる光輝く青い結界。
「ふっふっふ、はい。この者達は私がカエストゥスを出た時に連れて来ました。カエストゥスとて一枚岩ではありませんからな。私が大臣の時に目をかけていた者達ですが、私が牢に入れられてからも、変わらぬ忠義を護ってくれていました。やはり人間は信義が大事ですなぁ」
「フッ、帝国に寝返った貴様がよく言うな。まぁいい。それで、これはなんだ?天衣結界ではあるまい?・・・まさか?」
皇帝は自分の目の前の青い結界を見つめた。
結界の最高峰、天衣結界以上の強度を持ち、カエストゥス軍から撃ち放たれた、あれだけの数の魔法を全て防ぎきれる結界など一つしかない。
「さすがのご慧眼(すいがん)でございます。お察しの通りこれは魔道具、大障壁。カエストゥスのロビンが使っていた物ですが、ヤツが死んで城に保管されていたので、出て来る時に持ってきたのですよ。なにかの役に立つかもと思いましてね」
「話しには聞いた事はあるが、実物を見るのは初めてだ。いつ、どこで、誰が作ったかも分からない詳細不明の魔道具大障壁。だがその結界は決して破られる事はないという。現存する物で数える程度しかないらしいな。クインズベリーにいくつかあるという話しだが、カエストゥスにもあったのか」
ベン・フィングの言葉を聞いて、皇帝は記憶を辿るように視線を上に向けた。
その時、自分達を護っていた光輝く結界が、霧に消えるように消失した。
そしてそれと同時に、ベンの隣に立っていた魔法使いの男が苦し気に呻くと、膝から崩れ落ちるように倒れた。
「むっ、どうした?」
「魔力切れですな。大障壁は絶対の防御力を誇っておりますが、それゆえに消費する魔力は甚大。魔法兵団団長であったロビンとて、使用した事は過去に数回です」
倒れた魔法使いの部下を一瞥すると、ベンは辺りを見回して言葉を続けた。
そこには自分のために、限界を超えて魔力を使った部下への労わりは皆無だった。
目をかけていたと言っても、それは平治での事。命のやりとりの場では、ベンにとって兵士はあくまで駒でしかない。
「・・・ロビンは数千人を囲えるだけの大障壁を張れましたが、この者では我々だけを護る事が精一杯だったようですな。しかし、大障壁が無ければ我々もああなっていたかもしれません」
ベンの言葉を受け、皇帝もあらためて周囲に目を向けた。
カエストゥスから放たれた数多の魔法により、辺り一面焦土と化していた。
結界を張る時間さえなかった帝国軍の兵達は、その魔法の直撃を浴びる事となる。
その結果帝国軍は、死体の山を広げる事となった・・・・・
「・・・我が軍はほぼ壊滅か・・・ふむ、凄まじいものだな」
自国の兵士達の死骸を見ても、皇帝の表情にはほとんど変化は見られなかった。
無論、多少の驚きはあった。数万の軍勢を率いていたにも関わらず、一瞬でそのほとんどを失ってしまったのだ。
カエストゥスが放った攻撃魔法の一斉射撃、その威力の凄まじさには驚かされた。
だが、それだけだった。
これだけの数の兵の死体を見ても、皇帝の胸には一切の悲しみは無かった。
ベン・フィングと同様に、目的のためには血の繋がった兄弟さえ殺してきた皇帝にとっても、兵とは正に駒でしかなかったからだ。
替えの利く駒である以上、そこに感情の入る事などありえるはずがないのだ。
淡々と戦局を見極める皇帝に、ベン・フィングもまた、帝国へ鞍替えした己の判断は正しかったと感じ取っていた。なぜならば皇帝とベン・フィング、二人の思想は非常に似通っていたからだ。
「ところで皇帝、カエストゥス軍ですが・・・」
軍がほぼ壊滅してしまった今、帝国の戦力はもはや皇帝ただ一人。
しかしベンに焦りは微塵も無かった。もともとこの戦争の肝は数ではない。
カエストゥスにタジーム・ハメイドという絶対的な戦力があるように、帝国にも皇帝がいるのだ。
ベンに促されるように、皇帝はカエストゥス軍に顔を向けた。
「ああ、そう言えばまだヤツらがいたな。できれば城は残しておきたかったが、さすがにそこまで贅沢はいえんか」
皇帝の視線の先には、カエストゥス軍がズラリと並び立っていた。
そして魔法を撃ち放った黒魔法使い達に代わり、剣を構えた体力型がこちらに向かって走って来るのが見える。
「フッ、とっとと次弾を撃てばよいものを。剣で向かってくるとはな、この男が気がかりで撃てんようだな?」
皇帝が向ける視線の先には、黒いローブを着た老齢の男、エマヌエル・ロペスが倒れ伏していた。
その背中は大きく斬り裂かれ、おびただしい量の血が流れ、その体を赤く染めていた。
かろうじて息はある。だがもはや立つ事もできず、このまま死を迎えるだけの状態だった。
「敵ながら大した男だった。己の命を捨てて余と相打ちを狙う精神も見上げたものだ。だが貴様も言ったように、勝った者が強い。それだけだ」
ヒヤリとさせられた事は確かだ。
だが皇帝の裏で暗躍していたベン・フィングにより、ロペスは敗れる事となってしまった。
「消えゆく命の最後に見るがいい。貴様の国が亡びるところを!」
全身からほとばしる魔力が大地を割り、大気を震わせる。
両手に漲らせた魔力の凄まじさは、向かってくるカエストゥスの兵達の足を止めさせる程だった。
「フッ、自軍の指揮官が倒れているというのに、怖気づいたか?まぁ余の全力を向けられてはしかたあるまい・・・砕け散るがいィィィィィイーーーーーーーッツ!」
光源爆裂弾!
全てを破壊する巨大なエネルギー弾が、カエストゥス軍に向かって撃ち放たれた。
皇帝とベン・フィング、そして数名の男達を囲んでいる光輝く青い結界。
「ふっふっふ、はい。この者達は私がカエストゥスを出た時に連れて来ました。カエストゥスとて一枚岩ではありませんからな。私が大臣の時に目をかけていた者達ですが、私が牢に入れられてからも、変わらぬ忠義を護ってくれていました。やはり人間は信義が大事ですなぁ」
「フッ、帝国に寝返った貴様がよく言うな。まぁいい。それで、これはなんだ?天衣結界ではあるまい?・・・まさか?」
皇帝は自分の目の前の青い結界を見つめた。
結界の最高峰、天衣結界以上の強度を持ち、カエストゥス軍から撃ち放たれた、あれだけの数の魔法を全て防ぎきれる結界など一つしかない。
「さすがのご慧眼(すいがん)でございます。お察しの通りこれは魔道具、大障壁。カエストゥスのロビンが使っていた物ですが、ヤツが死んで城に保管されていたので、出て来る時に持ってきたのですよ。なにかの役に立つかもと思いましてね」
「話しには聞いた事はあるが、実物を見るのは初めてだ。いつ、どこで、誰が作ったかも分からない詳細不明の魔道具大障壁。だがその結界は決して破られる事はないという。現存する物で数える程度しかないらしいな。クインズベリーにいくつかあるという話しだが、カエストゥスにもあったのか」
ベン・フィングの言葉を聞いて、皇帝は記憶を辿るように視線を上に向けた。
その時、自分達を護っていた光輝く結界が、霧に消えるように消失した。
そしてそれと同時に、ベンの隣に立っていた魔法使いの男が苦し気に呻くと、膝から崩れ落ちるように倒れた。
「むっ、どうした?」
「魔力切れですな。大障壁は絶対の防御力を誇っておりますが、それゆえに消費する魔力は甚大。魔法兵団団長であったロビンとて、使用した事は過去に数回です」
倒れた魔法使いの部下を一瞥すると、ベンは辺りを見回して言葉を続けた。
そこには自分のために、限界を超えて魔力を使った部下への労わりは皆無だった。
目をかけていたと言っても、それは平治での事。命のやりとりの場では、ベンにとって兵士はあくまで駒でしかない。
「・・・ロビンは数千人を囲えるだけの大障壁を張れましたが、この者では我々だけを護る事が精一杯だったようですな。しかし、大障壁が無ければ我々もああなっていたかもしれません」
ベンの言葉を受け、皇帝もあらためて周囲に目を向けた。
カエストゥスから放たれた数多の魔法により、辺り一面焦土と化していた。
結界を張る時間さえなかった帝国軍の兵達は、その魔法の直撃を浴びる事となる。
その結果帝国軍は、死体の山を広げる事となった・・・・・
「・・・我が軍はほぼ壊滅か・・・ふむ、凄まじいものだな」
自国の兵士達の死骸を見ても、皇帝の表情にはほとんど変化は見られなかった。
無論、多少の驚きはあった。数万の軍勢を率いていたにも関わらず、一瞬でそのほとんどを失ってしまったのだ。
カエストゥスが放った攻撃魔法の一斉射撃、その威力の凄まじさには驚かされた。
だが、それだけだった。
これだけの数の兵の死体を見ても、皇帝の胸には一切の悲しみは無かった。
ベン・フィングと同様に、目的のためには血の繋がった兄弟さえ殺してきた皇帝にとっても、兵とは正に駒でしかなかったからだ。
替えの利く駒である以上、そこに感情の入る事などありえるはずがないのだ。
淡々と戦局を見極める皇帝に、ベン・フィングもまた、帝国へ鞍替えした己の判断は正しかったと感じ取っていた。なぜならば皇帝とベン・フィング、二人の思想は非常に似通っていたからだ。
「ところで皇帝、カエストゥス軍ですが・・・」
軍がほぼ壊滅してしまった今、帝国の戦力はもはや皇帝ただ一人。
しかしベンに焦りは微塵も無かった。もともとこの戦争の肝は数ではない。
カエストゥスにタジーム・ハメイドという絶対的な戦力があるように、帝国にも皇帝がいるのだ。
ベンに促されるように、皇帝はカエストゥス軍に顔を向けた。
「ああ、そう言えばまだヤツらがいたな。できれば城は残しておきたかったが、さすがにそこまで贅沢はいえんか」
皇帝の視線の先には、カエストゥス軍がズラリと並び立っていた。
そして魔法を撃ち放った黒魔法使い達に代わり、剣を構えた体力型がこちらに向かって走って来るのが見える。
「フッ、とっとと次弾を撃てばよいものを。剣で向かってくるとはな、この男が気がかりで撃てんようだな?」
皇帝が向ける視線の先には、黒いローブを着た老齢の男、エマヌエル・ロペスが倒れ伏していた。
その背中は大きく斬り裂かれ、おびただしい量の血が流れ、その体を赤く染めていた。
かろうじて息はある。だがもはや立つ事もできず、このまま死を迎えるだけの状態だった。
「敵ながら大した男だった。己の命を捨てて余と相打ちを狙う精神も見上げたものだ。だが貴様も言ったように、勝った者が強い。それだけだ」
ヒヤリとさせられた事は確かだ。
だが皇帝の裏で暗躍していたベン・フィングにより、ロペスは敗れる事となってしまった。
「消えゆく命の最後に見るがいい。貴様の国が亡びるところを!」
全身からほとばしる魔力が大地を割り、大気を震わせる。
両手に漲らせた魔力の凄まじさは、向かってくるカエストゥスの兵達の足を止めさせる程だった。
「フッ、自軍の指揮官が倒れているというのに、怖気づいたか?まぁ余の全力を向けられてはしかたあるまい・・・砕け散るがいィィィィィイーーーーーーーッツ!」
光源爆裂弾!
全てを破壊する巨大なエネルギー弾が、カエストゥス軍に向かって撃ち放たれた。
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