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1056 出てくるはずの無い名前
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目の前で見下ろしていた緑色の髪の弓使いが、地面を蹴って飛び上がった。
大人と子供、いや、それ以上と言ってもいい対格差だったが、果敢にも肉弾戦を挑んできた勇気は認めよう。
しかし自分には遠く及ばない。
引き締まってはいるが、自分とはとても比べられない細い腕を見て、デュークはリカルドの戦力を分析した。
典型的なスピードタイプだ。
一撃で倒す術を持たず、身軽さを頼みに削りながら好機を待つ。
だからこその弓なのだろう。
本来この手の体力型が、正面から向かってくるなど考えられない。
だが後ろで膝を着いている瀕死の青い髪の男と話し、プライドが痛く刺激されたらしい。
この体格差にも怯むことなく、真向から挑んで来た。
その挑戦は買ってやろう。だがこの体格差で、貴様の攻撃が俺に通用すると思うなよ?
勇気と無謀は違うという事を教えてやろう!
「オラァァァァァーーーーーーッツ!」
デューク・サリバンの胸元まで飛び上がると、リカルドは右の蹴りを顔面目掛けて繰り出した。
「フッ」
つまらなそうに鼻を鳴らすと、デューク・サリバンは軽々と左腕で蹴りを受け止めた。
10メートルの距離で放たれた矢を、拳で弾く程の動体視力を持つデュークにとって、たたの蹴りなど欠伸が出る程に遅かった。
そして蹴りを受け止めて左腕に感じた衝撃は、やはりデューク・サリバンに挑むにはあまりにも軽かった。
「オラァッツ!」
防がれた右足を引くと同時に、リカルドは空中で腰を右に回して左の蹴りを放った!
これもデューク・サリバンは、右拳の甲で受け止める。
「・・・軽いな。軽すぎて防ぐ必要性を感じない程だ。こんな蹴りでは、例え千発入れようとも、俺を倒す事はできないぞ」
「うっせーハゲ!リカルドさんの真骨頂をみせてやんぜ!」
左の蹴りを止められたリカルドは、その反動で一度地面に着地すると、再びデュークの顔の高さまで飛び上がった。
固く握り締めた右の拳を、デュークの顔面目掛けて繰り出す!
だがデュークは眉一つ動かさず、左手でリカルドの拳を払いのけた。
「オラァァァァァーーーーーーッツ!」
「無駄なあがきだ」
何度防がれようと、リカルドは果敢に攻め続けた。
だが何発打っても拳を払われ、幾度繰り出しても蹴りを受け止められる。
リカルドの攻撃はデューク・サリバンには全く届かない。
はたから見れば実力差は明白、望みなどない。
今は気まぐれなのかデュークが付き合っているが、この攻防はデュークの気持ち一つでいつでも終わらせる事ができる。
地面に両手をついたまま、辛うじて体を起こしているレイマートは、あまりにも圧倒的な戦力差に、絶望の眼差しで戦いを見つめていた。
無理だ・・・リカルドは決して弱くない。それどころかスピードは相当なものだ、ゴールド騎士の俺でも手こずるだろう。体が小さい分、攻撃力は足りないかもしれないが、それでもああも簡単に払われる程ではない。
あの男、デューク・サリバンが強過ぎるんだ。
「ぐっ・・・はぁっ、はぁっ・・・な、なんとか、しないと・・・くっ!」
レイマートは膝を立てると、震える体に力を入れて、無理やり立ち上がった。
もはや戦う力など一かけらも残っていない。
だがそれでも、ここでこのまま寝ているわけにはいかない。
せめて最後の一発を、その顔面にくれてやる!
「ッ!?」
そう覚悟を決めて、レイマートが残りの闘気をかき集め右手に漲らせた時、デューク・サリバンの目がスッと細められた事に気付いた。
終わらせる気だ、まずい!
レイマートは、にげろ!と叫ぼうとしたが、すでに遅かった。
「オラァァァァァーーーーーーッツ!」
リカルドが飛び上がり、そのまま右の膝をデュークの顎目掛けて繰り出す!
「もういい」
デューク・サリバンは心底つまらなそうにそう呟くと、リカルドの右膝に被せるように合わせて、左の拳を打ち込んだ!
終わりだ。貴様もつまらん男だった。
それは瞬きよりも短い、刹那の一瞬だった。
デューク・サリバンの目は、これから己の左拳で顔面を叩き潰す、弓使いを見据えていた。
爆発する矢には驚かされたが、それだけだった。体術も悪くない動きを見せたが、自分と戦うには何もかもが足りない。
勇ましいのは口だけだった。
もういい、もう終わらせよう。
失望して左拳を繰り出した瞬間、デューク・サリバンは驚きに目を見開いた。
「そいつを待ってたんだよ」
ニヤリと笑った緑色の髪の弓使いは、両手でデュークの左手首を掴むと、体を反らしてデュークの拳をスレスレで躱す。そしてそのまま拳を内側に捻る動きに合わせて、自らの体を回転させた。
「なにィッ!?」
デュークはこの戦場に降りてから、初めて本当の意味で驚かされた。
すでに倒した四人にも、いくつか目を見張るものはあった。
だがそれは、多少はやるな、というくらいの小さなものだった。
だがこれは違う。リカルド・ガルシアは、デューク・サリバンの手首を掴んだのだ。
つまり・・・ボクサーである、村戸修一の左ストレートを掴んで躱したのだ。
「ウオラァァァァァーーーーーーッツ!」
拳を掴まれた事で動揺したデューク・サリバン。
その硬直を見逃さず、リカルドは右膝を伸ばし爪先を立てると、デュークの左目を狙い突き刺した!
「・・・ん、だよぉ・・・」
悔しそうに歯噛みをするリカルド。
「狙いは悪くなかったが、惜しかったな?」
デューク・サリバンの左目を、潰すつもりで繰り出した蹴りだったが、ほんの数センチの差で額で受けられていた。皮が切れて血が滲み出ているが、それだけだった。
デュークは右の拳を握り締めると、リカルドの目を見た。
「お前はよく頑張った、だが・・・ここまでだ」
冷たく光るデュークの目を見て、リカルドは初めて死というものを意識した。
あ、もしかして・・・俺死んだ?
デューク・サリバンは顔の横で構えた右の拳を、今も自分の左手首を掴んで留まるリカルドに向けて、真っすぐに打ち放った!
デューク・サリバンの拳・・・リカルドの目には、それがまるで巨大な岩に見えた。
自分などひとたまりもなく潰されてしまうような、そんなとてつもなく大きな岩が、凄まじいスピードで迫って来る。
躱す事も防ぐ事もできない。この拳を受けた後に待っているものは確実なる死のみ。
リカルドにできる事は、このまま死を受け入れる事だけだった。
ち、ちくしょぉーーーーー!お、俺が、この俺がこんなとこで!
し、死にたくねぇ!まだ、まだ俺は・・・!
リカルドは強く、きつく目を瞑った。
次の瞬間には顔面を粉砕するだろう拳が叩き込まれる。
そう覚悟を決めた。
「・・・・・?」
だが、いつまで待ってもおとずれない死の衝撃に、リカルドは瞼を開けた。
そして自分の目の前に立つ、見慣れた赤い髪を見つけると、眉間にシワを寄せていつもの憎まれ口を叩いた。
「・・・レイチェルよぉ、おっせぇんだよ」
赤い髪の女戦士レイチェルは、デューク・サリバンの右手首を蹴りつけて軌道を逸らしていた。
「・・・すまない、まさかこんな状況だとは思わなかった。それで、こいつは帝国軍か?」
目の前に立つボウズ頭の男から視線を切らず、レイチェルは後ろのリカルドに言葉を向けた。
「ああ、アゲハがデュークって呼んでたぞ。そいつよぉ、兄ちゃんが言ってたヤツじゃね?」
「デューク?・・・まさか、デューク・サリバンか?」
驚くレイチェルの反応を見ると、デューク・サリバンは蹴られた右手を軽く振り、少しだけ目を細めた。
「女、俺を知っているようだな?」
「・・・貴様が、デューク・サリバン・・・アラタの兄貴分か?」
「・・・なに?」
デューク・サリバンの目が驚きに見開かれた。
ここでその名前が出るとは、想像さえしなかった。
出るはずがない。出てくる事がおかしいのだ。
だが、今自分の前に立った赤毛の女は確かに言ったのだ、アラタ、と・・・・・
「レイチェル!やっちまえ!そいつ一人にみんなぶっ倒されたんだ!かましてやれ!」
デューク・サリバンに明らかな動揺が見て取れると、好機と判断したリカルドが叫んだ。
「っ!」
「ハッ!」
リカルドの声は、レイチェルとデュークの耳に同時に届き、立ち尽くしていたデュークも我に返った。
だが臨戦態勢で構えていたレイチェルと、僅かな時間とはいえ気が逸れてしまったデュークでは、行動に一呼吸の差が出る。
その結果、レイチェルの右の前蹴りが、デュークの腹筋に突き刺さった!
大人と子供、いや、それ以上と言ってもいい対格差だったが、果敢にも肉弾戦を挑んできた勇気は認めよう。
しかし自分には遠く及ばない。
引き締まってはいるが、自分とはとても比べられない細い腕を見て、デュークはリカルドの戦力を分析した。
典型的なスピードタイプだ。
一撃で倒す術を持たず、身軽さを頼みに削りながら好機を待つ。
だからこその弓なのだろう。
本来この手の体力型が、正面から向かってくるなど考えられない。
だが後ろで膝を着いている瀕死の青い髪の男と話し、プライドが痛く刺激されたらしい。
この体格差にも怯むことなく、真向から挑んで来た。
その挑戦は買ってやろう。だがこの体格差で、貴様の攻撃が俺に通用すると思うなよ?
勇気と無謀は違うという事を教えてやろう!
「オラァァァァァーーーーーーッツ!」
デューク・サリバンの胸元まで飛び上がると、リカルドは右の蹴りを顔面目掛けて繰り出した。
「フッ」
つまらなそうに鼻を鳴らすと、デューク・サリバンは軽々と左腕で蹴りを受け止めた。
10メートルの距離で放たれた矢を、拳で弾く程の動体視力を持つデュークにとって、たたの蹴りなど欠伸が出る程に遅かった。
そして蹴りを受け止めて左腕に感じた衝撃は、やはりデューク・サリバンに挑むにはあまりにも軽かった。
「オラァッツ!」
防がれた右足を引くと同時に、リカルドは空中で腰を右に回して左の蹴りを放った!
これもデューク・サリバンは、右拳の甲で受け止める。
「・・・軽いな。軽すぎて防ぐ必要性を感じない程だ。こんな蹴りでは、例え千発入れようとも、俺を倒す事はできないぞ」
「うっせーハゲ!リカルドさんの真骨頂をみせてやんぜ!」
左の蹴りを止められたリカルドは、その反動で一度地面に着地すると、再びデュークの顔の高さまで飛び上がった。
固く握り締めた右の拳を、デュークの顔面目掛けて繰り出す!
だがデュークは眉一つ動かさず、左手でリカルドの拳を払いのけた。
「オラァァァァァーーーーーーッツ!」
「無駄なあがきだ」
何度防がれようと、リカルドは果敢に攻め続けた。
だが何発打っても拳を払われ、幾度繰り出しても蹴りを受け止められる。
リカルドの攻撃はデューク・サリバンには全く届かない。
はたから見れば実力差は明白、望みなどない。
今は気まぐれなのかデュークが付き合っているが、この攻防はデュークの気持ち一つでいつでも終わらせる事ができる。
地面に両手をついたまま、辛うじて体を起こしているレイマートは、あまりにも圧倒的な戦力差に、絶望の眼差しで戦いを見つめていた。
無理だ・・・リカルドは決して弱くない。それどころかスピードは相当なものだ、ゴールド騎士の俺でも手こずるだろう。体が小さい分、攻撃力は足りないかもしれないが、それでもああも簡単に払われる程ではない。
あの男、デューク・サリバンが強過ぎるんだ。
「ぐっ・・・はぁっ、はぁっ・・・な、なんとか、しないと・・・くっ!」
レイマートは膝を立てると、震える体に力を入れて、無理やり立ち上がった。
もはや戦う力など一かけらも残っていない。
だがそれでも、ここでこのまま寝ているわけにはいかない。
せめて最後の一発を、その顔面にくれてやる!
「ッ!?」
そう覚悟を決めて、レイマートが残りの闘気をかき集め右手に漲らせた時、デューク・サリバンの目がスッと細められた事に気付いた。
終わらせる気だ、まずい!
レイマートは、にげろ!と叫ぼうとしたが、すでに遅かった。
「オラァァァァァーーーーーーッツ!」
リカルドが飛び上がり、そのまま右の膝をデュークの顎目掛けて繰り出す!
「もういい」
デューク・サリバンは心底つまらなそうにそう呟くと、リカルドの右膝に被せるように合わせて、左の拳を打ち込んだ!
終わりだ。貴様もつまらん男だった。
それは瞬きよりも短い、刹那の一瞬だった。
デューク・サリバンの目は、これから己の左拳で顔面を叩き潰す、弓使いを見据えていた。
爆発する矢には驚かされたが、それだけだった。体術も悪くない動きを見せたが、自分と戦うには何もかもが足りない。
勇ましいのは口だけだった。
もういい、もう終わらせよう。
失望して左拳を繰り出した瞬間、デューク・サリバンは驚きに目を見開いた。
「そいつを待ってたんだよ」
ニヤリと笑った緑色の髪の弓使いは、両手でデュークの左手首を掴むと、体を反らしてデュークの拳をスレスレで躱す。そしてそのまま拳を内側に捻る動きに合わせて、自らの体を回転させた。
「なにィッ!?」
デュークはこの戦場に降りてから、初めて本当の意味で驚かされた。
すでに倒した四人にも、いくつか目を見張るものはあった。
だがそれは、多少はやるな、というくらいの小さなものだった。
だがこれは違う。リカルド・ガルシアは、デューク・サリバンの手首を掴んだのだ。
つまり・・・ボクサーである、村戸修一の左ストレートを掴んで躱したのだ。
「ウオラァァァァァーーーーーーッツ!」
拳を掴まれた事で動揺したデューク・サリバン。
その硬直を見逃さず、リカルドは右膝を伸ばし爪先を立てると、デュークの左目を狙い突き刺した!
「・・・ん、だよぉ・・・」
悔しそうに歯噛みをするリカルド。
「狙いは悪くなかったが、惜しかったな?」
デューク・サリバンの左目を、潰すつもりで繰り出した蹴りだったが、ほんの数センチの差で額で受けられていた。皮が切れて血が滲み出ているが、それだけだった。
デュークは右の拳を握り締めると、リカルドの目を見た。
「お前はよく頑張った、だが・・・ここまでだ」
冷たく光るデュークの目を見て、リカルドは初めて死というものを意識した。
あ、もしかして・・・俺死んだ?
デューク・サリバンは顔の横で構えた右の拳を、今も自分の左手首を掴んで留まるリカルドに向けて、真っすぐに打ち放った!
デューク・サリバンの拳・・・リカルドの目には、それがまるで巨大な岩に見えた。
自分などひとたまりもなく潰されてしまうような、そんなとてつもなく大きな岩が、凄まじいスピードで迫って来る。
躱す事も防ぐ事もできない。この拳を受けた後に待っているものは確実なる死のみ。
リカルドにできる事は、このまま死を受け入れる事だけだった。
ち、ちくしょぉーーーーー!お、俺が、この俺がこんなとこで!
し、死にたくねぇ!まだ、まだ俺は・・・!
リカルドは強く、きつく目を瞑った。
次の瞬間には顔面を粉砕するだろう拳が叩き込まれる。
そう覚悟を決めた。
「・・・・・?」
だが、いつまで待ってもおとずれない死の衝撃に、リカルドは瞼を開けた。
そして自分の目の前に立つ、見慣れた赤い髪を見つけると、眉間にシワを寄せていつもの憎まれ口を叩いた。
「・・・レイチェルよぉ、おっせぇんだよ」
赤い髪の女戦士レイチェルは、デューク・サリバンの右手首を蹴りつけて軌道を逸らしていた。
「・・・すまない、まさかこんな状況だとは思わなかった。それで、こいつは帝国軍か?」
目の前に立つボウズ頭の男から視線を切らず、レイチェルは後ろのリカルドに言葉を向けた。
「ああ、アゲハがデュークって呼んでたぞ。そいつよぉ、兄ちゃんが言ってたヤツじゃね?」
「デューク?・・・まさか、デューク・サリバンか?」
驚くレイチェルの反応を見ると、デューク・サリバンは蹴られた右手を軽く振り、少しだけ目を細めた。
「女、俺を知っているようだな?」
「・・・貴様が、デューク・サリバン・・・アラタの兄貴分か?」
「・・・なに?」
デューク・サリバンの目が驚きに見開かれた。
ここでその名前が出るとは、想像さえしなかった。
出るはずがない。出てくる事がおかしいのだ。
だが、今自分の前に立った赤毛の女は確かに言ったのだ、アラタ、と・・・・・
「レイチェル!やっちまえ!そいつ一人にみんなぶっ倒されたんだ!かましてやれ!」
デューク・サリバンに明らかな動揺が見て取れると、好機と判断したリカルドが叫んだ。
「っ!」
「ハッ!」
リカルドの声は、レイチェルとデュークの耳に同時に届き、立ち尽くしていたデュークも我に返った。
だが臨戦態勢で構えていたレイチェルと、僅かな時間とはいえ気が逸れてしまったデュークでは、行動に一呼吸の差が出る。
その結果、レイチェルの右の前蹴りが、デュークの腹筋に突き刺さった!
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