異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,098 / 1,560

1097 豪雨の来訪者

しおりを挟む
サカキ・アラタが現れるまで、クインズベリーで最強の体力型は、治安部隊前隊長のマルコス・ゴンサレスというのが通説だった。

勝利までの過程から、アラタ自身は自力で勝利したとは思っていない。
だが世間では、レイジェスのサカキ・アラタという店員がマルゴンに勝ったらしい。という噂が一人歩きしてしまったため、現在はクインズベリー最強の男として、サカキ・アラタの名前が上がっている。


そしてその役目から、ほとんど名前は知られていないが、長くマルコス・ゴンサレスを注視していた男がいた。

体力型の四勇士、レオ・アフマダリエフである。
クインズベリー城を護る四つの塔、その一塔を護る役目を、代々アフマダリエフ家が担って来た。

そして今代の四勇士レオ・アフマダリエフは、闘争心が強く、クインズベリー最強と称されるマルコス・ゴンサレスに強い興味を持っていた。

マルコス・ゴンサレスとはそんなに強いのか?俺とどっちが強い?マルコス・ゴンサレスと戦ってみたい。
やがてその気持ちを抑えきれなくなったレオは、機会を見て国王に願い出てみようと、そこまで考えるようになっていた。


だが昨年のクインズベリーでの戦いで、偽国王側について戦ったレオ・アフマダリエフは戦死してしまった。

そしてレオを倒したのは、レイジェスのジャレット・キャンベルと、シルヴィア・メルウィーである。


この事実に、アフマダリエフ一族は愕然とした。
なぜなら一族の中でも、レオは史上最高とも言える程の戦闘力を有していたからだ。

かつて最強の声が上がっていたマルコス・ゴンサレス。そのマルコス・ゴンサレスの上をいったサカキ・アラタ。だがアフマダリエフ一族は、この二人よりもレオが上だと信じていたのだ。

しかしそのレオが、二人がかりとはいえ敗北した。


アフマダリエフ一族の名誉は失墜した。
そしてその傷と痛みは今なお癒える事なく、一族を暗い影に落としこんでいた。







「うへぇ~、めっちゃ雨降ってきたじゃん、今日はキッチンモロニー行こうと思ってたのによぉ~」

ジーンとケイトの結婚式から一週間、その日は10月に入って最初の週末だった。
朝から空模様が悪く、風も冷たかったこの日は、カーディガンや厚地のニットなど、上に一枚羽織っている人を多く見かけた。
日没の早さ、着ている服の変化、冷たさを感じてきた空気・・・見る物や肌で感じるものが、だんだんと冬に向かっている事を実感させてくる。


今日の午前中はまだ空も持っていたが、時計の針が正午に差し掛かった時にはパラパラと雨が降り出して、ものの五分でバシャバシャと地面を打つ大きな音が、店内にまで響いてきた。

出入口のガラスから外を眺めるリカルドは、本日何度目かの大きな溜息をついた。


「・・・リカルド、今日は諦めてシルヴィアからパンをもらおう。外はとても行けない」

うなだれるリカルドの背中に、ユーリが声をかけた。

「んだよぉ~・・・今日はあそこのジャンボハンバーグって気分だったんだ、もうそれで腹ん中スタンバってんだよ、今さらパンに切り替えられっかよぉ~・・・」

「そんな目をしても雨は止まない。多分一日中この天気。その証拠にお客さんもほとんどいない」

落胆を顔に貼り付け、どんよりとした目をユーリに向けるが、ユーリは現実を分からせるように店内に手を差し向けた。
ユーリの言葉通り、いつもは朝から大勢のお客で賑わう店内だが、今日は数える程度にしか人が入っていない。朝からの不穏な天気に外出を控える人が多く、店に来ても早々に帰る人ばかりだったのだ。

その結果、レジも接客もほとんどする必要が無くなり、他のメンバー達は商品の手入れなどに時間を割いていた。

「シルヴィア、朝の天気見て、多分今日は外食に行けないって思ってたみたい。だからパンを多めに持って来たんだって。もらいに行こう。アタシの分はもう取っておいてもらってる」

「アタシの分て、お前自分の分だけかよ?なんで俺のももらっておかねぇんだよ?」

「リカルドが食べるんなら、リカルドがお礼を言うのが筋。ちゃんと自分の口で言う事」

「俺にシルヴィアに頭下げろって言うのかよ!?あいつは俺にパンを食わせるのを喜びにしてる女だぞ!俺が行ったらめっちゃ勝ち誇った顔すんの目に見えてんぞ!ユーリはそれでいいのかよ!?」

「え?・・・別にいいけど」

「はぁ~!?おまっ、お前なに!?いいってなにが!?俺が見下されんだぞ!?一大事だろ!」

メインレジ横の出入口の前で、ギャーギャー大声を上げるリカルドに、ユーリは冷めた視線を送りながら、呆れた口調で話し続けた。

「見下されるって、リカルドはシルヴィアに偏見を持ちすぎ。リカルドがパンをもらいに行ったら喜ぶだけ。きっと沢山もらえる。見下したりしない。早く行こうよ、それとも何も食べないで帰りまで持つの?」

「くっ!くそ、きたねぇぞ!そんなの、行くしかねぇじゃねぇか!」

「意味わかんない。もう本当に面倒くさい。お昼休憩だって限られてるんだから、さっさと・・・?」

リカルドの右腕を掴み、シルヴィアのところに連れて行こうとしたその時、外に見える人影にユーリは目を止めた。


「・・・リカルド、あれお客さんかな?」

「あ?客?・・・どれよ?」

眉を潜め、出入口のガラス戸の向こう側をじっと見るユーリに、リカルドも怪訝な顔をしながらユーリの視線の先を追った。

「あ~・・・あぁ、あれか?うわっ、この雨ん中で傘も差してねぇのかよ?水浴びなら海に行けっての・・・あれ、こっちに向かって来てね?」

外は叩きつけるような強い雨だった。
ガラス越しで視界も悪く、顔までは分からなかったが、町と店を繋ぐ石畳の道を、その人物はまっすぐレイジェスに向かって歩いて来ているのだ。

「・・・この雨の中、傘も差さずに買い物?」

「あ、分かった。だから傘買いに来たんじゃね?」

訝しむユーリにリカルドが軽口をたたくが、ユーリは全く相手にせず、むしろ警戒するようにリカルドの腕を引いて、出入口から離れた。


「痛っ、んだよ?あいつがどうかしたんかよ!?」

「・・・なんだか、嫌な感じがする・・・」

硬い声を出すユーリの額には汗の玉が浮かび、一筋の雫となって流れ落ちた。

「お、おい、ユーリ・・・あいつ敵なのか?」

尋常ではないユーリの様子に、リカルドもようやくただ事ではないと気が付いた。

ユーリは勘が鋭い。
こちらに向かってくるその人物から、何らかの危険な匂いを感じ取っていた。

場の空気が一気に張りつめたその時、豪雨の来訪者はレイジェスの入り口の前に立った。

そしてガラス越しに見てリカルドも瞬時に理解した。
こいつはこの雨の中、傘を忘れてずぶ濡れで買い物に来る客などではない。


こいつは・・・・・


水が入ってくるため、出入口の戸は人一人が通れる程度に空けて、半分程は閉じていた。
そのガラス張りの二枚戸の間に両手を入れて、左右に大きく開ける。


そして店内に一歩足を踏み入れてきたのは、銀髪の女だった。

肩の下まである長い銀色の髪をオールバックに撫でつけ、首元で結んで背中に流している。
目鼻立ちは整っているが、細く上に角度のついた眉と、鋭く青い瞳が冷たい印象を与えていた。

小柄だがユーリよりは上背があるように見える。155cmあるか無いかだろう。
伸ばした両腕は色白で細く、とても戦闘などできそうには見えない。

だが銀髪の女が身に付けている装備は、あきらかに体力型が身に付けるであろう物だった。

黒いロングシャツの上には、丸みのある鉄の肩当て、鉄の胸当て、肘から手首にかけての鉄鋼、そしてそれら全てが白い色で統一されていた。
白いスカートの下には、黒いロングパンツを穿いおり、膝には白い鉄の膝当てがはめられている。

さらに白いマントを羽織っており、女の銀色の髪との一体感が感じられた。

体付きだけ見れば、体力型としては優れた者ではない。
だがこの女から発せられる空気、雰囲気とでも言うべきものは、この銀髪の女が並々ならぬ力を持っていると教えていた。


この時リカルドとユーリは、呑まれていたのかもしれない。

突如として現れ、一瞬で場を支配する存在感を放つこの銀色の髪の女から、目を離す事ができずにただ立っている事だけしかできなかった。

そんな二人を尻目に、銀色の髪の女は首を回して店内をゆっくりと見やる。
そして探し物が見つからなかったのか、あらためて正面に顔を戻すと、抑揚の無い声で二人に問いかけた。


「私はルーシー・アフマダリエフ。レオを殺した二人はどこだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...