異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,130 / 1,560

1129 出発の時

しおりを挟む
「よぉ、お前ら、とうとうこの日が来ちまったな」

台の上に立ったクインズベリー軍団長バーナード・ロブギンスは、開口一番に重く渋みのある声で、そう言葉を発した。

ニヤリと笑うと口周りの白い髭が持ち上がる。
白い歯が覗き見えると、ロブギンスは楽しそうに笑いだした。


「クックック・・・いやいや、ワシが生きてる間に帝国と戦争になるとはなぁ・・・まぁ始まったもんはしかたない。今の皇帝は元帝国軍の大将だったダスドリアン・ブルーナーか・・・クックック、ケツの青いヒヨッコが調子に乗りおって・・・」

楽しそうに肩を揺らして笑っているロブギンスだが、その深く青いコバルトブルーの目だけは、刃のように研ぎ澄まされていて、まったく笑っていなかった。

帝国の皇帝でさえヒヨッコと断じ、これから戦場へ向かうと言うのに笑ってのける胆力には、遠くから見ていたアラタも思わず見入ってしまった。


「あの人がクインズベリーの軍団長だ。今だから言うけどよ、去年の偽国王との戦いの時、あの人が敵に回っていたらどうなっていたか分からないぞ」

前を向いたまま、ヴァンはあの時の戦いについて話した。
そしてそれは、アラタも気になっていた事であった。

クインズベリー国に軍隊がある事は知っていた。
だがあの戦いで軍は一切出て来なかった。城で待ち構えていたのはほとんどが騎士団だったのだ。
偽国王はレイジェス側の動きを読んでいたのだから、騎士団と軍隊を一緒に出しておけば、結果は変わっていたかもしれない。


「ヴァン、実は俺も少し気になっていたんだ。四勇士とゴールド騎士まで出して来たんだから、それで十分だと思われていたかもしれないなって自分で結論付けてたけど、ヴァンは何か知ってるのか?」

「ああ、治安部隊って仕事柄、軍にも知り合いは多いからな。あの戦いの後で聞いたんだよ。そうしたらな、ロブギンスさんの判断で、軍はどちら側にもつかず中立を取る事になったらしい。言われてみればそれが一番だなって思ったよ。軍はあくまで国民を護るための戦いが最優先だって事で、偽国王に何を言われても動かなかったそうだ。ロブギンスさんはその時、どちらに正義があるかはいずれ分かる、そう言っていたらしい」

「へぇ、すごいな。国王の要請を断ったのか?普通は処分されそうだけど、今こうしてこの場にいるって事はお咎め無しだったんだろ?しかも、いずれ分かるって言ってたって事は、軍団長も国王がおかしい、もしかしたらって感じてたんじゃないのか?」

なぜあの戦いで軍が出てこなかったのか?
その理由を知り、アラタは驚きと同時に、軍団長の決断力に強く感心した。

「ああ、やっぱりおかしいとは思っていたようだ。薬で操られているとか、偽物の可能性も疑っていたらしい。けれど疑わしいってだけで行動は起こせないし、行動したらしたで軍の七万人に大きな影響を与えるだろ?だからロブギンスさんは中立を決めたんだ。そして反乱を起こした俺達に、本当の正義があれば勝つだろう・・・そう、話していたそうだ」

「なんか、全部見透かされて感じだな・・・でも、軍団長がすごい人だって事はよく分かったよ。ここに集まっている一万人も、真剣に軍団長の話しを聞いてるし、あの人が指揮官として全体を動かすんなら、何も心配いらなそうだな」

「そういう事だ。俺やフェリックスも、部隊長としては動くが、総大将はロブギンスさんだ。お前達レイジェスは独立部隊扱いだけど、ロブギンスさんの指示には従っておけ」

「そうだな・・・」

そこでヴァンとの会話を切ると、アラタはもう一度バーナード・ロブギンスに目を向けた。

170cmに満たない体格だが、台の上で兵達に向かって力強く演説をするロブギンスは、とても大きく頼もしく見えた。
一軍の大将とはこういうものだと、その姿から感じ取れるようだった。






「アラタ、私達は最後尾だ」

ロブギンスの演説が終わると、いよいよ出発の準備が始まった。
軍団長を先頭に、軍の幹部らしい男達が隊列の確認をしている。
それをアラタが見ていると、レイチェルが付いて来いと指を向けて来た。

「ん、ああ分かった」

「じゃあな、俺はこっちだから一旦ここでお別れだ。実は治安部隊も五百人くらいここに来てるんだよ」

呼ばれたアラタがレイチェルに付いて行こうとすると、ヴァンは軽く手を振って中庭に入って行った。

「騎士団も五百くらいはいるようだな、ゴールド騎士の三人もあっちにいるぞ」

レイチェルの後ろに付いて歩くと、見てみろと言うようにレイチェルが中庭を指差す。
そこに目を向けると、黄金の鎧を身につけた三人を先頭に、騎士団が隊列を組んでいた。

「あ、いたいた。あいつら鎧が金ぴかだから一発で分かるな」

「フッ、本当にあの鎧は目印みたいなものだな・・・さてと、ここだな。後は前が進むのを待てばいい」

少し場所を移動して、レイチェル達は軍の最後尾に付いた。

隊列は軍隊を中心として、騎士団と治安部隊が間に入る編成のようだ。
最後尾のレイジェスは、彼らの後をただ付いて歩いて行けばいい。



「ん、カチュア?・・・緊張してるの?」

ふと、アラタは自分の隣に立つカチュアが、表情を硬くしている事に気が付いた。

「・・・え、と・・・うん、いよいよ出発だなって思うと、だんだん怖くなってきて・・・・・」

俯きながら、小さな声で話すカチュア。
今まで会議にも参加して、戦いの準備を進めてきた。心構えはできたと思っていたが、こうして出発の時を迎えた事で、戦争に行くという事が実感としてその身に感じられてきたのだ。


「・・・カチュア」

アラタはカチュアの手を握った。

「・・・アラタ君・・・・・」

カチュアが顔を上げると、となりに立つ最愛の夫と目が合った。
いつもと変わらない。いつもと同じ優しい笑顔で、自分に笑いかけてくれた。

そして彼は戦いに出る時、必ず自分が安心できるように心強い言葉をかけてくれるのだ。


「大丈夫。俺がカチュアを護るから。一緒に帰って来よう・・・この国に」


「・・・うん、信じてる。絶対に一緒に帰ってこようね」


カチュアもまたアラタの手を強く握り、笑顔を返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...