異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,134 / 1,560

1133 標的までの距離

しおりを挟む
「ぐ、くそッ!なんだこれはッ!」
「かなりの威力があるぞ!青魔法兵は結界に集中して穴を空けるな!」

頭上から雨あられの如く撃ちこまれる光線に、クインズベリー軍の結界は強く激しく揺さぶられた。

魔力を放出する青魔法兵達も、ズシンと腕に響く衝撃に顔を歪ませる。
数万人が張り合わせた結界に対し、この攻撃がどれだけ強力で恐ろしいものかを、全員が一瞬にして理解した。




「おい、レイチー、こいつは帝国の攻撃だよな?」

クインズベリー軍に動揺が広がる中、ジャレット・キャンベルは左手を腰に当てながら、右手で空に浮かぶ黒い球体を指差した。

「ああ、そうとしか考えられんな。この光線、かなりの威力だが魔法ではなさそうだ。それと厄介な事に、いつになったら撃ち終わるのか全く見当がつかない。こうして待っていればいつか終わるだろうと、そんな安易な考えはできんな」

レイチェルも首を上げて、頭上で青く輝く結界が揺さぶられている事を見た。
光線は絶え間なく降り注ぎ、結界にぶつかると爆発を起こす。一発一発が軽視できない程の破壊力だった。


「ジーン、ケイト、大丈夫か?」

ミゼルが青魔法使いの二人に声をかけた。
ジーンとケイトは、レイジェスのメンバー達の頭上を囲うように、両手を上げて結界を張っていたからだ。

「ああ、けっこう響くけど大丈夫。このくらいならしばらくは持つよ」

ジーンは顔色を変える事もなく答えた。結界にぶつけられる光線は確かにかなりの威力である。
並の青魔法使いであれば、あっさり結界を破られていただろう。

だがウィッカーとの修行で力を上げた今のジーンとケイトは、易々と突破されるあまい結界を張る事はない。そして長時間結界を維持できる、魔力の上積みもあった。

「そうそう、心配する程じゃないよ。でも、私らはともかく軍の青魔法兵は厳しいかもね。この光線、中級魔法くらいの攻撃力はあるよ。しかもあの黒い球、さっきからずっと撃ち続けてる。レイチェルの言う通り、いつまで続くか分からない。だからさっさとあの黒い球をなんとかしなきゃだね」

ケイトも顔を上げて、空に浮かぶ黒い球を見た。
休む事なく撃ち続けてくる光線に、クインズベリー軍は完全に足を止めて防御に追われている。

軍の青魔法兵もまだしばらくは耐えられるだろうが、確実に魔力を削られている。
これが続けば、今後の進軍に大きく影響を与えるだろう。


「その通りだな、軍の方でも対処を急いでいるようだが、こういう時は俺ら独立部隊の方が身軽で動きやすいわな。て事で、ミッチーとシーちゃんであの黒い球を攻撃してくれ。残りの体力型でこれを仕掛けたヤツを倒しに行こうぜ」

ミゼルが親指を前方にクイっと向けると、レイチェルが右手を前に出して待ったをかけた。

「待て、ミゼルとシルヴィアで黒い球を攻撃するのは同意見だが、相手が何人いるか、どこから仕掛けているか分からない以上、体力型全員を出すと決めるのは早い。まずはサーチで調べてみよう、ケイト、頼む」

「了解、じゃあジーン、結界は頼むね」

「分かった。任せてくれ」

ジーンが両手から放出する魔力を増やし、結界の効果範囲を広げると、ケイトは両手を下ろして結界を解いた。そして目を閉じて両手の平を地面に向けると、足元から青く輝く魔力が放射状に広がっていった。


「わぁ、ケイトさんすごい!前より魔力の流れが滑らかで綺麗です」

「店長との修行の成果ね、結界からサーチへの魔法の切り替えもスムーズだわ」

カチュアが驚きと感心を言葉にすると、シルヴィアもまたケイトの魔力操作の上達に、うんうんと頷いて見せる。


「・・・・・いた、多分こいつらだ。前方800メートル先にいる二人組、他に人の気配は無い」

敵を捕らえたのか、ケイトは目を閉じたまま少しだけ眉根を寄せて、静かに、だがハッキリとした口調で話した。

「え?前方800メートルって・・・ケイト、あなた以前はサーチの範囲が500メートルって言ってたわよね?800って・・・今はどこまで分かるの?」

ケイトがサーチした距離を聞いて、シルヴィアが目をパチパチさせて聞き返した。

敵の情報を得た事に反応すべきなのだろうが、この800メートルという数字は、師ウィッカーのサーチ範囲を大きく上回っているものであり、系統は違えど同じ魔法使いとして、条件反射のように反応してしまったのだ。


「知りたい?じゃあ教えてあげよう、今のアタシのサーチは1000メートルだよ」


ケイトは目を開けると、トレードマークの黒のキャップの鍔を指で弾き、ニッと歯を見せて笑った、






「二人か・・・もっと大人数で待ち伏せていると思ったが、相当自信のある二人のようだな」

「レイチー、どうする?早めになんとかしねぇと、軍がやべぇぞ」

「・・・敵が体力型か魔法使いか分からないが、ミゼルとシルヴィアに黒い球の迎撃を任せる以上、やはり体力型が出るしかないな・・・アラタ、キミ、光の力を使えばあの光線を防げるか?」

突然の質問に、アラタはどういう意図なのか考えてしまった。それでもレイチェルが意味の無い質問をするはずがないと思い、空を見上げて黒い球が放つ光線をじっと見て答えた。

「・・・できると思う。けっこうスピードあるから、タイミングを合わせるのは慎重にならなきゃだけど、防げない程の攻撃力ではないかな」

「よし、アゲハ、キミはどうだ?風の力を使えば光線を防げるかい?」

「ん?・・・あぁ、そうだね。できなくはないかな。ただ、真正面から受けるのは厳しいかもしれない。風で軌道をずらして受け流すって感じかな」

アゲハもなぜそんな事を聞かれるのか気にはなった。だがアラタ同様、なにかあるのだろうと聞かれるままに答えると、レイチェルは迷いの無くなった目で、レイジェスのメンバーに顔を向けた。

「十分だ。じゃあこの黒い球を使ってる敵には、私とアラタとアゲハとリカルド、この四人であたる。ジャレットは残ってレイジェスを指揮してくれ。頼んだぞ」

「久しぶりに俺も暴れたかったんだけど・・・しかたねぇ、分かったよ。そうと決まったんなら早く行きな、軍とか他のとこには俺から説明しといてやるよ」

急遽、敵の討伐メンバーを発表したレイチェルだったが、ジャレットは異論をはさむ事なく了承した。

それは一重にレイチェルへの信頼である。
これまでウィッカーの代理として、店を護って来たレイチェル。
率先して戦場へ赴き、誰よりも前に出て戦ってきたレイチェル。

レイチェル・エリオットという一人の戦士への信頼が、ジャレットを頷かせた。

「アラやん、リカルード、アーちゃん、お前達も文句はねぇよな?行ってこい」


「はい!」

「ジャレット、お前後でマジぶっ殺す」

「はいよ、まかせといて」

真面目に返事をするアラタ。渾名で呼ばれて怒るリカルド。軽い調子で手を挙げるアゲハ。
三者三様の態度で返事をすると、レイチェルが号令をかけた。


「時間が惜しい。標的まで800メートルだ、見つけ次第制圧する。行くぞ!」


そう言うなり雪原を駆けだしたレイチェルの後を、アラタ、リカルド、アゲハの三人も追って走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...