異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,172 / 1,560

1171 優れない顔色の原因

しおりを挟む
「あ、おはようレイチェル。体はもう大丈夫か?」

アラタ達の班がテントを片付けていると、白いケープを羽織ったレイチェルが近づいてきた。
顔色もずいぶん良くなっていて、もう一人で出歩けるようだ。

「おはようアラタ。この通りもう一人で歩けるよ。明日くらいには戦闘もできるようになると思う。キミも大丈夫なのか?」

時刻は6時30分。
お互いが言葉を口にする度に見える白い吐息が、冬の早朝の冷え込みを意識させる。

「それなら良かった。俺ももう大丈夫、力もバッチリ戻ってるよ。あ、ユーリは大丈夫?かなり血が出てて危なかっただろ?それなのに昨日は、ギリギリまで負傷者の手当をしてたしさ」

「ああ、やはり無理をしてたようだから、さすがに途中で止めたぞ。さっき起きたけど、あまり顔色も良くないし、今日は一日寝てもらう事にした。ユーリのおかげで何人もの兵が助かったけど、自分が倒れてしまっては元も子もないからな。カチュアには今日はユーリに付いてもらうから、寂しくても泣くなよ?」

少しだけ口の端を持ち上げて、からかうような目を向けて来るレイチェルに、アラタも笑って返した。

「おいおい、いくらなんでもそのくらいで泣かないって。はは、レイチェル・・・その調子なら本当にもう大丈夫そうだな」

「・・・心配かけたね。今回は私の油断がまねいた負傷だ・・・可能性としては本当に低い、本当にゼロに近い確率だ。だけど強い想い死者をも動かす・・・これは事実としてある事なんだ。だから私はあの男の死体からも意識を切るべきではなかったんだ。私があの一撃を食らった事は、完全に私の油断からくるものだ。失態だ・・・」

刺された左脇腹に手を当て、レイチェルは悔しそうに眉根を寄せた。


「・・・レイチェルはすごいよ」

「・・・すごい?」

「ああ、そういう事実があったとしても、やっぱり死体が動くなんて考えて行動しないよ。前例があるって言っても、ゼロに近い確率なんだろ?そんなの普通は誰も警戒しないよ。でもレイチェルはそんな想定できない事も自分のミスだと言って、反省して次に生かそうとしている。それってすごい事だよ?大抵の人はしかたないですませるもんだからね」

「アラタ・・・キミ、たまにすごく良い事言うよね?」」

「え、いや、そんな大した事は言ってないつもりだけど」

「いやいや、キミけっこうクサイ事言う時もあるし、なんだかんだで熱いし涙もろいし、人間くさいって言うのかな?そんな感じだよ?」

レイチェルがからかうように視線を送ると、アラタは少し慌てたように両手を前に出してブンブンと振った。
真面目な性格ゆえに、どうしても人の言葉を正面から受け取ってしまいがちなのだ。
そのうえイジリに弱く、こういう言葉をかけられるとどう返していいか分からず、すぐに顔が赤くなる。

「いやいや、待って!なに!?なんかすごい恥ずかしくなってきたから、そのへんで勘弁してよ!」

「ははは、それでいてけっこう照れ屋だよね?」

「レイチェルーーー!」

アラタが困り果てて抗議すると、一緒にテントを片付けていたジーンが口を挟んで来た。

「レイチェル、そのへんにしておきなよ。アラタが困ってるよ」

慣れた手つきでポールやシートをまとめて、収納用のバッグに収めている。
手際の良さから、ジーンがキャンプ経験者だと分かる。

「あははは、そうだね、ごめんごめん。ついね」

「ふー・・・ほんとにかんべんしてくれよ」

レイチェルが顔の前で手を合わせてアラタに謝ると、アラタもしかたないなと言うふうに笑い、額の汗を拭って軽く一息ついた。


「・・・でも、ありがとう。キミの言葉で励まされたよ」

「えっ!あ、いや・・・うん、それなら良かったよ」

レイチェルの不意打ちで感謝の気持ちを伝えられたアラタは、照れくさそうに頭を掻いた。






「さすがに三日続けての奇襲は無いよな?」

朝食を終えて出発したクインズベリー軍。後方を歩くのはレイジェス一行。
ミゼルは周囲を見回しながら、誰に言うでもなくそう言葉を口にした。

「敵も二回続けて撃退されてんだし、ちょっとは様子を見るんじゃねぇか?でもそう言ってて来るって事もあるからな。油断はするなよ。いつでも戦える準備はしておけよ」

ミゼルの前を歩くジャレットが振り返って、念を押すように話した。

「分かった分かった。気は抜かないから大丈夫だって。それにしてもよ、昨日の人形は驚いたよな。あんな魔道具が帝国にはまだあんのかな?」

ミゼルが話しを変えると、一歩後ろを歩いていたケイトが言葉を拾って答えた。

「あれって古代魔道具なんだって、昨日四勇士のフィゲロアが言ってたよ」

「え?マジ?・・・いや、そうだな、それなら納得できる。あ~、なんで気付かなかったんだろ。黒い球といい人形といい、あんなとんでもねぇの古代魔道具に決まってるよな」

額に手を当て、驚きをあらわにするミゼルを横目に、ジャレットもケイトに顔を向けた。

「ケイティ、その話しマジか?古代魔道具なんて俺も話しにしか聞いた事ねぇぞ」

「アタシも驚いたけど、四勇士のフィゲロアがそう言うんだもん。嘘つく必要もないじゃん?それに実際すごい魔道具だったしさ」

あっけらかんと話すケイトの肩を、シルヴィアが指先でつついた。

「・・・ねぇケイト、それでフィゲロアは他になんて言ってたの?情報は共有しないと、本当は昨日のうちに話してほしかったわ」

「あ~・・・ははは、ごめんごめん。ほら、色々慌ただしかったでしょ?うっかりしてたよ。えっとね・・・」

ジロリとした目を向けられると、ケイトは後ろ手に頭を掻きながら、昨日フィゲロアから聞いた古代魔道具の話しを始めた。






「・・・なるほどなぁ・・・それじゃあ帝国にはもっと強い古代魔道具があると考えていいだろうな。やっかいだな・・・」

ケイトが話し終えると、ジャレットは腕を組みながら難しい顔をして唸る。

「そうだな、まさか部下に最強の魔道具を持たせるわけはないだろうし、師団長クラスはより強力な古代魔道具を持ってると見るべきだろうな」

ミゼルもジャレットに同意して、深くうなずいた。
そんな考え込むジャレットとミゼルを見て、ジーンが口を挟んだ。

「・・・まぁ、今考えても答えはでないよ。頭にだけ入れておいて、まずは目の前の事を考えようよ。朝から気になってたんだけどさ、なんだか周りの兵士達の顔色が悪いと思わないかい?」

ジーンの指摘にみんなが周囲に目を向ける。


「・・・確かに、そうだな。なんかみんな目の下に隈もできてるな。寝不足か?」

怪訝な顔をするジャレットの疑問に、シルヴィアが答えた。

「あらジャレット、感が良いじゃない?でも50点よ。寝不足は寝不足でも、単純に睡眠時間が足りないって話しではないわね」

「え?シーちゃん、それってどういう意味だよ?」

ジャレットが首を傾げると、シルヴィアはスっと目を細め、真剣みのある声で言葉を発した。


「彼らはね、恐怖で眠れないのよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

処理中です...