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1174 マルスとオスカーの違い
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「マルス殿下、お疲れ様でした」
慰問を終えて村の外へ出ると、マルスの一歩後ろを歩くエステバン・クアルトが、小さな声で労りの言葉をかけた。
「いや、俺は大丈夫だ。それよりクアルトの方が大変だっただろ?腰をやって歩けない老人の治療までやったんだから」
「ん~、そうでもないですけどね。僕くらいになると余裕ですよ。まぁ、あの村の白魔法使いでは完治はできなかったんだから、すごい喜ばれましたよね」
顎先に指を当て、クアルトはくったくのない笑みを浮かべて答えた。
並の白魔法使いであれば、歩けないくらい痛めた腰を回復させるには、相当な魔力と時間を必要とするし、そもそも完治させる事さえ難しい。
しかしクインズベリー国一番の白魔法使いであるクアルトにとっては、立てない者を立たせる事も、動かない足を動かす事も、さして難しい事ではなかった。
「ああ、これであの村にも活気が出るだろう。クアルト、明日も頼むぞ」
足を止めてマルスがクアルトに向けたその顔は、部下に向けるものではなく、信頼する仲間に向けるものだった。
「・・・へぇ、団長の言う通りだ。マルス殿下、なんか本当に変わりましたね?」
少しの驚きを言葉に乗せると、マルスは小さく笑って、行くぞ、とだけ短く返した。
「アルベルト・・・僕はちゃんとできていたかな?」
自信の無い声で話しかけたのは、第二王子のオスカーである。
兄であるマルスから少しの距離をとり、俯きがちに歩くその姿は、堂々としたマルスとは対照的であった。
「はい、ご立派でしたよ。オスカー殿下」
オスカーの問いにゴールド騎士のアルベルトは、一歩後ろを歩きながら優しい口調で答えた。
しかしアルベルトの言葉を聞いても、オスカーの表情は曇ったままだった・
「・・・そう、かな・・・・・」
小さな呟き・・・そして前を歩く兄の背を見つめるその目には、優秀な兄に対する劣等感が見えた。
「・・・村人達は皆喜んでおりました。彼らは生きる希望を見出した事でしょう。オスカー殿下、ご立派でしたよ」
アルベルトがもう一度ゆっくり同じ言葉をかけると、オスカーは足を止めて振り返りアルベルトの顔を見た。
「でも僕は、兄上のように力強い言葉をかける事はできなかった。ニコニコ笑って彼らの話しを聞いていただけで・・・・・」
村人達の前に立ち、必ずこの戦争を終わらせ平和を取り戻すと強く語ったマルス。
そんなマルスに対してオスカーは、隣で笑顔を浮かべながら時折マルスに相槌を打つだけで、話す言葉も少なかった。
「オスカー殿下・・・殿下には殿下にしかできない事があります。必ずしもマルス殿下と同じ事をなさる必要はありません。オスカー殿下のお言葉で、勇気づけられた者もいるのです。自信をお持ちくださいませ」
アルベルトはオスカーの眼をまっすぐに見て言葉を返した。
「・・・アルベルト・・・」
「私はオスカー殿下の優しさこそ、クインズベリーにとって最も必要だと思っております」
控えめな性格のオスカーだが、心根の優しさは兄弟の仲で一番である。大半の貴族が次期国王にマルスを押す中、アルベルトはオスカーの優しさこそ、次期国王として必要なものだと考えていた。
ニッと歯を見せて笑うアルベルトに、オスカーは驚いたように目を開いた。
そして少しだけ口を閉じた後に微笑んだ。
「・・・アルベルト・・・・・ありがとう」
「いえ・・・では、まいりましょう」
オスカーの表情が和らいだのを見て、アルベルトは先を促した。
その日の慰問が終わると、クインズベリー軍は次の町へと向かい足を進めた。およそ半分程進んだところで、日の傾き具合を見て夜営を始めた。
クインズベリーを出立して三日目は、襲撃を受ける事なく一日を終える事ができた。
戦闘をする事がなかったのだから、本来は体も休まり疲れもとれているはずである。
だが四日目の朝を迎えた兵士達の顔には、寝不足からくる隈と、色濃い疲労がハッキリと見えた。
慰問を終えて村の外へ出ると、マルスの一歩後ろを歩くエステバン・クアルトが、小さな声で労りの言葉をかけた。
「いや、俺は大丈夫だ。それよりクアルトの方が大変だっただろ?腰をやって歩けない老人の治療までやったんだから」
「ん~、そうでもないですけどね。僕くらいになると余裕ですよ。まぁ、あの村の白魔法使いでは完治はできなかったんだから、すごい喜ばれましたよね」
顎先に指を当て、クアルトはくったくのない笑みを浮かべて答えた。
並の白魔法使いであれば、歩けないくらい痛めた腰を回復させるには、相当な魔力と時間を必要とするし、そもそも完治させる事さえ難しい。
しかしクインズベリー国一番の白魔法使いであるクアルトにとっては、立てない者を立たせる事も、動かない足を動かす事も、さして難しい事ではなかった。
「ああ、これであの村にも活気が出るだろう。クアルト、明日も頼むぞ」
足を止めてマルスがクアルトに向けたその顔は、部下に向けるものではなく、信頼する仲間に向けるものだった。
「・・・へぇ、団長の言う通りだ。マルス殿下、なんか本当に変わりましたね?」
少しの驚きを言葉に乗せると、マルスは小さく笑って、行くぞ、とだけ短く返した。
「アルベルト・・・僕はちゃんとできていたかな?」
自信の無い声で話しかけたのは、第二王子のオスカーである。
兄であるマルスから少しの距離をとり、俯きがちに歩くその姿は、堂々としたマルスとは対照的であった。
「はい、ご立派でしたよ。オスカー殿下」
オスカーの問いにゴールド騎士のアルベルトは、一歩後ろを歩きながら優しい口調で答えた。
しかしアルベルトの言葉を聞いても、オスカーの表情は曇ったままだった・
「・・・そう、かな・・・・・」
小さな呟き・・・そして前を歩く兄の背を見つめるその目には、優秀な兄に対する劣等感が見えた。
「・・・村人達は皆喜んでおりました。彼らは生きる希望を見出した事でしょう。オスカー殿下、ご立派でしたよ」
アルベルトがもう一度ゆっくり同じ言葉をかけると、オスカーは足を止めて振り返りアルベルトの顔を見た。
「でも僕は、兄上のように力強い言葉をかける事はできなかった。ニコニコ笑って彼らの話しを聞いていただけで・・・・・」
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そんなマルスに対してオスカーは、隣で笑顔を浮かべながら時折マルスに相槌を打つだけで、話す言葉も少なかった。
「オスカー殿下・・・殿下には殿下にしかできない事があります。必ずしもマルス殿下と同じ事をなさる必要はありません。オスカー殿下のお言葉で、勇気づけられた者もいるのです。自信をお持ちくださいませ」
アルベルトはオスカーの眼をまっすぐに見て言葉を返した。
「・・・アルベルト・・・」
「私はオスカー殿下の優しさこそ、クインズベリーにとって最も必要だと思っております」
控えめな性格のオスカーだが、心根の優しさは兄弟の仲で一番である。大半の貴族が次期国王にマルスを押す中、アルベルトはオスカーの優しさこそ、次期国王として必要なものだと考えていた。
ニッと歯を見せて笑うアルベルトに、オスカーは驚いたように目を開いた。
そして少しだけ口を閉じた後に微笑んだ。
「・・・アルベルト・・・・・ありがとう」
「いえ・・・では、まいりましょう」
オスカーの表情が和らいだのを見て、アルベルトは先を促した。
その日の慰問が終わると、クインズベリー軍は次の町へと向かい足を進めた。およそ半分程進んだところで、日の傾き具合を見て夜営を始めた。
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