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1192 エリクスの決断
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・・・・・エリクス、もし俺が眼帯を外したらお前は軍へ引き返せ。
白魔法使いのエリクス・スピルカは、目の前で上がった巨大な火柱を見て、戦闘前にクレイグに言われた言葉を思い出していた。
普段口を利かないクレイグが、めずらしく自分から話しかけてきた。
しかもこれまでにないくらい、真剣な顔つきだった。
クレイグがそこまで言う程の相手なのか?疑うわけではないが、自分達だってクインズベリー国で、将来を担うと言われている程の力を持っている。
これまでだってこのメンバーで、いくつもの厳しい戦いを勝ち抜いてきた。
今回だって絶対に自分達が勝つ。そう信じていた・・・・・
「ク・・・クレイグ・・・・・ラゴフ・・・・・」
声が震え、いつの間にか涙が流れていた。
白魔法使いで、戦闘用の魔道具を持たない自分は後ろで戦いを見ていた。
だからクレイグとラゴフ、二人の最後はこの目でハッキリと見た。
命を捨てて敵を道連れにしたクレイグ、そしてクレイグの覚悟を受けとめたラゴフ。
「馬鹿野郎・・・僕に、僕には生きて情報を、伝えろって言うのかよ・・・・・」
すぐには二人の死を受け止めきれない。だが現実を見て自分のすべき事をしなければならない。
ここにはまだ生き残っている部下達も大勢いるんだ。
自分の役目は部下達を無事に軍まで連れて帰り、ここで見た全てを伝える事なんだ。
涙をぬぐい、エリクスは周りで火柱を見ている部下達に向かって声を上げた。
「全員聞け!クレイグとラゴフはクインズベリーの誇りを持って、この火柱とともに散っていった!だが悲しみに暮れるのは後だ!僕達は彼らの残した情報を持って帰らなければならない!」
杖を掲げ、自身の感情を抑えながら、声を張り上げるエリクス。年齢はまだ二十歳にも満たないが、エリクスの声を兵達はしかと受け止めていた。
「敵は倒した!我々はここで一旦軍に・・・ッ!?」
突如、エリクスの後ろから伸びてきた鎖分銅が頬をかすめ、エリクスの正面に立っていた魔法使いの頭が粉砕された。
「な・・・に?」
飛び散った赤い血が額や頬に色を付ける。
エリクスはこの一瞬、何が起きたのかすぐには理解できなかった。
「エ、エリクス部隊長!あ、あれを!」
部下の声で我に返ったエリクスが振り返ると、天まで届く巨大な火柱の中に人の影が見えた。
影は少しづつゆっくりと近づいて来て、やがて鎖を振り回す赤茶色の髪の男が姿を現した。
「・・・このまま逃げられると思ったか?残念だが一人も逃がすつもりはないぞ」
イサック・クルゾンの上半身はところどころ赤黒く焼け焦げており、クレイグの自爆によるダメージは確かに受けていた。
だが近づく事さえためらわれる火柱を見ると、とてもこの中から生きて出てくるなんて信じられない事だった。
しかしその理由はすぐに分かった。
「か、風の鎧だと・・・そんな・・・クレイグが命を捨ててまで・・・・・」
鎖鎌の男イサック・クルゾンの体を護るように、風が渦巻き炎を寄せ付けないでいた。
それは風魔法による防御技で、風の鎧と呼ばれるものだった。
クレイグの自爆によってできた火柱は、上級魔法灼炎竜さえも上回る程の熱量だった。
だがそれさえも防ぐこの風魔法は、術者も相当な魔力の持ち主という事になる。
エリクスはすぐに思い当たった。
ラゴフとクレイグを倒した黒魔法使い、ハビエル・フェルトゥザは生きている・・・・・
任務遂行のため、そして自分達仲間を護るために、我が身を犠牲にしたクレイグ。
だがその結果は残酷なものだった。
鎖鎌の男にもダメージは与えていたが、まだ力を残している。
おそらく自分達魔法使いを一掃するくらい、この状態でも容易い事なのだろう。
悔しさとやるせなさで、エリクスは血が滲むほど強く拳を握りしめた。
だがここで戦ったとしても結果は見えている。
残った魔法兵達も優秀ではあるが、ラゴフとの戦いを見る限り、この鎖鎌の男に勝てるとも思えなかった。そして自分は白魔法使いであり、攻撃系の魔道具は持っていない。
やはり逃げるしかない。
エリクスが再び撤退の声を上げようとしたその時だった。
「う・・・わぁぁぁぁぁーーーーーーッツ!」
残った数人の黒魔法使いが、指示を待たずに飛び出した。
鎖鎌の男イサック・クルゾンによって、仲間の一人が頭を粉砕された事。
そしてイサックから発せられる、殺意に満ちた恐ろしいまでのプレッシャーに気圧され、じっと待ち構えている事ができなくなったのだ。
「・・・ふん」
だが黒魔法使い達が攻撃魔法を放つ前に、その胴体は真っ二つに斬り離されてしまった。
イサックの魔道具斬空の鎖鎌は、鎌を振るった時の力加減で、広範囲に風の刃を放つ事ができる。
今この時も、イサックは自分に魔力を向けるクインズベリーの魔法兵に対し、左手に持つ鎌を振るいその体を斬り裂いたのだ。
上半身と下半身に分かれ、真っ赤な血を撒き散らしながら雪の上に落ちる部下達の死体を目にし、エリクスは叫んだ。
「全員逃げろォォォォォォォーーーーーーーッツ!誰か一人でいい!軍に戻りここで目にした事を伝えるんだァァァーーーーーーーーッツ!」
もはや全員が無事に帰れるとは思っていない。だがラゴフとクレイグの戦いを、そしてここで見た敵の能力を軍に持ち帰る事だけは、絶対にやり遂げなければならない。
エリクスの叫びに反応して、クインズベリーの魔法兵達は一斉に背を向けて走り出した。
「・・・言ったはずだぞ・・・一人も逃がす気はないってな!」
雪に足を取られながらも、村の外を目指して走って行くクインズベリー兵達の背中を見据えて、イサックは左手に握る鎌を振るった!
白魔法使いのエリクス・スピルカは、目の前で上がった巨大な火柱を見て、戦闘前にクレイグに言われた言葉を思い出していた。
普段口を利かないクレイグが、めずらしく自分から話しかけてきた。
しかもこれまでにないくらい、真剣な顔つきだった。
クレイグがそこまで言う程の相手なのか?疑うわけではないが、自分達だってクインズベリー国で、将来を担うと言われている程の力を持っている。
これまでだってこのメンバーで、いくつもの厳しい戦いを勝ち抜いてきた。
今回だって絶対に自分達が勝つ。そう信じていた・・・・・
「ク・・・クレイグ・・・・・ラゴフ・・・・・」
声が震え、いつの間にか涙が流れていた。
白魔法使いで、戦闘用の魔道具を持たない自分は後ろで戦いを見ていた。
だからクレイグとラゴフ、二人の最後はこの目でハッキリと見た。
命を捨てて敵を道連れにしたクレイグ、そしてクレイグの覚悟を受けとめたラゴフ。
「馬鹿野郎・・・僕に、僕には生きて情報を、伝えろって言うのかよ・・・・・」
すぐには二人の死を受け止めきれない。だが現実を見て自分のすべき事をしなければならない。
ここにはまだ生き残っている部下達も大勢いるんだ。
自分の役目は部下達を無事に軍まで連れて帰り、ここで見た全てを伝える事なんだ。
涙をぬぐい、エリクスは周りで火柱を見ている部下達に向かって声を上げた。
「全員聞け!クレイグとラゴフはクインズベリーの誇りを持って、この火柱とともに散っていった!だが悲しみに暮れるのは後だ!僕達は彼らの残した情報を持って帰らなければならない!」
杖を掲げ、自身の感情を抑えながら、声を張り上げるエリクス。年齢はまだ二十歳にも満たないが、エリクスの声を兵達はしかと受け止めていた。
「敵は倒した!我々はここで一旦軍に・・・ッ!?」
突如、エリクスの後ろから伸びてきた鎖分銅が頬をかすめ、エリクスの正面に立っていた魔法使いの頭が粉砕された。
「な・・・に?」
飛び散った赤い血が額や頬に色を付ける。
エリクスはこの一瞬、何が起きたのかすぐには理解できなかった。
「エ、エリクス部隊長!あ、あれを!」
部下の声で我に返ったエリクスが振り返ると、天まで届く巨大な火柱の中に人の影が見えた。
影は少しづつゆっくりと近づいて来て、やがて鎖を振り回す赤茶色の髪の男が姿を現した。
「・・・このまま逃げられると思ったか?残念だが一人も逃がすつもりはないぞ」
イサック・クルゾンの上半身はところどころ赤黒く焼け焦げており、クレイグの自爆によるダメージは確かに受けていた。
だが近づく事さえためらわれる火柱を見ると、とてもこの中から生きて出てくるなんて信じられない事だった。
しかしその理由はすぐに分かった。
「か、風の鎧だと・・・そんな・・・クレイグが命を捨ててまで・・・・・」
鎖鎌の男イサック・クルゾンの体を護るように、風が渦巻き炎を寄せ付けないでいた。
それは風魔法による防御技で、風の鎧と呼ばれるものだった。
クレイグの自爆によってできた火柱は、上級魔法灼炎竜さえも上回る程の熱量だった。
だがそれさえも防ぐこの風魔法は、術者も相当な魔力の持ち主という事になる。
エリクスはすぐに思い当たった。
ラゴフとクレイグを倒した黒魔法使い、ハビエル・フェルトゥザは生きている・・・・・
任務遂行のため、そして自分達仲間を護るために、我が身を犠牲にしたクレイグ。
だがその結果は残酷なものだった。
鎖鎌の男にもダメージは与えていたが、まだ力を残している。
おそらく自分達魔法使いを一掃するくらい、この状態でも容易い事なのだろう。
悔しさとやるせなさで、エリクスは血が滲むほど強く拳を握りしめた。
だがここで戦ったとしても結果は見えている。
残った魔法兵達も優秀ではあるが、ラゴフとの戦いを見る限り、この鎖鎌の男に勝てるとも思えなかった。そして自分は白魔法使いであり、攻撃系の魔道具は持っていない。
やはり逃げるしかない。
エリクスが再び撤退の声を上げようとしたその時だった。
「う・・・わぁぁぁぁぁーーーーーーッツ!」
残った数人の黒魔法使いが、指示を待たずに飛び出した。
鎖鎌の男イサック・クルゾンによって、仲間の一人が頭を粉砕された事。
そしてイサックから発せられる、殺意に満ちた恐ろしいまでのプレッシャーに気圧され、じっと待ち構えている事ができなくなったのだ。
「・・・ふん」
だが黒魔法使い達が攻撃魔法を放つ前に、その胴体は真っ二つに斬り離されてしまった。
イサックの魔道具斬空の鎖鎌は、鎌を振るった時の力加減で、広範囲に風の刃を放つ事ができる。
今この時も、イサックは自分に魔力を向けるクインズベリーの魔法兵に対し、左手に持つ鎌を振るいその体を斬り裂いたのだ。
上半身と下半身に分かれ、真っ赤な血を撒き散らしながら雪の上に落ちる部下達の死体を目にし、エリクスは叫んだ。
「全員逃げろォォォォォォォーーーーーーーッツ!誰か一人でいい!軍に戻りここで目にした事を伝えるんだァァァーーーーーーーーッツ!」
もはや全員が無事に帰れるとは思っていない。だがラゴフとクレイグの戦いを、そしてここで見た敵の能力を軍に持ち帰る事だけは、絶対にやり遂げなければならない。
エリクスの叫びに反応して、クインズベリーの魔法兵達は一斉に背を向けて走り出した。
「・・・言ったはずだぞ・・・一人も逃がす気はないってな!」
雪に足を取られながらも、村の外を目指して走って行くクインズベリー兵達の背中を見据えて、イサックは左手に握る鎌を振るった!
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