異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1203 アゲハの看破

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初手から間違えていた。
長引かせずに速攻をかけて倒す。そう決めていたが、相手の出方をうかがってしまったばかりに、逆に先手を取られて死にかけた。

俺の傷はかなりの深手だ。できるだけ早くノエルにヒールをかけてもらわないとまずい。
俺自身が生きるため、そして俺達の価値を帝国の連中に認めさせるために・・・・・

邪魔なコイツらを今この場で殺す!

「ウオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーッツ!」

左足を軸に高速で回転するイサックの足元からは、雪が煙のように上へ上へと巻き上げられていく。
イサックの周りには風の刃が渦を巻き出し、それは回転数を上げる毎にどんどん大きく太くなっていった。触れる者は容赦なく斬り裂かれる。さながら刃の竜巻である。



「イサック、どうやらその体でも撃てるみてぇだな・・・少し冷や汗をかかせられたが、結果として何も変わってねぇ、俺達の勝ちだ!」

イサックが大技を使う事を察したラモンは、細く小さなステッキ握り掲げた。
ラモンの魔道具スワンプステッキである。

魔力を変換し沼を作り出す事ができる魔道具だが、ほんの数センチ程度のフタから飛ばせる魔力では、せいぜい人一人を沈める程度の沼しか出せない。

だがラモンが限界まで魔力を注入すれば話しは別である。魔力を集中し高め、その全てをステッキに流し込む。

「ハァァァァ・・・ッ!?」

スワンプステッキに溜めた魔力が、限界値まであと少しというところまで来た時、鋭い殺気を背中に感じたラモンは咄嗟に結界を張った。
次の瞬間、硬い金属音がラモンの背後から鳴り響き、女の声が耳に届いた。


「おや?完全に隙を突いたつもりだったけど、良い反応するじゃないか」

結界を打たれた衝撃と声にラモンが振り返ると、長い黒髪の女が己の背丈よりも長い得物を両手で持ち、脇に構えて立っていた。

「後ろから仕掛けてくるとは・・・ん?お前、見た事があるな・・・そうだ!第二師団長の・・・」

はぐれ者とは言え、帝国軍のラモンは師団長の顔くらいは知っている。
帝国を抜けたとはいえ、第二師団長だったアゲハの顔を知っていたラモンが驚きを見せると、アゲハは表情を変える事なくラモンの言葉を遮って、今の自分の立場を答えた。


「元第二師団長だ。今はクインズベリー国のアゲハ・・・ただのアゲハだ」

アゲハの言葉から何かを察したのかもしれない。
ラモンは一瞬怪訝な顔をして見せたが、すぐに口の端に笑みを浮かべた。

「・・・ただのアゲハねぇ・・・あんた軍にいた時さ、いつもどっか違うとこ見てるなって気がしてたんだよね。他の師団長とはちょっと違うなって思ってたんだけど・・・なるほどねぇ、帝国を裏切ってクインズベリーか、あんたもはぐれ者だったってわけだ。残念、あんた綺麗だし帝国にいたら仲良くできたのに」

アゲハと話しながらも、ラモンは目の前に結界を張り続けて隙は見せなかった。

最初の攻撃は防ぐ事ができたが、次も防げるとは限らない。元師団長のアゲハが本気を出せば、正面からの攻撃だって、結界を張るより先に入れられる可能性は十分にある。
万全を期すには魔力は消耗するが、結界を張り続ける事が確実という判断だった。


ラモンの軽口に、アゲハも口元に笑みを浮かべて答えた。

「あいにくだけど、私はあんたみたいなヘラヘラした男は嫌いだよ。これ以上なにか話す必要もないし、すぐに黙らせてやるさ」

右脇に構えた薙刀を握り直し、刃先をラモンに突きつける。アゲハとラモン、二人の距離はほんの数メートルであり、この距離ならばアゲハは一蹴りで詰める事ができる。
いかに結界を張っていようとも、この状況では真剣にならざるを得ないはずである。

だがラモンの態度に変化はなかった、

「おいおい、そう急ぐなって、せっかちな女は嫌われるぜ?」

早々に話しを切り、得物の刃を向けて来るアゲハに対して、ラモンは結界こそ使っているが、攻撃的な言葉を発する事も挑発もしなかった。
それどころか会話の継続を促し、戦うそぶりさえ見せない。危機感がまるで感じられなかった。



・・・なんだこの男?
私は刃を向けているんだぞ?それなのになんだそのニヤけた顔(ツラ)は?
青魔法使いなのは分かるが、戦闘用の魔道具は持っていないのか?
あのステッキ、かなりの魔力が溜まっているようにも見えるが、あれを私に向けないという事は、おそらく攻撃用ではないな。ではなにを狙っているんだ?魔力が続く限り私の攻撃を結界で防ぐつもりか?
だがそんな事をしてなんの意味がある?
そんな事、ただの時間稼ぎにしか・・・・・!

そこまで考えて、アゲハは気が付いた。


そう時間稼ぎである。具体的に何を狙っているのかは分からない。
だが鎖鎌の男が回転を始め、竜巻の如き風を巻き起こし始めた事。そしてこの青魔法使いの男が持つステッキに、かなりの魔力が集まっている事。それらをつなぎ合わせれば、おのずと見えて来るものはある。

「お前、鎖鎌の男の援護が狙いだな?そのステッキに溜めた魔力で何をする気か知らないが、させないよ!」

そう言うなりアゲハは右足で地面を蹴って飛び出した!

ラモンの狙いは分からない。だが何かをしようとしている事は確かである。
ならば何もさせないまま倒せばいい!ラモンの作り出す結界の中心に狙いを定め、アゲハの突きが繰り出された!


「っ、チィッ!」

結界へぶつけられた衝撃が腕に響き、ラモンは思わず舌を打った。
体当たりのように全身でぶつかってきたアゲハの突きは、ラモンの想定を大きく上回る威力だった。
さっき背後から受けた奇襲の一撃とは、重さがまるで違う。気を抜くと結界が突き破られそうな突進力に、ラモンは表情が一気に険しくなる。


「ハァァァァーーーッツ!」

アゲハは結界に当てた刃をを引くと、今度は右肘を曲げたまま腰を左に回して、石突(いしづき)を振り上げる!強烈に殴打された結界は大きく揺さぶられる。

「まだまだまだまだァァァァァーーーーーーッツ!」

左から右へ大きく腰を回し、体重を乗せて刃を叩きつける!次いで右から左へ腰を回し石突を振り上げて叩き込む!
一撃で駄目ならば二撃、三撃、結界が壊れるまで叩き続ける!
アゲハは刃と石突を交互に結界に叩き込み、それは決して止まる事のない連打となって結界を揺さぶり続けた!



くそっ!この女、問答無用で仕掛けてきやがった!
時間稼ぎにも勘付きやがって本当に面倒くせぇ、しかも俺の結界が壊れるまで叩く気だ!
どうする?一発一発がやたら重い、元師団長だから強いのは分かってるが、昔の印象はスピードでかく乱して戦っている感じだった。こんなにパワーがあったのか!?
このままじゃそう長くはもたねぇ・・・どうする?

ラモンは右手に握るステッキに目を向けた。
これに限界まで魔力を込めて使えば、イサックが必ず勝つ。ラモンがやろうとしている事は、イサックの斬空烈波をより効果的にするための補助だ。ラモンが手を貸さなくても斬空烈波は強烈無比であり、敵を殲滅する事は間違いないだろう。
だがラモンの補助がそこに加わる事で、斬空烈波は一部の隙もない完璧な技となる。

そのための魔力がもう少し・・・あともう少しで溜まるんだ。


だがいまこの状態でこれを使えば、俺に逃げ場はない。
これを使うには、今結界に回している魔力も込めなくてはならない。それはつまり結界を解除しなくてはならず、解除する事は死を意味する。

「くっ!」

自分の命を差し出してまで、イサックを援護するつもりはない。
援護せずともイサックの斬空烈波は無敵なのだから、このまま結界を維持しておけばいい。
ラモンがそう判断し、結界に送る魔力を強めたその時!

「ラァァァァァァァーーーーーーーーッツ!」

一撃一撃に渾身の力を込めて撃ち続けたアゲハの刃が、ついにラモンの結界に亀裂を入れた。

「な、し、しまッ・・・!」

結界に集中しようとしたが、そう決めた時にはもう遅かった。
青魔法使いとして幹部クラスの実力を持っていたラモンだったが、結界の維持とステッキへの注入、魔力を分散してアゲハの猛攻を防ぐ事はできなかった。

「ハァッ!」

石突を真っすぐ打ち付けて結界を粉砕すると、そのまま手首を返して刃でラモンの腹を突き刺した!

「ぐぅッ・・・・・がぁ・・・ッ!」

刺された腹は燃えるような熱に襲われ、耐え難い強烈な痛みが脳に突き刺さる。
膝から力が抜けて崩れ落ちそうになる。

「フン、何かしようとしていたが、残念だったな」

普通ならばこれで決着である。だが・・・・・


「・・・フッ、クッ・・・ハハハ・・・・・」

腹を刺されながラモンは笑った。


・・・・・こうなったらよ・・・もう悩む必要はねぇよな・・・・・


ラモンの魔道具スワンプステッキが、眩い程に青く強い光を放った。
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