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1273 侵入者
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「戦況は拮抗しているか・・・敵の姿を隠す能力で、先手はどうしても帝国にとられてしまう。そのため後手に回ってしまったが、盛り返す事はできたようだな」
クインズベリー軍副団長のカルロス・フォスターは、拠点の天幕の中で、伝令に来た兵士の報告を受けていた。
帝国軍トリッシュ・ルパージュの魔道具ブレンド。これは周囲の景色と同化できる物である。
それゆえにクインズベリー軍に対して、先制攻撃を仕掛ける事ができたのだ。
しかしこの魔道具は少しの風や衝撃で効果を失うため、交戦が始まればあっというまに姿が暴かれてしまう。そして現在クインズベリー軍と帝国は、互角の戦闘状態にあった。
「はい、しかし我が軍も大きな被害を受けております。ここを中心に北、東、西の三方に、漆黒の鎧を身につけた敵が突然現れ、それぞれで数百人規模の死傷者が出たようなのです。現在はレイジェスによって倒されましたが、敵も強力な手札を持っております 」
「漆黒の鎧?どこかで聞いた事があるな。突然現れ・・・まさか!」
部下の話しを咀嚼(そしゃく)するように聞いていたカルロスは、聞き覚えのある言葉に眉を寄せ、記憶を辿(たど)った。そして答えに触れたその時・・・!
「ぐっ・・・ふ・・・・・!」
たった今、自分に戦況を報告していた兵士が、突然口から血を吐いて倒れた。
「ッ!?」
「敵かっ!」
カルロス・フォスターを始め、ここに集まった数名の幹部団員が、剣を構え、手の平に魔力を集めて立ち上がった。
「はい、道案内ご苦労様。おかげで簡単に侵入できたよ」
倒れた兵士の後ろに立っていたのは、18~19歳くらいだろうか、まだどこかあどけなさが残る青年だった。身長は160センチもないだろう。小柄な体躯に、ふわふわとした柔らかそうな茶色の髪、そして細い目はニコニコとした笑みをたたえている。
一見穏やかそうな印象を見せている。実際こんな戦場で出会わなければ、好青年にしか見えなかっただろう。だが漆黒のローブを身に纏っている事から一目で分かった。
漆黒の鎧ではないが、こいつがたった今話していた帝国軍の一人だと。
カルロス・フォスターは、青年の足元に倒れる兵士に目を向けた。
その背中には氷の槍が生えており、どうやら刺氷弾によって、背後から心臓を貫かれたようだ。
よほど強い冷気なのか、傷口からは血が流れ出ずに固まっていた。
「・・・聞いた事がある。人の影でも物の影でも、影の中を自在に出入りできる魔道具があると。俺が知っているのは漆黒の鎧だったが・・・ローブもあったのか」
「おや?そこのあなた、博識ですね。その通りです。僕のこの漆黒のローブは、影の中を自由に出入りができるのです。その力を使ってこの人の影に入り、ここまで連れて来てもらいました」
青年は両手をパチパチと打ち合わせ、カルロスの推理が当たっている事を示した。
「刺氷弾でこれほどの冷気を発するとはな、良い腕だ。だがせっかくここまで潜入したんだ、どうせなら隠れたまま俺の首を取れば良かったものを・・・貴様は大きな機会を失したぞ」
カルロスは一歩前に進み出た。
すでに臨戦態勢に入っているその体からは、強大な魔力が滲み出ている。
「いえいえ、そうする必要がなかったってだけですよ。だって僕の方が強いんですよ?格下相手にそこまで警戒する必要もないでしょう?ねぇ、カルロス・フォスターさん」
ヘラヘラと笑いながら答える青年に、カルロスの目が鋭くなり、体から滲み出る魔力が強さを増していく。
「・・・ほぅ・・・俺をクインズベリー軍副団長、カルロス・フォスターと知った上でその態度か?面白い・・・・・」
「あ、僕も名乗っておきましょうか?自分を殺す男の名前くらい知っておきたいですよね?帝国軍第二師団、ジャロン・リピネッツ直属の影の四人衆、アンディ・ルースです。よろしくお願いします」
スッと右手を差し出し、握手を求めてくる漆黒のローブの青年アンディに、カルロスはピクリと眉を上げ、足を止めた。
「・・・ここまで舐められたのは初めてだ」
「あれ?怒っちゃいまし・・・っ!?」
アンディは目を開いて息を飲み込んだ。
対峙するカルロスの姿がフッと消えたかと思うと、一瞬にしてアンディの懐に入り込んでいたからだ。
「遅い」
右手の平でグルグルと渦巻く風の球、それは射程距離の短さから中級魔法に位置づけられているが、その破壊力は中級魔法の域をはるかに超えている。
実質上級魔法として数えられるその魔法は・・・・・
「サイクロンプレッシャーーーーーーーッツ!」
カルオス・フォスターの一撃が、アンディ・ルースの腹に叩きこまれた!
「ーーーーーーーーッツ!」
解き放たれた荒ぶる風の球は、アンディの体を掻き混ぜるように激しく振り回しながら、天幕の外へと弾き飛ばした。
中空に打ち上げられたアンディの体は、きりもみ状に落下し地面に激突すると、何度も体をバウンドさせながら転がり、数十メートル先で土煙を上げながらようやく止まった。
「す、すげぇ!」
「おおおお!さすがカルロス副団長!」
サイクロン・プレッシャーの余波で、天幕までも吹き飛ばされた。
軍の幹部団員達が駆け寄ってくるが、カルロスは前を向いたまま右腕を横に出した。
「・・・まだだ。お前達は下がってろ」
右手に残る感覚に、カルロスは眉を顰(ひそ)めた。
直撃だった。だがその手が感じたものは、相手の体を打ち砕くソレではなく、まるで鉄の壁でも押したような堅固な反発だった。
こいつ・・・あのタイミングで俺の風に合わせやがった。
しかも俺のサイクロン・プレッシャーを無力化できる程の魔力だ。派手にふっ飛ばされたが、あれはただ風に飛ばされただけ。言うなれば大風で転んだ程度だろう。
「おい、とっとと起きろ。ダメージが無いのは分かってるんだ」
ゆっくりと前に足を進めながら、カルロスは数十メートル先で倒れているアンディに冷たく言い放った。
「・・・ぷっ、あはははは!あらら、ばれちゃいましたか?」
アンディはへらへらと笑いながら上半身を起こすと、膝に手を当てながらゆっくりと立ち上がった。
「風の鎧だな?サイクロン・プレッシャーを防ぐ程の硬さとはな」
「それだけじゃないですよ、サイクロン・プレッシャーの風の動きに、自分の風も動きを合わせながら主導権を奪って威力を弱めるんです。落下の時も風の鎧で体を護ればご覧の通りです」
あれだけ激しく揺さぶられたが、アンディ・ルースは全くといっていい程、ダメージを受けていなかった。
「なるほどな・・・・・」
こいつは長くなりそうだ・・・・・
「おや?顔つきが変わりましたね?本気になりました?」
アンディ・ルースの実力を肌で感じたカルロスは、視線鋭くアンディを見据えた。
ローブをひるがえし、両手に魔力を集中させて構える。
「じゃあ、僕も本気出してやりましょうか。光栄に思ってください、これでも影の四人衆で一番強いのは僕なんです。だから負けても恥ずかしくありませんからね?」
ニヤリと笑うアンディ・ルースの茶色の目が、怪しく光った。
クインズベリー軍副団長のカルロス・フォスターは、拠点の天幕の中で、伝令に来た兵士の報告を受けていた。
帝国軍トリッシュ・ルパージュの魔道具ブレンド。これは周囲の景色と同化できる物である。
それゆえにクインズベリー軍に対して、先制攻撃を仕掛ける事ができたのだ。
しかしこの魔道具は少しの風や衝撃で効果を失うため、交戦が始まればあっというまに姿が暴かれてしまう。そして現在クインズベリー軍と帝国は、互角の戦闘状態にあった。
「はい、しかし我が軍も大きな被害を受けております。ここを中心に北、東、西の三方に、漆黒の鎧を身につけた敵が突然現れ、それぞれで数百人規模の死傷者が出たようなのです。現在はレイジェスによって倒されましたが、敵も強力な手札を持っております 」
「漆黒の鎧?どこかで聞いた事があるな。突然現れ・・・まさか!」
部下の話しを咀嚼(そしゃく)するように聞いていたカルロスは、聞き覚えのある言葉に眉を寄せ、記憶を辿(たど)った。そして答えに触れたその時・・・!
「ぐっ・・・ふ・・・・・!」
たった今、自分に戦況を報告していた兵士が、突然口から血を吐いて倒れた。
「ッ!?」
「敵かっ!」
カルロス・フォスターを始め、ここに集まった数名の幹部団員が、剣を構え、手の平に魔力を集めて立ち上がった。
「はい、道案内ご苦労様。おかげで簡単に侵入できたよ」
倒れた兵士の後ろに立っていたのは、18~19歳くらいだろうか、まだどこかあどけなさが残る青年だった。身長は160センチもないだろう。小柄な体躯に、ふわふわとした柔らかそうな茶色の髪、そして細い目はニコニコとした笑みをたたえている。
一見穏やかそうな印象を見せている。実際こんな戦場で出会わなければ、好青年にしか見えなかっただろう。だが漆黒のローブを身に纏っている事から一目で分かった。
漆黒の鎧ではないが、こいつがたった今話していた帝国軍の一人だと。
カルロス・フォスターは、青年の足元に倒れる兵士に目を向けた。
その背中には氷の槍が生えており、どうやら刺氷弾によって、背後から心臓を貫かれたようだ。
よほど強い冷気なのか、傷口からは血が流れ出ずに固まっていた。
「・・・聞いた事がある。人の影でも物の影でも、影の中を自在に出入りできる魔道具があると。俺が知っているのは漆黒の鎧だったが・・・ローブもあったのか」
「おや?そこのあなた、博識ですね。その通りです。僕のこの漆黒のローブは、影の中を自由に出入りができるのです。その力を使ってこの人の影に入り、ここまで連れて来てもらいました」
青年は両手をパチパチと打ち合わせ、カルロスの推理が当たっている事を示した。
「刺氷弾でこれほどの冷気を発するとはな、良い腕だ。だがせっかくここまで潜入したんだ、どうせなら隠れたまま俺の首を取れば良かったものを・・・貴様は大きな機会を失したぞ」
カルロスは一歩前に進み出た。
すでに臨戦態勢に入っているその体からは、強大な魔力が滲み出ている。
「いえいえ、そうする必要がなかったってだけですよ。だって僕の方が強いんですよ?格下相手にそこまで警戒する必要もないでしょう?ねぇ、カルロス・フォスターさん」
ヘラヘラと笑いながら答える青年に、カルロスの目が鋭くなり、体から滲み出る魔力が強さを増していく。
「・・・ほぅ・・・俺をクインズベリー軍副団長、カルロス・フォスターと知った上でその態度か?面白い・・・・・」
「あ、僕も名乗っておきましょうか?自分を殺す男の名前くらい知っておきたいですよね?帝国軍第二師団、ジャロン・リピネッツ直属の影の四人衆、アンディ・ルースです。よろしくお願いします」
スッと右手を差し出し、握手を求めてくる漆黒のローブの青年アンディに、カルロスはピクリと眉を上げ、足を止めた。
「・・・ここまで舐められたのは初めてだ」
「あれ?怒っちゃいまし・・・っ!?」
アンディは目を開いて息を飲み込んだ。
対峙するカルロスの姿がフッと消えたかと思うと、一瞬にしてアンディの懐に入り込んでいたからだ。
「遅い」
右手の平でグルグルと渦巻く風の球、それは射程距離の短さから中級魔法に位置づけられているが、その破壊力は中級魔法の域をはるかに超えている。
実質上級魔法として数えられるその魔法は・・・・・
「サイクロンプレッシャーーーーーーーッツ!」
カルオス・フォスターの一撃が、アンディ・ルースの腹に叩きこまれた!
「ーーーーーーーーッツ!」
解き放たれた荒ぶる風の球は、アンディの体を掻き混ぜるように激しく振り回しながら、天幕の外へと弾き飛ばした。
中空に打ち上げられたアンディの体は、きりもみ状に落下し地面に激突すると、何度も体をバウンドさせながら転がり、数十メートル先で土煙を上げながらようやく止まった。
「す、すげぇ!」
「おおおお!さすがカルロス副団長!」
サイクロン・プレッシャーの余波で、天幕までも吹き飛ばされた。
軍の幹部団員達が駆け寄ってくるが、カルロスは前を向いたまま右腕を横に出した。
「・・・まだだ。お前達は下がってろ」
右手に残る感覚に、カルロスは眉を顰(ひそ)めた。
直撃だった。だがその手が感じたものは、相手の体を打ち砕くソレではなく、まるで鉄の壁でも押したような堅固な反発だった。
こいつ・・・あのタイミングで俺の風に合わせやがった。
しかも俺のサイクロン・プレッシャーを無力化できる程の魔力だ。派手にふっ飛ばされたが、あれはただ風に飛ばされただけ。言うなれば大風で転んだ程度だろう。
「おい、とっとと起きろ。ダメージが無いのは分かってるんだ」
ゆっくりと前に足を進めながら、カルロスは数十メートル先で倒れているアンディに冷たく言い放った。
「・・・ぷっ、あはははは!あらら、ばれちゃいましたか?」
アンディはへらへらと笑いながら上半身を起こすと、膝に手を当てながらゆっくりと立ち上がった。
「風の鎧だな?サイクロン・プレッシャーを防ぐ程の硬さとはな」
「それだけじゃないですよ、サイクロン・プレッシャーの風の動きに、自分の風も動きを合わせながら主導権を奪って威力を弱めるんです。落下の時も風の鎧で体を護ればご覧の通りです」
あれだけ激しく揺さぶられたが、アンディ・ルースは全くといっていい程、ダメージを受けていなかった。
「なるほどな・・・・・」
こいつは長くなりそうだ・・・・・
「おや?顔つきが変わりましたね?本気になりました?」
アンディ・ルースの実力を肌で感じたカルロスは、視線鋭くアンディを見据えた。
ローブをひるがえし、両手に魔力を集中させて構える。
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