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1411 第三師団の策
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「カーミット、さすがだぜ。ここまで狙い通りにハマとはな。第三師団一の策士は健在だな」
リングマガ湿地帯の奥、樹々の生い茂る深い森の中で、帝国軍第三師団長のザビル・アルバレスは赤茶色の髪を後ろに撫でつけながら、部下の報告を受けてニヤリと笑った。
2メートル近い長身、深紅の鎧を身に着けていても分かる盛り上がった筋肉。体力型として完成された肉体を持っていると言ってもいいだろう。
アルバレスはこの鍛え抜かれた体躯を、更に鋼鉄と化す事ができる。単純な能力だがそれゆえに強い。
かつてレイジェスを襲撃した時、リカルドの矢を弾いた事からも分かるように、ただ鉄で作られただけの剣や槍では、かすり傷一つつける事ができない。
「ヤツらは自分達だけが情報を握っていると思っているようですが、こっちだってロンズデールの情報は知り尽くしてますからね。バカな魔道剣士が寝返ろうとして、重要情報をペラペラもらしてくれてたでしょう?ロンズデール国の王女、ファビアナ・マックギーは魔力で作った蝶を飛ばし、はるか遠くまで偵察ができる。ならば進軍前に当然こちらの位置を探ってきますよね?そこを逆手にとれば一網打尽です」
アルバレスに言葉を返すのは、深紅のローブを纏った青年だった。
名はカーミット・ヒッチンズ。腰まである長い白銀の髪は一本に結んであり、金茶色の目には高い自尊心が見える。身長は180cm程有り、魔法使いにしては長身だ。そして自分の計算通りに戦いが進んでいる事に満足しているのか、薄い唇には笑みが浮かんでいた。
「ああ、そんな連中もいたな。確か・・・何とかカーンとか言ったか?そこそこの力量はあったようだが、本気で自分達だけ好待遇で迎え入れられると思ってたから、頭の悪いヤツらだと思ったよ。おまけに自分らが漏らした情報のせいで、今こうして痛い目にあってんだから救いようがねぇな」
アルバレスは、ラミール・カーンが帝国に交渉に来ていた様子を思い出して嗤った。
ロンズデールを完全に帝国に売り渡そうして、自分達だけ取り入ろうとした考え方は、アルバレスも見下げ果てたものだと思ったものだった。
カーンを擁護するならば、その行動の裏にはロンズデールを戦火で焼きたくない、国民の血を流したくないという愛国心があっての事だったが、カーンは本心を誰かに告げた事はない。どこから
普段の言動もあいまって、カーンは完全に極悪人とされてしまったが、人の目を気にする性格でもないため、カーン自身はそれで一向に構わなかった。
「それにしてもお前の魔道具、歪な目、これほど使えるとは思わなかったぜ。相手の視界を動かすんだったか?」
「正確には、相手の見ている景色に別な景色を被せるんです」
聞かれた事に答えながら、カーミットはローブの内側から手の平に収まるくらいの大きさの、人の目を模した二つの玉を取り出した。
「これは俺の魔力で自在に動かす事が可能です。片方の目に見せたい景色を映すと、もう片方はその景色を相手に見せる事ができます。まったく違和感はありませんから、相手もまさか自分が見ている景色が間違っているなんて思いもしませんよ」
「おう、前にもそんな事言ってたな?しかし、まさか魔力でできた蝶にも効くとは思わなったぞ」
「結局は魔力の蝶を通して人が見てるだけですからね、蝶に嘘の景色を見せればいいだけです。唯一注意しなければならないのは、この目が見つかる事です。ある程度接近して魔力を送る必要がありますから。あまり丈夫には出来てませんので、初級魔法でも簡単に壊せるでしょう。ですから近づく時は細心の注意を払ってます」
カーミットは二つの目に魔力を流すと、手の平の上でクルクルと回してみせた。
今本人が口にした通り、この二つの目を使って帝国兵がいない景色を映しとり、ファビアナの魔蝶に本来見ていない景色を見せていたのだ。
「そうか、まぁ何でもいい。結果としてお前の作戦がうまくいってんだからよ。それで出だしは完璧だが、ここからはどう予想するんだ?」
「はい、油断して近づいてきたロンズデールに先制攻撃を食らわせましたが、そう長くは続かないでしょうね。ヤツらも備えているでしょうから。結界や風魔法、あるいは防御用の魔道具でも使って防ぎ、そこから反撃に転じるでしょう。おそらく森の入り口で両軍のぶつかり合いになるはずです。ですが前線には副団長のアルヘニス・パロ様がいますから、帝国の優位は動きません。ご安心ください」
淀みなく己の立てた戦略、そして今後の見立てを話すカーミットからは、揺るぎない自信が感じられた。
自分達帝国がこの戦いで負けるなど微塵も思っていない。カーミットにとってこの戦いは、大陸一の軍事大国の力を見せつけるだけでしかないのだ。
「ふっ、カーミット。お前は本当に頼もしいヤツだぜ。第三師団の戦闘力にお前の頭があれば、俺達は無敵だな」
「ありがとうございます。第三師団は必ずや俺が勝利に導いてみせます」
うやうやしく胸に手を当てお辞儀をすると、カーミットは再び視線を前に向けた。
金茶色の目が、ギラリと鋭い光を放つ。
ロンズデールよ、愚かにも帝国に刃を向ける貴様らに見せてやろう、帝国の強さを!
リングマガ湿地帯の奥、樹々の生い茂る深い森の中で、帝国軍第三師団長のザビル・アルバレスは赤茶色の髪を後ろに撫でつけながら、部下の報告を受けてニヤリと笑った。
2メートル近い長身、深紅の鎧を身に着けていても分かる盛り上がった筋肉。体力型として完成された肉体を持っていると言ってもいいだろう。
アルバレスはこの鍛え抜かれた体躯を、更に鋼鉄と化す事ができる。単純な能力だがそれゆえに強い。
かつてレイジェスを襲撃した時、リカルドの矢を弾いた事からも分かるように、ただ鉄で作られただけの剣や槍では、かすり傷一つつける事ができない。
「ヤツらは自分達だけが情報を握っていると思っているようですが、こっちだってロンズデールの情報は知り尽くしてますからね。バカな魔道剣士が寝返ろうとして、重要情報をペラペラもらしてくれてたでしょう?ロンズデール国の王女、ファビアナ・マックギーは魔力で作った蝶を飛ばし、はるか遠くまで偵察ができる。ならば進軍前に当然こちらの位置を探ってきますよね?そこを逆手にとれば一網打尽です」
アルバレスに言葉を返すのは、深紅のローブを纏った青年だった。
名はカーミット・ヒッチンズ。腰まである長い白銀の髪は一本に結んであり、金茶色の目には高い自尊心が見える。身長は180cm程有り、魔法使いにしては長身だ。そして自分の計算通りに戦いが進んでいる事に満足しているのか、薄い唇には笑みが浮かんでいた。
「ああ、そんな連中もいたな。確か・・・何とかカーンとか言ったか?そこそこの力量はあったようだが、本気で自分達だけ好待遇で迎え入れられると思ってたから、頭の悪いヤツらだと思ったよ。おまけに自分らが漏らした情報のせいで、今こうして痛い目にあってんだから救いようがねぇな」
アルバレスは、ラミール・カーンが帝国に交渉に来ていた様子を思い出して嗤った。
ロンズデールを完全に帝国に売り渡そうして、自分達だけ取り入ろうとした考え方は、アルバレスも見下げ果てたものだと思ったものだった。
カーンを擁護するならば、その行動の裏にはロンズデールを戦火で焼きたくない、国民の血を流したくないという愛国心があっての事だったが、カーンは本心を誰かに告げた事はない。どこから
普段の言動もあいまって、カーンは完全に極悪人とされてしまったが、人の目を気にする性格でもないため、カーン自身はそれで一向に構わなかった。
「それにしてもお前の魔道具、歪な目、これほど使えるとは思わなかったぜ。相手の視界を動かすんだったか?」
「正確には、相手の見ている景色に別な景色を被せるんです」
聞かれた事に答えながら、カーミットはローブの内側から手の平に収まるくらいの大きさの、人の目を模した二つの玉を取り出した。
「これは俺の魔力で自在に動かす事が可能です。片方の目に見せたい景色を映すと、もう片方はその景色を相手に見せる事ができます。まったく違和感はありませんから、相手もまさか自分が見ている景色が間違っているなんて思いもしませんよ」
「おう、前にもそんな事言ってたな?しかし、まさか魔力でできた蝶にも効くとは思わなったぞ」
「結局は魔力の蝶を通して人が見てるだけですからね、蝶に嘘の景色を見せればいいだけです。唯一注意しなければならないのは、この目が見つかる事です。ある程度接近して魔力を送る必要がありますから。あまり丈夫には出来てませんので、初級魔法でも簡単に壊せるでしょう。ですから近づく時は細心の注意を払ってます」
カーミットは二つの目に魔力を流すと、手の平の上でクルクルと回してみせた。
今本人が口にした通り、この二つの目を使って帝国兵がいない景色を映しとり、ファビアナの魔蝶に本来見ていない景色を見せていたのだ。
「そうか、まぁ何でもいい。結果としてお前の作戦がうまくいってんだからよ。それで出だしは完璧だが、ここからはどう予想するんだ?」
「はい、油断して近づいてきたロンズデールに先制攻撃を食らわせましたが、そう長くは続かないでしょうね。ヤツらも備えているでしょうから。結界や風魔法、あるいは防御用の魔道具でも使って防ぎ、そこから反撃に転じるでしょう。おそらく森の入り口で両軍のぶつかり合いになるはずです。ですが前線には副団長のアルヘニス・パロ様がいますから、帝国の優位は動きません。ご安心ください」
淀みなく己の立てた戦略、そして今後の見立てを話すカーミットからは、揺るぎない自信が感じられた。
自分達帝国がこの戦いで負けるなど微塵も思っていない。カーミットにとってこの戦いは、大陸一の軍事大国の力を見せつけるだけでしかないのだ。
「ふっ、カーミット。お前は本当に頼もしいヤツだぜ。第三師団の戦闘力にお前の頭があれば、俺達は無敵だな」
「ありがとうございます。第三師団は必ずや俺が勝利に導いてみせます」
うやうやしく胸に手を当てお辞儀をすると、カーミットは再び視線を前に向けた。
金茶色の目が、ギラリと鋭い光を放つ。
ロンズデールよ、愚かにも帝国に刃を向ける貴様らに見せてやろう、帝国の強さを!
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