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1423 罠にはまった獲物
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アドニス・アブシードは同世代の魔法使いと比べ、頭一つも二つも抜きでている才気溢れる男である。
そして魔法使いでありながら接近戦を好むという、好戦的な性格も持ち合わせている。
そんなアドニスを知っている者からすると想像もつかないが、アドニスには一つだけ苦手なものがある。
「うおぉぉぉっ!く、来んなよ気持ち悪ぃぃぃぃぃーーーーーーっ!」
ブヨブヨ粘々(ねばねば)した虫、ミミズや芋虫が、鳥肌が立つ程苦手なのだった。
パックリと口を開けて襲いかかってくる巨大ミミズに、アドニスは悲鳴を上げて大きく後ろに飛び退いた
「はぁぁ!?なんだてめぇ?もしかしてびびってんのか?うははははは!だせぇなぁこりゃ!たかが虫にびびってるくせに戦争に来んじゃねぇよ!」
アルヘニス・パロは体力型だが、アドニスが魔法使いとして並々ならぬ力を持っている事も見抜いていた。歳はずいぶん若そうだが、これだけの使い手ならば、ハンプトンとジェイムスが敗れた事も頷ける。そう思っていたところに、このざまだった。
確かに自分の水壌虫(すいじょうちゅう)は10メートル級のサイズで、圧倒されてしまう事は分かる。
しかし悲鳴を上げて逃げ出すとは、失笑するしかなった。
「見苦しいったらねぇな・・・水壌虫!さっさとそいつを食い殺せ!」
逃げ惑うアドニスを見て、パロはより強い声で号令を発した。その時・・・・・
「ッ!?」
微かに背後で動いた空気が頬に触れ、パロは反射的に上半身を屈めた。それとほぼ同時に微かに頬に痛みが走り、パロは地面を蹴って後ろへと跳んだ。
「・・・今のタイミングで躱すのか・・・」
「てめぇ、何者だ?」
距離を取って顔を上げると、そこには二本の短剣を握る金髪の男が、パロを見据えて立っていた。
ロンズデール軍だというのは聞くまでもない。だが不意を突かれたとはいえ、刃がかすめるギリギリまで気配を感じ取れなかった。相当な実力者だという事を、パロはこの一瞬で感じ取っていた。
「ビンセント・ボーセル。ロンズデール軍の戦士だ」
金髪の男ビンセントは、パロの目を見たまま答えた。
あの地面が弾けた瞬間、黒魔法使いのアドニスは風の鎧で防いだが、ビンセントは大きく跳び上って石と泥の礫を躱していた。そこが森林のすぐ近くだった事もあり、ビンセントはそのまま樹々の影に身を隠し、攻撃の機会を伺っていたのだった。
パロに名を告げると、ビンセントは右足を後ろに引いて、重心を少しだけ前傾に傾けた。
二人の間にはおよそ5~6メートル程の距離が空いているが、両者ともに一蹴りで詰められるという事は、直感で理解していた。
「なるほど・・・てめぇだな?劣勢のロンズデールを勢い付かせたヤツは。俺は帝国軍第三師団副団長アルヘニス・パロだ」
パロは腰に差していた剣を引き抜くと、切っ先をビンセントに向けて構えた。
刃渡りはおよそ60センチ、一見すると大きな特徴など無い、諸刃の剣だった。
お互いに武器を構えると、両者共にそれ以上の言葉を発する事は無かった。パロがビンセントの力を一目で見抜いたように、ビンセントもまた、パロの力を感じ取っていたのだ。
睨み合う二人の戦士、静かだがビリビリと張りつめた空気が肌を刺す・・・・・
「フッ!」
先に動いたのはビンセントだった。
鋭く息を吐き出すと、爪先に溜めていた力を開放して、強く地面を蹴って跳び出した。
ッ!?こいつ、速い!
ビンセントが見せたスピードは、パロの想定を大きく超えていた。向かってきたところに諸刃の剣を合わせるつもりだったが、少なからず動揺させられた事で、受けに回らざるを得なくなった。
もらったぞ!
この男、右手に持つ諸刃の剣を、俺の飛び込みに合わせようとしたな?だが惜しかったな、俺はお前の想定した以上のスピードだったわけだ。お前は完全に遅れをとった、ならばこの技は躱せまい!
繰り出すは二刀の短剣!一撃目の左でパロの諸刃の剣に傷を付け、二撃目の右で斬り飛ばす!
ボーセル家秘伝の連双斬!
「受けてみろ!」
「それが部下達を真っ二つにした技か」
・・・なに?
ビンセントの左の短剣が、パロの諸刃の剣の腹に触れそうになったその時、ビンセントは確かに見た。
深紅の鎧に身を包んだ無精髭の男が、ニヤリと口角を上げる。まるで罠にはまった獲物を掴み取るかのように・・・・・
「・・・か・・・ぐぅッ!」
次の瞬間、ビンセントの左の短剣が弾かれ、パロの左拳がビンセントの腹にめり込んだ。
「くっくっく、悪いな?オメェの技がとんでもなく切れるってのは、部下の死体を見て十分理解してんだ。俺はオメェの剣を絶対に受ける事はしねぇ」
そして魔法使いでありながら接近戦を好むという、好戦的な性格も持ち合わせている。
そんなアドニスを知っている者からすると想像もつかないが、アドニスには一つだけ苦手なものがある。
「うおぉぉぉっ!く、来んなよ気持ち悪ぃぃぃぃぃーーーーーーっ!」
ブヨブヨ粘々(ねばねば)した虫、ミミズや芋虫が、鳥肌が立つ程苦手なのだった。
パックリと口を開けて襲いかかってくる巨大ミミズに、アドニスは悲鳴を上げて大きく後ろに飛び退いた
「はぁぁ!?なんだてめぇ?もしかしてびびってんのか?うははははは!だせぇなぁこりゃ!たかが虫にびびってるくせに戦争に来んじゃねぇよ!」
アルヘニス・パロは体力型だが、アドニスが魔法使いとして並々ならぬ力を持っている事も見抜いていた。歳はずいぶん若そうだが、これだけの使い手ならば、ハンプトンとジェイムスが敗れた事も頷ける。そう思っていたところに、このざまだった。
確かに自分の水壌虫(すいじょうちゅう)は10メートル級のサイズで、圧倒されてしまう事は分かる。
しかし悲鳴を上げて逃げ出すとは、失笑するしかなった。
「見苦しいったらねぇな・・・水壌虫!さっさとそいつを食い殺せ!」
逃げ惑うアドニスを見て、パロはより強い声で号令を発した。その時・・・・・
「ッ!?」
微かに背後で動いた空気が頬に触れ、パロは反射的に上半身を屈めた。それとほぼ同時に微かに頬に痛みが走り、パロは地面を蹴って後ろへと跳んだ。
「・・・今のタイミングで躱すのか・・・」
「てめぇ、何者だ?」
距離を取って顔を上げると、そこには二本の短剣を握る金髪の男が、パロを見据えて立っていた。
ロンズデール軍だというのは聞くまでもない。だが不意を突かれたとはいえ、刃がかすめるギリギリまで気配を感じ取れなかった。相当な実力者だという事を、パロはこの一瞬で感じ取っていた。
「ビンセント・ボーセル。ロンズデール軍の戦士だ」
金髪の男ビンセントは、パロの目を見たまま答えた。
あの地面が弾けた瞬間、黒魔法使いのアドニスは風の鎧で防いだが、ビンセントは大きく跳び上って石と泥の礫を躱していた。そこが森林のすぐ近くだった事もあり、ビンセントはそのまま樹々の影に身を隠し、攻撃の機会を伺っていたのだった。
パロに名を告げると、ビンセントは右足を後ろに引いて、重心を少しだけ前傾に傾けた。
二人の間にはおよそ5~6メートル程の距離が空いているが、両者ともに一蹴りで詰められるという事は、直感で理解していた。
「なるほど・・・てめぇだな?劣勢のロンズデールを勢い付かせたヤツは。俺は帝国軍第三師団副団長アルヘニス・パロだ」
パロは腰に差していた剣を引き抜くと、切っ先をビンセントに向けて構えた。
刃渡りはおよそ60センチ、一見すると大きな特徴など無い、諸刃の剣だった。
お互いに武器を構えると、両者共にそれ以上の言葉を発する事は無かった。パロがビンセントの力を一目で見抜いたように、ビンセントもまた、パロの力を感じ取っていたのだ。
睨み合う二人の戦士、静かだがビリビリと張りつめた空気が肌を刺す・・・・・
「フッ!」
先に動いたのはビンセントだった。
鋭く息を吐き出すと、爪先に溜めていた力を開放して、強く地面を蹴って跳び出した。
ッ!?こいつ、速い!
ビンセントが見せたスピードは、パロの想定を大きく超えていた。向かってきたところに諸刃の剣を合わせるつもりだったが、少なからず動揺させられた事で、受けに回らざるを得なくなった。
もらったぞ!
この男、右手に持つ諸刃の剣を、俺の飛び込みに合わせようとしたな?だが惜しかったな、俺はお前の想定した以上のスピードだったわけだ。お前は完全に遅れをとった、ならばこの技は躱せまい!
繰り出すは二刀の短剣!一撃目の左でパロの諸刃の剣に傷を付け、二撃目の右で斬り飛ばす!
ボーセル家秘伝の連双斬!
「受けてみろ!」
「それが部下達を真っ二つにした技か」
・・・なに?
ビンセントの左の短剣が、パロの諸刃の剣の腹に触れそうになったその時、ビンセントは確かに見た。
深紅の鎧に身を包んだ無精髭の男が、ニヤリと口角を上げる。まるで罠にはまった獲物を掴み取るかのように・・・・・
「・・・か・・・ぐぅッ!」
次の瞬間、ビンセントの左の短剣が弾かれ、パロの左拳がビンセントの腹にめり込んだ。
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