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1453 恐怖を乗り越えて
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アルバレスの右の拳がリンジーの腹に深く突き刺さった!
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
腹から背中を突き抜ける程の衝撃は、リンジーに呻き声すら上げさせなかった。
胃が押し潰され、体の内側で骨が砕ける鈍い音が響く。そしてアルバレスは一歩大きく足を踏み込むと、拳を腹にめり込ませたままリンジーを殴り飛ばした!
「ウオラァァァァァーーーーーーーーッツ!」
渾身の一撃!二メートルの巨体が咆えた!
凄まじい勢いだった。女性とはいえ人一人が、まるでボールでも投げるかのように、真っ直ぐに飛ばされるのだ。
そして十、いや二十メートルも先の樹木に強烈に背中を打ち付けると、リンジーは力なく顔から地面に倒れ伏した。
「はぁッ!はぁッ!・・・くそが、てこずらせやがって・・・」
リンジーが起き上がって来ないところを見て、アルバレスは苛正しさをそのまま言葉に乗せた。
アルバレスのダメージは大きかった。顔に体に、全身の至るところがヒビ割れており、特に両腕は肉も抉れて、ボタボタと血が流れ落ちている。
心臓を狙った最後の一撃をくらっていたら、倒れていたのは自分だったかもしれない。
リンジーの念操玉は、アルバレスをあと一歩まで追い詰めていたのだ。
無敵の肉体を手に入れたと確信していただけに、慢心していた面は確かにあった。
しかしそれを抜きにしても、まさかここまで苦戦を強いられるとは思いもしなかった。
「褒めてやる、お前は強かった。だが、勝ったのは俺だ」
右手に残る感覚を確かめるように、拳を握った。
手応えは十分だった。肋骨を何本も折り、内臓も破裂しているかもしれない。
そしてあれだけの勢いで樹木に叩きつけられたのだから、死んでいてもおかしくない。
だが、生きている可能性もある。
「強かったからこそ、きっちり殺しておかねぇとな」
アルバレスの目に明確な殺意が宿った。
視線の先のリンジーは、倒れたきりピクリとも動いていない。生死は不明だが、少なくとも意識は失っているだろう。
これがただの一兵士であるならば、放っておいても問題はない。
実際にアルバレスは、アラン、ヴァージニア、アドニス、ガラハド、彼らにもまだトドメを刺していないが、その存在はすでに頭には無かった。なぜなら彼らはアルバレスにとって無力だからだ。
しかしリンジーは違う。アルバレスの体を破壊できるのだから脅威である。
このまま生かしておくわけにはいかない。
一歩一歩足を前に出し、真っ直ぐにリンジーの元へと進む。
「・・・一思いに踏み潰してやるぜ」
そして倒れているリンジーの前に立ったアルバレスは、右足をリンジーの頭の上に上げた。
・・・音はしなかった。もちろん声も上げていない。アルバレスがソレに気が付いたのは影だった。
視線を下に向けていた事。太陽が落とす日の影に、ふいにもう一つの影が重なった事で、背後からの奇襲を察する事ができた。
振り返り、空を見上げたアルバレスの目に飛び込んで来たのは、泥にまみれた青い髪の女戦士が、両手で握り締めた長剣を振り下ろす瞬間だった。
「きさ・・・ッ!?」
気付いた時にはもう遅い。ヴァージニア・フィールディングの渾身の一撃が、アルバレスの頭を叩き割った!
まるでガラスでも割ったかのような音が響き、金属のように硬い肉片と共に、バッ!と血が噴き出した。
「グ、ガァァァァッ!」
「や、やった!やっぱりそうだ!どんなに硬くても、ヒビが入ってしまえば脆いのは当然!私の力でもアルバレスに通用する!」
ヴァージニアはアルバレスの肩を蹴ると、大きく飛び退いて距離を取った。
リンジーが戦っている間に、長剣迅雷の刀身を回収したヴァージニアは、足手まといにならないように身を潜めて戦いを見守っていた。
リンジーとアルバレスの戦いにはとても介入できないからだ。しかしリンジーが殺されそうになり、決死の覚悟で飛び出して来たのだ。
一度完全敗北を喫していただけに恐怖はあった。しかし勝算も見えた。
それは今自分で証明した通り、リンジーが付けた傷だった。アルバレスの体は金属と同じである。ならばヒビが入った金属は脆いはず。自分の一撃でも通用するかもしれない。
そして見事にアルバレスに血を流させた。ヴァージニアの賭けは成功した。
「キ・・・キサマァァァァァーーーーーーッ!」
肉が抉れてダラダラと流れ出る血が、アルバレスの顔を真っ赤に染めた。
ギリッと歯を噛み締め、血に塗れた目で睨みつける形相は、とても同じ人とは思えない憎悪の塊であり、身震いするほど恐ろしいものだった。
「ふ、ははは・・・ど、どう!?私の剣でもあんたの体を斬る事ができたわ!あんたの鋼鉄の体は無敵じゃない!その首今度こそ斬り飛ばしてやるわ!」
体に刻み込まれた恐怖は簡単には消えない。しかしヴァージニアは自分を奮い立たせた。
それは一重に恩人であるリンジーのため。その一心でヴァージニアは今、再びアルバレスと対峙しているのだ。
「なめんじゃねぇぞォォォォォーーーーーーッ!」
激昂したアルバレスは、ヴァージニアに向かって地面を蹴った!
体中から血を撒き散らし、雄叫びを上げて突進する巨躯の男は、その姿を二倍にも三倍にも大きく見せた。
「くっ・・・」
恐怖が向かって来る。
踏みしめた足がズブっと泥の中に沈む。
押し寄せる圧に思わず一歩引いてしまった。だが、ヴァージアニは持ち堪えた。
ここで逃げるわけにはいかない。
弟のアラン、恩人のリンジーも倒れている。そして自分を信じて付いて来てくれた魔導剣士隊も、まだ戦っているのだ。
「う、うぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッツ!」
恐怖をかき消すように叫び声を上げた。
そして両手で強く剣を握り締めると、ヴァージニアも地面を蹴って跳び出した!
アルバレス!私は逃げない!正面から受けて立つ!
「ぶっ潰れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーッツ!」
血まみれの大男が右の拳を振り被った!
「アルバレスーーーーーーーーーーーッツ!」
青い髪の魔道剣士は長剣を真っすぐに突き出した!
この時ヴァージニアは相打ちを覚悟していた。
アルバレスの体は全身に亀裂が入っており、この長剣ならばヒビを貫く事も可能だ。
ならば自分の命と引き換えに、その心臓を抉り取ってやる!
弟のため、恩人のため、そして仲間達のために命を懸けたヴァージニアの一撃!
・・・しかしこの一撃がアルバレスに届く事はなかった。
「・・・なにッ!?」
目の前に飛び散った真っ赤な血に、ヴァージニアは目を見開いた。
「馬鹿が!見え見えなんだよ!」
アルバレスは左手でヴァージニアの剣を握り掴んだのだ!
ヒビ割れているとはいえ、それでも鋼鉄の体である。指を落とさずに剣を掴む事はできる。
「今度こそ死ね!」
狂気すら感じる笑みを浮かべ、アルバレスは頭上に掲げた右の拳を振り下ろした!
「ッ!」
全て読まれていた。もう躱す事はできない。防ぐ手段もない。
一瞬の後に来るであろう死の痛みに、ヴァージニアは固く目を閉じた。
しかし・・・・・
「・・・・・ふぅ、ギリギリ、間に合ったな」
来るはずの痛みも衝撃も来ない。そして聞き覚えのある声に目を開けると、自分の前に立つ金髪の男の背が目に入った。
「お、お前は・・・ビンセン・・・ッ!?」
「ヴァージニアさん、遅くなりました。あとは俺に任せてください」
振り返ったビンセントの言葉が、耳に入らなかったわけではない。
しかしヴァージニアは、ビンセントの後ろで血飛沫を撒き散らしながら宙に舞う、アルバレスの切断された右腕に目を奪われた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
腹から背中を突き抜ける程の衝撃は、リンジーに呻き声すら上げさせなかった。
胃が押し潰され、体の内側で骨が砕ける鈍い音が響く。そしてアルバレスは一歩大きく足を踏み込むと、拳を腹にめり込ませたままリンジーを殴り飛ばした!
「ウオラァァァァァーーーーーーーーッツ!」
渾身の一撃!二メートルの巨体が咆えた!
凄まじい勢いだった。女性とはいえ人一人が、まるでボールでも投げるかのように、真っ直ぐに飛ばされるのだ。
そして十、いや二十メートルも先の樹木に強烈に背中を打ち付けると、リンジーは力なく顔から地面に倒れ伏した。
「はぁッ!はぁッ!・・・くそが、てこずらせやがって・・・」
リンジーが起き上がって来ないところを見て、アルバレスは苛正しさをそのまま言葉に乗せた。
アルバレスのダメージは大きかった。顔に体に、全身の至るところがヒビ割れており、特に両腕は肉も抉れて、ボタボタと血が流れ落ちている。
心臓を狙った最後の一撃をくらっていたら、倒れていたのは自分だったかもしれない。
リンジーの念操玉は、アルバレスをあと一歩まで追い詰めていたのだ。
無敵の肉体を手に入れたと確信していただけに、慢心していた面は確かにあった。
しかしそれを抜きにしても、まさかここまで苦戦を強いられるとは思いもしなかった。
「褒めてやる、お前は強かった。だが、勝ったのは俺だ」
右手に残る感覚を確かめるように、拳を握った。
手応えは十分だった。肋骨を何本も折り、内臓も破裂しているかもしれない。
そしてあれだけの勢いで樹木に叩きつけられたのだから、死んでいてもおかしくない。
だが、生きている可能性もある。
「強かったからこそ、きっちり殺しておかねぇとな」
アルバレスの目に明確な殺意が宿った。
視線の先のリンジーは、倒れたきりピクリとも動いていない。生死は不明だが、少なくとも意識は失っているだろう。
これがただの一兵士であるならば、放っておいても問題はない。
実際にアルバレスは、アラン、ヴァージニア、アドニス、ガラハド、彼らにもまだトドメを刺していないが、その存在はすでに頭には無かった。なぜなら彼らはアルバレスにとって無力だからだ。
しかしリンジーは違う。アルバレスの体を破壊できるのだから脅威である。
このまま生かしておくわけにはいかない。
一歩一歩足を前に出し、真っ直ぐにリンジーの元へと進む。
「・・・一思いに踏み潰してやるぜ」
そして倒れているリンジーの前に立ったアルバレスは、右足をリンジーの頭の上に上げた。
・・・音はしなかった。もちろん声も上げていない。アルバレスがソレに気が付いたのは影だった。
視線を下に向けていた事。太陽が落とす日の影に、ふいにもう一つの影が重なった事で、背後からの奇襲を察する事ができた。
振り返り、空を見上げたアルバレスの目に飛び込んで来たのは、泥にまみれた青い髪の女戦士が、両手で握り締めた長剣を振り下ろす瞬間だった。
「きさ・・・ッ!?」
気付いた時にはもう遅い。ヴァージニア・フィールディングの渾身の一撃が、アルバレスの頭を叩き割った!
まるでガラスでも割ったかのような音が響き、金属のように硬い肉片と共に、バッ!と血が噴き出した。
「グ、ガァァァァッ!」
「や、やった!やっぱりそうだ!どんなに硬くても、ヒビが入ってしまえば脆いのは当然!私の力でもアルバレスに通用する!」
ヴァージニアはアルバレスの肩を蹴ると、大きく飛び退いて距離を取った。
リンジーが戦っている間に、長剣迅雷の刀身を回収したヴァージニアは、足手まといにならないように身を潜めて戦いを見守っていた。
リンジーとアルバレスの戦いにはとても介入できないからだ。しかしリンジーが殺されそうになり、決死の覚悟で飛び出して来たのだ。
一度完全敗北を喫していただけに恐怖はあった。しかし勝算も見えた。
それは今自分で証明した通り、リンジーが付けた傷だった。アルバレスの体は金属と同じである。ならばヒビが入った金属は脆いはず。自分の一撃でも通用するかもしれない。
そして見事にアルバレスに血を流させた。ヴァージニアの賭けは成功した。
「キ・・・キサマァァァァァーーーーーーッ!」
肉が抉れてダラダラと流れ出る血が、アルバレスの顔を真っ赤に染めた。
ギリッと歯を噛み締め、血に塗れた目で睨みつける形相は、とても同じ人とは思えない憎悪の塊であり、身震いするほど恐ろしいものだった。
「ふ、ははは・・・ど、どう!?私の剣でもあんたの体を斬る事ができたわ!あんたの鋼鉄の体は無敵じゃない!その首今度こそ斬り飛ばしてやるわ!」
体に刻み込まれた恐怖は簡単には消えない。しかしヴァージニアは自分を奮い立たせた。
それは一重に恩人であるリンジーのため。その一心でヴァージニアは今、再びアルバレスと対峙しているのだ。
「なめんじゃねぇぞォォォォォーーーーーーッ!」
激昂したアルバレスは、ヴァージニアに向かって地面を蹴った!
体中から血を撒き散らし、雄叫びを上げて突進する巨躯の男は、その姿を二倍にも三倍にも大きく見せた。
「くっ・・・」
恐怖が向かって来る。
踏みしめた足がズブっと泥の中に沈む。
押し寄せる圧に思わず一歩引いてしまった。だが、ヴァージアニは持ち堪えた。
ここで逃げるわけにはいかない。
弟のアラン、恩人のリンジーも倒れている。そして自分を信じて付いて来てくれた魔導剣士隊も、まだ戦っているのだ。
「う、うぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッツ!」
恐怖をかき消すように叫び声を上げた。
そして両手で強く剣を握り締めると、ヴァージニアも地面を蹴って跳び出した!
アルバレス!私は逃げない!正面から受けて立つ!
「ぶっ潰れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーッツ!」
血まみれの大男が右の拳を振り被った!
「アルバレスーーーーーーーーーーーッツ!」
青い髪の魔道剣士は長剣を真っすぐに突き出した!
この時ヴァージニアは相打ちを覚悟していた。
アルバレスの体は全身に亀裂が入っており、この長剣ならばヒビを貫く事も可能だ。
ならば自分の命と引き換えに、その心臓を抉り取ってやる!
弟のため、恩人のため、そして仲間達のために命を懸けたヴァージニアの一撃!
・・・しかしこの一撃がアルバレスに届く事はなかった。
「・・・なにッ!?」
目の前に飛び散った真っ赤な血に、ヴァージニアは目を見開いた。
「馬鹿が!見え見えなんだよ!」
アルバレスは左手でヴァージニアの剣を握り掴んだのだ!
ヒビ割れているとはいえ、それでも鋼鉄の体である。指を落とさずに剣を掴む事はできる。
「今度こそ死ね!」
狂気すら感じる笑みを浮かべ、アルバレスは頭上に掲げた右の拳を振り下ろした!
「ッ!」
全て読まれていた。もう躱す事はできない。防ぐ手段もない。
一瞬の後に来るであろう死の痛みに、ヴァージニアは固く目を閉じた。
しかし・・・・・
「・・・・・ふぅ、ギリギリ、間に合ったな」
来るはずの痛みも衝撃も来ない。そして聞き覚えのある声に目を開けると、自分の前に立つ金髪の男の背が目に入った。
「お、お前は・・・ビンセン・・・ッ!?」
「ヴァージニアさん、遅くなりました。あとは俺に任せてください」
振り返ったビンセントの言葉が、耳に入らなかったわけではない。
しかしヴァージニアは、ビンセントの後ろで血飛沫を撒き散らしながら宙に舞う、アルバレスの切断された右腕に目を奪われた。
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