異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1455 ビンセントの生い立ち

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ビンセント・ボーセルは、物心ついた時には剣を持っていた。

体力型だった父と母はどちらも剣を使えたが、王宮に仕えるつもりは無いようだった。
ロンズデールの田舎の海沿いの村で、父は漁を、母は父が釣った魚を使い、小さな食堂を営んでいた。


ビンセントの村は、人口300人程の小さな村だった。
最低限の日用品を売っている小さな商店と食料品店、居酒屋と食堂が数件があるだけで、若者が遊べる店など何もない。そのため子供達は成人すると首都に出る者がほとんどだった。しかし結婚して家庭を持つと、不思議な事に半数は村に戻って来た。

なぜか?
戻って来た者達は口をそろえてこう話した。

首都は何でもあって便利だけど、住むのならやっぱりこの村だ、と。

海と生きる国ロンズデールは、プライズリング大陸で一番水が綺麗である。
首都の水ももちろん綺麗だが、この村の水はロンズデールで最も澄んだ水だった。
当然この村で獲れた魚も国一番である。

一度村を出た若者達も、故郷の水と魚の味が忘れられず戻って来てしまうのだ。
国一番の水を持つ村、それがビンセントの生まれ育った村だった。


話しは戻るが、ビンセントは幼い頃から教えられるがままに剣を振るっていた。
なぜ剣を学ぶのか?理由なんて考えた事もない。食事と同じだ、剣は生活の一部であり、剣とともに成長してきた。ビンセントにとって剣を振るう事は、疑う余地が無い、当たり前の事なのだ。

代り映えのしない生活だった。母の食堂には毎日のように顔なじみが訪れ、食事をしながら雑談をして帰っていく。父は獲れた魚を必要な分だけ食堂に置いて、あとは他所に売りに行く。
そうやって同じ毎日が過ぎて行った。だがビンセントに不満はなかったし、それでよかった。



平穏な日々の中で、たまに父と母の元を訪れる者がいた。
それは男性であったり女性であったり、年若い者だったり年配であったり、様々であったが一つだけ共通しているものがあった。
それは全員が何かしらの武器を持っているという事だ。
人口300人程度の小さな村に、武装して食堂を訪れるのだから目立って当然だ。ビンセントも意識せずとも彼らを目で追うようになっていた。
彼らと言っても武装した者達に関係性はなく、全員が個人だった。しかしビンセントから見れば、同じ集団のようなものだった。なぜなら彼らは全員、父と母に腕試しを申し込むのだから。


父と母は挑まれた勝負は全て受けた。
そして父と母は一度も負けなかった。挑まれた全ての勝負に勝ったのだ。
それも拍子抜けするほど、あっさりと勝つのだ。相手が弱すぎたのか?最初のうちはそう思ってもいたが、十歳を迎える事には理解できた。相手が弱いのではなく、父と母が圧倒的に強いのだと。

一度尋ねた事がある。
それほどの腕があるのなら、王宮にも仕えられるのではないか?と。

父も母も首を横に振った。
そして、私達が王宮に仕える事は無い。そうハッキリと言い切った。

漁と食堂、今の生活が気に入っている。父と母を見ていればそれは分かる。二人は毎日笑顔だから。
しかし父と母があまりにも迷い無く言い切るものだから、それ以外にも理由があるのではないか?
子供ながらに疑念を抱いた。

その理由を教えてもらったのは、ビンセントが十五の歳を迎えた日だった。



ボーセル家はかつて存在したカエストゥス国の血を継いでいる。この剣はカエストゥスへ捧げている。
だからロンズデールに仕える事はできない。
しかし200年前、自分達の祖先であるリンダが、戦争に敗れこの地に逃れた時、レオネラ・アラルコンが助けてくれた事への恩義は忘れていない。
だからロンズデールが帝国と戦う決意を固めたら、その時はロンズデールのために自分達も剣を取り戦う。


あの日、父と母から聞いた話し、ボーセル家の成り立ちを知ってから、ビンセントは一層剣に打ち込んだ。
自分が学んできた剣術には、祖先から受け継がれてきた義と信念があったのだ。

父と母は言った、帝国と戦う日は必ず来ると。だからその日まで剣を磨き備えておくのだと。
いつかは分からない。けれどその日は必ず来る。


そして自分の代でその日が来た。







「てめぇらロンズデールの強さは認めてやる。まさかこの俺の鋼鉄の体をここまで破壊するとはな。だがな、もうここまでだ。てめぇらはここで全員死ぬ。俺が闇の力を開放した以上、それはもう決定している」

アルバレスの全身から発せられる闇の瘴気は、周囲に強い圧迫感を与えた。
呼吸をする事さえままならない。腹の奥底に重く圧し掛かる不快感。並みの兵士であれば、立っている事さえできないだろう。


「くっ、こ、これは!?ビンセント、まずいぞ、どうする?」

青い髪の魔道剣士ヴァージニアは、闇の圧力に押され大きく飛び退いた。
とても正面には立てない。向き合うだけで全身に重圧がかかり、膝が折れそうになる。
頬を伝う汗を拭い、隣に立つビンセントに視線を送ると、ビンセントは何かを覚悟したように、強い眼差しで前を見据えていた。


「ビンセント・・・お前・・・」

「ヴァージニアさん、みんなをお願いします」


一度はアルバレスの闇に気圧され下がった。
だがビンセントは自分が何のためにここに来たのか、なんのために剣を学んだのかを思い出した。

押し寄せる闇の瘴気に体が押し潰されそうになる。
しかし一歩、また一歩と足を前に出した。


「ほぅ、この闇を浴びてもまだ戦意を失っていねぇのか」

「・・・俺は、ボーセル家は、その闇を斬るために剣を磨き続けてきた」

アルバレスから発せられる禍々しい闇の瘴気を受けながらも、ビンセントは二刀の短剣を構えた。
両足を開き、しっかりと地面を踏みしめる。軽く肘を曲げて左手を前に、右手は引いて顔の前に、そして真正面からアルバレスを睨みつける。


「あ?何を言ってやがる?」

「フッ、貴様に言っても分からんだろうな・・・」


体を蝕むような瘴気に圧し潰されそうになる。
アルバレスの闇は、対峙しているだけでもビンセントを消耗させる程の圧力だった。

しかしこの状況でビンセントは笑った。

「かかってこい、アルバレス。闇ごと貴様を真っ二つに斬ってやろう」
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