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1481 挑発と苛立ち
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「そういうわけで、バリオスさんとルナが協力して闇を押さえる事になったんだ。道が開けたら一気に首都に乗り込んで、さっさと皇帝の首を取って来てよ」
ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンは、天幕を出ると外で待機していたレイジェスのメンバーと、治安部隊隊長のヴァン・エストラーダ、そして隊長補佐のモルグ・フェンテスに、今後の方針について説明した。
説明と言ってもまるで他人事のように話すフェリックスに、ヴァンは苛立ちを隠さずに少し語気を強めて言葉を返す。
「・・・バリオスさんとルナで闇を押さえるって事は分かったけどよ、さっさとって言われてもなぁ・・・首都にはまだ師団長が三人残ってるんだぞ?それに本丸だけあって、皇帝も秘蔵の戦力を残しているはずだ。長期戦になった場合、バリオスさんとルナは持つのか?」
ヴァン・エストラーダはフェリックスの前に足を進めると、睨むように目を合わせた。
敵の本拠地に乗り込むのだ、さっさとと言われても、そう簡単にいくはずがない。
ウィッカーとルナは闇を押さえる間、身動きが取れなくなる。
ウィッカーは光魔法で、ルナは闇の力を使うわけだが、長引けば長引くだけ疲労は蓄積していくだろう。
二人のうちどちらかが倒れれば、作戦は崩れてしまうかもしれない。
「大丈夫だと思うよ。同じ系統の魔法使いなら、魔力を譲り渡す事ができる。だから魔力補充要員として十分な人数は残しておくよ。ルナは闇の巫女って立場だけど、魔力の系統は黒魔法と言ってたよ。だから黒魔法使いから魔力をもらう事はできる。魔力が枯渇する事はないと思うけど」
「だがな、何時間も闇と対峙するってのは、精神を相当削られると思うぞ。バリオスさんはともかく、ルナは耐えられるのか?あの小さな体で最後までやり通せるのか?」
フェリックスはいつものように軽い口調で話すが、この作戦は決して失敗が許されない。
ぶっつけ本番の一発勝負である。緊張感の欠片もない様子に、ヴァンはどんどん苛立ちを募(つの)らせ表情が険しくなる。
だがヴァンがルナの身を案じる言葉を口にすると、突然フェリックスの表情からスッと笑みが消える。
そして突き刺さるような鋭い視線でヴァンを見据えた。
「ヴァン、心配いらないよ。ルナには僕がついてるからね」
静かだが有無を言わせぬ圧に、ヴァンは無意識に一歩後ろに下がってしまった。
「・・・余計な心配はしないで、キミは治安部隊をまとめる事を考えなよ?」
「フェリックス、てめぇ・・・」
ギリッと歯を噛み鳴らす。
フェリックスに睨まれて、ヴァンの脳裏にクインズベリー城での戦いが思い起こされた。
偽国王を倒すためにクインズベリー城に乗り込み、そこでヴァンはフェンテスと共に、ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンと一戦交えた。
死力を尽くしたが、結果としてヴァンはほとんど何もできずに、フェリックスに敗れた。
その後偽国王を倒し、クインズベリーは帝国に立ち向かうため、一丸となる必要があった。だからヴァンは敗北の悔しさを、己の心に押し込んでいた。フェリックスとも任務上での付き合いがあるため、表立って摩擦を生まないように接してきたつもりだったが、この大事な場面でのてきとうな態度は我慢がならなかった。
一歩後ろに引いてしまった足を戻す。そして今度は一歩前に踏み込んだ。
「フェリックス、あんまりふざけんなよ?時と場所を考えろ。もっと真剣にやれよ」
「僕はいつだって真剣だけど?なにカリカリしてるのさ?キミこそ時と場所を考えなよ?こんな時につっかかってきてさ。なに?また僕にやられたいの?」
「・・・なんだと?」
睨み合う二人、ヴァンとフェリックスの間の空気が張り詰める。
一度フェリックスに不覚をとったヴァンだが、心まで折れてはいない。フェリックスの力が自分より上だとしても、ここで退くわけにはいかない。
「ちょっと待てって!おい、二人ともやめろよ!」
緊迫した状況に声を上げたのはアラタだった。
手を伸ばせば届く距離で睨み合う二人の間に割って入り、二人の体を押して下がらせる。
「アラタ、邪魔すんじゃねぇよ。こんなヘラヘラ無責任なヤツと一緒に、ベアナクールに乗り込めると思うか?一度キッチリ分からせてやる必要があんだよ」
「分からせる?笑わせるね、ヴァン。僕に手も足も出なかったキミが、何をどう分からせるってのさ?」
「ッ!おい、本当にいい加減に・・・!」
このままではまずい。売り言葉に買い言葉だが、すでに二人の間は一触即発である。
こんな大事な時に仲間割れなんて冗談にもならない。アラタが大声を出して二人を止めようとしたその時だった。
「やめんかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッツ!」
周囲のざわめきも何もかも、全てかき消される程の怒声とともに、地面が大きく揺れ動いた。
「ッ!?」
バランスを崩したアラタは、砂の上に手を着いて倒れてしまった。
なんだ?地震か!?今の声は、ロブギンス団長!?
突然発せられた怒声、大きな揺れ、何が起きたか瞬時には理解できなかった。だがまずは立たなければと、膝に手を着いて体を起こしたアラタの目に映ったのは、砂に体を拘束されて空中に持ち上げられた、ヴァンとフェリックスだった。
地面から空へ向けて立ち上がる砂は、まるで柱のように大きかった。そして二人は頭だけを外に出して、足の先から首までを砂で固められていた。
「バカ共が、このまま捻り潰してやろうか?」
右手の平を空中の二人に向けながら、クインズベリー軍軍団長バーナード・ロブギンスは、腹の底に響くような低い声を発した。
ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンは、天幕を出ると外で待機していたレイジェスのメンバーと、治安部隊隊長のヴァン・エストラーダ、そして隊長補佐のモルグ・フェンテスに、今後の方針について説明した。
説明と言ってもまるで他人事のように話すフェリックスに、ヴァンは苛立ちを隠さずに少し語気を強めて言葉を返す。
「・・・バリオスさんとルナで闇を押さえるって事は分かったけどよ、さっさとって言われてもなぁ・・・首都にはまだ師団長が三人残ってるんだぞ?それに本丸だけあって、皇帝も秘蔵の戦力を残しているはずだ。長期戦になった場合、バリオスさんとルナは持つのか?」
ヴァン・エストラーダはフェリックスの前に足を進めると、睨むように目を合わせた。
敵の本拠地に乗り込むのだ、さっさとと言われても、そう簡単にいくはずがない。
ウィッカーとルナは闇を押さえる間、身動きが取れなくなる。
ウィッカーは光魔法で、ルナは闇の力を使うわけだが、長引けば長引くだけ疲労は蓄積していくだろう。
二人のうちどちらかが倒れれば、作戦は崩れてしまうかもしれない。
「大丈夫だと思うよ。同じ系統の魔法使いなら、魔力を譲り渡す事ができる。だから魔力補充要員として十分な人数は残しておくよ。ルナは闇の巫女って立場だけど、魔力の系統は黒魔法と言ってたよ。だから黒魔法使いから魔力をもらう事はできる。魔力が枯渇する事はないと思うけど」
「だがな、何時間も闇と対峙するってのは、精神を相当削られると思うぞ。バリオスさんはともかく、ルナは耐えられるのか?あの小さな体で最後までやり通せるのか?」
フェリックスはいつものように軽い口調で話すが、この作戦は決して失敗が許されない。
ぶっつけ本番の一発勝負である。緊張感の欠片もない様子に、ヴァンはどんどん苛立ちを募(つの)らせ表情が険しくなる。
だがヴァンがルナの身を案じる言葉を口にすると、突然フェリックスの表情からスッと笑みが消える。
そして突き刺さるような鋭い視線でヴァンを見据えた。
「ヴァン、心配いらないよ。ルナには僕がついてるからね」
静かだが有無を言わせぬ圧に、ヴァンは無意識に一歩後ろに下がってしまった。
「・・・余計な心配はしないで、キミは治安部隊をまとめる事を考えなよ?」
「フェリックス、てめぇ・・・」
ギリッと歯を噛み鳴らす。
フェリックスに睨まれて、ヴァンの脳裏にクインズベリー城での戦いが思い起こされた。
偽国王を倒すためにクインズベリー城に乗り込み、そこでヴァンはフェンテスと共に、ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアンと一戦交えた。
死力を尽くしたが、結果としてヴァンはほとんど何もできずに、フェリックスに敗れた。
その後偽国王を倒し、クインズベリーは帝国に立ち向かうため、一丸となる必要があった。だからヴァンは敗北の悔しさを、己の心に押し込んでいた。フェリックスとも任務上での付き合いがあるため、表立って摩擦を生まないように接してきたつもりだったが、この大事な場面でのてきとうな態度は我慢がならなかった。
一歩後ろに引いてしまった足を戻す。そして今度は一歩前に踏み込んだ。
「フェリックス、あんまりふざけんなよ?時と場所を考えろ。もっと真剣にやれよ」
「僕はいつだって真剣だけど?なにカリカリしてるのさ?キミこそ時と場所を考えなよ?こんな時につっかかってきてさ。なに?また僕にやられたいの?」
「・・・なんだと?」
睨み合う二人、ヴァンとフェリックスの間の空気が張り詰める。
一度フェリックスに不覚をとったヴァンだが、心まで折れてはいない。フェリックスの力が自分より上だとしても、ここで退くわけにはいかない。
「ちょっと待てって!おい、二人ともやめろよ!」
緊迫した状況に声を上げたのはアラタだった。
手を伸ばせば届く距離で睨み合う二人の間に割って入り、二人の体を押して下がらせる。
「アラタ、邪魔すんじゃねぇよ。こんなヘラヘラ無責任なヤツと一緒に、ベアナクールに乗り込めると思うか?一度キッチリ分からせてやる必要があんだよ」
「分からせる?笑わせるね、ヴァン。僕に手も足も出なかったキミが、何をどう分からせるってのさ?」
「ッ!おい、本当にいい加減に・・・!」
このままではまずい。売り言葉に買い言葉だが、すでに二人の間は一触即発である。
こんな大事な時に仲間割れなんて冗談にもならない。アラタが大声を出して二人を止めようとしたその時だった。
「やめんかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッツ!」
周囲のざわめきも何もかも、全てかき消される程の怒声とともに、地面が大きく揺れ動いた。
「ッ!?」
バランスを崩したアラタは、砂の上に手を着いて倒れてしまった。
なんだ?地震か!?今の声は、ロブギンス団長!?
突然発せられた怒声、大きな揺れ、何が起きたか瞬時には理解できなかった。だがまずは立たなければと、膝に手を着いて体を起こしたアラタの目に映ったのは、砂に体を拘束されて空中に持ち上げられた、ヴァンとフェリックスだった。
地面から空へ向けて立ち上がる砂は、まるで柱のように大きかった。そして二人は頭だけを外に出して、足の先から首までを砂で固められていた。
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