悪徳領主の息子に転生しました

アルト

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3章

22話 後編続!!

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後編続です笑めちゃ短い笑
取り敢えずシリアス?パート終わりです。
ストック切れたんで更新頻度多分落ちます(白目)





———————————






(それがナガレの想いというなら、受け止めよう。それもまた人生だ)


 個々人の在り方なんて様々だ。
 どんな生き方をしようとも自由であって、生き方を強制することなぞ出来やしない。
 修羅の道だろうが、そこに口を出すのは無粋極まる。
 だけど。だけれど。


(でも、お前の幸せはどこにあるんだよ、ナガレ……っ!)


 物心ついたばかりの時に強固な禊を打ち込んだ。
 そして理想の像に向かって自分を殺す事を誓った。
 だが、その理想はナガレが憧れたものでなければ、欲したものでもない。ただの目的。ただの終着点。ただの贖罪。


 ゆえにそこにナガレの幸せは一片とて存在しやしない。
 現代で平凡に幸せな人生を送り、平凡な幸せを見つけ、享受した記憶が朧げに残る俺だからこそ、苛立つ。


 自分の幸せなぞどうでも良いと吐いて捨てるような思考を抱いていた本来のナガレに。
 しかし、ナガレは最も心が純粋な幼き日に根本的な。
 それこそ、魂が壊れている。


(報われないぞ、それは……。お前が報われる事はないぞ……)


 ナガレの生き方。
 その果てに存在するものは孤独。
 死を恐れたナガレは孤独に行き着く。
 贖罪のため、領民のためと尽くそうとする少年の末路は決められている。


 守ろうとしたものからは嫌われ、誰一人として側に置かない。
 独りで全てを抱え込み、独りで死んでいく。
 得れるものは罪滅ぼしをしたという達成感と孤独死のみだ。
 それではあまりに、報われないじゃないか。


 誰かの掲げた理想を果たすために身を捧げる。
 言葉にすれば綺麗に聞こえる。
 ああ、たしかに綺麗だ。まるでお伽話に出てくる騎士のようだ。
 だけどそれはお伽話であって事実ではない。
 自分の意思、感情すらも捨て置いてしまったのならば、それは最早人間でなく傀儡だ。人形だ。


 ——それでいいよ。それでいいんだ。


 声が聞こえる。
 

 ——これが僕の信念だった。でも、どこか迷いがあった。弱気はたしかにそこに存在した。


 違う。
 お前は弱くなんかない。
 強いよ。独り悩んで、嘆いて、押し殺して。
 そんな事が出来るヤツが弱いはずがない。
 強い人間だよナガレは。


 ——だから君に託した。僕は逃げたんだ。生から。誓いから。死から。そんな人間が言えた事ではないと思う。でも、僕の生き様だけは否定しないでほしい。彼らの死に様だけは。彼が語った理想だけは。


 お前なりの悼み方だという事は理解している。
 だけど、


 俺はお前のようにはなれない。
 だって、俺はナガレであるけどお前ではないから。


 これが決別だった。


 でも、そんな生き方をしたヤツがいた事は。
 そんな理想を語ったヤツがいた事は覚えておくよ。
 お前を受け入れ、肯んずる。
 だけど、お前のようには生きられない。
 俺は俺だから。俺の意思で物事を判断し、絆されるよ。
 一つの選択肢として、お前の生き様を認める。


 ——ふふはっ。


 声が笑う。
 愉快に声が弾む。
 

 ——十分だよ。ナガレ。


 利他に染まった白い世界にヒビが入る。
 ピキリと。


 ——僕は報われたいと思ったことなんてない。ただ逃げたかっただけさ。人の死が軽いこの世界から。実際、誓いだって自分が現実から目をそらす為の言い訳だった節もあった。


 ナガレの考えは誰にも理解出来なかった。されなかった。
 死を重く受け止める子供が一人。
 周りの人間は傭兵だからと。仕方ないとすぐに割り切っていた。
 父上だってそうだった。人に死はつきものだと。
 でも、それを受け入れられなかった。


 世界は美しいと思っていた。
 希望、喜び、幸せに満たされ、未来は弾んでいると。
 輝く世界が包み込んでくれると。


 純粋なこころにとって、死は劇物過ぎたのだ。
 そんな彼が作ったのが白い世界。
 でも、


 君には必要無いみたいだね。
 とばかりに、音を立てて世界が崩壊してく。



 ——僕とは違うと言うのならば。それを見せてくれ。行動で示してくれ。僕とは違う答えを見せてくれ。その可能性を。


 サラサラとナガレだった者が風化してく。
 満足げに笑い、最後に一言だけ告げる。


「認めてくれてありがとう、ナガレ」



 崩れ落ちていく白い世界を眺めながら、立ち尽くす。



 どう考えても報われない行動を続けた一人の少年。
 世界に受け入れられなかった彼は新しい人格を生み出した。
 側から居なくなる事が怖くて、家族以外とマトモな交友を持てなかった哀れな人間。だというのに。



「なんでそんなに満足そうな顔すんだよ……」


 屈託のない笑みを浮かべていたあの表情が頭から離れない。
 満足そうに微笑む姿が忘れられない。


 ナガレが消えたその瞬間。
 俺の中にいた何かが失われたような。
 小さな虚無感に襲われた。
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