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新たな事実
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顎に手を当て呟く先輩は、どこか腑に落ちたような顔をしていた。
「どういうことですか?」
「……俺は、人の魔力を少しだけ、感じ取ることが出来るんだが……君の指導をしている時に、君の身体からは想像もつかない大きさの魔力を感じたんだ。ただ、君はそれを上手く扱うことが出来ていないみたいだったけどね」
「……え? でも普通、魔力の大きさって筋力で決まるんじゃ……」
この世界では筋肉が全て。筋肉が正義だ。そして俺の身体は、大きな魔力を宿せるほど逞しくはない。なんなら細マッチョにもなれない部類だ。悲しいことに。
虚しいけれども正しい自己分析を行っていた俺の疑問に、先輩が答える。
「ああ、だから、俺も不思議に思っていたんだが……君が異世界から来たのなら、その説明がつく。これは、あくまで俺の仮説だが……俺達と君とでは、身体を構成している魔力の質が異なっているんだと思う」
「……つまり、俺の身体を作ってる魔力の質が良いから、筋力が少なくても魔力が大きくなってるってことですか?」
俺なりに噛み砕いた答えに対し、先輩がうんうんと頷いた。
「多分ね。ただ、君の世界には魔術が存在していないんだろう? だから、今この世界での君の筋力の分しか、魔力を扱うことが出来ないんだろうね」
成る程。要は、宝の持ち腐れってわけか。使えるようになりたければ、それ相応の筋肉をつけなきゃ無理、と。やっぱり、世の中うまい話はないな。
「しかし、潜在能力はあるってことだから、これから俺と一緒に鍛えれば、少しずつ使えるようになるかもしれない。だから……君が望むなら、俺に任せてくれないだろうか?」
「俺は、先輩に鍛えてもらえるなら嬉しいですけど……先輩は良いんですか?」
「……俺がそうしたいんだ。君の魔力がどこまで伸びるのか、見てみたいというのもあるんだが。その、あわよくば、シュンと……もっと仲良くなりたいというか……」
言葉尻に近づくにつれ、先輩の声がどんどん小さくなっていく。比例するように、頬がほんのり染まっていき、ガッシリとした身体もだんだん縮こまっているような気がする。
「俺と仲良くしてくれるんですか? 先輩に色々と秘密にしてたのに」
「誰にだって、言いたくないことの一つや二つあるだろう? それなのに、君は俺達に打ち明けてくれたじゃないか。まぁ、たとえ隠していたとしても……俺がシュンのことを嫌いになることはないけどね」
包み込むような柔らかい微笑みと温かい言葉に、目頭が熱くなってくる。
「……大丈夫か? すまない……俺は君のことを泣かせてばかりだな」
いつの間に隣に来てくれていたんだろう。顔を上げれば、黄色の瞳が心配そうに見つめていた。
初めて会った時とみたいだ。ゆっくりと伸びてきた大きな手が俺の頬に優しく触れ、太い指先でそっと涙を拭ってくれる。
男らしい手のひらから伝わってくる温もり。その体温が心地よくて、ホッとして、気がつけば甘えるみたいに擦り寄ってしまっていた。
不意に、息を呑むような音がする。何かを堪えるような溜め息と共に、切なく震える声がぽつりと漏れる。
「……あまり、気を持たせるような事をしないでくれ……俺の都合のいいように考えてしまう」
「どういうことですか?」
「……俺は、人の魔力を少しだけ、感じ取ることが出来るんだが……君の指導をしている時に、君の身体からは想像もつかない大きさの魔力を感じたんだ。ただ、君はそれを上手く扱うことが出来ていないみたいだったけどね」
「……え? でも普通、魔力の大きさって筋力で決まるんじゃ……」
この世界では筋肉が全て。筋肉が正義だ。そして俺の身体は、大きな魔力を宿せるほど逞しくはない。なんなら細マッチョにもなれない部類だ。悲しいことに。
虚しいけれども正しい自己分析を行っていた俺の疑問に、先輩が答える。
「ああ、だから、俺も不思議に思っていたんだが……君が異世界から来たのなら、その説明がつく。これは、あくまで俺の仮説だが……俺達と君とでは、身体を構成している魔力の質が異なっているんだと思う」
「……つまり、俺の身体を作ってる魔力の質が良いから、筋力が少なくても魔力が大きくなってるってことですか?」
俺なりに噛み砕いた答えに対し、先輩がうんうんと頷いた。
「多分ね。ただ、君の世界には魔術が存在していないんだろう? だから、今この世界での君の筋力の分しか、魔力を扱うことが出来ないんだろうね」
成る程。要は、宝の持ち腐れってわけか。使えるようになりたければ、それ相応の筋肉をつけなきゃ無理、と。やっぱり、世の中うまい話はないな。
「しかし、潜在能力はあるってことだから、これから俺と一緒に鍛えれば、少しずつ使えるようになるかもしれない。だから……君が望むなら、俺に任せてくれないだろうか?」
「俺は、先輩に鍛えてもらえるなら嬉しいですけど……先輩は良いんですか?」
「……俺がそうしたいんだ。君の魔力がどこまで伸びるのか、見てみたいというのもあるんだが。その、あわよくば、シュンと……もっと仲良くなりたいというか……」
言葉尻に近づくにつれ、先輩の声がどんどん小さくなっていく。比例するように、頬がほんのり染まっていき、ガッシリとした身体もだんだん縮こまっているような気がする。
「俺と仲良くしてくれるんですか? 先輩に色々と秘密にしてたのに」
「誰にだって、言いたくないことの一つや二つあるだろう? それなのに、君は俺達に打ち明けてくれたじゃないか。まぁ、たとえ隠していたとしても……俺がシュンのことを嫌いになることはないけどね」
包み込むような柔らかい微笑みと温かい言葉に、目頭が熱くなってくる。
「……大丈夫か? すまない……俺は君のことを泣かせてばかりだな」
いつの間に隣に来てくれていたんだろう。顔を上げれば、黄色の瞳が心配そうに見つめていた。
初めて会った時とみたいだ。ゆっくりと伸びてきた大きな手が俺の頬に優しく触れ、太い指先でそっと涙を拭ってくれる。
男らしい手のひらから伝わってくる温もり。その体温が心地よくて、ホッとして、気がつけば甘えるみたいに擦り寄ってしまっていた。
不意に、息を呑むような音がする。何かを堪えるような溜め息と共に、切なく震える声がぽつりと漏れる。
「……あまり、気を持たせるような事をしないでくれ……俺の都合のいいように考えてしまう」
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