【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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服を選んでもらっただけなのに、幼なじみの機嫌を損ねてしまったんだが?

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 勢いよくこっちを向いた精悍な顔が、不機嫌そうに歪む。男らしい眉をしかめながら俺を見つめる赤い瞳は、なんだか咎めているように鋭かった。

 何か怒られるような要素、あったっけ?

 自分の発言を振り返ってみたが、よく分からない。だったら、取り敢えず、ことのいきさつだけでも説明すべきだろう。

「いやー……恥ずかしい話なんだけど。おしゃれしていこうとしたら服がなくてさ。困ってたら、先輩が見立ててくれたんだ」

 ホントに昨日たまたま先輩に会えたから良かったものの。俺一人だったら、結局いつも通りの格好でデートに臨んでしまっていただろう。

 感謝してもしきれない。今度先輩に会ったら、お気に入りのいつものジュース奢ろう。

「……先輩が、ってのは引っ掛かるけどよ。俺の為に、してきてくれたってことでいいんだよな」

 良かった。もう、怒ってないみたいだ。先程より、いくぶんか表情の和らいだダンが俺に尋ねた。

「うん、だってデートだし」

「……そっか、今日はデートだもんな」

 噛みしめるように繰り返す。その表情にはいつものカッコよくて可愛い笑顔が戻っていた。

「じゃあ、行こうぜ! ところで相棒、昼飯もう食ったか?」

 差し出された、ひと回り大きな手を握って歩きだす。

「まだ、ダンは?」

「俺も、シュンは食べたいのあるか?」

「うーん……ハンバーグとか?」

「いいな! 地下街に美味い洋食屋さんがあるから、そこ行こうぜ!」

 足取り軽く、真っ青な空の下へと繰り出す。降り注ぐ柔らかい日差しが、隣を歩くダンの真っ赤な短髪を鮮やかに照らした。




 重たいドアを開けると済んだ鈴の音が鳴る。昼時ということもあって店内は、見渡す限り人人々。満員御礼って感じだ。

 運良く、ちょうど空いた二人掛けのテーブル席へ案内してもらい、メニューを受け取る。

「俺、照り焼きハンバーグセット。ダンは?」

 見開きにでかでかと載った、艷やかなソースを纏うハンバーグに見事に釣られたのだ。釣られたんだが。

「ビーフシチューハンバーグセット」

 メニュー表を俺に向け、指し示す指の先。茶色と生クリームのコントラストが、柔かそうな角切りのお肉とジューシーなハンバーグのコラボレーションが、何とも魅力的だ。そそられてしまう。

「あー……それも美味しそう」

「一口やるから心配すんな」

 分かっていたと言わんばかりに、ダンが口の端を持ち上げる。いつものあの笑顔だ。しょうがねぇなぁシュンは……って時の呆れたような、擽ったそうな笑顔。

「やった! 俺のもダンにあげるよ」

 ありがとな、と笑みを深める。注文してからしばらくすると、鉄板にのったハンバーグが俺達の前に運ばれた。

 黒い鉄板の上で肉汁が踊り、ソースが音を立てて弾ける。

 早速一緒にいただきますをしてから、紙ナフキンを膝にかける。ふっくらまん丸のハンバーグを、ナイフで一口サイズに切り分けてから口に運んだ。

「あっち!」

「おいおい、少しは学習しろよ。大丈夫か?」

「うん。めちゃ美味い」

「良かったな。ほら、あーん」
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