【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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絵のモデルをしているだけなのに、先生の視線にドキドキしてしまうんだが?

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 先生が俺を見上げながら悪戯っぽく笑う。続けざまにいただいた、さり気ないウィンクが俺の胸をずきゅんと撃ち抜いた。

 思わず胸を抑え、俯く俺の頭にぽんっと乗せられた温かさ。先生の手だ。楽しそうにニコニコ微笑みながら、優しく撫でていらっしゃる。

「……ところで、今日はもう一つ君にお願いがあるんだけど」

「なんですか? 先生の頼みだったら俺、何でもききますよ!」

「ありがとう。すっかり後回しになってしまっていたけど、そろそろ君の絵を描き始めたいんだ。今からでも大丈夫かな?」

 そういえば、俺のことを調べてもらっていたせいで完全にうやむやになっていたな。先生には悪いことをしてしまった。

「……すみません。俺のせいで遅くなってしまって」

「君が謝る必要はないよ。私が好きでやっているんだからね。ほら笑って? 私は君の笑顔を描きたいんだ」

 節くれだった手が俺の頬を包み込む。太い親指が口の端に添えられたかと思えば、むにっと持ち上げられた。

「ちょっ、何するんですか、もう」

 俺が堪えきれずに吹き出すと、いいね、その調子で頼むよ、と目を細める。

「じゃあ、ここに座っていてくれるかな?」

 壁際に鎮座していた一人がけのソファー。焦げ茶色の革で鞣されたそれは、そこそこの重量がありそうだ。

 しかし先生は、まるでイスでも運んでいるかのように軽々と持ち上げ、部屋の中央へ。運んでからも、角度や位置を調整しつつ吟味している。

「はい、どうぞ」

 納得のいく配置が決まったみたいだ。背もたれをぽんぽんと叩いて俺を招く。

 俺がソファーに腰掛けると、少し前にイーゼルとイスを置いてからキャンバスを乗せた。

「えっと……俺、どうしてたらいいんですか?」

 絵のモデルとか、初めてだからな。勝手が分からない。ただ、写真を撮ってもらう時みたく……はい、ポーズで動かないようにしないといけない、ってイメージがあるけれども。

「緊張しないで、出来るだけ自然体で座っていて欲しいかな」

「笑ったりしなくていいんですか?」

「ずっと同じ表情をキープするのは疲れるだろう? 大丈夫。君の可愛い笑顔は、私の目にしっかり焼きついているからね」

 海よりも深い青い瞳が、蕩けるような甘さを帯びる。まるで、目で言ってもらったみたいだ。好きだよって……

 途端に背筋を駆け抜けた不思議な感覚。壊れたみたいに暴れ始める心音。

 いまだに注がれ続ける眼差しの熱さに堪えきれず、思わず顔ごと背けてしまっていた。

「……ふふっ、そういう表情も魅力的だね。ではよろしく頼むよ」
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