【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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夢の中にて

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 なんだか、俺ばっかり振り回されているような気がするんだが……悔しいな。ちょっとだけ。

 静かな部屋の中で鉛筆の走る音だけが響く。そっと先生の顔を盗み見ると、今までにない真剣な眼差しでキャンバス越しに俺を見つめていた。

 ダメだ……また、ぶり返してしまった。どんどん顔が熱くなっていくのを感じる。

 どうしよう……いつまで俺は、あんな視線にさらされ続けるんだ? ぶっちゃけあまりもちそうにないんだけど。

 心臓がどくどくと波打つ。そのせいだろうか? なんだか息がし辛い。

 こういう時は……そうだ。深呼吸だ。何か副交感神経だかなんだかが働いてリラックス出来るハズ……だったと思う。

 俺はゆっくり鼻で息を吸ってから深く静かに息を吐いた。少し続けていると、さっきまで高鳴っていた心臓の音がだんだんと落ち着いていくのを感じる。

 頭までぼーっとしてきた。温かい午後の日差しが何だかとても心地よくて。うつらうつらと船を漕ぐ。視界がだんだん狭くなっていく。

 重たくなる瞼に抗えず、俺は目を閉じた。




 気が付くと俺は真っ白な空間にぽつんと立っていた。確か先生のアトリエにいたはずなんだが……夢でも見てるのだろうか。

 もしや、これは明晰夢ってやつか? 夢だと自覚出来るっていう。

 空を飛べたりするのだろうか? とわくわくしながらジャンプしてみるが、ただその場で跳ねただけですぐさま地面に足がついた。

 ……噂では思い通りに夢を操れるとかいってたけど嘘だったのか。

 がっかりして肩を落としていると、俺しかいないはずの空間に誰かの声が響いた。

「わぁ! 本当に誰か来てくれた!」

 声のした方に顔を向けると茶色いミディアムヘアの青年が、ブラウンの瞳を輝かせながら俺に向かって飛び付いてきた。サラサラの髪が頬に触れて少しくすぐったい。

「えーっと……君は?」

「ごめんなさい! まさか成功するとは思っていなかったから、つい嬉しくなっちゃって」

 青年が慌てて俺から少し離れる。背格好はほぼ俺と同じ位で体格も大して変わらない。最近がたいのいい人ばかり見てきたからか何だか親近感が湧いてくるな。

 いや、マッチョは大好きだし、目の保養になるから全然オッケーなんだけどね! だって、雄っぱい大きいし。

 俺が謎の言い訳をしていると、青年が笑顔で自己紹介をしながら俺の手を握ってきた。

「僕の名前はライ。よろしくね! 君は?」
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