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蘇る恐怖
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「何か分かったのかい?」
「あぁ、何も無かったことが分かった」
先生は分かってるんだろうか。眉間に深いシワを刻み顎に指を当てて黙ってしまった。
「あの、それって……どういう意味ですか?」
ただ一人置いてけぼりにされている俺が尋ねると、セレストさんはわざとらしく咳払いをしてから口を開いた。
「あのキメラからは魔術の気配がしなかった。つまり何者かに操られて君を襲ったわけではなかったということだ」
成る程、そういうことか。でも、どうして。
「じゃあ、どうしてシュン君ばかりを執拗に狙ったんだい?」
俺の疑問を先生が口にする。臆病な性格だという魔獣。だったら、一度障壁に阻まれれば怯むか諦めて逃げるハズなのだ。
なのにあの獣は攻撃を止めなかった。結果障壁は砕け散った。とてもじゃないが、何も理由がなかったとは思えない。
「これは私の推測に過ぎないが、君のその強大な魔力のせいだろう」
「俺の、ですか?」
「あぁ……君はその身体には分不相応な魔力を有している。それに引き寄せられたのだろう」
セレストさんは身を乗り出すように両肘をテーブルにつくと手の上に顎を乗せた。
「魔獣は人間よりもはるかに魔力の気配に敏感だ。魔力を糧にして生きているからな。普段彼等は植物や自分より弱い魔獣を狩って魔力を得ている。しかし今年は山の木の実が不作でな……」
「餌が不足していたってことですか?」
俺の問いに静かに頷き、話を進める。
「そんな折に、いかにもか弱そうな君が強大な魔力を引っ提げてやって来たんだ。彼にとってはとんでもないご馳走が現れたようなものだよ」
それじゃあ、もし前日に先生からブレスレットを貰っていなかったら?
障壁が砕けた時にサルファー先輩が助けてくれなかったら?
俺は、魔獣に……
鋭い牙が生え揃った真っ赤な獣の口が脳裏に蘇る。唇が、全身がわなわなと震えだす。
周囲の音が聞こえなくなってきて、だんだん視界がぼやけていく。
「シュン君……シュン! こちらを、私の目を見なさい!」
「あ……せ、んせい?」
先生がひどく狼狽した様子で俺を見つめている。俺の目の焦点が合うのを確認してから安堵のため息を漏らすと、俺を包み込むように抱き締めた。
「大丈夫……もう、大丈夫だからね」
温かい……頼もしい太い腕、逞しい胸板。先生の温もりに全身を包まれて、あの日の恐怖に凍り付いていた胸の奥がじんわり溶けていく。
心地のよい心臓の音が俺の耳元で聞こえている。やっと地に足がついたような気がして心が軽くなった。
「あぁ、何も無かったことが分かった」
先生は分かってるんだろうか。眉間に深いシワを刻み顎に指を当てて黙ってしまった。
「あの、それって……どういう意味ですか?」
ただ一人置いてけぼりにされている俺が尋ねると、セレストさんはわざとらしく咳払いをしてから口を開いた。
「あのキメラからは魔術の気配がしなかった。つまり何者かに操られて君を襲ったわけではなかったということだ」
成る程、そういうことか。でも、どうして。
「じゃあ、どうしてシュン君ばかりを執拗に狙ったんだい?」
俺の疑問を先生が口にする。臆病な性格だという魔獣。だったら、一度障壁に阻まれれば怯むか諦めて逃げるハズなのだ。
なのにあの獣は攻撃を止めなかった。結果障壁は砕け散った。とてもじゃないが、何も理由がなかったとは思えない。
「これは私の推測に過ぎないが、君のその強大な魔力のせいだろう」
「俺の、ですか?」
「あぁ……君はその身体には分不相応な魔力を有している。それに引き寄せられたのだろう」
セレストさんは身を乗り出すように両肘をテーブルにつくと手の上に顎を乗せた。
「魔獣は人間よりもはるかに魔力の気配に敏感だ。魔力を糧にして生きているからな。普段彼等は植物や自分より弱い魔獣を狩って魔力を得ている。しかし今年は山の木の実が不作でな……」
「餌が不足していたってことですか?」
俺の問いに静かに頷き、話を進める。
「そんな折に、いかにもか弱そうな君が強大な魔力を引っ提げてやって来たんだ。彼にとってはとんでもないご馳走が現れたようなものだよ」
それじゃあ、もし前日に先生からブレスレットを貰っていなかったら?
障壁が砕けた時にサルファー先輩が助けてくれなかったら?
俺は、魔獣に……
鋭い牙が生え揃った真っ赤な獣の口が脳裏に蘇る。唇が、全身がわなわなと震えだす。
周囲の音が聞こえなくなってきて、だんだん視界がぼやけていく。
「シュン君……シュン! こちらを、私の目を見なさい!」
「あ……せ、んせい?」
先生がひどく狼狽した様子で俺を見つめている。俺の目の焦点が合うのを確認してから安堵のため息を漏らすと、俺を包み込むように抱き締めた。
「大丈夫……もう、大丈夫だからね」
温かい……頼もしい太い腕、逞しい胸板。先生の温もりに全身を包まれて、あの日の恐怖に凍り付いていた胸の奥がじんわり溶けていく。
心地のよい心臓の音が俺の耳元で聞こえている。やっと地に足がついたような気がして心が軽くなった。
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