【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

文字の大きさ
106 / 122

次元の狭間へ

しおりを挟む
 軽めの食事を取った後、俺はライの事を皆に話した。

 夢の中で会っていたこと、彼が俺を喚んだ理由。

 ……自分を犠牲にして俺を助けてくれたこと。

「ふむ、次元の狭間とはまた興味深い。君と出会ってから、私の知的好奇心は刺激されっぱなしだよ! はっはっは」

 ニヤニヤと口元を緩めながらセレストさんが顔を上気させている。

 ……ブレないな。でも、何か今は逆に安心する。

「セレスト! 全く君は……面白がっている場合じゃないだろう? シュン君の友達が大変だって時に」

 目を三角にしたグレイ先生に嗜められ、いやぁ済まない、と口にしてはいるけれど、悪びれた様子はなさそうだ。

 先生も気づいているんだろう。呆れたような、諦めているような顔でため息をついている。

「……でもよ、結局そいつの自業自得なんじゃねーか?」

「ダン!」

 サルファー先輩が立ち上がろうとするのを、ソレイユ先輩が首を横に振りながら押し留めた。

「……うん、そうだね、そうかもしれない……でも」

「助けたいんだよな? シュンは」

 肩をすくめながら、俺を見つめる彼は微笑んでいた。大きな手が俺の頭をわしゃわしゃ撫で回す。いつも通り、無遠慮に。

「本当にしょーがねーよな相棒は。まぁ、そいつが喚ばなかったら俺達がシュンに会えなかったんだし、お礼くらい言わねーとな!」

「ダン……ありがとう!」

 手を取り、笑い合う俺達を皆が目を細めながら見つめていた。



「でもさ、実際どーすんの? そもそもライくんが居る次元の狭間ってなんなのさ?」

「私達がいる世界と、シュン君がいた世界の間にある空間のことだよ。シュン君を喚んだ時に出来た穴から、そこへ飛ばされてしまったんじゃないかな?」

 俺の疑問を代弁してくれたソレイユ先輩。頭を抱えて唸る彼に、グレイ先生が丁寧に説明してくれた。

「まぁ要するに……もう一回穴を開けて、そこから彼を引っ張り出せばいいわけだよ」

「随分と簡単に言うが……そんなこと本当に出来るのか?」

 自信満々に話すセレストさんに、サルファー先輩が疑いの眼差しを向けている。

 確かに、それが出来たら万々歳だ。でも……世界に穴を開けるって……

「なーに簡単さ! ここには世界一の魔術士と、強大な魔力の持ち主がいるんだからね!」

 セレストさんが口の端しを吊り上げてニッと笑う。俺を見つめた水色の瞳には、今まで見たことのない真剣な光を宿していた。

「……君の力が必要だ。協力してくれるね?」

「はいっ! 俺は、何をしたらいいんですか?」

「まず、君の魔力を使って狭間への入り口を作る。そこへ私が君を術で飛ばす。後は君が彼を見つけ出して、私が術を解けばハッピーエンドだ」

「おいおい、それって本当に大丈夫なのか? シュンまで帰ってこられなくなったらどーすんだよ!?」

 心配そうに顔を歪めたダンが、俺とセレストさんを交互に見つめる。

「術を解けば、シュン君だけは確実に戻ってこれるさ。問題はライ君を探し出せるかどうかだ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...