【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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もっと、貴方のことが、皆のことが知りたい

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「先輩の都合の良いことって、何ですか?」

 優しく撫でてくれていた手がぴたりと止まり、離れていってしまう。何だかスゴく寂しくて、手を追うように見上げれば、困ったように微笑む先輩と目が合った。

「……全く、君は無防備というかなんというか……この際だから、はっきり言わせてもらおう」

「先ぱ……」

 深まる疑問を言葉にする前に肩を掴まれ、射抜かれた。燃えるような光を宿した黄色の瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。

「……君が好きだ。君を、シュンを俺だけのものにしたい。誰にも渡したくないんだ」

 ゴツゴツした手が俺の手を取り、手の甲に口づける。まるで、物語に出てくる騎士の誓いみたいに。

「今ここで宣言する。俺はシュンを必ず振り向かせてみせる。俺自身にも、たとえ先生や君の幼なじみにだって負けやしない。必ず君のことを勝ち取ってみせる」

 情熱的な言葉に頭がくらくらする。高鳴り続けている鼓動が、全身に響くくらい煩く暴れている。このままじゃあ、壊れてしまいそうだ。

「だから俺のことを側で見ていて欲しい。俺とずっと一緒にいてくれ」

 ……好きだ。嬉しい。でも、それと同じ想いを俺は他の人達にも抱いている。

 そして、多分、ちょっとだけ違う気がする。先生が、ダンが、先輩が、俺に向けてくれている想いと俺が抱いているものは少しだけ。だから、

「……はい。俺も先輩ともっと仲良くなりたいです」

 この気持ちだけしか言葉に出来なかった。素直に純粋に、この世界で生きる皆のことを知りたいっていう気持ちしか。

「ありがとう、今はその言葉で十分だ。これからもよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 差し出してくれた大きな手。中途半端な返事しか返せなかったのに受け止め、微笑んでくれた先輩。重ねて握ったその手は、やっぱり温かかった。

「……ところで、話を蒸し返すようで申し訳ないんだが……ダンが君の部屋によく泊まるという話は本当なのか?」

 尋ねる先輩の表情は、あまり浮かないようだった。男らしい眉を釣り上げ、いかにも不満だと言いたげに口をへの字に歪めている。

 ……何で、二人共こんなに仲が悪いんだろう? 馬が合わないってヤツなんだろうか。

「あぁ、よくっていってもまだ二回なんですけど。テスト勉強で遅くなったのと。昨日は、その……俺一人じゃ心細かったので」

 気恥ずかしさはあったけれど、全部話した方がいいだろう、と白状する。いまだに渋い顔をしている先輩が俺の首をそっと撫でた。

「じゃあ、ここに付いている跡も……まさか彼が?」

「はい、この前寝惚けたダンに噛まれちゃって。それが、どうかしましたか?」

 昨日、先生にも聞かれたけど、そんなに目立つのかな? ……何か、またちょっと寒気がしてきたな。風邪気味なんだろうか。

 少しの間黙り込み、顎に指を添えていた先輩が、不意に俺の肩を抱き寄せる。

「……もし、俺もシュンの身体に跡を付けたいと言ったら、君はどうする?」
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