【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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【番外編】皆とバレンタイン9

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 ……なんか、今日はスゴく疲れたな。

 先輩……あの後急に、顧問の先生との用事を思い出したって言って走って行っちゃったけど……間に合ったんだろうか?

 別れる前にしきりに、寄り道せずにちゃんと帰るんだぞ! って念押しもされたけど。

 一応、俺も男なんだからさ。一人で帰るくらい、何の問題もないのにな。

「しゅーんーちゃん!」

 聞き馴染みのある、弾んだ声のした方へと目を向ける。すると自販機横のベンチに腰掛ける、鮮やかなオレンジ色の頭が見えた。

「ソレイユ先輩」

「おいで、オニーサンと一服しよう?」

 招かれるままに隣に座ると、いつものオレンジジュースではなく茶色の紙カップを手渡された。

 まだ温かいそれの飲み口にはプラスチックの蓋がついていて、ほんのりとチョコレートの甘い香りが漂ってくる。

 なんか、駅の近くにあるおしゃれなコーヒーチェーン店の容器と似てるんだけど。

 でも、結構ここから距離あるし……近くのコンビニで買ったんだろうな。

「ありがとうございます。ホットチョコレート……ですか?」

「うん、正解! ソレ、駅前で買ったんだよ。美味しいのにさ、バレンタインの時期にしか売ってないんだよねー」

「え!? でも、まだ全然温かいですけど?」

「ああ、それは魔術でちょちょいとね? でも小一時間くらいしかもたないからさ、冷める前に渡せてよかったよ」

 スゴいな……俺なんて熱さも冷たさだって、三分維持させるだけで精一杯なのに。

 ……ん? 今、小一時間って言ったか? それって、つまり……

「……もしかして、ですけど……これを渡す為だけに、ずっと俺のことを待ってたとか……まさか、そんなこと……」

「待ってたよ?」

 あっけらかんとした即答に声すら出ない。ただただ見つめてしまっている俺の肩に、先輩の長い腕がするりと回る。まるで追い打ちだった。

「ああ、でも気にしないでね。好きなコのことを待ってる時間って……オレにとっては楽しみでしかないからさ」

 さり気なく抱き寄せられただけじゃない。耳元でそう囁かれてしまったんだ。

 ぞくぞくと背中に走った淡い感覚に、反射的に横を向いていた。お陰様でさらなる追い打ちを、星が飛んできそうなくらいに綺麗なウィンクを間近でもらってしまった。

 ……だから、そうやって唐突にハートを鷲掴んでくるのは止めてくれませんかねぇ!?

 なんなんだよ、ホントに。ソレイユ先輩までそんな……二人とも平気な顔して……す、好きとかさぁ……

 いちいち恥ずかしがってる俺の方がおかしいのか?

「でも意外だったよ、君一人だけなんてさ。てっきりサルフにエスコートされて来るかと思ってたからね。オレとしては都合がよかったけど」
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