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……俺達の愛の力? あれ? 友が抜けてない?
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暗く、廃れた場所を好むのだろうか。今日の任務先も廃墟だった。今回は、元々旅館だったみたいだけれど。
華やかさの名残もないフロント。窓は割れ、障子は破れ。観葉植物は枯れて、鉢ごとひっくり返り、天井や壁には所々に亀裂が入っている。
俺達の頭上を飛ぶ白い蝶。博士が開発した追尾型カメラからの通信が入る前に、外から差し込んでいた唯一の光が黒い霧によって奪われていった。
始まった。
天井からぼとぼとと、黒く虚ろな塊が落ちてくる。ぞわりと形を変え、五体の人型の影が現れた。
……大丈夫だ。
今日は見れる。大丈夫、大丈夫だ。
懸命に言い聞かせていた俺の手を、すぐ隣に居たダイキさんが握ってくれる。微笑みかけてくれた柔らかい眼差しが、冷えかかっていた俺の心を温めてくれた。
「……大丈夫だよ。言ったでしょ? オレがぶっ飛ばすって」
「……はい。そう、ですね……そうでした」
大丈夫だって確信できた。自分じゃどうにもならなかったのに。
怖さもすっかりなくなっていた。全然拭えていなかったのに。ダイキさんが言ってくれたから。手を繋いでくれるから。
「よっし! いっくよーレンレン! オレ達の愛の力を見せつけてやろう!!」
「はいっ! ダイキさん!」
なんか今、目指していた友の字が抜けてた気もする。でも、些細なことに構っている場合じゃない。ダイキさんが変身出来るように、頑張らないと!
時を同じくして、廃旅館の外。
車両内にて、モニター越しに彼らを見守っていたメンバーの内、緑山が目を丸くする。その隣で彼らのリーダーである赤木が、顎に指を当て頬を緩めた。
「……あ、い……あい……愛?」
「……ダイキさん、か……成程、いいな」
……愛ってどいういうこと? どういうことなの? レン……と虚ろな目でモニターを食い入るように見つめる緑山。
コウイチさん……うん、やはり悪くないな……と完全に自分の世界に入ってしまっている赤木。
控えめに言っても混沌とした空気の中、眉一つ動かさずに青岩が別のモニターを眺めている白衣の男、黒野に声をかけた。
「黒野先生、天音君の状態はどうですか?」
「今のところ問題は無いな。会敵した際少し揺れた程度だから、変身に影響はないだろう。昨日の成功体験が自信に繋がったのかもしれない。良い傾向だ」
「そうですか……良かった」
平坦なラインしか描かない彼の口元が、緩やかな笑みを描く。目を丸くしたのは黒野だけではなかった。
「青岩クンも笑うんだねぇ」
「……笑ってましたか?」
「うん」
本人も気づいていなかったようだ。珍しいものでも見たような顔をした白花博士に指摘され、そうですか……と不思議そうに呟いた。
影と十分に距離を取り、向かい合った俺達。
柔らかく微笑まれて、そっと肩を掴まれて……高鳴り始めた俺の鼓動に共鳴するみたいに彼の胸元が、星型多角形のペンダントが淡く黄色に輝き始めた。
「レン、今はオレだけを見てるんだよ?」
「はい……ダイキさん」
頭をするりと撫でてくれた手が、そのまま頬へと添えられる。
一心に見つめてくる優しい眼差し。明るい黄色に魅入られているうちに、高い鼻先が触れ、吐息が混じってそして……柔らかな光が俺達を包みこんだ。
心の底から喜びが溢れてくる。全身に気力が満ちていく。今なら何でも出来そうだ。何だって乗り越えられる気がする。二人なら。
黄色に染まっていた視界が落ち着きを取り戻した時、鮮やかな黄色の髪を後ろに纏め、華やかな模様が彩る鎧を纏ったダイキさんが微笑んでいた。
勲章のように輝くペンダントが白銀の胸当てを淡く照らしている。風もないのに靡いた黄色のマントが薄闇の中でも煌めいて見えた。
「ダイキさん……良かった……」
ホントに良かった……やっと役に立てたんだ……
「うん……レンのお陰だよ」
鱗みたいに何枚もの白銀に覆われた指が、俺の髪を梳くように撫でてくれる。囁く声の優しさに目の奥が熱くなる。
「さぁ、この調子でぶっ飛ばしてやろうよ! オレ達の愛の力で!」
「はい!」
……ん? 愛?
「あの……やっぱりさっきから友が抜けてません?」
さっきとは違い心にゆとりが出来たからだろう。つい、聞き返してしまっていた。俺を見つめる黄色の瞳は僅かにきょとんと瞬いたものの、すぐにニコリと細められる。
「うんっ! でもさ、何か問題ある? オレはレンレンのこと好きだし。レンレンもオレのこと嫌いじゃないでしょ」
さり気なく肩を抱き寄せられ、耳元で囁かれる。弾んでいた声が、ふわりと甘さを帯びていく。何で俺、ドキドキしてるんだろう。
「はい……まぁ……好き、ですね……普通に……」
「じゃあ、問題ないよね?」
「……はい」
押し切られてしまった。
柔らかい微笑みが満足そうに深くなる。ご機嫌そうだ。そっかぁ、普通に好きでいてくれてるんだ、と口元をふにゃりと綻ばせ、俺の頭を撫でてくれている。
……まぁ、いっか。ダイキさん、嬉しそうだし。
すっかりほのぼのムードになっていた俺達にお咎めの声が降ってくる。ずっと見守っている白い蝶から、あの呑気な声色で。
「いいねぇ、いいよぉ、イチャイチャするのは。でもねぇ、取り敢えず目の前の敵を倒してからにしようねぇ」
……博士にだけは言われたくなかった。けど、正論だから反論出来ない。実際、肩の力抜けちゃってたし。
「す、すみません……」
「はーい、ごめんなさーい」
顔が一気に熱くなる。でもダイキさんは恥ずかしくないみたいだ。怒られちゃったね、と悪びれた様子もなく笑っている。
変身の際に放たれた、輝石の輝きに怯んでいたんだろう。水溜りのように引っ込んでいた影達が、ずずずと俺達の方へ這い寄ってくる。
「よーし、じゃあ一緒にいこっか! レンレン!」
「はい、ダイキさん!」
離れないように鎧を纏う胸元へぴたりと身を寄せた俺に微笑み、手を伸ばす。
見る見るうちに集まった光の粒が、長い槍を構築していく。しっかり握り締めた白銀の手によって、黄色に輝く切っ先が五体の影を捉えた。
昨日と同じなら、これでもっと役に立てるハズ……
添えるように白銀の甲に触れる。まるで溢れてくるみたいだった。俺の中で燃える何かが伝わっていく。十字の形をした穂に輝きが集まっていく。
ふと見上げた先で交差した、黄色の瞳と静かに頷き合った。
「「いっけぇぇッ!!」」
重なり、咆えた俺達に応えてくれたみたいだ。放たれた黄色い雷。切っ先から扇状に広がった煌めきが、瞬く間に影を灼き尽くしていく。
激しい閃光が止み、静けさを取り戻した薄闇の中、立っているのは俺達だけだった。
「やったぁ! スゴいよレンレン! びっくりしちゃった! ぐわーって力が漲ってきてさ……」
「お役に立てて良かったです……」
サラサラと砂のように冷たい空気の中へと溶けていく白銀の鎧と槍。俺の手を握り締め、満面の笑みを浮かべるダイキさん。
終わったハズだ。
終わらせることが出来たハズだ。ダイキさんと一緒に。なのに、何だ? この不安感は……何で、俺、まだぞわぞわして……
「っ……ダイキさんッ!!」
「え?」
咄嗟に動いていた。
足元からぞぞぞと伸びてきた虚ろな腕。ダイキさんの死角から襲いかかってきた黒を見つけた瞬間、咄嗟に突き飛ばしていた。
華やかさの名残もないフロント。窓は割れ、障子は破れ。観葉植物は枯れて、鉢ごとひっくり返り、天井や壁には所々に亀裂が入っている。
俺達の頭上を飛ぶ白い蝶。博士が開発した追尾型カメラからの通信が入る前に、外から差し込んでいた唯一の光が黒い霧によって奪われていった。
始まった。
天井からぼとぼとと、黒く虚ろな塊が落ちてくる。ぞわりと形を変え、五体の人型の影が現れた。
……大丈夫だ。
今日は見れる。大丈夫、大丈夫だ。
懸命に言い聞かせていた俺の手を、すぐ隣に居たダイキさんが握ってくれる。微笑みかけてくれた柔らかい眼差しが、冷えかかっていた俺の心を温めてくれた。
「……大丈夫だよ。言ったでしょ? オレがぶっ飛ばすって」
「……はい。そう、ですね……そうでした」
大丈夫だって確信できた。自分じゃどうにもならなかったのに。
怖さもすっかりなくなっていた。全然拭えていなかったのに。ダイキさんが言ってくれたから。手を繋いでくれるから。
「よっし! いっくよーレンレン! オレ達の愛の力を見せつけてやろう!!」
「はいっ! ダイキさん!」
なんか今、目指していた友の字が抜けてた気もする。でも、些細なことに構っている場合じゃない。ダイキさんが変身出来るように、頑張らないと!
時を同じくして、廃旅館の外。
車両内にて、モニター越しに彼らを見守っていたメンバーの内、緑山が目を丸くする。その隣で彼らのリーダーである赤木が、顎に指を当て頬を緩めた。
「……あ、い……あい……愛?」
「……ダイキさん、か……成程、いいな」
……愛ってどいういうこと? どういうことなの? レン……と虚ろな目でモニターを食い入るように見つめる緑山。
コウイチさん……うん、やはり悪くないな……と完全に自分の世界に入ってしまっている赤木。
控えめに言っても混沌とした空気の中、眉一つ動かさずに青岩が別のモニターを眺めている白衣の男、黒野に声をかけた。
「黒野先生、天音君の状態はどうですか?」
「今のところ問題は無いな。会敵した際少し揺れた程度だから、変身に影響はないだろう。昨日の成功体験が自信に繋がったのかもしれない。良い傾向だ」
「そうですか……良かった」
平坦なラインしか描かない彼の口元が、緩やかな笑みを描く。目を丸くしたのは黒野だけではなかった。
「青岩クンも笑うんだねぇ」
「……笑ってましたか?」
「うん」
本人も気づいていなかったようだ。珍しいものでも見たような顔をした白花博士に指摘され、そうですか……と不思議そうに呟いた。
影と十分に距離を取り、向かい合った俺達。
柔らかく微笑まれて、そっと肩を掴まれて……高鳴り始めた俺の鼓動に共鳴するみたいに彼の胸元が、星型多角形のペンダントが淡く黄色に輝き始めた。
「レン、今はオレだけを見てるんだよ?」
「はい……ダイキさん」
頭をするりと撫でてくれた手が、そのまま頬へと添えられる。
一心に見つめてくる優しい眼差し。明るい黄色に魅入られているうちに、高い鼻先が触れ、吐息が混じってそして……柔らかな光が俺達を包みこんだ。
心の底から喜びが溢れてくる。全身に気力が満ちていく。今なら何でも出来そうだ。何だって乗り越えられる気がする。二人なら。
黄色に染まっていた視界が落ち着きを取り戻した時、鮮やかな黄色の髪を後ろに纏め、華やかな模様が彩る鎧を纏ったダイキさんが微笑んでいた。
勲章のように輝くペンダントが白銀の胸当てを淡く照らしている。風もないのに靡いた黄色のマントが薄闇の中でも煌めいて見えた。
「ダイキさん……良かった……」
ホントに良かった……やっと役に立てたんだ……
「うん……レンのお陰だよ」
鱗みたいに何枚もの白銀に覆われた指が、俺の髪を梳くように撫でてくれる。囁く声の優しさに目の奥が熱くなる。
「さぁ、この調子でぶっ飛ばしてやろうよ! オレ達の愛の力で!」
「はい!」
……ん? 愛?
「あの……やっぱりさっきから友が抜けてません?」
さっきとは違い心にゆとりが出来たからだろう。つい、聞き返してしまっていた。俺を見つめる黄色の瞳は僅かにきょとんと瞬いたものの、すぐにニコリと細められる。
「うんっ! でもさ、何か問題ある? オレはレンレンのこと好きだし。レンレンもオレのこと嫌いじゃないでしょ」
さり気なく肩を抱き寄せられ、耳元で囁かれる。弾んでいた声が、ふわりと甘さを帯びていく。何で俺、ドキドキしてるんだろう。
「はい……まぁ……好き、ですね……普通に……」
「じゃあ、問題ないよね?」
「……はい」
押し切られてしまった。
柔らかい微笑みが満足そうに深くなる。ご機嫌そうだ。そっかぁ、普通に好きでいてくれてるんだ、と口元をふにゃりと綻ばせ、俺の頭を撫でてくれている。
……まぁ、いっか。ダイキさん、嬉しそうだし。
すっかりほのぼのムードになっていた俺達にお咎めの声が降ってくる。ずっと見守っている白い蝶から、あの呑気な声色で。
「いいねぇ、いいよぉ、イチャイチャするのは。でもねぇ、取り敢えず目の前の敵を倒してからにしようねぇ」
……博士にだけは言われたくなかった。けど、正論だから反論出来ない。実際、肩の力抜けちゃってたし。
「す、すみません……」
「はーい、ごめんなさーい」
顔が一気に熱くなる。でもダイキさんは恥ずかしくないみたいだ。怒られちゃったね、と悪びれた様子もなく笑っている。
変身の際に放たれた、輝石の輝きに怯んでいたんだろう。水溜りのように引っ込んでいた影達が、ずずずと俺達の方へ這い寄ってくる。
「よーし、じゃあ一緒にいこっか! レンレン!」
「はい、ダイキさん!」
離れないように鎧を纏う胸元へぴたりと身を寄せた俺に微笑み、手を伸ばす。
見る見るうちに集まった光の粒が、長い槍を構築していく。しっかり握り締めた白銀の手によって、黄色に輝く切っ先が五体の影を捉えた。
昨日と同じなら、これでもっと役に立てるハズ……
添えるように白銀の甲に触れる。まるで溢れてくるみたいだった。俺の中で燃える何かが伝わっていく。十字の形をした穂に輝きが集まっていく。
ふと見上げた先で交差した、黄色の瞳と静かに頷き合った。
「「いっけぇぇッ!!」」
重なり、咆えた俺達に応えてくれたみたいだ。放たれた黄色い雷。切っ先から扇状に広がった煌めきが、瞬く間に影を灼き尽くしていく。
激しい閃光が止み、静けさを取り戻した薄闇の中、立っているのは俺達だけだった。
「やったぁ! スゴいよレンレン! びっくりしちゃった! ぐわーって力が漲ってきてさ……」
「お役に立てて良かったです……」
サラサラと砂のように冷たい空気の中へと溶けていく白銀の鎧と槍。俺の手を握り締め、満面の笑みを浮かべるダイキさん。
終わったハズだ。
終わらせることが出来たハズだ。ダイキさんと一緒に。なのに、何だ? この不安感は……何で、俺、まだぞわぞわして……
「っ……ダイキさんッ!!」
「え?」
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