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今度こそ、青岩さんとは仲間として、友達として、健全な絆を深めなければ
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戸惑うように自問する声。でもその声色は、どこか嬉しそうにも聞こえた。
「僕は……君を好き、なんだろうか?」
はたと見開いた青い瞳に星が瞬く。
「いや、好きだ……天音君。僕は君に恋をしている」
言葉が出てこない。包み込むように握られた両手の熱さに、真っ直ぐな想いを伝えてくる焦がれた表情に。何て応えたらいいのか分からない。
ただ見つめることしか出来ない俺を、スクエアタイプの眼鏡越しに見つめていた眼差しが寂しそうに細められる。
「……大丈夫、分かっている。いや、今分かったよ。君にはもう好きな人がいるんだろう? だから、せめて好きでいさせてくれないか?」
まるで祈るみたいな声だった。切ない響きのする声色に胸が痛いくらいに締めつけられる。なのに。
「初めてなんだ……こんなに温かくて嬉しい気持ちは」
何で……そんな、嬉しそうに笑うんだよ。
*
しなやかな指が慣れた手つきで眼鏡を外し、懐から取り出したケースへ丁重にしまう。そして再び懐へ。準備完了とばかりに向き直り、言い放ったその表情は至って冷静だった。
「よし。じゃあ、天音君……思いっきりやってくれ。遠慮せずにグーでいいからね?」
「いやいやいや、殴りません、殴りませんからね?」
内容は滅茶苦茶クレイジーだったけどな。
最後は青岩クンとだね! いつもの調子でよろしく頼むよ! と笑顔満開な博士に見送られ、青岩さんの部屋を訪れた途端にコレだ。
まさか、マジで殴らせるつもりだったとは。
皆が集まっている時や任務後に「大丈夫かい?」と気にかけてはもらっていたけれど……二人っきりでじっくりお話しする機会がなかったからな。思い詰めさせてしまっていたんだろう。申し訳ないことをしてしまった。
「……赤木さんとダイキさんにも言いましたけど、俺、全然気にしてませんから。青岩さんも気にしないで下さい。それより、これからのことを考えませんか? 俺、青岩さんとも仲良くなりたいです」
今度こそ、仲間として! 友達として! 健全な絆を深めなければ。
今のところ博士の言っていた通り、倫理観ぶん投げちゃってるからな……俺が勝手に皆のこと好きになっちゃってるだけなんだけどさ。
おまけにヒスイの優しさにどっぷり甘えちゃっている始末だ。今朝なんか、早速おはようのキスを頂いてしまったどころか、嬉しくて追加で強請っちゃったし……ホントにどうしようもない。自分のことながら。
「天音君……ありがとう。僕も君と仲良くなりたい……もっと君のことを教えてくれないか?」
「は、はい……勿論」
真顔の仮面みたいだった表情に突然ふわりと温もりが宿る。そっと握られた手の指先が少し冷たくて、つい包み込むように握り返していた。
一瞬驚いたように見開かれたけれど、すぐに嬉しそうに細められた。微笑む青の瞳に見つめられ胸の辺りが擽ったくなる。
笑うの初めて見たかも……なんか可愛いな……ってまたやらかしかけてるじゃないか!
落ち着こう。冷静にならないと。微笑みかけられただけでときめいちゃってたら話になんないじゃないか。
「早速だが……君の好きなものを教えてくれないかい? 食べ物でも、趣味でも何でも構わないから」
そんな俺の焦りなんて知る由もない青岩さんは何故か積極的だ。手早く眼鏡をかけ直し、再び手を握ってきたかと思えば前のめりに俺との距離を詰めてくる。気がつけば広いソファーのど真ん中で身を寄せ合う形になってしまっていた。
……もしかしてパーソナルスペースが狭いタイプのお方か? 距離感が親密過ぎるんですが?
身近に感じる体温と目鼻立ちのハッキリしたスマートな表情に心臓が高鳴ってしまう。やっぱりイケメンってズルい。
このままじゃマズい……マズいけど、ここで引き離すのはなぁ……本人にとってはなんてことないんだろうし。だったら俺も自然に振る舞うべきだろう。
「えっと……アイスクリームが好きですね。一回ハマっちゃうといっつも同じ味ばっかり頼んじゃ……っ」
分析しているような鋭い瞳が、少し目を離していた間に無邪気に煌めいていた。
さっきからホント心臓に悪い。何でそんなに楽しそうなんだ? アイスの話してるだけなのに……
「? どうかしたのかい?」
「い、いえ……あとカラオケも好きですね、ゲーセンも。ヒスイとよく行ってて……」
ますます騒がしくなる鼓動を無視して話を進める。進めようとしていたけれど、ムリだった。ふとまた横を向いた瞬間捉えてしまったんだ。今度は寂しそうに沈んだ青岩さんを。
カッコいい人ってどんな時でもカッコいいんだな。憂いを帯びた表情にもつい目を奪われてしまう。今までの話のどこに落ち込む要素があったのかは、全くもって分からないけれど。
しかし、どうしたもんか。あっという間に重たくなってしまった空気を変えるべく糸口を探す。
モデルルームみたいに整えられた部屋をざっと見渡し見つけた、棚に並ぶファンシーな編みぐるみ。犬、猫、インコ、ライオン、狼……とデフォルメされた様々な動物達に俺は一縷の望みをかけてみることにした。
「あの……青岩さんって可愛いものが好きなんですか?」
俺の視線の先を見た青岩さんの表情が少し和らぐ。
「ああ、最初は妹に強請られたのが始まりだったんだけどね。作っている内にもっと可愛いものをと熱中してしまって……」
「え、手作りなんですか? スゴく可愛いし丁寧な作りだから、てっきりお店で売ってるものかと」
やっぱり人って見た目によらないな。編み物が得意なんてさ。妹さんの為にせっせと可愛い動物達を編んでいく青岩さんを思い浮かべほっこりする。
「……ありがとう、嬉しいな。君に褒めてもらえるなんて……頑張ってきた甲斐があったよ」
すぐ側にある綻んだ頬が薄っすらと染まっていく。何だか、また少し距離が近くなっているような……というか、俺に対するリアクションが全部前向き過ぎやしないだろうか。気のせいかもしれないけれど。
「……ちょ、ちょっと大げさじゃありません?」
「大げさなんかじゃないよ。こんなに嬉しくて、心が満たされたのは初めてなんだ……」
……気のせいじゃないかもしれない。囁く声が甘さを帯び、見つめる青がうっとり細められた。しなやかだけれどちゃんと筋肉のついた長い腕が俺の背に回り、抱き寄せてくる。
ち、近い。いくらなんでも近過ぎる。こんなのもう抱き合ってるみたいなもんじゃないか。なんか、いい匂いするし……
「あ、ぅ……い、妹さんいたんですね?」
「ああ、本当は……婚約者なんだけれど……僕にとっては本当の妹みたいな」
「婚約者!?」
「僕は……君を好き、なんだろうか?」
はたと見開いた青い瞳に星が瞬く。
「いや、好きだ……天音君。僕は君に恋をしている」
言葉が出てこない。包み込むように握られた両手の熱さに、真っ直ぐな想いを伝えてくる焦がれた表情に。何て応えたらいいのか分からない。
ただ見つめることしか出来ない俺を、スクエアタイプの眼鏡越しに見つめていた眼差しが寂しそうに細められる。
「……大丈夫、分かっている。いや、今分かったよ。君にはもう好きな人がいるんだろう? だから、せめて好きでいさせてくれないか?」
まるで祈るみたいな声だった。切ない響きのする声色に胸が痛いくらいに締めつけられる。なのに。
「初めてなんだ……こんなに温かくて嬉しい気持ちは」
何で……そんな、嬉しそうに笑うんだよ。
*
しなやかな指が慣れた手つきで眼鏡を外し、懐から取り出したケースへ丁重にしまう。そして再び懐へ。準備完了とばかりに向き直り、言い放ったその表情は至って冷静だった。
「よし。じゃあ、天音君……思いっきりやってくれ。遠慮せずにグーでいいからね?」
「いやいやいや、殴りません、殴りませんからね?」
内容は滅茶苦茶クレイジーだったけどな。
最後は青岩クンとだね! いつもの調子でよろしく頼むよ! と笑顔満開な博士に見送られ、青岩さんの部屋を訪れた途端にコレだ。
まさか、マジで殴らせるつもりだったとは。
皆が集まっている時や任務後に「大丈夫かい?」と気にかけてはもらっていたけれど……二人っきりでじっくりお話しする機会がなかったからな。思い詰めさせてしまっていたんだろう。申し訳ないことをしてしまった。
「……赤木さんとダイキさんにも言いましたけど、俺、全然気にしてませんから。青岩さんも気にしないで下さい。それより、これからのことを考えませんか? 俺、青岩さんとも仲良くなりたいです」
今度こそ、仲間として! 友達として! 健全な絆を深めなければ。
今のところ博士の言っていた通り、倫理観ぶん投げちゃってるからな……俺が勝手に皆のこと好きになっちゃってるだけなんだけどさ。
おまけにヒスイの優しさにどっぷり甘えちゃっている始末だ。今朝なんか、早速おはようのキスを頂いてしまったどころか、嬉しくて追加で強請っちゃったし……ホントにどうしようもない。自分のことながら。
「天音君……ありがとう。僕も君と仲良くなりたい……もっと君のことを教えてくれないか?」
「は、はい……勿論」
真顔の仮面みたいだった表情に突然ふわりと温もりが宿る。そっと握られた手の指先が少し冷たくて、つい包み込むように握り返していた。
一瞬驚いたように見開かれたけれど、すぐに嬉しそうに細められた。微笑む青の瞳に見つめられ胸の辺りが擽ったくなる。
笑うの初めて見たかも……なんか可愛いな……ってまたやらかしかけてるじゃないか!
落ち着こう。冷静にならないと。微笑みかけられただけでときめいちゃってたら話になんないじゃないか。
「早速だが……君の好きなものを教えてくれないかい? 食べ物でも、趣味でも何でも構わないから」
そんな俺の焦りなんて知る由もない青岩さんは何故か積極的だ。手早く眼鏡をかけ直し、再び手を握ってきたかと思えば前のめりに俺との距離を詰めてくる。気がつけば広いソファーのど真ん中で身を寄せ合う形になってしまっていた。
……もしかしてパーソナルスペースが狭いタイプのお方か? 距離感が親密過ぎるんですが?
身近に感じる体温と目鼻立ちのハッキリしたスマートな表情に心臓が高鳴ってしまう。やっぱりイケメンってズルい。
このままじゃマズい……マズいけど、ここで引き離すのはなぁ……本人にとってはなんてことないんだろうし。だったら俺も自然に振る舞うべきだろう。
「えっと……アイスクリームが好きですね。一回ハマっちゃうといっつも同じ味ばっかり頼んじゃ……っ」
分析しているような鋭い瞳が、少し目を離していた間に無邪気に煌めいていた。
さっきからホント心臓に悪い。何でそんなに楽しそうなんだ? アイスの話してるだけなのに……
「? どうかしたのかい?」
「い、いえ……あとカラオケも好きですね、ゲーセンも。ヒスイとよく行ってて……」
ますます騒がしくなる鼓動を無視して話を進める。進めようとしていたけれど、ムリだった。ふとまた横を向いた瞬間捉えてしまったんだ。今度は寂しそうに沈んだ青岩さんを。
カッコいい人ってどんな時でもカッコいいんだな。憂いを帯びた表情にもつい目を奪われてしまう。今までの話のどこに落ち込む要素があったのかは、全くもって分からないけれど。
しかし、どうしたもんか。あっという間に重たくなってしまった空気を変えるべく糸口を探す。
モデルルームみたいに整えられた部屋をざっと見渡し見つけた、棚に並ぶファンシーな編みぐるみ。犬、猫、インコ、ライオン、狼……とデフォルメされた様々な動物達に俺は一縷の望みをかけてみることにした。
「あの……青岩さんって可愛いものが好きなんですか?」
俺の視線の先を見た青岩さんの表情が少し和らぐ。
「ああ、最初は妹に強請られたのが始まりだったんだけどね。作っている内にもっと可愛いものをと熱中してしまって……」
「え、手作りなんですか? スゴく可愛いし丁寧な作りだから、てっきりお店で売ってるものかと」
やっぱり人って見た目によらないな。編み物が得意なんてさ。妹さんの為にせっせと可愛い動物達を編んでいく青岩さんを思い浮かべほっこりする。
「……ありがとう、嬉しいな。君に褒めてもらえるなんて……頑張ってきた甲斐があったよ」
すぐ側にある綻んだ頬が薄っすらと染まっていく。何だか、また少し距離が近くなっているような……というか、俺に対するリアクションが全部前向き過ぎやしないだろうか。気のせいかもしれないけれど。
「……ちょ、ちょっと大げさじゃありません?」
「大げさなんかじゃないよ。こんなに嬉しくて、心が満たされたのは初めてなんだ……」
……気のせいじゃないかもしれない。囁く声が甘さを帯び、見つめる青がうっとり細められた。しなやかだけれどちゃんと筋肉のついた長い腕が俺の背に回り、抱き寄せてくる。
ち、近い。いくらなんでも近過ぎる。こんなのもう抱き合ってるみたいなもんじゃないか。なんか、いい匂いするし……
「あ、ぅ……い、妹さんいたんですね?」
「ああ、本当は……婚約者なんだけれど……僕にとっては本当の妹みたいな」
「婚約者!?」
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