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改めて、良かったなって思ったんだ
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撫でるのも、つつくのも、俺が待ってと言ったら止めて欲しい。取り付けようとした条件は、当然です、と快く受け入れられた。
カイト様が嫌がることは決して致しませんので。
柔らかな眼差しで告げられて、鼓動が変に騒がしくなった。もしかして、バレていたんだろうか。どっちも別にイヤな気はしていなかったんだって。
いや、でも、無意識っぽかったし。
そう結論づけてから、もうこの件は終わりにした。しておかないと何となく、考えが妙な方向へと走り出してしまいそうな気がして。
「それで、さっきの件についてだけど……」
だから、俺は自らあの話を切り出したのだ。切り出したのだけれども。
「はいっ、貴方の番にさせて頂くにはどうすればいいのか、ですね?」
……わざわざ濁したってのに。リアムに照れというものはないのだろうか。
顔が熱を持ったものの、明るく煌めく眼差しを見ていると何だかどうでも良くなってしまっていた。結構マズいんじゃ?
「カイト様?」
「あー……ごめん、何でもない……」
そうですか、と。聞きたそうにしながらも済ませてくれた優しさに感謝して、改めて話を切り出す。
「そのさ……何度も聞いてばっかりで申し訳ないんだけど」
「大丈夫、構いませんよ」
「じゃあさ……リアムはさ、そもそも俺の」
俺のどこを好きになったの? だなんて。真正面から尋ねてしまうのは、いわゆるノンデリってヤツに当てはまってしまうのでは? 大変、失礼でしかなんじゃ?
慌てて口を引き結び、思わず頭を抱えようとしていたところで、助け舟を出してくれたのは。
「もしや、理由をお聞きになりたいのでしょうか? 私が、どうして貴方の番になりたいと望んでいるのか」
「え」
「違いましたか?」
「違わないけど……良い、のか?」
「構いませんよ」
まさかあっけらかんと向こうから、それもトントン拍子に進むとは。やっぱりリアムには照れってもんがないんじゃあ。
穏やかな夜空のような瞳に、ほんのりと夕焼け色が混じっていく。黒が紺に、そして淡い薄紫に。ゆらりゆらりと移り変わっていく様は、何だか。
「最初は……気になったからです。貴方のことが、とても」
「っ……」
心臓が、また、変だ。真っ直ぐに見つめられただけなのに。
「目が合った時から、頭から離れなくなっていました」
「……俺の、ことが?」
急に喉が詰まってしまったかのよう。上手く言葉が出てこなくて絞り出すように尋ねれば、彼は嬉しそうに瞳を細めた。
「はい。どんな方なのだろうと、どんな声をしていて、どういう風に笑うのだろうと」
表情はどこか柔らかいものの、あまり変化はない。けれども瞳の夜空に滲む色はまた変わっていた。今度は明るい黄色が、夜空に浮かぶお月様のように微笑む瞳に宿っていた。
「一度で良いから、ちゃんとした形でお会いしたいと思いました。話をしてみたいと。それから……同僚の方の気持ちも分かりました。良く、私に勧めてくれていたんです。現星人の方々との交流は楽しいものだと、良い経験にもなると」
「……じゃあ、リアムは今まで交流は?」
「しておりませんでした」
何の気なしに返された言葉に胸の奥がほんのりと温かくなって、少し落ち着かない。あの大きな手からは今触れられてはいない。でも、何だか擽ったいような。
「空いた時間は次の仕事先での準備や、鍛錬を行っておりました」
続く言葉に関心を引かれたことで、不思議な感覚は空気のように儚く消えていた。
「……真面目なんだな。そんな感じはしてたけど」
そうですか?
その反応からして、彼にとっては当たり前のことなのだろう。それこそ毎朝の歯磨きのように。
「私達の仕事において、未曾有の危機に遭遇することは珍しくはございません。ですから、どのような出来事にも対応出来るよう、強くあらねばなりませんから」
眩しかった。眩しく見えた。彼の考えが、在り方が。だから、伝えたくなったんだ。
「……ありがとう」
「どう、致しまして?」
「ごめん、いきなり過ぎたよな……」
「いえ……」
彼の不思議そうな顔見るのは何度目だろうか。彼は表情の変化は少ない。けれども何だか分かりやすくて、失礼だとは思いつつも口元が綻んでしまう。
「改めて良かったなって思ったんだ。地球に来てくれたのが、リアムで」
「わたし、で……」
瞳がはたと見開かれる。
夜空のような黒へと、次々と鮮やかな色が滲んでいく。黄色、オレンジ、ピンク。ころころとその表情を変え、瞬きの間に異なる色合いを見せてくれる瞳はやっぱり。
「おわ」
「っ、私の同僚の方々は、皆さん、優秀な方ばかりなんです!」
キレイだなと、ぼんやり眺めてしまっていた瞳の位置が、大きな音と共に変わっていた。勢いよく椅子から立ち上がった彼の背はやはり高い。
釣られて見上げていれば、彼は瞳を伏せてしまった。今でも彼の瞳の中の夜空に滲む色は目まぐるしく変わっているのかもしれない。長い睫毛が影になっていて、俺からは良く見えないけれども。
「私は、まだまだ未熟で……助けてもらったり、教えてもらうことばかりでっ……でも、そんな私でも……貴方のお役に立てたんだったら……嬉しい、です……」
思ったままを伝えようとしてくれている声が徐々に失速していったのと連動しているかのよう。真っ直ぐだった背筋が言葉尻に近づくにつれて丸まっていってしまう。
言い終わる頃にはちょこんと座り直したばかりか、立ち上がる前よりも背を丸めてしまっていた。
カイト様が嫌がることは決して致しませんので。
柔らかな眼差しで告げられて、鼓動が変に騒がしくなった。もしかして、バレていたんだろうか。どっちも別にイヤな気はしていなかったんだって。
いや、でも、無意識っぽかったし。
そう結論づけてから、もうこの件は終わりにした。しておかないと何となく、考えが妙な方向へと走り出してしまいそうな気がして。
「それで、さっきの件についてだけど……」
だから、俺は自らあの話を切り出したのだ。切り出したのだけれども。
「はいっ、貴方の番にさせて頂くにはどうすればいいのか、ですね?」
……わざわざ濁したってのに。リアムに照れというものはないのだろうか。
顔が熱を持ったものの、明るく煌めく眼差しを見ていると何だかどうでも良くなってしまっていた。結構マズいんじゃ?
「カイト様?」
「あー……ごめん、何でもない……」
そうですか、と。聞きたそうにしながらも済ませてくれた優しさに感謝して、改めて話を切り出す。
「そのさ……何度も聞いてばっかりで申し訳ないんだけど」
「大丈夫、構いませんよ」
「じゃあさ……リアムはさ、そもそも俺の」
俺のどこを好きになったの? だなんて。真正面から尋ねてしまうのは、いわゆるノンデリってヤツに当てはまってしまうのでは? 大変、失礼でしかなんじゃ?
慌てて口を引き結び、思わず頭を抱えようとしていたところで、助け舟を出してくれたのは。
「もしや、理由をお聞きになりたいのでしょうか? 私が、どうして貴方の番になりたいと望んでいるのか」
「え」
「違いましたか?」
「違わないけど……良い、のか?」
「構いませんよ」
まさかあっけらかんと向こうから、それもトントン拍子に進むとは。やっぱりリアムには照れってもんがないんじゃあ。
穏やかな夜空のような瞳に、ほんのりと夕焼け色が混じっていく。黒が紺に、そして淡い薄紫に。ゆらりゆらりと移り変わっていく様は、何だか。
「最初は……気になったからです。貴方のことが、とても」
「っ……」
心臓が、また、変だ。真っ直ぐに見つめられただけなのに。
「目が合った時から、頭から離れなくなっていました」
「……俺の、ことが?」
急に喉が詰まってしまったかのよう。上手く言葉が出てこなくて絞り出すように尋ねれば、彼は嬉しそうに瞳を細めた。
「はい。どんな方なのだろうと、どんな声をしていて、どういう風に笑うのだろうと」
表情はどこか柔らかいものの、あまり変化はない。けれども瞳の夜空に滲む色はまた変わっていた。今度は明るい黄色が、夜空に浮かぶお月様のように微笑む瞳に宿っていた。
「一度で良いから、ちゃんとした形でお会いしたいと思いました。話をしてみたいと。それから……同僚の方の気持ちも分かりました。良く、私に勧めてくれていたんです。現星人の方々との交流は楽しいものだと、良い経験にもなると」
「……じゃあ、リアムは今まで交流は?」
「しておりませんでした」
何の気なしに返された言葉に胸の奥がほんのりと温かくなって、少し落ち着かない。あの大きな手からは今触れられてはいない。でも、何だか擽ったいような。
「空いた時間は次の仕事先での準備や、鍛錬を行っておりました」
続く言葉に関心を引かれたことで、不思議な感覚は空気のように儚く消えていた。
「……真面目なんだな。そんな感じはしてたけど」
そうですか?
その反応からして、彼にとっては当たり前のことなのだろう。それこそ毎朝の歯磨きのように。
「私達の仕事において、未曾有の危機に遭遇することは珍しくはございません。ですから、どのような出来事にも対応出来るよう、強くあらねばなりませんから」
眩しかった。眩しく見えた。彼の考えが、在り方が。だから、伝えたくなったんだ。
「……ありがとう」
「どう、致しまして?」
「ごめん、いきなり過ぎたよな……」
「いえ……」
彼の不思議そうな顔見るのは何度目だろうか。彼は表情の変化は少ない。けれども何だか分かりやすくて、失礼だとは思いつつも口元が綻んでしまう。
「改めて良かったなって思ったんだ。地球に来てくれたのが、リアムで」
「わたし、で……」
瞳がはたと見開かれる。
夜空のような黒へと、次々と鮮やかな色が滲んでいく。黄色、オレンジ、ピンク。ころころとその表情を変え、瞬きの間に異なる色合いを見せてくれる瞳はやっぱり。
「おわ」
「っ、私の同僚の方々は、皆さん、優秀な方ばかりなんです!」
キレイだなと、ぼんやり眺めてしまっていた瞳の位置が、大きな音と共に変わっていた。勢いよく椅子から立ち上がった彼の背はやはり高い。
釣られて見上げていれば、彼は瞳を伏せてしまった。今でも彼の瞳の中の夜空に滲む色は目まぐるしく変わっているのかもしれない。長い睫毛が影になっていて、俺からは良く見えないけれども。
「私は、まだまだ未熟で……助けてもらったり、教えてもらうことばかりでっ……でも、そんな私でも……貴方のお役に立てたんだったら……嬉しい、です……」
思ったままを伝えようとしてくれている声が徐々に失速していったのと連動しているかのよう。真っ直ぐだった背筋が言葉尻に近づくにつれて丸まっていってしまう。
言い終わる頃にはちょこんと座り直したばかりか、立ち上がる前よりも背を丸めてしまっていた。
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