どうか、教えて下さい人間様(毎日更新中)

白井のわ

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何で、そんな……う、嬉しそう、なんだよ

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 曰く、腕輪も宝石も俺の思った通りに動くのだと。俺が着けたいと思えば着いてくれるし、外したいと思えば外れてくれる。宝石も同じ仕組みらしい。俺がこの腕輪で何かをしようと思って触れた時にしか起動しないようになっているのだそう。要はうっかり触っちゃって、みたいな誤作動なんかは起きないってことだ。
 因みに仕組みは良く分からなかった。興味本位で聞くよりも先にリアムの方から教えてくれたんだけど。難しい言葉や聞いたことのない専門用語ばかりでちんぷんかんぷん。取り敢えず便利で賢いんだなって、そう結論づけて納得するしか出来なかったんだ。

 まぁ、目的だったドーナツのレシピはしっかりと調べることが出来たので良しとしよう。

「私にご連絡をしてくれる際は、此方のアイコンに触れて下さい」

「電話の形のヤツだね。ありがとう、スマホと同じのにしてくれて。お陰で分かりやすいよ」

「いえ。このくらいの調整は簡単に出来ますので」

 見た目はリアムの腕輪と変わらない。けれども、中身はしっかりと俺が使いやすいよう細かに調整してくれたんだと。言語とか、アイコンとか。
 今にして思えば、こうするのも兼ねてスマホを預かっていたのかもしれないな。

「それで、此方の船についてですが」

 俺のパンでリング発言により、始まる前に終わってしまっていた説明をリアムは改めてしてくれた。
 元々は丸の一つが船だったこと。それだけだと、自室がいくら広くても閉塞感があると、異星人の方を招くのであれば彼らへの部屋が必要だろうと。そうして丸は二つに増えた。次に、展望室が欲しいというとある同僚の方から要望により三つに。更にその次に……といった感じで。少しずつ増えていった結果、今の形になったらしい。

「他には、自然に囲まれたいという目的で作られた温室。思いっきり運動が出来るトレーニングルーム等がございます」

「へぇ……そこには俺も行ってもいいの?」

「はい。ただ、条件が……」

「なに?」

「初めだけは、私が同行することになりますが……」

「なんだ、そんなことか」

 条件っていうから、つい身構えていたけれども。
 うっかりこぼしてしまっていた安堵故の言葉に、リアムが不思議そうに瞳を細めている。

「寧ろ助かるっていうか、是非案内をお願いします。俺だけじゃあ心細いから、リアムが居てくれると嬉しいな」

「は、はいっ、是非、ご一緒させて頂きますっ」

 手を差し出せば、前のめりになりながら握ってきてくれた。黒い手の方も、俺の全身を今にも包みこまんばかり。衝動的に伸びてきただけで、触れてはこなかったけれども。


「此方が私の部屋ですっ」

 すっかりご機嫌な様子のリアムに案内してもらって、やって来たのは展望室の先。そこもまた俺の部屋とを繋いでいたのと同じように、一本道の通路の先に扉があるだけだった。こっちの扉もやっぱり色も形状も変わらない。

「……本当に、俺が入ってもいいのか?」

「構いませんよ。ただ」

 リアムが振り向き、瞳を細めた。扉はすでにひとりでに開き始めている。

「大して面白みはないかと」

 そっと手を引かれて、部屋へと入った。目に映った内装はやっぱり白い。床も、壁も、天井も。それからやっぱり窓はない。それどころか。

「いや、面白みどころか」

 ぐるりと見渡してみたところで目につくような物はこれっぽっちも。ただただ白くて広い空間が広がっているだけだった。

「何も無い……んだけど?」

「休む為の部屋ですから」

「ベッドの一つもないのに? どこで寝て……いや、もしかして睡眠も必要ないのか?」

「いえ、必要ですよ。活動し続けると効率が悪くなってしまいますので。ただ、人間様よりも融通は利きますね」

「融通って……」

「一、二週間であれば、睡眠を取らなくとも問題なく活動出来ます」

 驚き過ぎると頭が痛くなるらしい。どうりで皆、参った時は頭に手を当てたり、抱えたりしていたんだな。

「……ブラック過ぎやしないか? 流石に」

「ブラック、とは?」

「あー……えっと、過度な長時間労働を強いたりする職場のことを、俺達の世間一般ではブラックって呼んでいて……」

「何故、黒ではないのでしょうか? カイト様の国では、そう呼びますよね?」

「それは、その……と、とにかく、働き過ぎなんじゃないか? 大丈夫なのかよ? リアムの職場」

 幼い子供のなぜなぜ期のよう。次々とされる質問に答えられず、会話の流れを捻じ曲げてしまっていた。
 ふとリアムが目線を合わせるように背筋を屈めた。ただでさえ近い俺との距離を詰めようとしてくる。繋いでいた俺の手を、両手で包み込むように握ってくる。

「心配してくれているのですかっ? 私のことを」

「え、そりゃあ心配するに決まって」

 かち合った瞳はまるで夕焼け空のよう。鮮やかなオレンジと本来の黒とが、複雑で美しいグラデーションを見せてくれている。
 それだけでも今までの経験上、何となく彼の気持ちが分かってしまっていた。だというのに、真っ直ぐな口元まで緩やかな孤を描いていて。

「何で、そんな……う、嬉しそう、なんだよ」
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