建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

文字の大きさ
28 / 591
第2章 トロル集落の生活改善編

第27話 意図しなかった我が家の内覧会

しおりを挟む
 ドアを開くと、向こう側に見えるのは私の家の庭、もとい、地獄の門前広場。

「「「おおーー!?」」」
「どうなってるんだ!?」

 村人から驚きの声が上がる。
 私が先に通過する。
 地獄の門前広場側のドアの前で待っていると、村人がぞろぞろとドアを通り抜けてくる。

「ここがアルトラ様の住んでる場所か~」
「長く住んでるが、こっちの方は初めて来たぞ」
「あ、でっかい犬がいるよ!」
「顔が三つある! 恐いよー!!」

 ケルベロスを前に泣き出す子供がいる。
 しまった、泣き出すのは想定してなかった、そりゃあんな大きい犬が居たら大人だって恐いものね……
 壁とか作って見えないように区切った方が良いかもしれない。いや、そうすると狭くなるし……
 ケルベロスの前を通らないようにドアの場所を変更するか。
 当のケルベロスは、いきなり大勢押し寄せたもんだから、困惑気味だ。萎縮して縮こまっている。まあ、コイツに関しては地獄の門を通りさえしなければ生物を襲うことは無いから大丈夫だろう。
 一応地獄の門には『地獄の門を通り抜けた後に門を出ようとすると食われます。絶対に門を通り抜けようとしないでください』みたいな看板は付けておいた方が良いかな?

「え~と、私の住処はあっちの家なので、連絡がある場合はあっちに来てください」

 なぜかみんなキョトンとしている。
 そしてザワザワし出す。

「こっちの家の方が大きいのですが、こっちではないのですか?」

 みんながケルベロスの犬小屋の方を見る。
 やっぱりそう思うよね……

「そちらは犬小屋です。ケルベロスが夜に寝床として使っています」
「えっ!? 犬の家の方が大きいんですか!?」

 更にザワザワし出す。

「ええ、まあ、ケルベロスの方が身体が大きいのでどうしても大きめに作らざるを得ませんでした」
 ……
 …………
 ………………
 静寂…………がっかりされたか?

「うおぉぉ! なんと慈悲深い!!」
 は?

「感激いたしました! 自分よりも先に他人 (犬)を気遣うその心意気!」
 うん、まあ好感触なのかな?

「あのー……」
 大勢の村人の中から女の子が手を上げる。

「領主様のおうちの中を見てみたいのですが……」
「おお! それは良い!」
「家作る時の参考にさせてもらおう!」
 え!? 今から!? こんなに大勢で!?
 日本人は人を呼ぶ時は外面そとづらを気にして、事前にかなり掃除をする。
 突然の訪問でいきなり家に上げるのは抵抗があるなぁ……

「ダメ……ですか?」
 う~ん……まあ、散らかってはいないし、むしろまだ何も無いし、あるのは布団ぐらいだし別に良いか。
 ああ、でもこの村の人にとっては、布団もパジャマも未知の物なんだよなぁ……現時点では見つからない方が良いかもしれない。集落水没時にニートスとサントスには既にパジャマ姿を見られてるけど、あの時慌ててたからしっかりは見られてないだろ。
 あと、オルシンジテンは絶対に隠しておいた方が良いかな。
 ほとんどのことが答えられるから、あれが見つかると村中の人が頻繁にあれを頼りに訪れそうだ。
 そうなると、私の唯一の安息の場所が無くなってしまう。
 それにこの村は本どころか、まだ紙すら存在しないからアレが発見されるとかなり面倒だ。

「ちょ、ちょっと待っててね、準備してくるから」
 家の中に入って、オルシンジテンに光魔法で透明化の魔法をかけ、とりあえず屋根の上に追いやった。
 あとで、私以外が来た時に透明になる機能と、屋根の上に逃げる機能と、あと雨風を弾く機能を付けておこう。
 布団とパジャマもとりあえず屋根の上に追いやる。

「お待たせ。どうぞ」
 ゼロ距離ドアの試験運転だったはずが、なぜか我が家の内覧会みたいになってしまった。
 ただ単に木と土と、あと畳とフローリングと布団と風呂とトイレがあるだけの殺風景な家見て面白いだろうか?

「じゃあ、お邪魔しま~す」
 あ、土足で入らないで!
 って言おうとしたけど、トロルたち常に裸足だった!
 仕方ない……畳が汚れることも覚悟しておこう……

「わぁ~広~い!」
 えっ? 広くないでしょ!
 ほぼワンルームよ? まあそれでもトロル集落の家に比べれば広いのかな?

「おお! こういう骨組みにしたら良いのか」
 あ、いや、あまり参考にしないで!
 建築関係に明るくないからきっと耐震性はかなり悪いから!

「このわらの床なんて言うの?」
たたみって言うのよ」
「何か気持ち良いね!」
 たたみを気持ち良いと言うなんて……この子らは違いが分かる子だ。このまま育ってもらいたい。

「あ、あれは何ですか?」
 天井付近の壁を見る。そこには以前作った時計がかかっている。
 あ、しまった時計を隠すの忘れてた……
 あの時計、本当は機械のていを成していないからあまりバレたくなかったんだよね……
 魔法で作った、ただの板がデジタル時計を表示してるだけの魔道具だから。

「ああ……あれは時計と言って、今が何時なのかを示してくれるものです」
 今は15:22を示している。
 別の子から質問が飛んでくる。

「何時かわかって何の意味があるの?」
 何の意味がある……確かに何の意味があるんだろ?
 人間界で生活している時には欠かせないものだったけど……魔界の生活に果たしてこれが存在する意味があるのだろうか?
 そう考えるとある意味、前世からの夢であったスローライフが送れていると言えなくはないかも?
 まあ、でも今後文明が進むに連れて、時間を知らなければならない事態が増えるはずだし、あっても困ることはないよね……

「う~ん……時間がわかると、その時間に何をやれるかっていう計画が立てられるようになるのよ。例えば明るい時に出来ることと暗くなってから出来ることじゃ違うでしょ?」
「そうか! 暗くなったら寝なきゃいけないもんね!」
 一応納得してもらえたようだ。

 その後も村人がぞろぞろと入っては出て入っては出てを繰り返す。
 家の中を見ると……泥だらけだ……たたみも泥だらけ……まあ予想した通りだね……
 後で掃除してたたみを作り直しておこう……
 一応玄関も作ってあるんだけど、みんな常に裸足で生活しているから何の意味も成していない……
 これから家に上げる時は、足洗ってもらうようにしよ。いや、それより履物を作って普及させる方が良いか。
 私は外国の土足文化は馴染みが無いから、この際日本の土禁どきん (土足禁止)文化を定着させたい!

「え~と……ご満足いただけましたか?」
「はい! 家というものを堪能させていただきました!」
「参考にして作ってみたいと思います!」
「それは良かった……」

 我が家を汚した甲斐がありました……

「さあさあ、長く居るのもアルトラ様にご迷惑がかかるので、この辺りでおいとましましょう!」
 リーヴァントがみんなに帰宅を促す。
 遅い! 内覧会する前に促せ! リーヴァントを睨みつける。
 向こうからは笑顔が返って来た。どうやら彼も満足されたようだ……
 まあ、どの程度参考になるかはわからないけど、これで住宅事情が改善されるなら良いか。出来れば参考程度に留めてもらって、真似するまでに至るのは遠慮願いたい。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

美化係の聖女様

しずもり
ファンタジー
毒親の仕打ち、親友と恋人の裏切り、人生最悪のどん底でやけ酒を煽り何を思ったのか深夜に突然掃除を始めたら床がドンドンって大きく鳴った。 ゴメン、五月蝿かった? 掃除は止めにしよう、そう思った瞬間、床に現れた円のようなものが光りだした。 気づいたらゴミと掃除道具と一緒に何故か森の中。 地面には気を失う前に見た円が直径3メートルぐらいの大きさで光ってる。 何コレ、どうすればいい? 一方、魔王復活の兆しに聖女を召喚した王城では召喚された筈の聖女の姿が見当たらない。 召喚した手応えはあったものの目の前の床に描かれた魔法陣には誰も居ない。 もしかして召喚先を間違えた? 魔力の残滓で聖女が召喚された場所に辿り着いてみれば聖女はおらず。 それでも魔王復活は待ってはくれない。 それならば聖女を探しながら魔王討伐の旅へ見切り発車で旅する第二王子一行。 「もしかしたら聖女様はいきなり召喚された事にお怒りなのかも知れない、、、、。」 「いや、もしかしたら健気な聖女様は我らの足手まといにならぬ様に一人で浄化の旅をしているのかも知れません。」 「己の使命を理解し果敢に試練に立ち向かう聖女様を早く見つけださねばなりません。」 「もしかして聖女様、自分が聖女って気づいて無いんじゃない?」 「「「・・・・・・・・。」」」 何だかよく分からない状況下で主人公が聖女の自覚が無いまま『異世界に来てしまった理由』を探してフラリと旅をする。 ここ、結構汚れていません?ちょっと掃除しますから待ってて下さいね。掃除好きの聖女は無自覚浄化の旅になっている事にいつ気付くのか? そして聖女を追って旅する第二王子一行と果たして出会う事はあるのか!? 魔王はどこに? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 不定期更新になります。 主人公は自分が聖女だとは気づいていません。 恋愛要素薄めです。 なんちゃって異世界の独自設定になります。 誤字脱字は見つけ次第修正する予定です。 R指定は無しの予定です。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」 お嬢様はご不満の様です。 海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。 名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。 使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。 王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。 乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ? ※5/4完結しました。 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

処理中です...