建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第9章 七大国会談編

第242話 帰国したトライアたちは……

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 数日後、帰国したトライアたち一行は魔王マモンへと報告に赴いていた――

「マモン様、トライア、トリニア、トルテア三名、中立地帯の町・アルトレリアから帰還致しました」
「ゴホッゴホッ……ああ、ご苦労であったな。それで領主アルトラ殿の自国での姿はどうであった?」
「はい、七大国会談で見たそのままの態度でした。彼女はあまり裏表は無さそうです」
「帰ったフリをして、少しの間木の枝や草に擬態して観察していましたが、偉ぶったところも見せず、町の方々にも優しく気さくに話しかけられ、何ら問題となる行動はありませんでした。信用してもよろしいかと思います」
「フフッ……ただ……失敗が多いのが玉にきずですね。あちらこちらであたふたしているのを見ました。親しみやすい人物だと思われます。……あと、この観察期間だけでは彼女が何の仕事をしているのかわかりませんでした。役所に頻繁に顔を出しているようですが、役所の仕事をしているわけでもありませんし、あちらこちらに顔を出して話をしたり、町中を散歩していたり、何もすることが無いと座ってボーッとしていたりと」
「無職なのでしょうか?」
「でも、中立地帯の代表者ですよ?」
「不思議な立場ですね、きっと私たちが観察していた短い時間ではわからないことだったのでしょう」

「それと……何やら不思議な道具がそこかしこにありました。あんなものは見たことがありません」
「不思議な道具とは?」
「主に壁外に作られている畑にありましたが、特定の生物が入れない結界を作る道具、ゴーレムを創り出した上に自動で害獣を追い払う道具、あとは……岩の中に埋まったドアなどです」
「ゴホッ……魔道具か? 岩の中のドアは何が入っておったのだ?」
「私も不思議に思い注視しておりましたが……ドアを開けたら信じられない光景が……そのドアは遠く離れた地獄の門前広場アルトラ殿の家に通じていました。恐らく空間魔法を付与した魔道具と思われます」
「空間魔法を付与だと……!? そんなものは古代魔道具の中にも未だ発見されたことがないが!? ゴホッゴホゴホッ! と言うことは、そのドアは半永久的に使えるということではないか?」
「空間魔法なのではないかと感じただけなので、わたくしの推測でしかありませんが……その後、もうしばらく観察しようと思いましたが、そのドアから出て来た少女に――」

『アルトラ! あそこの木なんか変だゾ! 魔力にいつもと違う色が混じってル!』

「――と言われて、擬態がバレそうになったので帰還した次第です。恐らくあの少女は魔力感知に長けた高位種族と思われます。もっとも、最重要観察対象だったアルトラ殿は――」

『え? そうなの? じゃあどっかから飛んできた別の木の枝が刺さってるんじゃないの?』

「――と、私に気付いてはいないようでした。魔力感知に関しては、我々高位精霊や魔王、高位種族ほどの精度は持っていないようです」
「トリニアも擬態が見つかりかけたんですか? わたくしは七大国会談でアルトラ殿の護衛として来ていたフレアハルト殿とそのお付きの方々に――」

『フレハル様~、あそこ何か違和感無いですかぁ?』
『あら? 本当ですね。何か違う色が混じってるようですね』
『この魔力……見覚えがあるが……しかし、さて誰だったかな? この町の者でないのは確かだが……まあよい木の影におるのか? 姿を見せよ!』

「――と言われて、木の枝をガサガサと動かされたので、見つかる前に急いでその場を離脱しました……幸い木の枝に擬態していることまでは気付かれなかったようです……」
「トライア姉様……トリニア姉様……ごめんなさい……わ……私はもっと酷い状態です……観察しているのを見つかってしまいました……」

「「見つかったのですか!?」」

「擬態していたのに!?」
「どうやって!?」
「はい……街路樹の枝に擬態して町の観察をしていたところ、同じく七大国会談の護衛だったカイベル殿がやってきて、立ち止まってこちらに向き直り、真っすぐこちらに向かって歩いて来て街路樹を見上げられたところ、一瞬目が合ったと錯覚しましたが、気のせいかと観察を続けようとしたところ――」

『トルテア様』

「――と声をかけられ、ビックリして一瞬頭が真っ白になってしまいました。木の枝に擬態していることを見破られることはあっても、名前まで特定されるなんてこと、今までただの一度としてありませんでしたので……」
「特定!?」
「木の枝に擬態しているのにですか!?」
「はい……」
「では、わたくしたちの心証をかなり悪くされたのではないでしょうか?」
「いえ……それが――」

『トルテア様がこの町を観察しておられることは我が主・アルトラや町のみなには黙っておきますので、何卒アルトレリアとの良きお付き合いをお願いします』

「と、深々と頭を下げられました! そこで先程目が合ったのは偶然でも気のせいでもないと気付きました。いくら七大国会談に参列し、アルトレリアの会食で同席させてもらったとは言え、表に立って対応されていたトライア姉様とは違って、私はカイベル殿とはほとんど顔を合わせていないので顔を記憶されるほど見られたはずがありません! それに……なぜかお姉様たちが町中を観察していることも知られていました! あの方恐ろしい女性です!」

「「私たちが観察していたことまで気付かれていたのですか!?」」

「はい――」

『今回トライア様とトリニア様も町を観察しておられるようですが、害が無い限りはこのことは絶対に口外致しませんのでご安心を。お二方にもよろしくお伝えください』

「――と言われました……」
「だ、黙っているとは言われても……実際はどうなのかわかりませんよね……アルトラ殿にはもう伝わっている可能性も……やはり心証を悪くされたと考えた方が……」
「いえ、それがその後――」

『ですが、観察は程々にお願いします。度々観察されている場合や、害があると判断した場合は流石に黙認というわけにはまいりませんので』

「――と、仰っていたので『黙っている』と言ってくれたことはかなり信用して良いのではないかと思います」
「…………それは……魔力感知能力が凄いどころの話ではないですね……木の枝に擬態しているのを見抜いた上に、誰が擬態しているのかまで見抜くなんて、しかもほとんど顔も知らぬ者の名を言い当てるとは……最早超能力の次元ですね……」
「そこまで相手に見透かされているのでは下手に小細工をせず、真っ当に誠実に対応するのが良いでしょうね」

「ちょっと待ってください……だとしたら……アルトラ殿よりその五人の方々の方が凄いのでは……?」
「なぜアルトラ殿が領主なのでしょうか?」
「もしかしたら……カイベル殿が影の支配者なのでは?」
「なるほど、アルトラ殿はトライアお姉様と同じく魔王代理のような立場というわけですね。カイベル殿の優秀さを隠すために前面に推し出されているのがアルトラ殿だと……」
「二人とも流石に失礼ですよ~! 魔力感知だけで優劣を付けるものでもないでしょう。アルトラ殿が領主として七大国会談に招かれたのですから、彼女がアルトレリアの領主なのでしょう」

「わっはっはっは! ……ゴホッゴホッ、アルトラ殿は随分と優秀な人材に囲まれておるようだな。では七大国会談の折りに話題に上った太陽なるものはどう感じた?」
「はい、心地の良い光でした。これは是非とも我が国にも欲しい、そう感じました」
「そうか……出現した経緯、もしくは、手に入れる方法はわかったか?」
「いえ、アルトラ殿に直接問いただしたところ、七大国会談の時同様「分からない」の一点張りでした。ただ、彼女が魔界に来た時期と同じくして突然の中立地帯の環境の変化、ルシファー殿の仰っていた今回の調査では見当たらなかった『頭の悪い亜人』、数千年荒野だった場所に突然出現した文明、見たこともない魔道具、これらを含めて考慮するに、アルトラ殿が関わっているのは間違いないとは思うのですが……現時点では疑いの段階を出ない程度で何とも言えません……」
「これ以上のアルトレリアの観察は控えてほしいとカイベル殿に釘を刺されてしまったようですし、次は同じく太陽が出現したアクアリヴィアのレヴィアタン殿に聞いてみたいと思います」
「ああ、そうか、ではよろしく頼む」
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