建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏

第310話 キャンプ飯・サソリの天ぷら丼

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 ドリアンを食べた地点から少し進んだところ、木々があまり無い広場に出た。

「今日のところはここにテントを張ってキャンプと致しましょう。この後食事をして、その後は見張りを一人立てて就寝ということで」
「見張りは何で要るんスか?」
「大型の獣や森賊に遭遇した時を想定して一人を見張りにして代わりばんこで就寝します」
「いえ、私が土魔法と樹魔法で家を作るので、見張りは必要ありません」

 私が簡易小屋を作ろうと提案したところ、ルイスさんが突拍子もないことを言い出した。

「それも良いですね。あ、ではこういうのはどうでしょうか? 亜空間収納ポケットの中に入って休むとか。雨風もしのげるのでは?」

 実はこれは私も考えたことがある。しかし……やらなかったことには理由がある。

「それ私も考えたことがあるんだけど、実験するのが怖くてできなかったんですよね」
「どういうことですか?」
「自分の作った亜空間の中に入って、無事に出てこられるかどうかが怖くて検証できなかったんです」
「ど、どういうことですか? 修得して間もないので何のことか分かりません。教えていただけますか?」

「亜空間に入って閉じた場合に想定されることを考えてみたんです。
 『亜空間の中に入って閉じてみて、もし中から開けられなくなったらどうしよう』とか、
 この亜空間の中は時間の経過が無いので『この中ではちゃんと呼吸することができるのか?』とか、
 『もし呼吸ができたとしても中に入って開けられなくなっちゃったら、時間の経過が無いこの場所で永遠に生き続けなければならないのか?』とか、
 『もし呼吸が出来なくて死んだ場合、魂になったら亜空間から抜け出して帰って来れるのか?』とか、
 『もし魂になっても永久に抜け出すことができなかったら、永遠に何もないところにいなければならないのか?』とか、
 『亜空間を閉じた後に再度開けたら同じ場所に出口が開くのか、それとも全然別の場所に行ってしまうのか、はたまた異次元に行ってしまうのか?』とか、
 色々考えたら到底試す気にはなれなかったってわけです。最悪なパターンは永遠に生き続けなければならないってパターンと死んで魂になっても帰って来れないってパターンですかね。もうどうやっても出られなくなっちゃう上に一生どころか永遠に何も無い空間で過ごさないとならなくなるわけですから」

 実行しなかった理由を並べ立てていくうちにルイスさんの顔色が徐々に真っ青に変わっていくのが分かった。
 ちなみに、当然カイベルにも聞いているが「亜空間のことなので分かりかねます」と返された。

「そ、そんなこと考えもしませんでした……この場でアルトラ様に提案しておいて良かったです。もし自分で試してたら閉じ込められていたかもしれません」
「ルイスさんはまだ亜空間収納ポケットを作って日が浅いからそこまで考えが及ばなかったのかもしれませんね。まあ実験してくれるって言うなら止めませんけど? 出て来れる可能性もありますし」
「いえいえいえいえ!! そんな話聞いたらとてもやる気になんてなりませんよ!! 私も何も無い空間で永遠に生きることなんてしたくありませんし!」

 首を凄い勢いで横に振って拒否した。

「じゃあ、早速家を建てますね」

 土魔法で簡素な家を作り、壁を樹魔法で補強、土台を作って家を少し持ち上げる。我が家と同じような作り方。土台を作ったのは大型の獣が来てもある程度時間を稼げるようにとの配慮。
 ものの数分で家が出来る。

「おお~、流石、早いッスね!」
「こ、こんなに早く……」
「す、素晴らしい手際ですね……」
「まあ、何度も作ってますし。ただ強度の方は大して強くないので、今日休んで、明日には壊してから進みます」
「そうですか……ちょうど小屋があると良いなと思ってたんですが、厳しいんですね……」
「建築構造に詳しくないので、細部までイメージし切れなくてかなり脆いんです。多分半年もあれば崩れてしまうと思います」

 中に入ると――

「おお~! 個室ッスか!?」
「わざわざこんな個室にしていただけるとはありがたいです」
「……いえ、理由がありまして……その……臭いが……」

「「「「あ、あ~、なるほど……」」」」

 ここに居る全員がソレを察する。

「これは我々としてもありがたいですね、ナナトスくん、ロクトスくん!」
「そッスね……」

 翌日、生ゴミの臭いが充満する部屋で目覚めたくないと思い個室にした。一室に全員寝泊りするよりは、個室の方が籠りにくいと考えたため。もっとも……自分から漂っているのだから、気休め程度だろうけど……
 窓も作ってある。薄く細かい木枠で虫を通さない網目を作り、上から木のシャッターを下ろして閉める構造。網目は蚊も通さないように細かくイメージした。
 近くに川があるので、風呂は作らなかったが洗面所は作った。これも翌朝の対策のため。きっとみんな歯を磨きたいはずだ。
 屋上に木で作った水タンクを置き、そこから蛇口へ流す構造。蛇口も水道管も全て木で作った。これも一泊するだけなので木で問題無い。
 鏡は水魔法を空中に固定させた水鏡。魔法が使える幻想世界ならではの方法。これなら割れる心配も無いし、処分するのに固定魔法を切れば良いだけだから困らない。

「トイレは?」
「ここに来るまでにその辺で用を足してて、今それ言う?」
「そッスね……」

 でも、言われたからにはトイレも作る。
 便器の中には例のバクテリア。 (第8話から第9話参照)
 実はこういった野営も想定して、携帯しても良いようにバクテリアに少し改良を加えた。現在は強い光を浴びせかけると蓄光ちっこうして暗闇で光るようになっている。これで野営後、ここを発つ時の回収も容易になる。
 回収を徹底しようと思ったのは、バクテリアこれが自然界に解き放たれた時にどのような影響があるか分からないため。アルトレリア以外で使う場合には、全部回収しようと思い至った。

 食事前に川に行って、身体の汚れを落とす。特にアノ液・・・を踏んでしまった足は念入りに洗う。 (前回第309話を参照)

   ◇

「では食事の支度をしましょう。誰か作れる人~!」

 ……
 …………
 ………………

 誰も手を上げねぇし……

「誰が作るッスか?」

 ナナトスが質問するも……

 ……
 …………
 ………………

「え? 誰も料理の心得が無いの?」
「う~ん、俺っちたちの家はゴトにーが作ってくれるんで作ったことないッス」
「……ゴトあにぃの作る料理は美味い……」

 ゴトスはスイーツも美味しいのよね。

「わたくしは魔界で受肉して以来ずっと専属の料理人がいて作ってくれますので……フライパンの精霊と包丁の精霊と鍋の精霊、あとそれらを統括するエルフの料理人が調理を担ってくれています」

 おお……聞いたことない精霊が出て来た。話を聞く限りでは精霊と言うより、やはり付喪神みたいだ。

「僕も専属の料理人がいます。空間魔術師は国から優遇されてますので……」

 くっそ……お金持ち様どもめぇ~……
 カイベルがいれば作ってもらうところだけど……今だけ呼びに行こうか……

「仕方ない! 私が作ります! ただし、味はめちゃくちゃ美味しいってことはないので、過度の期待をしないでください」

「「「「よろしくお願いします」」」」

 樹魔法でテーブルと長椅子を作り出す。

「座って待ってるだけではなんですので、わたくしにも何かやれることはありませんか?」
「そうですね、じゃあ……食べられるキノコとか付け合わせの野菜類、果物とか近くにあったら採って来てもらえますか? 木の精霊は毒があるかどうかは見分けられますか?」
「はい、植物に直接聞くので大丈夫です。では行ってまいります」
「俺っちたちは?」
「あなたたちは近くの川から魚捕って来て」
「了解ッス!」
「……了解……」
「僕はどうしましょう?」
「食器出すんで、並べておいてください」
「はい」

 亜空間収納ポケットから食器を出す。

「変わった食器ですね」
「どんぶりって言うんですよ」

 ミリアンの工房で頼んで作ってもらった。
 地球でも、海外で日本のどんぶり文化が知られるまでそれほど知られていなかった。魔界でも珍しいのだろう。

 物質魔法で飯盒はんごう (のようなもの)を作り、米と水を入れて火にくべておく。
 ここまでの道中に捕まえてもらった森サソリを捌く。ハサミと脚を毟り、腹を開いて外殻を除去。尻尾はすでに切ってもらってあるから毒の心配は無い。背ワタは……ああサソリにもあるのか。除去除去。
 剥いたらまさにエビだけど、地球のものも同じようなものなのかしら?
 アクアリヴィア産の卵を付けて、小麦粉を付けて油で揚げる。
 エビ天ならぬ、サソリ天の出来上がり。
 久しぶりのエビ天だわ、サソリだけど……

 ある程度大きいためか、ハサミと脚部分にも肉が詰まっているのでこれも取り出して油で揚げる。サソリのハサミと脚の疑似カニカマ天が出来た。
 ちなみに後でカイベルに聞いたところ、地球のものはもっと身体が小さいため通常は殻ごと食べるのが普通だとか。今回の森サソリは伊勢海老より少し小さい程度の大きさなので、外殻は硬くて食べにくいだろうということで除去したが、正解だったみたいだ。

「魚捕って来たッスよ~!」
「……小振りが多くて大きい魚は捕れなかった……」
「でも持って来た虫取り網が役に立ったッスよ!」
「ご苦労様」

 ナナトスとロクトスに捕って来てもらった魚は、水分を拭き取ってそのまま素揚げ、から揚げにする。
 亜空間収納ポケットからカトブレパスの肉を取り出して、これも天ぷらに。

「アルトラ様、これなどいかがでしょう?」
「ありがとうございます」

 トリニアさんが野菜やキノコ、山菜を採って来てくれた。
 ナス、ドグライモ、カボチャ、シイタケに似たもの、マイタケに似たものを天ぷらにする。要は全部天ぷらだ!
 ちなみに、ドグライモの『ドグラ』は首都ユグドグランで作られたイモで、ユグドグラ・・・ンのドグラを抜き出して命名された。サツマイモを大分赤くした見た目で甘い。要は魔界のサツマイモ。
 これら野菜もキノコも山菜も、トリニアさん曰く、さっきのドリアン同様に全部別の名前があるらしいが、聞いても覚えにくかったのですぐ忘れた。

「ん? あれコレって……」

 カエンダケっぽいものがある。
 一時期ネットで話題になってた。“触っただけで”火傷するように痛みを感じるほどの猛毒のキノコって書いてあった気がする。

「トリニアさん! これ猛毒のカエンダケじゃないんですか!?」
「いえ、これはホムラダケです。毒は無いのでご安心を。少しスパイシーで美味しいですよ」

 そ、そうなのか……特徴的なフォルムだったからカエンダケなのかと……
 こっちの青いのは何だろう? さっきのヤリガタケとは違うみたいだけど……

「これは?」
「ヒヤダケです。口触りがよく、あっさりした味が特徴です」

 両方地球では聞いたことないな。まあ良いや、全部天ぷらで。

 ナメタケのようなものは山菜と混ぜて味噌汁に。
 出汁はさっき捕って来た魚から水分を抜いて、砕いて絞り取った。
 味噌については、最近米が出来たアルトレリアで麹菌を作って、カイベルと町の人たちが共同で実験的に作ってみたものを貰っていた。
 醤油や酢の作成にも着手している。米が出来たことによって別の用途にも利用できるようになった。
 町で何か開発されるに連れて、亜空間収納ポケットに調味料がどんどん増える。

 どんぶりに盛り合わせて、最後にハンバームちゃん特製の甘じょっぱいタレをかけて――

「よし! 完成! キャンプ飯ではないけど、天ぷら丼とお味噌汁よ!」
「おお~、待ってました!」
「デザートはフルーツポンチをどうぞ」

 フルーツについてもトリニアさんに採って来てもらったもの。

「では――」

「「「「「いただきます!」」」」」

 こうして食卓を囲んでご飯を食べた後、就寝時間に。

   ◇

「じゃあみんな、明日の朝に」
「はいッス」
「……おやすみ……」
「おやすみなさいませ」
「おやすみなさい」

 それぞれ個室へ入って就寝。

 改めて部屋に入って気付いた。
 作った窓から光を咲かせる花ライトブルームの光が差し込んでいる。

「窓を完全に暗闇にできるように作って正解だった。この森、至る所が花の光で明るくて昼も夜も無いから、外の光が差し込んでたら明るすぎて眠れなかったかもしれないわ」

 窓に備え付けた木のシャッターを落とし、真っ暗闇にして就寝した。
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