建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏

第326話 森賊捕物帖 完

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「じょ、冗談じゃない! あんな女相手にしてはいられないよ! くそっ! ドラゴンに踏まれて平気なヤツがいるなんて……今度はもっと見つからないようにひっそり上手くやって……」

 ≪次元歩行ディメンション・ウォーク≫で飛んでいるブルードラゴンの背中に瞬間移動してきた。

「ちょっと、いきなり逃げないでよね! 突然飛んでったから何が起こったか分からなかったじゃない!」
「な……何でアタシの背中の上にぃっ!?」

 刀を上空に構え、雷を落として刀に帯電させる。

「あなた散々水使ってたから、電気の伝導率は高そうよね」
「ま、待て! 待っておくれ! 今後奪った物資の半分はお前さんにやるよ! だから見逃して!」
「魔法剣・雷鳴の太刀!」

 刀身に落ちた雷が、彼女の頭上で光り輝き、さらなる恐怖を煽る。

「そ、それなら三:七さんななで良い! いや! 九割の物資がお前さんの取り分で良い! だからこの場は穏便に!」
「何で退治されるかも分かってないのね……何で退治されたか牢獄できちんと考えてみると良いわ!」

 刀に落とした雷の魔法剣でブルードラゴンの胴体部分を縦一文字に斬る。

「成敗!!」

 斬撃の痛みと共に、刀身に落とした雷が彼女の全身を駆け巡る。

「ギャアアアアァァァ!!」

 ブルードラゴンは、プスプスという音を立て、体の内と外から煙を出しながら沈黙。斬られた痛みと雷のダメージで気絶し、そのまま真っ逆さまに地面へ落下していった。

   ◇

 ブルードラゴン落下地点――

「よし、まだ生きてる。死なないように少しだけでも回復しといてやるか。≪回復 (大)ハイ・ヒール≫」

 森賊全員を一ヶ所に集めたいところだけど……コイツ重たっ! 自己申告の四トンは伊達じゃないわ。
 筋力強化 (極大)の魔法をかけても引きずることすら出来そうもない。

「じゃあ全員こっちに集めるか」

 ブルードラゴンには、気絶から覚めても逃げられないようにとりあえず≪影縛りシャドウ・バインド≫をかけて縛り上げる。更に魔法を使えないよう≪魔法封印マジック・シール≫をかける。
 次にゲートでさっき森賊と戦ったポイントへ移動。森賊全員に≪影縛りシャドウ・バインド≫をかけて縛り上げ、ブルードラゴンが気絶している場所へ集めた。

 それにしても、このブルードラゴンって水使ってたし、アクアリヴィアの生物じゃないのかしら?
 何でこんなところに……ただの流れ者が森賊に落ちぶれただけだろうか?

 次はさっきマーキングした残党を捕まえよう。

   ◇

 魔力マーキングした亜人や獣人たちのところへゲート転移して、残党全員を縛り上げる。
 それぞれの森賊の元へ転移する度に「何でキサマがここに!?」とか「お嬢はどうなってるんだ!?」とか「この場は見逃してくれぇっ!!」とか「実は俺のおかあが病気で……」とか様々言われ、刃を向けてくる者まで居たが全員等しく捕まえる。気弱そうだろうが、傲慢そうだろうがお母さんが病気だろうがそんなのは知らない。強盗団なんてやってるのが悪い。

 捕まえてみれば「くそっ! 何でこんな!」とか「離せよ! このアマ!」とか「もっと上手くやれば良かった……」などと悪態をついているが、気絶してぐったりしたブルードラゴンを見た瞬間――

「お……お嬢!? ほ、本当にやられたのか!?」
「ド、ドラゴンがこんな小娘に!?」
「俺たちも終わりか……」

 ――と、全員が意気消沈。抵抗する気も無くなったみたいだ。

 これにて森賊退治は一応の決着を迎えた。

   ◇

 森賊を倒し終わって、ゲートで森小屋へ帰って来た。

「トリニアさん、森賊捕まえました」
「本当ですか!?」

 現場へ行き、後処理をお願いする。

「これって……ブルーソーン!? アルトラ様、このブルードラゴン、我が国の要注意人物としてブラックリストに載ってる大物森賊ですよ! この強盗団は凶悪な上に多くの亜人や精霊を殺害しているヤツです。我が国の警察や捜索隊員も手を焼いてたんです!」
「コイツってブルーソーンって名前だったんですね」

 部下たちは『お嬢』とか呼んでたから名前は初めて知った。

「あ、いえ、ブルードラゴンであるということは知られていたので、トゲのように危険な女という意味で、『青いトゲブルーソーン』と呼称されるようになりました。本名は確か……『リアレイン』。ファミリーネームまでは分かりませんが、そんなような名前だったはずです」

 その時、ブルーソーンことリアレインが目を覚ました。

「う……ん? ハッ! う、動けない……何だい、この影から出た黒い網は!? 早くこの魔法を解け! イタタ……」

 暴れようとしているらしいが、私のかけた≪影縛りシャドウ・バインド≫とさっき負った雷による怪我によって満足に身体を動かすには至っていない。
 多少回復させたとは言え、全身を貫いた火傷である。ドラゴンはタフな種族だと認識しているが、私の≪影縛りシャドウ・バインド≫を破るほどの力はまだ出せないようだ。

「早くアタシを自由にしな!!」
「おい! お前はもう捕まったんだ、諦めて人型に変われ!」

 後処理に来てくれた、樹の国警察・精霊局の方々が強盗団のボス・リアレインに、ドラゴン形態から人型に変わるよう命令する。そのままの大きさではとても連行することができない大きさのためだ。

「ふんっ! 牢獄にぶち込まれるのが分かってて、わざわざ人型になんてなってやるもんか!」
「コイツ……!」
「困りましたね……捕えられてもなお抵抗されるというのは……」
「森賊の他の奴らは連行できたんですがね……コイツは大きさが規格外というか……」
「身体を小さくする魔道具とかあましたっけ? 巨獣用にエルフと共同研究してましたよね?」
「あるにはありますが、到着にもう少しかかりますね」

 ここにいる樹の国警察・精霊局は、現場にいち早く急行するために木の精霊のみで構成されているらしく例の植物転移法で先に来ているが、物を持って来ることはできないため、魔道具は後で別の局員が持参するらしい。

「トリニアさん、ちょっと席を外して良いですか? ロクトスとナナトスを迎えに行かないと」
「あ、そうでしたね。早く見つけに行ってあげてください」


   ◇


 一方、ブルードラゴンの元から逃げたロクトス、ナナトス――

「さっき凄い勢いで水が流れてきたッスけど、アルトラ様大丈夫ッスかね? それに凄い地響きまであったッスけど……」
「……フレハルさんが頭が上がらないくらいだから大丈夫でしょ……あの青いドラゴン、フレハルさんより小物っぽかったし……それに今の俺たちには信じて待つ以外道が無い……」

 ブルードラゴンの発動した≪タイダルウェーブ≫によって大量の水が流れて来たため、木の上に登って難を逃れていた二人。

「ところで、必死こいて逃げてきたッスけど、こっからどっち行ったらトリニアさんのいる森小屋へ帰れるんスかね?」
「……わからない……アルトラ様が迎えに来てくれるまで木の上ここで待機してた方が良いかも……俺たちだけだとまたマンイーターみたいなのに遭遇したら、飲み込まれて溶かされて終わりかもしれないし……」
「もしドラゴンにやられてたら……?」
「……俺たちは放置だな……まあそれはあり得ないと考えておこう……それでも……いつまで経っても迎えが無かったら……自分で何とかしよう……」
「…………そッスね……」

 その時、木の下からアルトラが呼ぶ声。

   ◇

「ロクトス、ナナトス! この辺にいるんでしょ?」

 二人に施しておいた魔力マーキングはこの辺りだから、ここから見えるところにいるはずなんだけど……

「アルトラ様、ここッス!」
「うわ! 木の上にいるのは予想外だった!」
「さっき大量の水に追いかけられたんで、必死に木の上に避難したんスよ……」

 良かった、あの津波でこの子らが流されてないかと心配だった。

「終わったんスね?」
「何とかね。トリニアさんが呼んだ木の精霊の警察の方々に後処理をお願いしてきた。じゃあ森小屋へ帰ろうか」

 森小屋に着いた後――

「じゃあ私はもう少し現場検証で呼ばれてるから行ってくる」
「今日この森小屋を発つんスよね? 俺っちたちはアルトラ様が帰ってくるまで休ませてもらうッスよ?」
「そうしておいて」

 一時いっときとは言え、ドラゴンと対峙して相当気疲れしてるはずだから、このタイミングで休んでおいてもらおう。

   ◇

 再びブルードラゴンを拘束した場所に来た。

「あ、アルトラ様、気絶していた森賊たちが徐々に目覚め始めてますよ」
「そう、それは安心しました」

 よし、斬治癒きりちゆ丸の性質はちゃんと機能してたみたいだ。誰一人死んでいない。
 ぶっつけ本番で使った魔道具だったから、目覚めるかどうかちょっと心配だったんだよね……

「俺たち斬られたよな?」
「斬られたはずなのに傷も無いし、もう痛みも無い」
「不思議だ……」
「おい、あんた、俺たちを斬ったよな? どうして治ってるんだ?」

 自分たちを捕まえた私にそれ聞く?

「それは秘密です。教える義理も無いので」

 魔道具であると知られるのも面倒そうだから教えないに限る。

「技術開発局到着しました!」

 樹の国の技術開発局が到着したらしい。
 技術開発局って、魔道具作ってる部署とかそんなところかな?

「魔道具をお持ちしました」
「ご苦労様です」

 拘束用の魔道具を持参したらしい。

「さて、ブルーソーン、今俺が手に持っている魔道具には身体を小さくする効果がある。ただ、これは人型になれるお前たちのような翼のある巨大生物に対して使うものでな、ちょっとした副作用があるんだ。翼の根本に装着するものだが、これを装着すると着けている間は翼を消すことが出来ず人型に変身できなくなる。さあ、ここでお前に選ばせてやる。ドラゴンの姿で小さくされて拘束されるのが好みか、人型で拘束されるのが好みか選べ。俺のお勧めは手が自由に使える人型拘束だ。ああ、一度付けたら二度と外すことはない、何せお前を魔道具無しで野放しにしておくと危険だからな。考える時間を十秒やる」
「……くそっ……」

 縛られてる上に、魔法まで封印されている。観念したのか渋々という感じで、人型に変身した。

「じゃあ、こちらの魔道具を装着させてもらう。一つはさっきお前に説明したものとは逆の作用があるドラゴンに戻れなくなる魔道具『状態固定の腕輪』。牢獄で巨大化されて建物ごと壊されたらたまらんからな。そして、もう一つは魔法を封印する魔道具『魔力封印の腕輪』だ。お前の水魔法は厄介だからこちらも付けさせてもらうぞ。じゃあ連行してくれ」
「ハッ! 了解しました!」

 ブルーソーンが連行の去り際に、こちらを睨んで悪態をついた。

「くっ……おい! お前、アルトラとか言ったね! アタシをこんな状況に陥らせて……いつか必ず殺してやるから覚えておきなよ!」

 ………………まあ、予想はしてたけど何人も殺してる凶悪犯がそうそう簡単に反省するわけもないか……

「早く来い!!」

 後日聞いた話によると、ブルーソーンは牢獄の相当深いところに収監されたらしい。殺されてる人数を考えると死罪は確定的なので、恐らくここで死刑になるまで収監されるだろうとのこと。
 『殺してやる』なんて言われたけど、死刑はほぼ確定だし多分もう会うこともないでしょう。まあ……地獄行きになって亡者として歩いてくるなら、我が家の周りで遭遇する可能性はあるけど……
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