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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第349話 vsデスキラービー・ブラック
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通信で伝えた通り、副隊長以下の隊員たちは働き蜂を引き付けてくれている。
戦場を見渡すと、巣に近いところほど持ち主のいなくなった鎧や服、金属質の球体が転がっている。
あの金属質の球体……あれ全部隊員たちの遺体か……想像したくはないが、あの中には……
考えると気分が沈んでしまう。今そんなことは考えないようにしよう。
そして撤退して誰もいなくなったにも関わらず、黒い球と白い球はそのまま残されている。多分トラップとしてそのまま残したんだろう。
触れたらヤバそうだが、試しにその辺りに落ちている二十センチほどの石を拾って黒い球体に投げつけてみた。
すると、投げた石の大きさが一、二センチほどまで圧縮されて黒い球体は消滅。どうやら何らかの物質が中に入るとその物質を圧縮して黒い球体は消えるみたいだ。投げ入れた石は圧縮されたためか、少し宝石染みている。宝石ほど綺麗ではないが、かなり石寄りの石と宝石の中間のような物質が出来上がった。こすってみるとツヤツヤしていて手触りだけは宝石に近い。
次は白い球体に投げつけてみたところ、白い球体が石に吸収されてそのまま地面に落下。少し経った後にガタガタと揺れ出し、石が内側から弾け飛んだ。こちらも何らかの物質が接触すると消えるみたいだ。
聞いていた通り、黒い球は内へ向かって吸い込むように破壊する魔法、白い球体は一度物質の内に潜んだ後、外へ向かって破壊する魔法らしい。
戦いが終わってまだ残っていたら、石をぶつけるこの対処法で消していけば良いかな。
今度はこの二つの球体が私に対して効果があるかどうかを調べなければならない。
分身体を出現させる。
「その黒い球に触れてみてもらえる?」
「はいよ、了解」
すると分身体は黒い球に吸い込まれるようにして消滅。
やっぱりこの球体、私にも効果があるわ……本体である私が触れてたら即死だった……
分身体の能力は私とほぼ同じ。北側の紫の個体の雷も、緑の個体の風も私には効果が無かったから、多分コイツが三体の中で一番強いんだろう。
三体の中で唯一Lv11相当の能力を備えていると見て間違いない。特別強めに魔力を注ぎ込んで産んだんだろう。
「もう一度」
再び分身体を出現させ、今度はとある仕掛けを施した。
「じゃあ黒い球に触れてみてもらえる?」
「はいはい」
思った通り黒い球に当たらなくなった。
「白い球の方はどう?」
白い球の方にも手を近づけてみると――
「当たらないね。球の方が避けてくれる」
よし、黒い球と白い球の確認と対策は終わった。
巣のある方の上空を見上げると、黒い蜂が佇んでいるのが見える。
「あれが例の黒い蜂ね。分身体、検証ありがとう。あなたは引き付け部隊を手伝って。あっちも結構苦戦してるみたいだから」
「一人で大丈夫?」
「黒い球と白い球を無効化できればどうってことないでしょ。あ、ちょっと待って一応変異魔法で変装しておこう。『分身体』のこと知ってるのは第五部隊のみんなだけだから、黒い個体の対応をしているはずの私が引き付け部隊の方に居るってことになったら、隊員たちがパニックを起こすかもしれない」
「そうだね」
分身体に『全身鎧を着ている風』の変異魔法を施す。
「じゃあよろしくね」
「そっちも」
分身体と別れ、黒い蜂に近付くと――
「カチカチカチカチッ!」
「何だこれ? 警告音?」
私が近寄ろうとした瞬間から鳴らし始めた。
スズメバチは歯を打ち鳴らして敵意を知らせるという。それと同じことをしているのか奇怪な音がこだまする。
私に攻撃的な意思があると判断したのか、その警告音の直後、私の周囲に亜空間が出現した。
そこから大量の毒針がマシンガンのように乱射される。きっとこれがジョアンニャさんが話してくれた『何も無い空間から大量の矢を放つように無数の針を飛ばす』攻撃か。
今この場で巣に近寄ろうとするのは私だけだから、私の周りに出現させて集中攻撃しようってことなんだろう。
全身鎧に覆われているから、私の身体までは針が届かないが……その発射される針の量が桁違いだ。
みるみるうちに鎧が凹み、擦り切れる! あっという間に穴が開いてボロボロにされてしまった。
もっとも……鎧が無くなったところで毒針が刺さらない私の身体はカンカンカンカンと金属音を鳴り響かせる。もし普通の亜人の身体なら、今の攻撃でハリネズミのような見た目になって、絶対に命は助からなかっただろう。
もはや鎧の体を為さなくなったため、身体に残っていたかつて鎧であった残骸を地面へと脱ぎ落した。
「第五コロニーではほとんど攻撃受けなかったから、鎧もほぼ完全な状態だったんだけど……こんなにも一瞬でボロボロにされるとはね……」
毒針の嵐を掻い潜り、黒い個体と一気に距離を詰めようと、羽を出して近付く。
「ギギ?」
毒針が通らなかったことを驚いている……のかどうかは表情が読めないから分からないが、毒針が刺さらなかったことに動揺したのか魔力に少しの乱れがあった。
相手は私を近寄らせまいと黒い球と白い球を私の飛行進路上に出現させる。
しかし既にこの対策も出来ている。
その対策とは……『斥力』を使うこと。
空間魔法で自身の身体に強い斥力を乗せた魔力を張り巡らす。これにより、黒と白の球をほぼ無効化。完全に無効化できるわけではないが、少なくとも身体が吸い込まれて圧縮されてグチャグチャにされたり、内側から破裂させられたりは防ぐことができることがさっきの分身体による実証実験で分かった。
自身の身体に張り巡らせた斥力の効果で反発力が生まれ、黒い球と白い球に接触しても、身体の表面を流れる魔力が反発して、私の身体には接触しない。
「ギギッ!?」
黒い個体の目の前まで迫ったところで、【次元歩行】を使い黒い個体の背後に転移。
身体に張り巡らせた斥力の魔力を一部解除、亜空間収納ポケットから斬治癒丸を出し、刀身に魔力を流さずに刀を振り下ろす。斬ったところを瞬時に治癒するという特殊能力を持つ刀だが、魔力を流さないことによって普通の刀として使える。
黒い個体に近付いて、刀で斬り裂いて、それで終わり!
そのはずだったが――
相手も私と似たようなことを考えていたのか、斥力の魔力で身体が覆われていて、刀身が相手まで到達しない!
成す術無く反発して吹き飛ばされてしまった。
「くそっ! 相手も斥力の魔力を纏ってるなんて……知能もかなり高くなってるみたいだし。今後もしコロニーが九個以上作られるようなことがあったら、亜人や魔人ではもう対処できないレベルの災害級モンスターになってしまうかもしれない……」
分身体を引き付け部隊の援護に向かわせたのは間違いだったかも……
しかし、虫だから表情に出るわけではないが、あちらもかなり焦っているような感じがする。本来なら黒い球・白い球で即死させられてるはずなのに、私には一切効果が無かったから。
そう考えた直後、北側から大歓声が聞こえた。
この喜びようから判断するに、どうやら緑と紫の個体を無事撃破したみたいだ。
まばらに南側へやってくる隊員たちが出始めた。
巣の周りにはまだ働き蜂が沢山いるが、女王に到達するのも時間の問題だろう。
「北側の二匹は倒されたみたいよ? 残念だったね」
「ギギギィ……ガチガチガチガチガチガチガチガチガチ」
黒い個体はその大歓声を聞いてなお焦ったのか、再び警告音を出した後、毒針をこちらに向けて突進してきた。
一直線の攻撃だったので避け易い。
ヒラリと回避すると、黒い個体は地面に激突し、その衝撃でとてつもなく巨大な穴が開く!
「えっ!? なにこの穴!! アイツそんなに重いの!? 何でこの体重で飛んでいられるの!?」
と声に出した後、冷静に考えてみれば空間魔法で重力操作し、自身の体重を重くしたのだと気付いた。
自分以外の親衛蜂が二体倒されたことによって冷静さを欠いて、こんな短調な攻撃をしてきたのだろう。
とは言え、さっきの黒い球と白い球同様、私にも効く攻撃の可能性があるからこちらは冷静になって対処しないといけない。
地面に潜ったということは、顔を出すタイミングがあるはず。そこを狙おう。
……
…………
………………
地面に潜ったまま少しの時が流れる。
穴の前で待ってみるが、同じ穴から顔を出すわけではないかもしれない。
もしかしたら地面の下では相手も何か考えを巡らせているのかもしれない。
広範囲を見渡せるように空中で待機することにする。
顔を出した瞬間に上空から攻撃すれば、高低差は有利に働く。
穴とは別の地面が盛り上がった。
キタッ!
地面から顔を出した瞬間に全体重をかけて刀を振り下ろす。
が、斥力の壁でやはり届かない!
「だったらそれ以上に重くしてやれば良いんだ!!」
相手と同じように空間魔法で私自身と刀の重さを十倍、二十倍と引き上げる。
「くあああああ!! 届け~~~!!!」
「カチカチカチカチッ! カチカチカチカチッ!」
徐々にだが相手の斥力と拮抗し始めた。
警告音も激しくなる。
「三十倍だ~~!!」
くおおぉぉぉ!! 相手の斥力を上回り始めたが、これでもまだ届かない! もう腕に力が入らなくなってきた。
「四十倍でどうだぁ!!」
うおおおぉぉぉ!!
この時点で合計体重はおよそ千六百キロ。刀が頭に当たったが中々斬れない!
「硬っ!! 何この身体! 刀身は頭に届いてるのに!!」
もう斥力との鍔迫り合いをしていること自体がキツイ状態だ! 腕が疲れて気を抜けば弾き飛ばされる! これ以上重力に倍率をかけるのはリスクが高い!
既に消費魔力自体も膨大になっている。これを逃したらもう疲れて次のチャンスが無いかもしれない!
でもこのままだと、きっと私の方が先に力尽きる! リスクを冒してでも倍率を上げて決着を付けないと!
「五十倍だ! 届け~~~!!」
刀身が徐々に黒い個体の頭にめり込んでいく!
「もうちょっと~~~!!」
「カチカチカチカチカギャギャギャギャギャ!!」
という声を最後に、黒い個体の身体が真っ二つ両断された!
「……はぁはぁ……や、やった! か……硬すぎ……働き蜂とは比較にならない……」
「カチカチカチカチッ! カチカチカチカチッ!」
真っ二つになってなお警告音のようなものを上げながら地面をのたうち回る。
「虫はすぐ死なないって言うけど……真っ二つになった身体が動き回るのは気味の悪い光景だわ……」
「カチッカチッカチッ! カチカチカチカチッ!」
その時、二つになった黒い個体から異様な魔力反応。
「なに? コイツ今何かした?」
私の後方、第九コロニーの頂上付近に空間の揺らぎを感じた。
すぐさま振り向くと、女王の周りに空間転移ゲートが出現している。
「まさか……逃がすつもり!? くっ! 何とか追撃をしないと!!」
くそっ! ここからじゃ遠すぎて今すぐ飛んでも間に合わない!
魔力マーキングを飛ばして後から追跡を! ダメだっ! いずれにしてもここからじゃ遠すぎる! 女王にマーキングできない!
そうだ! 駆除隊員たちももう巣の下まで迫っている! 彼らに知らせれば遠距離魔法でどうにかしてくれるかもしれない!
「誰か!! 女王を倒して! 空間魔法で逃げられる!!」
しかし、ただでさえ働き蜂の対応で手いっぱいの隊員たち。その叫びも距離が遠すぎて駆除隊員まで届かなかった……
「……真っ二つになったと思って油断した……早々にトドメを刺しておくべきだった……」
イタチの最後っ屁ってやつか……
私たちの健闘虚しく、女王は空間転移でいずこかへ逃がされてしまった……
黒い個体は女王を逃した後も生きていたが、しばらくすると事切れて動かなくなった。
戦場を見渡すと、巣に近いところほど持ち主のいなくなった鎧や服、金属質の球体が転がっている。
あの金属質の球体……あれ全部隊員たちの遺体か……想像したくはないが、あの中には……
考えると気分が沈んでしまう。今そんなことは考えないようにしよう。
そして撤退して誰もいなくなったにも関わらず、黒い球と白い球はそのまま残されている。多分トラップとしてそのまま残したんだろう。
触れたらヤバそうだが、試しにその辺りに落ちている二十センチほどの石を拾って黒い球体に投げつけてみた。
すると、投げた石の大きさが一、二センチほどまで圧縮されて黒い球体は消滅。どうやら何らかの物質が中に入るとその物質を圧縮して黒い球体は消えるみたいだ。投げ入れた石は圧縮されたためか、少し宝石染みている。宝石ほど綺麗ではないが、かなり石寄りの石と宝石の中間のような物質が出来上がった。こすってみるとツヤツヤしていて手触りだけは宝石に近い。
次は白い球体に投げつけてみたところ、白い球体が石に吸収されてそのまま地面に落下。少し経った後にガタガタと揺れ出し、石が内側から弾け飛んだ。こちらも何らかの物質が接触すると消えるみたいだ。
聞いていた通り、黒い球は内へ向かって吸い込むように破壊する魔法、白い球体は一度物質の内に潜んだ後、外へ向かって破壊する魔法らしい。
戦いが終わってまだ残っていたら、石をぶつけるこの対処法で消していけば良いかな。
今度はこの二つの球体が私に対して効果があるかどうかを調べなければならない。
分身体を出現させる。
「その黒い球に触れてみてもらえる?」
「はいよ、了解」
すると分身体は黒い球に吸い込まれるようにして消滅。
やっぱりこの球体、私にも効果があるわ……本体である私が触れてたら即死だった……
分身体の能力は私とほぼ同じ。北側の紫の個体の雷も、緑の個体の風も私には効果が無かったから、多分コイツが三体の中で一番強いんだろう。
三体の中で唯一Lv11相当の能力を備えていると見て間違いない。特別強めに魔力を注ぎ込んで産んだんだろう。
「もう一度」
再び分身体を出現させ、今度はとある仕掛けを施した。
「じゃあ黒い球に触れてみてもらえる?」
「はいはい」
思った通り黒い球に当たらなくなった。
「白い球の方はどう?」
白い球の方にも手を近づけてみると――
「当たらないね。球の方が避けてくれる」
よし、黒い球と白い球の確認と対策は終わった。
巣のある方の上空を見上げると、黒い蜂が佇んでいるのが見える。
「あれが例の黒い蜂ね。分身体、検証ありがとう。あなたは引き付け部隊を手伝って。あっちも結構苦戦してるみたいだから」
「一人で大丈夫?」
「黒い球と白い球を無効化できればどうってことないでしょ。あ、ちょっと待って一応変異魔法で変装しておこう。『分身体』のこと知ってるのは第五部隊のみんなだけだから、黒い個体の対応をしているはずの私が引き付け部隊の方に居るってことになったら、隊員たちがパニックを起こすかもしれない」
「そうだね」
分身体に『全身鎧を着ている風』の変異魔法を施す。
「じゃあよろしくね」
「そっちも」
分身体と別れ、黒い蜂に近付くと――
「カチカチカチカチッ!」
「何だこれ? 警告音?」
私が近寄ろうとした瞬間から鳴らし始めた。
スズメバチは歯を打ち鳴らして敵意を知らせるという。それと同じことをしているのか奇怪な音がこだまする。
私に攻撃的な意思があると判断したのか、その警告音の直後、私の周囲に亜空間が出現した。
そこから大量の毒針がマシンガンのように乱射される。きっとこれがジョアンニャさんが話してくれた『何も無い空間から大量の矢を放つように無数の針を飛ばす』攻撃か。
今この場で巣に近寄ろうとするのは私だけだから、私の周りに出現させて集中攻撃しようってことなんだろう。
全身鎧に覆われているから、私の身体までは針が届かないが……その発射される針の量が桁違いだ。
みるみるうちに鎧が凹み、擦り切れる! あっという間に穴が開いてボロボロにされてしまった。
もっとも……鎧が無くなったところで毒針が刺さらない私の身体はカンカンカンカンと金属音を鳴り響かせる。もし普通の亜人の身体なら、今の攻撃でハリネズミのような見た目になって、絶対に命は助からなかっただろう。
もはや鎧の体を為さなくなったため、身体に残っていたかつて鎧であった残骸を地面へと脱ぎ落した。
「第五コロニーではほとんど攻撃受けなかったから、鎧もほぼ完全な状態だったんだけど……こんなにも一瞬でボロボロにされるとはね……」
毒針の嵐を掻い潜り、黒い個体と一気に距離を詰めようと、羽を出して近付く。
「ギギ?」
毒針が通らなかったことを驚いている……のかどうかは表情が読めないから分からないが、毒針が刺さらなかったことに動揺したのか魔力に少しの乱れがあった。
相手は私を近寄らせまいと黒い球と白い球を私の飛行進路上に出現させる。
しかし既にこの対策も出来ている。
その対策とは……『斥力』を使うこと。
空間魔法で自身の身体に強い斥力を乗せた魔力を張り巡らす。これにより、黒と白の球をほぼ無効化。完全に無効化できるわけではないが、少なくとも身体が吸い込まれて圧縮されてグチャグチャにされたり、内側から破裂させられたりは防ぐことができることがさっきの分身体による実証実験で分かった。
自身の身体に張り巡らせた斥力の効果で反発力が生まれ、黒い球と白い球に接触しても、身体の表面を流れる魔力が反発して、私の身体には接触しない。
「ギギッ!?」
黒い個体の目の前まで迫ったところで、【次元歩行】を使い黒い個体の背後に転移。
身体に張り巡らせた斥力の魔力を一部解除、亜空間収納ポケットから斬治癒丸を出し、刀身に魔力を流さずに刀を振り下ろす。斬ったところを瞬時に治癒するという特殊能力を持つ刀だが、魔力を流さないことによって普通の刀として使える。
黒い個体に近付いて、刀で斬り裂いて、それで終わり!
そのはずだったが――
相手も私と似たようなことを考えていたのか、斥力の魔力で身体が覆われていて、刀身が相手まで到達しない!
成す術無く反発して吹き飛ばされてしまった。
「くそっ! 相手も斥力の魔力を纏ってるなんて……知能もかなり高くなってるみたいだし。今後もしコロニーが九個以上作られるようなことがあったら、亜人や魔人ではもう対処できないレベルの災害級モンスターになってしまうかもしれない……」
分身体を引き付け部隊の援護に向かわせたのは間違いだったかも……
しかし、虫だから表情に出るわけではないが、あちらもかなり焦っているような感じがする。本来なら黒い球・白い球で即死させられてるはずなのに、私には一切効果が無かったから。
そう考えた直後、北側から大歓声が聞こえた。
この喜びようから判断するに、どうやら緑と紫の個体を無事撃破したみたいだ。
まばらに南側へやってくる隊員たちが出始めた。
巣の周りにはまだ働き蜂が沢山いるが、女王に到達するのも時間の問題だろう。
「北側の二匹は倒されたみたいよ? 残念だったね」
「ギギギィ……ガチガチガチガチガチガチガチガチガチ」
黒い個体はその大歓声を聞いてなお焦ったのか、再び警告音を出した後、毒針をこちらに向けて突進してきた。
一直線の攻撃だったので避け易い。
ヒラリと回避すると、黒い個体は地面に激突し、その衝撃でとてつもなく巨大な穴が開く!
「えっ!? なにこの穴!! アイツそんなに重いの!? 何でこの体重で飛んでいられるの!?」
と声に出した後、冷静に考えてみれば空間魔法で重力操作し、自身の体重を重くしたのだと気付いた。
自分以外の親衛蜂が二体倒されたことによって冷静さを欠いて、こんな短調な攻撃をしてきたのだろう。
とは言え、さっきの黒い球と白い球同様、私にも効く攻撃の可能性があるからこちらは冷静になって対処しないといけない。
地面に潜ったということは、顔を出すタイミングがあるはず。そこを狙おう。
……
…………
………………
地面に潜ったまま少しの時が流れる。
穴の前で待ってみるが、同じ穴から顔を出すわけではないかもしれない。
もしかしたら地面の下では相手も何か考えを巡らせているのかもしれない。
広範囲を見渡せるように空中で待機することにする。
顔を出した瞬間に上空から攻撃すれば、高低差は有利に働く。
穴とは別の地面が盛り上がった。
キタッ!
地面から顔を出した瞬間に全体重をかけて刀を振り下ろす。
が、斥力の壁でやはり届かない!
「だったらそれ以上に重くしてやれば良いんだ!!」
相手と同じように空間魔法で私自身と刀の重さを十倍、二十倍と引き上げる。
「くあああああ!! 届け~~~!!!」
「カチカチカチカチッ! カチカチカチカチッ!」
徐々にだが相手の斥力と拮抗し始めた。
警告音も激しくなる。
「三十倍だ~~!!」
くおおぉぉぉ!! 相手の斥力を上回り始めたが、これでもまだ届かない! もう腕に力が入らなくなってきた。
「四十倍でどうだぁ!!」
うおおおぉぉぉ!!
この時点で合計体重はおよそ千六百キロ。刀が頭に当たったが中々斬れない!
「硬っ!! 何この身体! 刀身は頭に届いてるのに!!」
もう斥力との鍔迫り合いをしていること自体がキツイ状態だ! 腕が疲れて気を抜けば弾き飛ばされる! これ以上重力に倍率をかけるのはリスクが高い!
既に消費魔力自体も膨大になっている。これを逃したらもう疲れて次のチャンスが無いかもしれない!
でもこのままだと、きっと私の方が先に力尽きる! リスクを冒してでも倍率を上げて決着を付けないと!
「五十倍だ! 届け~~~!!」
刀身が徐々に黒い個体の頭にめり込んでいく!
「もうちょっと~~~!!」
「カチカチカチカチカギャギャギャギャギャ!!」
という声を最後に、黒い個体の身体が真っ二つ両断された!
「……はぁはぁ……や、やった! か……硬すぎ……働き蜂とは比較にならない……」
「カチカチカチカチッ! カチカチカチカチッ!」
真っ二つになってなお警告音のようなものを上げながら地面をのたうち回る。
「虫はすぐ死なないって言うけど……真っ二つになった身体が動き回るのは気味の悪い光景だわ……」
「カチッカチッカチッ! カチカチカチカチッ!」
その時、二つになった黒い個体から異様な魔力反応。
「なに? コイツ今何かした?」
私の後方、第九コロニーの頂上付近に空間の揺らぎを感じた。
すぐさま振り向くと、女王の周りに空間転移ゲートが出現している。
「まさか……逃がすつもり!? くっ! 何とか追撃をしないと!!」
くそっ! ここからじゃ遠すぎて今すぐ飛んでも間に合わない!
魔力マーキングを飛ばして後から追跡を! ダメだっ! いずれにしてもここからじゃ遠すぎる! 女王にマーキングできない!
そうだ! 駆除隊員たちももう巣の下まで迫っている! 彼らに知らせれば遠距離魔法でどうにかしてくれるかもしれない!
「誰か!! 女王を倒して! 空間魔法で逃げられる!!」
しかし、ただでさえ働き蜂の対応で手いっぱいの隊員たち。その叫びも距離が遠すぎて駆除隊員まで届かなかった……
「……真っ二つになったと思って油断した……早々にトドメを刺しておくべきだった……」
イタチの最後っ屁ってやつか……
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【短いあらすじ】
普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます)
【まじめなあらすじ】
主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、
「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」
転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。
魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。
友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、
「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」
「「「違う、そうじゃない!!」」」
これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。
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※旧タイトル
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
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