建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第14章 アルトラルサンズ本格始動編

第377話 食中毒菌の対処 その1(卵のケース)

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「う~ん……」
『アルトラ! どうかしたの!?』

 我が家のリビングのテーブルに頬杖突いて悩んでいたらネッココに声をかけられた。

「ネッココか、まだ外は明るいのに家の中に居たのね」
『いつも庭に埋まってるわけじゃないわ!』

 と言いつつ冷蔵庫を開け、コップにオレンジジュースを注ぐ。
 オレンジジュースをストローで啜りながら私への気遣いを見せてくれた。

『それで何を悩んでるの? 私に話してみなさい! 悩みなら聞いてあげるわ! ズズッ』
「数日前に卵と牛乳で食中毒出しちゃったから、どうやって解決しようかなと思ってね」
『食中毒ってなに?』
「この間あなたがお腹痛くなったようなことよ」

 亜人と根本的に身体の構造が違うネッココには、食中毒の説明をしてもよく分からないだろうから、お腹痛くなったことを引き合いに出せば分かり易いだろう。

「で、それにならないようにするにはどうしたら良いかなと考えててね、洗浄機械導入するのも良いんだけど、この町ではまだ沢山電気が使えるわけじゃないから電気の負担は少なくしたいし、機械導入するにも金額も不透明だし、何よりこの町で唯一機械作れる人たちが体調不良で入院しちゃってるから何か良い方法無いかと思って考えてたわけよ」

 私は機械の構造に詳しくなくて、創成魔法では作り出せないから別の方法……具体的に言うと魔法方向で解決策を考えないといけない。

『ふ~ん……私には難しい言葉ばかりでよくわからなかったわ! 亜人は考えることが多くて大変ね! ズズズッ』

 ネッココに話しても良いアイディアは貰えなかったか……まあ亜人の食べ物のことをネッココに聞いても仕方ないか。
 それにしてもこの子、もう既にこの家に慣れ切ってるな……遠慮無く冷蔵庫開けてオレンジジュース飲んでる。
 まだうち来て一ヶ月経たないのに。

「あんた……あまりジュースがぶがぶ飲まないでよ? それこそこの間みたいにお腹痛くなっても知らないよ?」
『大丈夫よ! もうそれ以上飲んだらダメって時にはカイベルが止めてくれるから!』

 私にはこの子にとって適量がどの程度か分からないから、確かにカイベルに止めてとはお願いしたけど……

「お悩みのようですが、それでしたらスライムをを使ってはどうでしょうか?」

 会話を聞いていたカイベルがネッココの後ろから助言しに顔を出した。

「スライム?」

   ◇

 カイベルの助言を受け、早速スライムをゲットするため浄水場へ移動。

「アルトラ様がここに来られるなんて珍しいですね」
「うん、今スライムはどれくらい居る?」

 浄水場では水を浄化するためのスライムを飼っており、増え過ぎた時には食用にしている。 (第169話参照)

「定期的に増えたものを食用として出荷するので、それほどいませんよ。現在は七、八匹ってところです」
「スライムって出荷するとどれくらい売れるの?」
「即日完売するみたいですよ」
「えっ!? こんな味の無い食べ物がそんなに人気なの!?」
「そもそもの出荷数が少ないですから、“人気”とは少し事情が違うかもしれませんね。ただ、味はお好みで付けられますし、スライムの食感が良いって言う者はそれなりにいるようです。特に嗜好性が強い者は少し固めの核の部分を好んで食べるそうですよ」
「へぇ~、自分で捕まえてきてだけど意外だったわ」

 だって食べた時に無味無臭で全然美味しくなかったから……

「それで今日はどういった要件で?」
「スライムを二匹譲ってもらえる?」
「構いませんが、どうするんですか?」
「牛乳と卵の洗浄をしてくれるように改良する」
「そんな都合良く変質させられるんですか!?」
「私から都合の良い話が出てきても『そういうものだ』と解釈して」
「そのセリフ久しぶりに聞きましたね。牛乳と卵が原因でフィンツさんたちが食中毒?とかいうのになったのを受けてですか?」
「そう、今度は食中毒を出さないように気を付けないといけないからね」
「倒れた原因について。最初は『過労か!?』って書いてありましたけど、次の日の新聞には訂正記事が載ってるのを見ましたよ!」

 新聞見てる人、既に結構な数に及んでるのかな?
 ドワーフさんたちが倒れたことがこんなに広まってるとは。
 『原因は過労ではない』とちゃんと訂正記事を書いてくれたのね。

「それでスライムをそんな都合良く改良することなんかできるんですか?」
「うん、まあ試行錯誤してみる。失敗したら食べちゃえば良いから」
「は、はぁ……まあ二匹くらいならどうぞご自由に連れて行ってください」

 というわけで、スライムを二匹貰って来た。

   ◇

 その足でまずは養鶏場へやって来た。

「アルトラ様、フィンツさんたちは大丈夫なんですか?」

 オライムスが心配している。

「うん、あの後一回見に行ったら少し回復してたから多分大丈夫よ」
「この養鶏場の卵が原因で身体壊した者が出てしまったというところが……」

 悲壮感漂う。廃業になるんじゃないかと危惧してるのかもしれない。
 新聞で拡散されちゃってるしな……日本だったら間違いなく会社が傾いてるか、もっと運が悪ければ倒産している。
 しかしこの町ではそれほどの影響は無い。この町に毒耐性高い亜人が多かったのは不幸中の幸いだった。

「心配しなくても大丈夫だって。今から食中毒起こさないような対策するから。この子を使ってね!」

 ジャーンという具合にスライムを天高く掲げる。

「そのスライムをどうにかするんですか?」
「そうそう。とりあえず実験してみたいから卵一個貰えるかしら?」
「はい」

 卵を受け取った。

「それをどうするんですか?」
「スライムに入れる」

 スライムの中に卵を入れた。
 が、一瞬で消えてしまった。
 予想はしてたが、やはりこのままだと卵自体も一瞬で消化してしまうらしい。

「消えてしまいましたが……この後何か変化が起こるんですか?」
「ごめん、これはただ単にこのスライムの状態を確認しただけ。やることはここから」

 創成魔法でスライムこの子の性質を変化させる。

 変化させる条件は――
  ・ニワトリスのう〇こと卵に付着している雑菌だけを食べるようになる
  ・少量の摂取でもエネルギーを賄うことができるようになる
  ・あまり動き回らない
  ・自己増殖しない
  ・老いてきて死ぬ時には同じ姿に転生して若返る

 と、こんなところか。
 最後の『老いて死ぬ時には~~』ってのは、ベニクラゲの『不老不死』だという生態を参考にした。ベニクラゲは死んだ後にその場で若い身体に転生するらしいから。
 あと、どっか行っても大丈夫なように一応魔力マーキングしておこう。
 これで、卵にくっ付いたう〇こと雑菌“のみ”を消化してくれるはず。
 一匹養鶏場に置いておけば、滅菌された安全な卵を生産できるようになる。

 あ、あと色と体型も変えておこう。分かりやすく白地に赤い鶏冠とさかを生やしておけばニワトリみたいに見える。これで誰がどう見てもニワトリス専用のスライムだということが分かるだろう。
 中に卵が入ってるかどうか判別し易くするため、色を付けながらも半透明にする。
 と言うわけで色と体型変化!

「おお! 色が変わりましたよ!? 鶏冠とさかまで付いて!」
養鶏場ここ所有のスライムだって分かり易くて良いでしょ?」
「良いですね! これでこのスライムが卵の殺菌をしてくれるようになったんですか?」
「多分」
「多分って、確実では無いんですか!?」
「実験してみないと成功したか分からないからね……というわけで、もう一個卵貰える?」
「どうぞ」

 綺麗な卵を差し出された。

「いや、こんな洗ってある綺麗なのじゃなくて、もっときったないの無いの? 出来ることなら今ある中で最高に汚いのが良いんだけど」
「う、生みたてほやほやで良いなら……しかし、手が汚れますが……」
「スライムに突っ込めば綺麗になるはずだから、成功していればね」

 と言うわけで、もっと汚い卵を受け取った。
 もし成功していなかった場合、私の手はまみれのままってことになるが……

「これを中に入れて、卵周りの汚れだけが取れれば成功ってこと」
「なるほど」

 自分の腕ごと卵をスライムに突っ込む。
 突っ込んだ瞬間に、一瞬にして私の手と卵が綺麗になる。

「おお! 物凄く綺麗になりましたよ!」

 そしてそのまま卵をスライムの中に残して、腕だけ引き抜いた。

「なぜ卵を残したんですか?」
「本当に卵が消化されないようになったかなと、少しスライムの中に放置してみようかと思って」

 五分ほどが経過――

「卵に変化はありませんね」
「ってことはこれで雑菌は取れてるってことかな?」

 スライムの中から取り出した。

「何だか凄くツヤツヤで綺麗になりましたね」
「見た目では、どう見ても安全な卵ね」

 あとはこれに雑菌が居るかどうかをフィンツさんに確認してもらって…………と彼らはまだ病院に居るんだった。かと言ってフリアマギアさんに調べてもらうのは……何だかまた変に勘繰られそうだからどうしようかな……
 あ、カイベルに聞けばすぐ解決か。

「じゃあちょっと専門家に確認に行ってくるわ」
「え? 専門家?」
「知り合いに雑菌の専門家がいるからこれを売って大丈夫かどうか聞いてくるよ」
「よろしくお願いします」

   ◇

 ゲートで我が家へ。

「カイベル! カイベルの助言通りスライムの性質を変えてみたけど、この卵に雑菌は居る?」
「いません。完全に滅菌されているようです。これなら誰が食べても食中毒が起こることはないでしょう」
「そう、ありがとう! じゃあオライムスを待たせてるから、後でもう一回来るわ!」

 忙しく養鶏場のオライムスのところへ帰る。

   ◇

「は、早かったですね、それでどうでしたか?」
「これなら食中毒も発生しないってさ」
「そうですか! ではこのスライムを使って、卵の滅菌処理をしようと思います! それでこのスライムはおいくらで譲っていただけるのですか?」

 本当ならここでお金を受け取らないといけないところだけど――

「今回は私の判断ミスの面が大きいから代金はサービスしとく。今後もよろしくお願いね。じゃあ次は牛乳の対処に行かないといけないから」
「その連れて来たスライムのもう一匹が牛乳用ですか?」
「そう。ああ、あとこのスライムのことは他言無用で。もし誰かに何か聞かれたら『特殊進化した個体』だって言っておいて」

 そう、この『特殊進化した個体って言っておいて』という言い訳、それはさっきカイベルに相談した時に思いついたもの。

   ◆

 数時間前、我が家でのカイベルとの会話――

「スライムを使うって……スライムの性質を変化させるってこと?」
「はい」
「でもそんな特殊なスライムが中立地帯から出て来たら、また周辺国から変に疑われない?」
「スライムは単細胞生物で、変質し易いので特殊進化する可能性も無いとは言えません。何か聞かれても『特殊進化個体だから詳細は分からない』と言えばそれなりに話は立ちます。スライムの中には汚物ばかり好んで食べるように進化したものもいますので、菌を食べるスライムが存在したとしてもそれほどおかしな話ではないかと」
「そういうもんなの?」
「それに……何を食べてもずっと清浄な状態を保ち、身体が濁らないスライムが生まれているのですから、排泄物と菌だけを食べるスライムが出て来たところで特に目立つことはないと思います」
「た、確かにそうね……じゃあまあその方法で行こうか」

   ◇

 というやり取りがあった。

「じゃあ行くね!」
「ありがとうございました」

 卵の食中毒対応を終えたということで、この場を後にした。
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