建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

文字の大きさ
391 / 591
第14章 アルトラルサンズ本格始動編

第382話 妖精の重要性と寝耳に水の報せ

しおりを挟む
 この中立地帯、改め、アルトラルサンズは、各国からの流通拠点としての役割を持ったため、イェン通貨の価値が急騰した。
 以前カイベルに聞いた時には紙同然と言われたイェン通貨も、現時点でウォル通貨の半値ほどの価値にまで高まった。
 まだ作って半年ほどしか経ってないお金が、“アルトレリアの町中だけで使う予定”で作ったものだったのに、他国との流通に利用できるようになったのだ!

「カイベル! これって結構凄いことなんじゃないの!?」
「私もこれほど急激に価値が上がるとは思っていませんでした……」

 珍しくカイベルの予想が外れた。
 それほど亜人ひとの噂の流れというのは読みにくいものなのだろう。

「何か……Tsubuyaitterツブヤイターでフォロワー人数が百人から突然一万人になったかのような感覚……ってのとはちょっと違うか」

 そもそもフォロワーあまり増えたことないから分からんわ……

「それにしてもホントに色んな国の商人が出入りするようになってきたね」

 フレデリックさんがこの町を訪れたことを皮切りに、様々な異種族がこの町に出入りするようになり、生前に読んだ“幻想世界の住人の説明がされた本”に出てくる者たちが多数訪れるようになった。

 ドワーフ、エルフに代表される亜人は元より、ミノタウロスのような牛面の獣人、豚面のオーク、人型から獣型に変身するウェアウルフ、ウェアタイガーなど、今までは見たこともなかった獣人も出入りするようになった。
 樹の国には獣人に分類される亜人が多く住み、樹の国の隊商にも獣人が多い。
 人型の亜人と比べると、獣人は身体能力が高いため隊商のパーティーメンバーに組み込まれていることが多いようだ。
 が、私が最も注目したのは獣人ではなく――

「カイベル! 何か空飛ぶ猫みたいなのがいるけど!」
「ああ、あれはケット・シーですね。亜人ではなく妖精の一種です」

 おお……あれが以前エミリーさんから聞いたアニメ『シーとラトン』の題材になった種族か。 (第263話参照)
 ケット・シー連れてる隊商多いな。
 あ、あのケット・シーの顔を……口周りに黒い模様があって、ドロボウ髭に見える。失礼ながら商人と言うより盗っ人みたいね。

「あっちに犬っぽいのがいるけど、あれも妖精?」
「いえ、あちらはコボルトで、犬面獣人の一種です。以前樹の国でピラミッドを案内していただいたアヌビス族のジゼル様と似た種族ですね」 (第358話から第359話参照)
「じゃあ、あっちに人型に近い猫がいるけど、あれは妖精?」
「いえ、あれはネコボルトで、猫面獣人の一種ですね」
「じゃあ、あっちの猫面獣人もネコボルト?」
「いえ、あれはウェアキャットで、猫型の半獣人ですね」

 どこが違うの……?

「あっちの猫はケット・シーで妖精で、こっちの猫はネコボルトで獣人、あれはウェアキャットで半獣人? どこに違いが?」
「妖精と亜人・獣人の明確な違いは、空を飛べるかどうかです。キラキラと魔力の光をまき散らしながら、空中を飛び回ります。またネコボルトとウェアキャットの違いは、ネコボルトが常時猫面なのに対し、ウェアキャットは普段は人間に似た姿で生活します。今現在、力仕事の最中なので獣化じゅうかしているのでしょう。獣化すると身体能力が数倍に上がります。ただ、その半面消費するエネルギーが大きいので常に獣化状態を保つというわけにはいかないようです」
「凄くややこしいわ……見た目じゃ分かりづらい。でも、その理屈だと、私は妖精に分類されそうだけど?」

 私も空を飛ぶ時には光を放つ。

「もう一つの特徴は、妖精は身体が小さいというところです。一メートルを超える者はこの世界では妖精には分類されません」
「へぇ~、なるほど、確かに大きいと妖精って感じはしないわ」

 確かによくよく見ると、ケット・シーは小さい。他にも妖精らしき者を連れてる隊商があるけど、人型のものを含めて全部一メートル以下に見える。

「何だか各隊商、最低一人は妖精連れてる気がするんだけど、何で妖精をお供にする隊商が多いの?」
「この世界で光魔術師は珍しいという話は覚えてますか?」
「覚えてる。アルトレリアにも両手で数えるくらいしかいないし」
「妖精は光魔法を使える者が多いのです。この世界は各国の町や都市、また樹の国の光を咲かせる花ライトブルームがある場所、土の国の蓄光石のある場所、雷の国全域、火の国の一部など光源となるものがある場所以外は真っ暗闇ですので、旅をするには光が重要になります」
「つまり……明かり要員?」
「そうですね。アルトラ様の疑似太陽ほどではないにせよ、魔法単体で周囲を照らせる魔法というのは光属性以外には基本的には存在せず、魔界で光魔法は稀少ですから」

 “魔法単体で”というのは、火魔法なら木に燈して松明として使ったり、雷魔法なら蓄電して蛍光灯として使ったりと、火や雷の場合はそれを使う物や道具が必要だが、光魔法ならそういった道具を必要とせず、光の玉を空に浮かべるだけでしばらくの間光源が確保できるという意味。

「周囲を見やすくするだけでも、獣や魔獣に急襲される可能性を低くできますから、国から国へと行商して渡り歩く隊商には、言わば必須とも言うべきスキルです」
「なるほど、そういう理由で妖精が各隊商に一人くらいはいるってわけね」

 しかし、何やら猫型の妖精が多い気がする。

「理屈は分かったけど、ケット・シーが隊商に多いのはどういうわけ?」
「猫は旅の幸運と安全を願う動物で、更にその妖精ですので、ケット・シーを連れている隊商は多いのだと思われます。それに彼らは商魂たくましいので隊商に入れるには打ってつけなんですよ。三毛猫の雄のケット・シーなど、強力に幸運を引き寄せるという迷信があるので、引く手数多ですよ。奴隷売買が可能な国では物凄い高値で競り落とされるほどです」

 それは人間界でも聞いたことあるわ。船に三毛猫の雄を乗せておくジンクスがあったって。
 三毛猫の雄は三万分の一でしか生まれないから、幸運の象徴とされているらしい。

「何よりも彼らは普通に会話が成立するので、動物の猫のようにどこかへ一人で勝手に行ってしまうということもありません。連れて行くなら猫よりケット・シーでしょう」
「あ、あそう……」

 確かにフラフラどこかへ行かれてしまうのは困るけど……
 でも、会話が成立しない猫は、それはそれで可愛くて魅力的ではあるのだけど……

「ところで、ネコボルトとウェアキャットの見分けが付かないんだけど……」
「手足を見ればおおよそ分かります。ネコボルトは猫のように丸い手で、物を掴むことくらいはできますが、親指の機能が弱くあまり器用ではありません。ウェアキャットは人間に近い手をしていて五本の指全てがきちんと開けるようになっています。足の指も同様に」
「なるほど」

 要はウェアキャットはネコボルトの上位互換って感じか。

 カイベルと共に、訪れた隊商を観察しながら歩いていたところ、商人が何やらキナ臭い話をしているのが耳に入った。

「最近氷の国はより物騒になってきたな」
「内戦が激しくなったらしいしな。しばらくはあの国への行商は控えた方が良いだろう」
「だが、もう少ししたら沈静化するかもしれんぞ? これ見てみろ」
「何だ?」
「見てみたら分かるさ」
「「………………これ、本当か!?」」
「さあな。新聞によれば――」

 という氷の国の話題が、行商人たちから聞こえる。
 氷の国って言うと、七大国会談でフレアハルトと一触即発になった、あのおっかない魔王サタンが治める国か…… (第232話参照)
 何の話題かちょっと気になったので声をかけてみることにする。

「それって新聞ですか?」
「そうだけど、お嬢さんも興味あるのか? もう読み終わったから持って行っても良いぞ? 昨日のだけどな」
「ホントですか? うちの新聞社の参考にもしたいので助かります!」

 日付を見たところ確かに一日前の新聞。とは言え、新聞作りの参考になるかもしれない。後でアルトレリアで新聞を作ってるところへ持って行ってあげよう。
 早速今貰った新聞に目を落とすと――

 <<氷の国アイスサタニア首都キオネーラ陥落!>>

 ――の見出し。

「え!? 氷の国アイスサタニアの首都が陥落!?」

 更に読み進めると、魔王サタンが反乱軍によって討ち取られ、七つの大罪『憤怒ラース』は別の者に継承されたのではないかという噂記事。
 もし現サタンが討ち取られているのなら、近日中に新サタンのお披露目があるのではないかとのこと。

「はっ? えっ? あのサタンおっかないおっさんが死んだ!?」

 寝耳に水の情報。
 何気なく貰った新聞で、まさかサタンが死亡したんじゃないかと噂の記事を目にするとは……

「カイベル! これどういうこと!?」
「はい、今代サタンは反乱軍によって討ち取られたようです」
「ってことは……あなたから見たらこの記事は噂ではなく確定事項!?」
「はい、近々新しい氷の魔王のお披露目式があるでしょう。勝利したのが反乱軍ですので、政権もほぼ丸々入れ替わるでしょうね」
「…………魔王の代替わりというものを初めて目にするわ……ちょっと衝撃を受けた……反乱軍の一人が王様になるってことなのかな?」
「そのようですね」

 そういえば、七大国会談の各国提議の時に属国が王位の返還請求していたっけ。あの時起こった反乱によって今代のサタンが討ち倒されたってわけか。 (第229話参照)
 まあ、サタン軍だろうと、反乱軍だろうと、どっちが勝ったところで現時点では私にもアルトレリアにも大した影響は無いだろうから、特別気にしなければならない話でもないか。
 むしろ今代サタンが悪政を敷いていたのなら、次にサタンになる人物次第で今後良くなる可能性もあるってことだ。

   ◇

 散歩という名の第一壁外の商人たちの観察を終え、役所に顔を出したところ、マリリアから声をかけられた。

「あ、アルトラ様、隊商の方たちからお手紙を預かっていますよ」
「え? 手紙? 私に?」
「アルトラ様にと言うか、この国に対して宛てられたみたいです」

 預けられていた手紙を見ると宛先はアルトラルサンズ宛。
 手紙は五枚。受け取ってみると、どれも王国印が入ってる。
 あ、これこの間の各国視察の返事か。

 と言うことで、大使館予定地を選ぶための会議を開くことになった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

美化係の聖女様

しずもり
ファンタジー
毒親の仕打ち、親友と恋人の裏切り、人生最悪のどん底でやけ酒を煽り何を思ったのか深夜に突然掃除を始めたら床がドンドンって大きく鳴った。 ゴメン、五月蝿かった? 掃除は止めにしよう、そう思った瞬間、床に現れた円のようなものが光りだした。 気づいたらゴミと掃除道具と一緒に何故か森の中。 地面には気を失う前に見た円が直径3メートルぐらいの大きさで光ってる。 何コレ、どうすればいい? 一方、魔王復活の兆しに聖女を召喚した王城では召喚された筈の聖女の姿が見当たらない。 召喚した手応えはあったものの目の前の床に描かれた魔法陣には誰も居ない。 もしかして召喚先を間違えた? 魔力の残滓で聖女が召喚された場所に辿り着いてみれば聖女はおらず。 それでも魔王復活は待ってはくれない。 それならば聖女を探しながら魔王討伐の旅へ見切り発車で旅する第二王子一行。 「もしかしたら聖女様はいきなり召喚された事にお怒りなのかも知れない、、、、。」 「いや、もしかしたら健気な聖女様は我らの足手まといにならぬ様に一人で浄化の旅をしているのかも知れません。」 「己の使命を理解し果敢に試練に立ち向かう聖女様を早く見つけださねばなりません。」 「もしかして聖女様、自分が聖女って気づいて無いんじゃない?」 「「「・・・・・・・・。」」」 何だかよく分からない状況下で主人公が聖女の自覚が無いまま『異世界に来てしまった理由』を探してフラリと旅をする。 ここ、結構汚れていません?ちょっと掃除しますから待ってて下さいね。掃除好きの聖女は無自覚浄化の旅になっている事にいつ気付くのか? そして聖女を追って旅する第二王子一行と果たして出会う事はあるのか!? 魔王はどこに? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 不定期更新になります。 主人公は自分が聖女だとは気づいていません。 恋愛要素薄めです。 なんちゃって異世界の独自設定になります。 誤字脱字は見つけ次第修正する予定です。 R指定は無しの予定です。

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

処理中です...