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第15章 火の国ルシファーランド強制招待編
第404話 捕まえた砂賊を運搬するにはラクダ二頭じゃ足りないな……
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とりあえず砂賊の運搬用に樹魔法で荷車……え~と、ソリだから『荷ソリ』って名前になるのかな? 荷ソリを作った。
「フレアハルト、アリサ、レイア、砂賊を荷ソリに乗せてもらえる? 全員気絶してぐったりしてるから力持ちのあなたたちにお願いしたい」
「わかった」
「了解!」
「了解いたしました」
「我々は出発の準備をしておきます」
と、サンドニオさん。
「お願いします」
「あ、あの~……」
例の商人が低姿勢で声をかけてきた。
私のパーティーにドラゴンがいると知って尊大な態度ではいられなくなったのかもしれない。
「何だ貴様、まだ何か用か? 砂賊からは助けてやったではないか!」
「わ、我々の駱駝車は壊されてしまいましたので、デザートソリドまで同行させてはもらえないでしょうか?」
商人たちの駱駝車については、【強制転移】で転移する時に一緒に転移させたため、フレアハルトの攻撃を受けず焼失は免れている。
運んでいた物資や物品も盗まれることもなく無事だ。
しかし、砂賊に壊されたものはどうにもならない。特に商人が乗っていたメインの駱駝車は見る影も無くボロボロに壊されている。
他四台も駱駝車を引くための重要な部分が壊されており、もうラクダに引いてもらうこともできない。カイベルを同行させていれば彼女が何とか修復してくれたかもしれないが。生憎この場には居ないしね。
隊商の人数だけ見ても十人。そこに雇われている護衛が八人。そして今捕まえた砂賊が十五人。
砂賊は駱駝車の後ろに荷ソリを作って引きずって行くと考えて差っ引いても、商人の関係者は全部で十八人。どう考えても私たちが借りた小さな駱駝車に乗れる人数ではない。乗せられたとしてもせいぜい六人ほど。
それに個人的な感情だが、散々嫌味を言ってきた人物を同乗させたくない。
「積載容量を考えてもちょっと無理ですね」
積載容量を理由に体よく断る。
サンドニオさん曰く、幸いにもデザートソリドも近いところまで来てるとのことで、半日も歩けば着ける距離。フレアハルトが砂を吹き飛ばして地形が変わったおかげで砂に足が埋まらなくなった分、歩いて移動し易くなった。
先ほど私たちが避難していた十キロ離れたところの砂山が無くなったのを考えると、少なくとも七、八キロくらいは砂の少なくなった歩きやすい地形になっているだろうと考えられる。
ただ……良くないことも当然起きている。
駱駝車は車輪部分がソリ状になっている移動車である。
ソリで移動するにはダメージを受けそうな地形に変貌してしまったから、私たちの駱駝車も無理な運転をして壊してしまわないように注意が必要かもしれない。
「もう歩いて半日ほどの距離ですし、歩かれてはどうですか?」
そのでっぷりしたお腹のダイエットにもなりそうだし。
「そ、そこを何とか!?」
いや「何とか!?」なんて言われたって、無理なものは無理でしょ。壊れた駱駝車を砂漠にほったらかしにして乗り捨てて、中の物資や物品は持って行くってことでしょ?
そこまでの積載容量は無いよ私の借りたこの小さい駱駝車に。
あっ! もしかしたらサンチョさんなら修理できるかも?
「サンチョさん、彼らの駱駝車修理できませんか?」
「私に修理できる程度なら良いのですが……」
商人たちの駱駝車を見て回って、あっという間に点検して帰って来た。
あまりにも早すぎると思ったが、その理由もすぐ判明。
「簡単な修理ならともかく、重要部分が壊されているようでは専門外です。私ではどうにもなりませんね」
「そうですか……」
「ただ、五台のうち一つは比較的破損部分が少ないため、一台だけなら少しの修理で動かすことができそうですよ」
「だそうですよ、商人さん」
ただし、動かせるのは商人が乗っていた大きめの駱駝車ではなく、隊商メンバーが乗っていた小さめなものらしく、全員を乗せることはできなさそうだが……
「ううぬ……これ一台では物資を載せるくらいにしかならん」
「でしたら、歩いてデザートソリドへ向かう以外無さそうですねぇ」
私にとっては他人事。
「う~む…………ならばワシが駱駝車に乗って荷物番をするから、お前たちは歩いて後ろを付いて来い」
「「「何だと!?」」」
その商人のあんまりな言い草に、護衛たちがいきり立つ。
「それは護衛の範疇には入っていない!」
「砂漠を歩くなど聞いていないぞ!」
「俺たちの仕事は野盗から護衛することだ!」
商人が雇った護衛たちから不満の声が上がる。
「砂賊に歯が立たず、全く役に立たずやられてしまった者たちが何を言う! それでも雇った分の金は払ってやるんだ! ありがたいと思え!」
その後はぐうの音も出なくなってしまった。
ただ、その顔には不満がありありと浮かんでいる。
「さ、さあ、こ、こういうわけですので、こむす……アルトラ殿! ワシらの護衛をお願いできませんか!?」
今また『小娘』って言いかけたな……
表面的な態度では揉み手をして低姿勢だが、頭の中では私のことを全く認めてはいないらしい。
それにしても、私と自身の関係者とでは、対応の仕方があまりにも違う。
その態度の違いに嫌悪感がして、同行はあまり気が進まないなぁ……
が、気絶した砂賊を荷ソリに乗せていたフレアハルトから不都合を報せる声が。
「アルトラ、巨人はどうする? 他の者は荷ソリに乗せるのにそれほど問題は無いが、巨人を乗せるとラクダ二頭で引くにはかなり厳しいぞ? ドラゴン化するための魔力を筋力強化に流用せねば我らでも持ち上がりさえせぬ」
砂賊十四人の総重量、小さい種族から大きい種族と幅広いから、仮に平均七十キロから八十キロほどと考えると全員の合計は一トンから一.二トン程度になる。
対して巨人は五メートルくらいの身長で筋肉質だからコイツ単体で二トンほどある。
牽引している駱駝車と搭乗している私たち七人+物資の重さに加え、更に三トン増えるとなると、私たちが連れているラクダ二頭だけでは厳しいどころか、不可能の域。
「う~ん……ちょっと重量的にラクダ二頭に引っ張ってもらうのは無理か……」
どうやら護衛を受けざるを得ない事態が発生してしまったみたいだ……
不本意だが商人の連れてるラクダを借りなければ移動できなくなってしまった。
創成魔法でゴーレムを作り出して引っ張らせたり、巨人を小さくする魔道具を作っても良いんだけど、ルシファーの監視がどこにあるかもわからない中、やっぱり仮想敵国で手の内は明かしたくない。
あちらに着いてルシファーにどんな対応をされるか分からないが、人を呼んでおいて、自分の足で来いなどと言うほど傲慢な王様である。火の国移住を断ればどんなことになるか想像も容易い。そういうわけで創成魔法の使用は否。
砂賊たちについては必ずしもデザートソリドまで運ぶ必要は無いがこのままここへ放置して出発すると、例の砂の精霊が解放にやってきて、あっという間に砂賊団が復活してしまうことも考えられる。
ここはもう仕方ないな……
「分かりました。デザートソリドまでは護衛を引き受けます。ただ、そこから先は現地で駱駝車を調達して、護衛も雇ってください。あと、代わりと言ってはなんですがあなたの連れているラクダを貸してください。砂賊を運ぶのに私の連れている二頭では厳しいので」
「わ、わかりました! ありがとうございます!! よしそうと来たら、さあお前たち! 物資を小さい駱駝車に移し替えろ!」
隊商メンバーが物資を移し替え始めた。
「さ、私たちも出発の準備をしましょうか。商人さんがラクダ貸してくれるって言うから、巨人は三頭で引っ張ってもらいましょう」
そうフレアハルトに促し、ラクダをソリに繋ぐ準備をしようとしたところ、すぐに商人の罵声が聞こえて来た。
「さっさとしろ! きびきび動け!」
自らは動かず、声を上げるだけ。ピシャッと鞭の音が響く。
特に奴隷らしき獣人たちに対する扱いが酷い。
護衛として雇われた者たちは見て見ぬフリ。我々の仕事の領分ではないと素知らぬ顔。
そのうち震えで物資を落とす者が出てくる。
「力仕事のために買ってやったのに、こんな簡単なこともできないのか! グズがッ!」
手に持っていた鞭を獣人に打ち付ける。
「すみませんすみません!」
普段からこうなのか抵抗する気すら感じられず、鞭を打ち付けられた獣人は震えながら突っ伏してしまった。
「…………ちょっと商人さん……」
流石に酷いと思い口を出そうとしたところ――
「いや、お主は行かなくて良い」
――後ろから肩を掴まれ、制止された。
商人の元へ向かったのはフレアハルト。
「……おい!」
「ななな、何か御用ですかな? フレアハルト殿!」
私と話す時とは違い、フレアハルトを目の前にすると余程恐ろしいのか挙動が怪しくなる商人。
「貴様のやってることは目に余る! 不快だ! 貴様の部下たちが始終ビクビクしているではないか! もう少し優しく命令できぬのか? できぬのなら今から不快の大元を排除しようかと思うのだが……?」
右手に魔力で炎を灯し、『焼き尽くすぞ?』という具合に人差し指を目の間近まで近づける。商人は強張ってしまい恐怖の表情を顔に貼り付けたまま微動だにせず。そしてそのまま人差し指を商人の左頬を横に流れるように掠った。
一瞬だけ聞こえたジュッ!と言う顔の皮膚が焼かれる音。それと共に商人の左頬に黒い煤の線が引かれる。
「あ、熱っちぃぃぃ!! ひ、ひぃっ!」
「ふんっ、次に鞭打つ姿が我の目に入ったら顔を半分焼くからな?」
「わ、わかった! わかりました! お、お前たち~、なるべく早く積み込んでくださいよ~!」
その後は笑顔に苦虫を噛み潰したような顔を足したような奇妙な笑顔で、彼なりの優しい口調で部下に命令していた。
「代弁してくれてありがとう、フレアハルト」
「お主の普段の言い方では他人を注意するには優しすぎるからな、あの手の悪人の行動を制するなら命まで取られると思うくらい脅しておいた方が良い」
なるほど、確かにそれなら真の姿を明かしたフレアハルトの方が適任だったかもしれない。
「それにデザートソリドに着くまであの鞭打ちを目の前で何度もやられると考えたら、吐き気がしてきそうだからな」
全く同じ気持ちだわ……
フレアハルトは、元々は同族以外の他人、特に亜人を慮るような性格ではなかったが、アルトレリアでトロルたちと過ごすうちに良い方向に性格が変わったようだ。
今後この商人が心を入れ替えるとは思えないが、彼の部下たちが今だけはビクビクせずに過ごせればと思う。
その後、数十分の積み込み作業が終わり、商人に同行して出発。
「フレアハルト、アリサ、レイア、砂賊を荷ソリに乗せてもらえる? 全員気絶してぐったりしてるから力持ちのあなたたちにお願いしたい」
「わかった」
「了解!」
「了解いたしました」
「我々は出発の準備をしておきます」
と、サンドニオさん。
「お願いします」
「あ、あの~……」
例の商人が低姿勢で声をかけてきた。
私のパーティーにドラゴンがいると知って尊大な態度ではいられなくなったのかもしれない。
「何だ貴様、まだ何か用か? 砂賊からは助けてやったではないか!」
「わ、我々の駱駝車は壊されてしまいましたので、デザートソリドまで同行させてはもらえないでしょうか?」
商人たちの駱駝車については、【強制転移】で転移する時に一緒に転移させたため、フレアハルトの攻撃を受けず焼失は免れている。
運んでいた物資や物品も盗まれることもなく無事だ。
しかし、砂賊に壊されたものはどうにもならない。特に商人が乗っていたメインの駱駝車は見る影も無くボロボロに壊されている。
他四台も駱駝車を引くための重要な部分が壊されており、もうラクダに引いてもらうこともできない。カイベルを同行させていれば彼女が何とか修復してくれたかもしれないが。生憎この場には居ないしね。
隊商の人数だけ見ても十人。そこに雇われている護衛が八人。そして今捕まえた砂賊が十五人。
砂賊は駱駝車の後ろに荷ソリを作って引きずって行くと考えて差っ引いても、商人の関係者は全部で十八人。どう考えても私たちが借りた小さな駱駝車に乗れる人数ではない。乗せられたとしてもせいぜい六人ほど。
それに個人的な感情だが、散々嫌味を言ってきた人物を同乗させたくない。
「積載容量を考えてもちょっと無理ですね」
積載容量を理由に体よく断る。
サンドニオさん曰く、幸いにもデザートソリドも近いところまで来てるとのことで、半日も歩けば着ける距離。フレアハルトが砂を吹き飛ばして地形が変わったおかげで砂に足が埋まらなくなった分、歩いて移動し易くなった。
先ほど私たちが避難していた十キロ離れたところの砂山が無くなったのを考えると、少なくとも七、八キロくらいは砂の少なくなった歩きやすい地形になっているだろうと考えられる。
ただ……良くないことも当然起きている。
駱駝車は車輪部分がソリ状になっている移動車である。
ソリで移動するにはダメージを受けそうな地形に変貌してしまったから、私たちの駱駝車も無理な運転をして壊してしまわないように注意が必要かもしれない。
「もう歩いて半日ほどの距離ですし、歩かれてはどうですか?」
そのでっぷりしたお腹のダイエットにもなりそうだし。
「そ、そこを何とか!?」
いや「何とか!?」なんて言われたって、無理なものは無理でしょ。壊れた駱駝車を砂漠にほったらかしにして乗り捨てて、中の物資や物品は持って行くってことでしょ?
そこまでの積載容量は無いよ私の借りたこの小さい駱駝車に。
あっ! もしかしたらサンチョさんなら修理できるかも?
「サンチョさん、彼らの駱駝車修理できませんか?」
「私に修理できる程度なら良いのですが……」
商人たちの駱駝車を見て回って、あっという間に点検して帰って来た。
あまりにも早すぎると思ったが、その理由もすぐ判明。
「簡単な修理ならともかく、重要部分が壊されているようでは専門外です。私ではどうにもなりませんね」
「そうですか……」
「ただ、五台のうち一つは比較的破損部分が少ないため、一台だけなら少しの修理で動かすことができそうですよ」
「だそうですよ、商人さん」
ただし、動かせるのは商人が乗っていた大きめの駱駝車ではなく、隊商メンバーが乗っていた小さめなものらしく、全員を乗せることはできなさそうだが……
「ううぬ……これ一台では物資を載せるくらいにしかならん」
「でしたら、歩いてデザートソリドへ向かう以外無さそうですねぇ」
私にとっては他人事。
「う~む…………ならばワシが駱駝車に乗って荷物番をするから、お前たちは歩いて後ろを付いて来い」
「「「何だと!?」」」
その商人のあんまりな言い草に、護衛たちがいきり立つ。
「それは護衛の範疇には入っていない!」
「砂漠を歩くなど聞いていないぞ!」
「俺たちの仕事は野盗から護衛することだ!」
商人が雇った護衛たちから不満の声が上がる。
「砂賊に歯が立たず、全く役に立たずやられてしまった者たちが何を言う! それでも雇った分の金は払ってやるんだ! ありがたいと思え!」
その後はぐうの音も出なくなってしまった。
ただ、その顔には不満がありありと浮かんでいる。
「さ、さあ、こ、こういうわけですので、こむす……アルトラ殿! ワシらの護衛をお願いできませんか!?」
今また『小娘』って言いかけたな……
表面的な態度では揉み手をして低姿勢だが、頭の中では私のことを全く認めてはいないらしい。
それにしても、私と自身の関係者とでは、対応の仕方があまりにも違う。
その態度の違いに嫌悪感がして、同行はあまり気が進まないなぁ……
が、気絶した砂賊を荷ソリに乗せていたフレアハルトから不都合を報せる声が。
「アルトラ、巨人はどうする? 他の者は荷ソリに乗せるのにそれほど問題は無いが、巨人を乗せるとラクダ二頭で引くにはかなり厳しいぞ? ドラゴン化するための魔力を筋力強化に流用せねば我らでも持ち上がりさえせぬ」
砂賊十四人の総重量、小さい種族から大きい種族と幅広いから、仮に平均七十キロから八十キロほどと考えると全員の合計は一トンから一.二トン程度になる。
対して巨人は五メートルくらいの身長で筋肉質だからコイツ単体で二トンほどある。
牽引している駱駝車と搭乗している私たち七人+物資の重さに加え、更に三トン増えるとなると、私たちが連れているラクダ二頭だけでは厳しいどころか、不可能の域。
「う~ん……ちょっと重量的にラクダ二頭に引っ張ってもらうのは無理か……」
どうやら護衛を受けざるを得ない事態が発生してしまったみたいだ……
不本意だが商人の連れてるラクダを借りなければ移動できなくなってしまった。
創成魔法でゴーレムを作り出して引っ張らせたり、巨人を小さくする魔道具を作っても良いんだけど、ルシファーの監視がどこにあるかもわからない中、やっぱり仮想敵国で手の内は明かしたくない。
あちらに着いてルシファーにどんな対応をされるか分からないが、人を呼んでおいて、自分の足で来いなどと言うほど傲慢な王様である。火の国移住を断ればどんなことになるか想像も容易い。そういうわけで創成魔法の使用は否。
砂賊たちについては必ずしもデザートソリドまで運ぶ必要は無いがこのままここへ放置して出発すると、例の砂の精霊が解放にやってきて、あっという間に砂賊団が復活してしまうことも考えられる。
ここはもう仕方ないな……
「分かりました。デザートソリドまでは護衛を引き受けます。ただ、そこから先は現地で駱駝車を調達して、護衛も雇ってください。あと、代わりと言ってはなんですがあなたの連れているラクダを貸してください。砂賊を運ぶのに私の連れている二頭では厳しいので」
「わ、わかりました! ありがとうございます!! よしそうと来たら、さあお前たち! 物資を小さい駱駝車に移し替えろ!」
隊商メンバーが物資を移し替え始めた。
「さ、私たちも出発の準備をしましょうか。商人さんがラクダ貸してくれるって言うから、巨人は三頭で引っ張ってもらいましょう」
そうフレアハルトに促し、ラクダをソリに繋ぐ準備をしようとしたところ、すぐに商人の罵声が聞こえて来た。
「さっさとしろ! きびきび動け!」
自らは動かず、声を上げるだけ。ピシャッと鞭の音が響く。
特に奴隷らしき獣人たちに対する扱いが酷い。
護衛として雇われた者たちは見て見ぬフリ。我々の仕事の領分ではないと素知らぬ顔。
そのうち震えで物資を落とす者が出てくる。
「力仕事のために買ってやったのに、こんな簡単なこともできないのか! グズがッ!」
手に持っていた鞭を獣人に打ち付ける。
「すみませんすみません!」
普段からこうなのか抵抗する気すら感じられず、鞭を打ち付けられた獣人は震えながら突っ伏してしまった。
「…………ちょっと商人さん……」
流石に酷いと思い口を出そうとしたところ――
「いや、お主は行かなくて良い」
――後ろから肩を掴まれ、制止された。
商人の元へ向かったのはフレアハルト。
「……おい!」
「ななな、何か御用ですかな? フレアハルト殿!」
私と話す時とは違い、フレアハルトを目の前にすると余程恐ろしいのか挙動が怪しくなる商人。
「貴様のやってることは目に余る! 不快だ! 貴様の部下たちが始終ビクビクしているではないか! もう少し優しく命令できぬのか? できぬのなら今から不快の大元を排除しようかと思うのだが……?」
右手に魔力で炎を灯し、『焼き尽くすぞ?』という具合に人差し指を目の間近まで近づける。商人は強張ってしまい恐怖の表情を顔に貼り付けたまま微動だにせず。そしてそのまま人差し指を商人の左頬を横に流れるように掠った。
一瞬だけ聞こえたジュッ!と言う顔の皮膚が焼かれる音。それと共に商人の左頬に黒い煤の線が引かれる。
「あ、熱っちぃぃぃ!! ひ、ひぃっ!」
「ふんっ、次に鞭打つ姿が我の目に入ったら顔を半分焼くからな?」
「わ、わかった! わかりました! お、お前たち~、なるべく早く積み込んでくださいよ~!」
その後は笑顔に苦虫を噛み潰したような顔を足したような奇妙な笑顔で、彼なりの優しい口調で部下に命令していた。
「代弁してくれてありがとう、フレアハルト」
「お主の普段の言い方では他人を注意するには優しすぎるからな、あの手の悪人の行動を制するなら命まで取られると思うくらい脅しておいた方が良い」
なるほど、確かにそれなら真の姿を明かしたフレアハルトの方が適任だったかもしれない。
「それにデザートソリドに着くまであの鞭打ちを目の前で何度もやられると考えたら、吐き気がしてきそうだからな」
全く同じ気持ちだわ……
フレアハルトは、元々は同族以外の他人、特に亜人を慮るような性格ではなかったが、アルトレリアでトロルたちと過ごすうちに良い方向に性格が変わったようだ。
今後この商人が心を入れ替えるとは思えないが、彼の部下たちが今だけはビクビクせずに過ごせればと思う。
その後、数十分の積み込み作業が終わり、商人に同行して出発。
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※旧タイトル
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