建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第16章 大使就任とアルトレリア健康計画編

第440話 深度計を携えて穴掘り再開!

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 一週間後――

「ヘパイトスさん!」
「おっ、来たか。深度計できてるぞ」

 渡されたのは手のひらに乗るくらいの大きさで、土星のような形をした円盤型の何か。形だけ見ればひと昔前のUFOみたいに見える。
 てっきり手で持って使う計器のように、メーターとか数字カウンターとかが付いてる機械を渡されると思ってたから呆気にとられた。

「何か変わった形ですね。どうやって使うんですか? こんな形でも手に持って使うものですか?」
「いや、手に持って使うのは面倒だろ。片手塞がるから穴掘るにも不便だろうし。だから手で持たずに使えるようにした。まずは電源を入れる。その後に深度を測りたい穴のてっぺんから投げ落としてくれ、それだけで測れる」
「投げ落とす? 穴が深かったら底に激突した時に壊れませんか?」
「スイッチが入ってれば激突せずに壁面や突起を自動で避けて落ちて行く。穴の底付近まで落ちたら地面から二十センチ程度のところで浮かんでホバリングして空中に停止する」
「え!? 凄いですね! それで測るにはどうすれば?」
「ここに表示モニターがあって投げ落としたところから地面までの距離を表示してくれる。実演してみるか?」

 そう言うとヘパイトスさんは、深度計のスイッチを入れ、自身の手から落下させる。
 説明通り、落とされた深度計は地面ギリギリでホバリングして停止。

「おお! それで!?」
「ここに深さが表示されている。え~と……今の高さで五十四センチだな。これを穴の一番上からやれば底に着いた時に深度が分かる」
「へぇ~、なるほど~。どういう仕組みなんですか?」
「落下し始めた地点から穴の底までの距離をレーザーで検出する。同じく、周囲十八か所へレーザーを放ってその反射によって物体の有無を検出し、最初に落とした位置からの距離を計算して算出する」
「あ~、うん……なるほど……」
「もっと詳しく説明した方が良いか?」
「いえいえ! 使い方だけで十分です!」

 聞いておいてなんだけど、説明されても分からんし……

「でも気圧とかで算出するんじゃないんですね」
「お、そっちの方が良かったか? 先にそっちを作ってたんだが、不具合があるのに気付いてやめたんだ」
「どういった不具合が?」
「気圧で算出すると、大きい気圧の変化があった時に正確に測れなくなる。例えば嵐が来た場合とかな。その他にも地中に溜まった気体の圧力によっては気圧が変わる場所があるから、そういった場所でも上手く測れない」
「その場その場で調整できないんですか?」
「まあ、ある程度は可能だよ。だがいつも同じ規模の嵐が来るわけではないし、いつも同じ気体が溜まっていたり、同じ濃度ってわけでもない。そういうところで誤差が出てしまう。それなら落下地点からの計測の方が正確だろう思ってな」
「なるほど」
「一応持って行くか? 機能としての不具合は無いと思うが」
「いや、根本的な不具合があるものを持って行っても……」
「そりゃそうか。ああそうだった、毒ガスを検出する機能も付けておいたぞ」

 至れり尽くせりだな。

「地中深くに古代遺跡を作ってるってことは、“いずれは古代遺跡が発見されないといけない”んだろ? まあ毒に強い種族とかもいるからどの種族を基準にするか悩んだんだが、あまり毒に強くないワシらドワーフを基準にすることにした。そこにドワーフに効くような毒が出てたら、安全に発掘なんてできんからな」

 穴掘るってことは毒ガスとか出てくる可能性もあるのか。そこには全く気付かなかった。
 もし毒ガスが出てても、私の身体は毒を無効化するから気付けないしね。

「だとしたら人間を基準にしたらどうですか? 人間はかなり脆弱ですよ? 少しの細菌で腹痛や食中毒を起こしますし」
「その人間がどこにいるんだ? ワシは妻以外に人間を見たことがない」
「あっ……」

 魔界にいる“人間らしき”生物は、大抵亡者だった。
 そういえば死なずに魔界に来る人間って稀なんだっけ。

「じゃあ息子さんやヤポーニャさんは? 彼女らはハーフですよね?」
「あれらはドワーフの血が強い。もしかしたらワシより丈夫かもしれんぞ? 二人ともワシよりでかいし。そういうわけで、毒に対する基準はドワーフで問題無いだろ」

 そういえば以前フィンツさんたちが食中毒起こしてたし、実はドワーフの免疫力って人間と大差無いのかしら? (第375話から第378話参照)

「もし毒ガスが出てた場合はどうすれば?」
「ワシが中和装置を作ってやるから安心しろ。そういうシステムがあってこそ古代遺跡だろ?」

 それはむしろ最新のシステムな気がするけど……

「ああ、もし毒の検出を確認したら深度計を持って来てくれ。何の毒を検出したのか分かるようにしてある」
「分かりました。ところで、この深度計の動力源は何ですか?」
「電気だよ。しかし魔力動力変換にしておいたから、お前さんが魔力の補充をしてやれば魔力切れになるまでは使い続けられる」

 じゃあ充電とかは必要無いってことか。

「そうそうそれと、顔認証しておけばお前さんの後を追って付いて来てくれるようにしておいたぞ」

 おお! 自動追尾のドローンみたいだ。

「そのまま下へ下へ掘り進んで行けば、こいつも自動的に深さを更新していってくれる。一度中断しても直前まで作業していた地形を記憶するから、前回中断したところから始めれば深度はそこから更新するようになっている。あと、認証者と距離が離れると警告音を出す。大体五メートルくらいだな。例えばお前さんか深度計のどちらかがどこか深い穴とかに落下して離れてしまったとか」
「なるほど」
「それと、ラジオ機能を付けた。聞きながら作業できるぞ。何か聞きながらの方が楽しく穴掘れるだろ」

 オプションまで!?

「でも、地下で電波が届くんですか?」
「届かんよ」
「じゃあ何でその機能付けたんですか!」

 冗談のようなやり取りに少しニヤけながら聞いてみると――

「紋章術符を貼り付けて魔道具に仕立てた。まあ貼り付けた術符は近くの店で売られてる市販品の安物だからそれほど精度は良くないがな。それとこいつも持って行け」

 と渡されたのは同じく紋章術が貼り付けられたアンテナ?

「そのアンテナと深度計の紋章は一対になっていて、アンテナ側の紋章が入力、深度計側が出力になっている」
「う~ん……ん?」
「つまり、アンテナをどこか電波を拾えるところに立てておけば、貼り付けた紋章を通して拾った電波の音が深度計に届く」
「おお、凄い! こんな電波の通し方もあるんですね」

 電波が届かないところへ届かせるとは、この世界ならではの機能だ。

「それとこれも持ってけ」

 手渡されたのは、深度計と同じような形の機械。ただし、表面の上部分に太陽のような放射状の印が描かれている。

「こっちは何ですか?」
「光源だよ。地下だと暗いだろ? 掘るのに明かりがあった方が良いと思ってな」

 明かりのことまで考えてくれたのか!
 光魔法があるからそれほど必要というわけでもないが、ご厚意はありがたくいただいておこう。

「こっちはどうやって使うんですか?」
「深度計の方にそいつのスイッチも付けてある。そいつは深度計の動きにリンクして動く。あと深度計同様に壁面や突起を自動で避ける」

 あ、これか。魔界文字で書かれた『L』と『H』に似た字の隣にボリュームのようなつまみがある。
 『L』と『H』は、多分『明るさLight』と『高さHight』の頭文字かな?

「その『L』のつまみで光量を調整できる。左に寄せるほど暗くなり、右に寄せるほど明るくなる。左の端へ寄せれば完全に明かりを消せる」
「おぉ、なるほど」
「高さ調整はその下の『H』文字のつまみで調整してくれ。そのつまみを左に寄せるほど深度計と近いところを飛び、右に寄せるほど高くまで上昇する」
「穴の中で右に寄せ過ぎると天井にぶつかったりしませんか?」
「心配するな。そこもちゃんと考えてある。深度計と逆で天井から二十センチ下くらいをホバリングするように設定してある。それにプロペラで動いてるわけではないから多少ぶつかったくらいなら墜落することはない」

 これが高低の調整つまみか。どれくらい高いところまで行くんだろう。試しに目いっぱい右に寄せてみるか。

「ああ、つまみを目いっぱい右に寄せると際限無く上昇する。天井が無いところでは多分成層圏付近まで行ってしまうから注意してくれ」
「えっ!?」

 あっぶねぇ……試そうとスイッチに手をかけたところだった……

「今試そうとしただろ?」

 見透かしてるようにニヤニヤしている。

「ま、まさかぁ……流石にそんなにお転婆じゃないですよ……」

 まあやろうとしたんだけどね。

「目いっぱい右に寄せたところで、つまみを左に戻せば降りてくるから問題無いけどな」

 それもそうか。何も超高速で上昇するってわけじゃないし、降りてくるように仕向ければ良いだけの話か。

「何から何までありがとうございます!」

 毒ガスや光のこと、更には退屈しのぎまで考えてくれてる!

「それでおいくらになりますか?」
「二十万ウォルだな。期待感を込めて十万ウォルに負けておくよ」
「いやいやいや、半額って」
「まだまだアルトレリアの財政そんなに潤ってないはずだろ?」
「いや、これはアルトレリア関係無く、私個人のことなので……」
「気にするな。期待感を込めてだから」

 そうなるとむしろ期待に応えられるかどうかっていうプレッシャーが……

「ま、まあそう言ってくれるならお言葉に甘えて」
「じゃあ古代遺跡の土台が出来たら招き入れてくれ」
「わかりました! ありがとうございます!」

   ◇

 早速、古代遺跡 (予定)に掘った穴の入り口に来た。まずは近くにラジオ用のアンテナを設置。その後穴掘りへ。

「そうだ、せっかくだからこの二機に名前を付けておこう。何が良いかしら……? 深度だから……『ディープくん』、光源の方は『ライトくん』で良いか」

 安易な名前だが、これ以上的確な名前も無いだろう。

「え~と、確かスイッチを入れて落とすだけだったよね」

 ディープくんのスイッチをオンにし、掘り進めている穴の一番上から落下させた。
 ライトくんの方も続けて落とす。

 ……
 …………
 ………………

「………………何も音はしないな。壁面を避けて落ちて行くって言ってたし、そろそろ底に着いた頃かしら?」

 確認はできないが自身も穴の中へ飛び下りる。
 うっかり深度計たちを踏んでしまわないように、羽を出現させ、浮力を維持しながら徐々に降下。

 ……
 …………
 ………………

 底に着くと、二機ともホバリングして待っててくれた。
 早速ライトくんの光量つまみを動かして明かりを点け、ディープくんの表示モニターを覗き込む。

「さて、ここまでの深度は……五十七メートルか。普通に穴掘ったら半日で十メートル行けるかどうかだろうし、八時間でこれなら結構掘れてる方かも。微細振動スコップのお蔭かな?」

 私が来たためか、ソイルワンとソイルツーが起動。

「おはよう二人とも。今日もお願いね」

 二体ともコクッと頷く。
 ラジオを付けながら作業しようとしたところ、早速歌が聞こえてきた。

『……穴掘りえんやこ~ら~♪ 畑をえんやこ~ら~♪……』

「フフッ……何だこの歌……」

 『この場に似合いすぎだろ!』と思い失笑してしまった。
 どうやら樹の国ユグドマンモン近辺で大分昔に流行った『おイモ掘りのうた』という歌らしい。
 その後、ラジオから聞こえてきたことによると――

『……国内情報です。水の国アクアリヴィアとの技術提携によりテレビのカラー化が早まることが予想され……』
『……本日未明、トールズ繁華街にて殺人事件が起こり、犯人は現在も逃走しております……目撃者によると犯人の特徴は……』
『……本日の雷予報です。本日の落雷は少なく、列車の遅延は少ないと考えられます……』

 あ、これ……樹の国ユグドマンモンのラジオかと思ったけど、雷の国エレアースモのラジオっぽいな。

『……国外ニュースです。氷の国アイスサタニアのクーデターによる混乱は、依然残っているものの、先日行われた新たな氷の魔王のお披露目式により、ある程度は沈静化されてきたと見られ……』
『……先日、風の国ストムゼブブ属国のヴイントルで、ジャイアントアントの集団が目撃され、近隣諸国に緊張が広まっており……』
『……樹の国ユグドマンモンではブドウが豊作で今年のユグドグラン産のワイン『モジョレースーボー』は百年に一度の味わいと絶賛されています……』
『……速報です! たった今火の国ルシファーランド東部の属国フランメラにて議会が占拠されたとの情報がありました。現在治安部隊と反政府組織『宵の明星』との間で争いが勃発しており……』

 ラジオって世界情勢とか、色んな国の情報を得られて中々有用ね。これ付けてくれたヘパイトスさんには感謝だわ。
 平和な話題もあるものの、魔界はいまだ物騒な話題が多そうだ。

『……終わりに、本日の通貨レートの情報です。
 水の国通貨ウォル:0.95
 雷の国通貨エレノル:1.08
 風の国通貨エアリル:1.01
 火の国通貨フラム:1.40
 氷の国通貨アイシル:1.29
 土の国通貨ストルン:1.12
 樹の国通貨ツリン:1.00
 アルトラルサンズ通貨イェン:1.50』

 おぉ!? この国の通貨もお報せされてたのか……各国に注目いしきはしてもらえてるみたいだ。

 その後もラジオを聞きながら、ご機嫌に掘り進める。
 ソイルワンとソイルツーにもせっせせっせと土を運んでもらい――

「どれくらい掘れたかしら? …………百八メートルか。この分なら二十日くらいで目的の深度まで達しそうだ。さて、今日はここで終わりにしておくか。続きはまた明日」

 しかし、その明日はしばらく訪れることはなかった……
 この翌日、世界滅亡に陥る可能性を孕んだ自体が起こったのだ。
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