建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編

第460話 銀色の異形者

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 巣穴攻略班が壊滅寸前にまで追い込まれる数時間前――

「よし、巣穴から遠くへ散らばってしまったジャイアントアントは追跡班に任せて、我々は巣穴の攻略に全力を傾ける!」
「まずは事前にお話しした計画通りにアリたちを我々地上部隊に引き付けます。十分引き付けられたと思ったら合図をしますのでレッドドラゴンの方々、よろしくお願いします」
「心得た」

 レッドドラゴン隊の隊長プロクスが作戦を了承する。

「地上部隊のみなさん、危険な役目ですので付かず離れず遠距離から魔法で攻撃して魔法を使える優位性を保ってください。おとりをしつつしっかりと個体数も減らしていきましょう」

 マルクが指揮を執り、フリアマギアが作戦の概要を説明する。

「作戦開始だ!」

 まずはアリに気付かれる前に、雷の国の兵士たちが【サンダーボルト】で巣穴周辺に雷の雨を降らせる。
 広範囲にいるアリたちが感電、少しの間麻痺を引き起こし動きが鈍る。
 間髪入れずに、樹の国の兵士たちが樹魔法で作った杭や槍などを投げつけ串刺しにする。また、ある者は土魔法で作った大岩で圧し潰す。如何に何トンもの重量を持ち上げるジャイアントアントであろうと、麻痺して動きが鈍れば容易に押し潰すことができる。
 少し戦ってちょっかいをかけたら、一斉に退散してアリたちを引き付ける。そして引き付けられて追跡して来たアリを各個撃破。
 これを数度続けて、空中へ意識を向かせないように刷り込む。

「兵隊アリが出て来た! 強靭な身体に加えて、敏捷性も高い! 魔法を使う個体も稀にいるから気を付けろ!」
「兵隊アリは個体数が少ない! 一斉に攻撃して何もさせないように迅速に駆除するんだ!」

 兵隊アリの目がけて一斉に攻撃を集中させる。
 ある者が水魔法で水をばら撒いて兵隊アリを濡らし、更に氷魔術師がその水を凍りつかせて凍死を狙う。先んじて水で濡らしている分、凍結の威力も増加する。
 また、ある者はばら撒かれた水に雷を流して、威力をアップ。水に濡れていたアリたちへと伝播し、複数のアリたちが感電死する。

「よし順調だ! これならもう良いだろう!」

 兵隊アリが働きアリより強くとも、駆除に手慣れている歴戦の勇士からすれば大した脅威とはならない。サクサクと駆除されていき作戦の準備が整う。
 しかも今回は特大の炎という奥の手付きである。

「レッドドラゴンの方々、巣穴の焼尽をお願いします!」

 マルクとフリアマギアの合図で、レッドドラゴンたちが巣穴へ向かって飛ぶ。
 そして、八人のレッドドラゴンが巣穴を一斉に炎で攻撃。
 カゼハナの巣穴と違い、浅く作られていた巣穴は一瞬で内部まで炎が侵入、それでもなおしばらくの間火炎放射を続けられ――

「火炎放射止め!」

 ――隊長プロクスの合図で火炎放射が止められる。

「よし! あとは巣穴のアリを全部駆除すればヴァントウの巣穴は殲滅完了だ。みんなよくやってくれた。もう少し頑張ってくれ」

 マルクが一安心といった具合に表情を和らげた直後、

 ドオオオォォォン!!

 という、けたたましい爆発音を上げながら、巣穴が内部から爆発した。

「何だ!?」
「どうした!?」
「火炎放射は終わったのではないのか?」
「ガスでも溜まっていて、それに引火したんじゃないか?」

 この時点ではまだ楽観視していた連合軍の兵士たちであったが……

 内部から掘り返されるように爆発したことにより、大量の土が噴出され巣穴の炎上は鎮火。
 しかし、それは爆発ではなく、何者かが巣穴から勢い良く飛び出した時の音だった。
 大地へと降り立つ巣穴から飛び出した生物。

「な、何だコイツ……?」
「巣穴から出て来たのか……?」
「そんなバカな! もう大炎上してるのに、アリがあの中で生きていられるわけがないだろ!」
「それよりも、巣穴から出て来たのならコイツもアリなのか?」

 出て来たのは銀色の体色をし、頭部と下半身はアリ、上半身はヒトのような姿の異形の生物。
 ジャイアントアントには本来なら指が無いため、拳も存在しない。
 しかし、目の前の生物は亜人に近い上半身を持っており、手には五本の指があった。

「何だこの気持ち悪い生物は!」
「上半身があるアリなんて見たこともないぞ?」
「気を付けろ! そいつは何かヤバイ臭いがプンプンする!」

 狼狽うろたえる兵士の中でマルク、フリアマギア、アランドラ、ラッセルはアルトラが会議で最後に言っていたことを思い出していた。

 ――『兵隊アリの上位種がいるのではないかという予測もされています』――

 そしてマルクが一言こぼす。

「まさか、こいつが兵隊アリの上位種か?」

 突如出現した異形の者に恐れを抱きながらも、近くに居た雷魔術師が先手必勝とばかりに一斉に雷魔法を浴びせる。
 恐ろしいほどの明滅を繰り返して巨大な雷が銀色のアリと思われるモンスターを貫いた。
 通常であれば跡形も無い、良くて黒焦げは免れない威力のはずだったが――

「む、無傷……?」
「じゃあ氷魔法ならどうだ! 凍らせてしまえば虫なら動きが止まるだろ!」

 先ほど同様、水魔法で水分量を多くして威力を高め、氷魔術師が氷のピラミッドに閉じ込める。虫なら気温が下がり過ぎて動くことができなくなる。そのまま凍死させることを想定して繰り出した魔法であったが――
 虫であるにも関わらず、氷の中で身じろぎし、右腕を振り払っただけで自身を包んでいた氷のピラミッドを粉砕して出てきてしまった。

「くそ! それなら物理的な攻撃はどうだ!」

 土魔術師による岩石攻撃潰そうとし、樹魔術師による木の杭攻撃で串刺しにしようとするも、いずれも傷付けることは叶わず……

「無傷!?」
「一体どうやったらダメージを与えられるのだ!」

「みんな一斉にそこを退け!」

 プロクスがレッドドラゴン形態に変身し、巨大な火球を吐き出す。
 火球は銀色のアリに直撃。爆発し、火柱を発生させ、炎の竜巻が発生する。
 ただのアリであればこれだけで跡形もないはずだが……
 炎が収まった後にそこには……

「な……何ともない……のか?」

 巨大な炎の塊が直撃し、爆発炎上したにも関わらず、元の場所から全く動かず無傷で立っていた。
 その時、銀色のアリがおもむろに動き出す。
 銀色のアリは緩慢な動きで最も近くに居た兵士に右手を振りかぶって攻撃する。

「うわぁっ!」

 と悲鳴に近い声を上げながらも、兵士はそれを簡単に避けた。

「…………は? え? ハ……ハハハ……何だコイツ、驚かせやがって! 物凄く遅いじゃないか!」

 脅威に感じていたアリの攻撃を難無く避けられた兵士は、一瞬呆気にとられた後、バカにするような言葉を吐く。
 その後も緩慢な動きで攻撃を繰り出してくる銀色のアリだったが……一般兵士ですらその攻撃をことごとく見切り、容易に回避する。アリの攻撃は全く当たる様子が無い。

「強いのは防御力だけで動きはかなり遅いぞ?」
「だったら対処法が見つかるまで避ければ良いだけじゃないか!」
「ほらほら、来いよ、ほら!」

 周りの兵士が銀色のアリを煽る中、当の銀色のアリは自身の両手を少しの間見つめた後、その場で上半身ごとブンブン振り回し、体操のような動きを始めた。

「おい、油断するな!」
「でも、当たらなければどうということはないわけですし」

 変わらず周囲の兵士が煽り立てている中、少し離れたところから見ていたマルクはその行動に違和感を持つ。

「フリアマギア、君はあのアリの行動をどう見る?」
「どう見ても異常としか思えない行動です。まるで赤ちゃんが初めてのことをやるように何かを確認しながら動いてるような」

 再び兵士を攻撃するも――

「おっと! へへっ! 当たらんぜ!」

 ――そこでアリは動くことを止め、胸の前に両手のひらを向かい合わせにし、雷属性を帯びた魔力を使い始めた。
 次の瞬間、銀色のアリを中心に紫色の半透明の魔力ドームが広がる。

「うわ! 何だ!」
「通過した瞬間に一瞬痺れたぞ!?」
「麻痺? いや、ちゃんと動けるよな……」

 半透明で紫色のドームはどんどん範囲を広げ、次々にドーム内に飲み込まれる兵士たち。

「フリアマギア!」

 自分たちが紫色のドームに包まれる前に、一瞬早くマルクがフリアマギアの足元へ樹魔法をかける。
 フリアマギアの足元から樹木が生え出し、樹木はフリアマギアを乗せたまま瞬く間に成長、一瞬で遠くまで幹が伸び、ドームに包まれる前に離れた場所へと逃がされた。

「マルク殿! 一体何を……」
「あの魔力ドームはヤバイと直感した! 君はこの連合軍の参謀だ、アレの倒し方を見つけてくれ! 頼むぞ!」

 半透明で紫色のドームは巣穴付近に居た軍勢を効果範囲として包み込み、マルクがいる場所まで到達した後消え去る。
 このドームによって何かされたのではないかと警戒していた兵士たちであったが――

「何も身体に変化は無いが?」

 ――しかし、次に銀色のアリが上空へと魔力の塊を放った後にその変化は起こった。

「うっ! 何だ!? 身体が吸い寄せられる!!」
「今ドームに包まれたヤツら全員か!?」

 アリの周囲に居た連合軍兵士たちがまるで磁石に吸い付くように、上空へと放った魔力へ向かって吸い寄せられる。
 この場で戦っていた数百人の兵士が、アリが放った魔力に向かって次々吸い寄せられていくため、徐々に徐々に兵士たちによる巨大な団子が形作られていく。

「ぐぁ……く、苦しい……」
「し……死ぬ……潰れ……る……」
「ギャアァァ……」

 一人、また一人と吸い付く度に、中心に向かって外側からの圧力でギュッギュッと圧し付けられるため、最も中心近いところに居た先ほどアリを煽り立てていた兵士たちはその外圧に耐えられず圧死。
 比較的離れたところから吸い寄せられ圧死の心配が無い者も、吸い続けられてその場に固定されてしまうため、空中で身動きが取れない状態になった。

 地上では、それを目にし銀色のアリはニタリとほくそ笑む……
 アリの顔に表情筋など無い。そのため表情など分からないのだから、『ほくそ笑んだ』などということも分かるはずもないのだが、連合軍の兵士たちにはそういう風に見えたと錯覚していた。
 次の瞬間、銀色のアリは団子状になった連合軍兵士たちへ向かって跳躍!

「ま、まさか……!」

 空中で右腕を大きく振りかぶって、団子状の中央辺りにいる連合軍兵士たちへ向かって思いっきり腕ごと拳を叩きつけるラリアット

 ゴゴオォォン!!

 というヒトを殴ったとは思えない音を発し、連合軍の兵士たちの多くが団子状から弾き飛ばされて肉片になって飛んでいく。

「ギャアアァァ!!」
「グワァァァ!!」
「キャァァァ!!」

 アリは一度着地し、更にもう一度跳躍、今度は軸をズラして別の方向から左腕でのラリアット!
 再び

 ゴゴオォォン!!

 という音と共に、連合軍兵士たちがバラバラと吹き飛んでいく。
 その直後、効力を失って団子状態が解除され、一斉に地面へ落ちる連合軍兵士たち。
 吸い寄せから解放されて動けるかと思いきや、たった二撃のラリアットで多くの者が即死、または重大な怪我を負い、ある者は吸い寄せられた時の圧力によって骨に軋みや骨折などの異常をきたしており、団子状の中ほどにいたほとんどの兵士が既に満身創痍の状態に!
 強靭な肉体を持つレッドドラゴンですらも半数が大怪我を負って満足に動けない状態に陥ってしまった!

「な、何だこの能力は……磁力のようなものか?」

 ラリアットの直撃は避けたものの、遠く離れたところまで弾き出されていたマルクがそう予想する。
 事実、マルクの予想は当たっていた。
 最初に紫色のドームで兵士たちに磁力を付与し、上空へ投げた魔力磁界へと兵士を吸い付ける。
 アルトラが以前似たような魔法を使っていたが (第324話参照)、これもそういう類いの魔法だった。
 如何に緩慢な動きであっても、止まってる的への攻撃は外さない。
 そのままでは攻撃が当てられなかったアリは、磁力を使って兵士たちの動きを止め、そこへ強大な一撃を与えたのだ!

 こうなってしまえば、動けるのはほぼ隊長格くらいとなった。
 そして、また紫色のドームが展開される。

「くそっ! 第二弾か……」

 そこへアリ追跡班が、散らばったアリを駆除して戻って来たのである。
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